これでわかる!個人年金保険-税控除から各貯蓄性商品との比較まで

定年退職して収入がなくなる老後の生活のために、自衛手段として民間の金融商品を検討される方もいるでしょう。
いろいろ検討しているなかで、個人年金保険が気になってちょっと調べてみたけれど、結局なんだかよくわからない、ということはありませんか?
老後の平均年金収入や生活費についてや他の金融商品との比較もしながら、個人年金保険の内容をわかりやすく紹介しています。
公的資料や実績なども交えて説明しているので、個人年金以外にも読者様の将来の参考としていただけば幸いです。
今回の記事をご覧になれば、自分に合う個人年金保険がどんなものか迷わず選べるようになるでしょう。

目次

1 個人年金保険の概要
1-1 みんなが個人年金保険に入る訳
1-2 個人年金保険のメリット
1-3 個人年金保険のデメリット

2 実際に老後に必要な費用を考えてみる
2-1 政府統計からみる毎月の老後の平均支出
2-2 定年後の収入の概算をみてみよう
2-3 定年退職から平均寿命までの生活費をトータルすると?

3 他の長期の資産形成に適した金融商品
3-1 元本割れの恐れがない定期預金
3-2 ある程度リスクをとってリターンを目指す投資信託
3-3 掛け金が所得控除でお得な確定拠出年金

4 個人年金保険の種類と特徴
4-1 年金の受取期間が決まっている確定年金保険
4-2 存命中は年金が受け取れる終身年金保険
4-3 利率が有利でも為替リスクのある外貨建て年金保険
4-4 運用実績で受け取り額が変わる変額年金保険

5 個人年金保険の選びかた
5-1 はじめに個人年金保険の種類を選ぶ
5-2 受け取りたい年金額と払える保険料のすり合わせ
5-3 保険会社の選びかた

6 個人年金保険料と所得控除
6-1 税額控除が受けられる特約とは
6-2 個人年金保険料税制適格特約の注意点
6-3 税額控除を受ける方法

7 個人年金保険の注意点
7-1 個人年金保険と告知
7-2 保険会社が破たんしたら
7-3 経済情勢の変化によるリスク

8 まとめ

1 個人年金保険の概要

個人年金保険とは公的年金の補助として加入する私的な年金の一種で、「利殖(運用)」、「受け取り(年金)」、「死亡時の保証(保険)」の3つの機能がひとつになった保険商品です。

保険料として契約者が積み立てたお金を生命保険会社が運用し、その成果(年金原資)を契約で定めた年齢から年金として受け取ることができます。

なお、年金の受け取り前に被保険者が死亡した場合、死亡保険金が支払われます。

1-1 みんなが個人年金保険に入る訳

周りの知人や家族に勧められて個人年金保険の存在を知ったり、若い世代では親世代の個人年金保険の利率の有利さに惹かれて加入を決断される方が多いようです。

個人年金保険の加入者は20代の若い世代から定年を間近に控えた50代の方まで幅広い層になります。

日本は高齢化が急激に進み、将来の公的年金制度や健康保険制度に不安を抱く人が多くなり、自らの老後に備えるべく、こういった商品が注目されるようになっています。

それでは、個人年金保険に加入するとどのようなメリット、そしてデメリットがあるのでしょうか。

1-2 個人年金保険のメリット

個人年金保険のメリットとしては、月々保険料として老後のための資金を確実に積み立てできること、また、積み立てた保険料は税控除が受けられるため、有利に資産形成ができる点です。

長期間先に使うための資金を貯めたい場合、計画的な積み立てがキモとなります。

個人年金保険であれば、保険料として一定額を確実に積み立てできるので、目標とした年金に相当する金額を貯めることができます。

まとまったお金が手元にあると何かと安心ですが、車や旅行など大きな買い物をしたり、本来予定していた老後の備えとはかけ離れた別のことに使ってしまう恐れがあります。

個人年金保険は資金の使途を確実に定めることができ、既定の年齢に達したら年金として受け取ることができます。

個人年金保険料は所得税の税制適格特約を付加した場合、特典として所得税控除が受けられます。

これは、支払った保険料相当分もしくは一部が契約者に還付されるもので、普通に定期預金等で貯蓄を行うよりも税控除の分だけ有利にお金を貯めることができます。

 

1-3 個人年金保険のデメリット

個人年金保険のデメリットは主に、保険会社の破たんリスクと将来のインフレリスク、解約による元本割れのリスクがあげられます。

個人年金保険は長期的に積み立てをすることから、保険会社と長くつきあう必要があります。

ただ、昨今の日本の経済環境の変動はダイナミックで、保険会社とてその影響を避けることはできません。

保険会社が破たんするかどうか数十年のスパンで予測するのはとても難しいのが実情ですが、破たんした場合、せっかく積み立てた個人年金を受け取ることが難しくなります。

また、個人年金保険の商品の特徴から長期の契約を強いられるため、定期型のものですと将来的なインフレリスクを回避できません。

また、なんらかの事情が生じて中途解約するのは元本を大きく割り込むので、一度契約をしたら計画変更が出来ない、という硬直的な資金運用になってしまいます。

 

2 実際に老後に必要な費用を考えてみる

老後に必要な費用は、個人的に満足できる生活水準がどの程度なのか、定年退職時の資産状況、受け取れる年金額、健康状況によっても変わってくるでしょう。

個人年金保険を検討するにあたって、老後に必要な費用を推計し、契約内容を決める必要があります。

漠然と老後に必要な経費を考えるのではなく、平均的な日本人の老後の支出額や定年後の収入(退職金や公的年金)の概算を参考に、ご自分が必要な金額を考えてみてはいかがでしょうか。

2-1 政府統計からみる毎月の老後の平均支出

政府の2016年の家計調査報告によると、世帯主が65歳以上の家族が2人以上の家庭のひと月の平均消費支出は24万9千円(※)、60歳以上の単身世帯の平均消費支出額は14万9千円(※)です。

世帯主が65歳以上の世帯の支出をはじめ、全年齢の家庭支出は年々低下傾向にありますが、60歳以上の単身家庭の平均支出は前年に比べ微増しています。

これは高齢者の生活費が年々上昇傾向にあるのではなく、高齢者の生活水準は他の年齢層に比べ変動が起こりにくく、日本の経済状況(昨今はアベノミクス)の影響をもろに受けやすいということが言えるでしょう。

それでは、老後の生活にかかる具体的な費用の内訳を見てみましょう。

食費 住居費 光熱水道費 保険医療費 交通通信費 教養娯楽費 総額
65歳以上の世帯主がいる2人以上の家庭 70,000 14,000 21,000 15,000 28,000 25,000 249,000
60歳以上の単身家庭 36,900 13,000 12,000 8,000 14,000 17,000 149,000

※項目は主要なものを抜粋、金額は概算

65歳以上の世帯主がいる2人以上の家庭は大家族も含んでいるので、夫婦2人のみで生活する場合の費用は60歳以上の単身世帯のものに少し+αした程度になるでしょう。

高齢者になると生活習慣病などにかかることが多く、医療費が意外とかかってきます。

住居費をみると月々の費用が低く見えますが、持ち家がない場合は上記の金額の数倍かかることが予想されます。

たとえ持ち家としてマンションを所有していても、月々の管理費がかかりますので、上記の倍額を見込んだ方がよさそうです。

 

(※)参考URL:

http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/nen/pdf/gk02.pdf

http://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/nen/pdf/gk03.pdf

2-2 定年後の収入の概算をみてみよう

定年後の収入源の基となるのは、主に退職金と公的年金になります。

退職金の額は各人の状況によりケースバイケースとなり、正確な予測は難しいですが、統計にて平均額を知ることはできます。

厚生労働省の平成25年の就労条件総合調査結果によれば、定年まで勤めあげたサラリーマンの退職金の平均額(※1)は、大卒社員は1,941万円、高卒社員は1,673万円、高卒の現業社員は1,123万円となっています。

つづいて、多くの方にとって貴重な老後の収入源となる公的年金の額(月換算)はいくらなのでしょうか。

厚生労働省がまとめている統計資料の厚生年金保険・国民年金事業の概況(※2)によれば、厚生年金受給者の月の平均年金額は147,872円(平成27年度)です。

自営業などの厚生年金未加入者は国民年金の受給となりますが、厚生労働省の報道資料(※3)によれば、月換算で64,941円(平成29年度の満額受給の場合、実際の受給者の平均額は 55,244円)となっています。

 

参考URL

(※1)http://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/13/gaiyou05.html

(※2)https://goo.gl/2qJIMB

(※3)https://goo.gl/tD8IFx

2-3 定年退職から平均寿命までの生活費をトータルすると?

日本人の平均寿命は男性は80.75歳、女性は87歳となっており、昨今の医療の進歩を反映してか年々寿命が長くなっています。

通常の定年退職の年齢60歳と平均寿命の年齢の差は男性は約21年で、女性は27年ほどです。

この年数に先ほどの平均家計支出の金額の12ヶ月分をかけ合わせれば、老後の生活費のおおよその金額が算定できます。

ここでは簡単に単身世帯の場合の老後にかかる生活費の総支出額を出してみます。

男性:定年退職後21年間 × 月149,000円 × 12ヶ月 ≒ 3,754万円

女性:定年退職後27年間 × 月149,000円 × 12ヶ月 ≒ 4,827万円

老後を夫婦2人で過ごすとなれば、女性の金額に+αした金額を想像してください。

この総支出額から自分が受け取れると予測する退職金の金額を引き、その残金を12(1年間の月数)で割ると月々自分が必要になる年金額が予想できます。

その金額は厚生年金や公的年金でまかなえる金額となっているでしょうか?

足りない額は個人年金保険やその他の貯蓄でまかなう必要があります。

3 他の長期の資産形成に適した金融商品

個人年金保険以外にも長期の目的で貯蓄できる金融商品がいくつかあります。
個人年金保険と同様に積み立てができる定期預金や、リスクを取って将来の資産形成も可能な投資信託のほか、個人年金保険のように税控除を受けられる確定拠出年金があります。

ただし、こういった金融商品は主に銀行や証券会社で販売されていますが、個人年金保険を販売している保険会社でも、確定拠出年金の商品として個人年金保険を取り扱いしているところもあります。

ここでは、これらの金融商品と個人年金保険を比較してみますので、個人年金保険がご自分に合っているかどうかを判断してみてください。

3-1 元本割れの恐れがない定期預金

定期預金は銀行で年単位の長期間で預けられ、金利も普通預金よりも高いため、かなり先の目的のために貯蓄するための手段としてよく知られています。

特徴としては1ヶ月から10年間の預入期間があり、中途で引き出すことができませんが、自由に出し入れできる普通預金より金利が有利となっていますが、超低金利時代となっている日本では資金を増やす目的として利用するには疑問符がともります。

現在の0金利時代のなかでリスクを取ってリターンを上げようとする商品が多いなか、元本割れの恐れがないというのが唯一の利点でしょう。

しかし、10年間預けたとしても金利は微々たるものなので、普通預金に預けていたほうが資金が長期間も固定化されなくて済むのでよいと思います。

どうしても資金の使い道を老後の資金に限定したい、という方は老後のための払い込み金に税控除が適用される金融商品のほうがいいかと思います。

3-2 ある程度リスクをとってリターンを目指す投資信託

投資信託は保険会社のように多くの人から資金を集めて運用(投資)するのですが、保険と違い運用収益が出た場合に収益金が分配されます。

個人年金保険と違うところは、個人年金保険は投資の知識が全くなくても保険会社がリスクを取り、加入者の受け取る年金額が保証されていますが、投資信託は投資家がリスクをある程度取ってリターンを目指すため、将来受け取れる額が決まっていないというところです。

つまり、運用収益が多ければ多くのリターンが望めますが、収益が全く出なければ投資信託の価格が下がり、元本割れすることもあります。

投資信託は知識がなくても購入できると謳われており、確かにその通りなのですが、収益の出る投資信託を選ぶにはある程度の経済的な知識が必要でしょう。

そのため、個人年金保険と比べ、確実な老後の資金形成ができるとはいえません。

長期で資金が固定される定期預金や個人年金保険と違い、投資信託は一定のクローズド期間を除けばいつでも解約、換金ができます。

試行錯誤しつつ、有意なリターンを目指して長期的に資産形成することもできるでしょう。

2023年までならNISA(少額投資非課税制度)により売却益や配当金が年間120万円を上限に非課税となります。

3-3 掛け金が所得控除でお得な確定拠出年金

個人年金保険には積立金額の一部が所得控除となる制度がありますが、投資信託や定期預金の購入や預入金額が所得控除になる確定拠出年金という制度もあります。

確定拠出年金は金融機関を選び、口座を作って月々拠出(積み立て)したお金を各金融機関が取り扱う投資信託や定期預金で運用します。

しかし、確定拠出年金を始める場合、複数の金融機関を同時に利用し自分の好みにあった金融商品を購入するということができません。

1人につき1口座が原則となっていますので、自分が購入したい金融商品を取り扱っている金融機関や証券会社を選ぶ必要があります。

ただし、年金として受け取るまでの運用期間中に口座を移管(2か月程度かかり、有料のこともあり)することはできますので、別の会社が取り扱っている商品に興味がでたら乗り換えすることもできます。

4 個人年金保険の種類と特徴

個人年金保険は年金の支払い期間の違いにより、一定期間の支払いが保証される確定年金と、年金受取人が生存する限り年金の支払いが保証される終身年金があります。

個人年金保険にはこのように種類がいくつかあり、自分が欲しい保証によって最適な個人年金保険を選択することができます。

通常個人年金保険は受取金額が決まっていますが、受取金額が変動するタイプのものもあります。

それは、保険会社の運用実績次第で受け取り年金額が決定する変額年金保険や、保険会社が外貨での運用を行う外貨建て年金保険になります。

これらの個人年金保険の特徴や利点を詳しく説明します。

4-1 年金の受取期間が決まっている確定年金保険

個人年金保険は受け取り期間により分類されていますが、年金を受け取る期間があらかじめ決まっているのが確定年金保険です。

個人年金保険では一般的なもので、多くの人がこちらに加入しています。

被保険者(年金の受取人)が生存しているかどうかにかかわらず、一定期間年金の支払いが行われ、被保険者が年金受取期間中に死亡した場合は、残った期間に相当する年金もしくは一時金が遺族に支払われます。

被保険者が受け取る年金額は、払い込んだ保険料に一定の予定利率をかけた金額に確定されているので、確定年金保険という名称になっています。

契約で設定した期間のみしか受け取りができないので、想定を超えて長寿となった場合、何らかの手段を講じる必要が出てくるかもしれません。

4-2 存命中は年金が受け取れる終身年金保険

終身年金保険は被保険者が存命ならば年金が受け取れますが、被保険者の死亡にともない年金の支払いが終了する個人年金保険です。

終身年金保険には保証期間が有るものと無いものがありますが、保証期間が付いているのが大半です。

保証期間のないものは被保険者が亡くなると年金の支払いが終了します。

そのため、早く亡くなると大きく元本割れを起こし、せっかく積み立てたお金が無駄になるのを恐れて敬遠する人が多いという理由があるのでしょう。

保証期間付きの終身年金保険は、確定年金と同様、保証期間内ならば被保険者の生死にかかわらず(死亡時は遺族へ)支払いが保証されます。

また、確定年金との違いは保証期間を越えて被保険者が長生きしても、一生涯に渡り年金が保障されているという点です。

将来の長生きリスクを考える場合は終身年金が適していますが、確定年金保険と同額の年金を一生涯に渡って求めるならば、保険料が割高になるのは否めません。

また、一生涯に渡る保証は何にも代えがたいですが、長寿を全うした場合の将来の状況(個人的事情のほか、社会/経済情勢、保険会社が存続しているか)の見通しがとても難しいです。

4-3 利率が有利でも為替リスクのある外貨建て年金保険

外貨建て年金保険は、払い込んだ保険料を円ではなく米ドルや豪ドルで運用する個人年金保険のことです。

仕組み自体は通常の個人年金保険と同様なのですが、外貨建て年金保険の目的は外国通貨の金利は0成長、0金利の日本の円に比べ高いため、外貨建て運用でその果実を得ようという点にあります。

通常、将来受け取る年金や死亡保障は外貨ベースでの保障となり、円建てより高い利率が見込めますが、為替リスクの結果、円高による為替差損(元本割れ)や円安による為替差益が生じることがあります。

また、日本円を外貨へ両替するため為替手数料もかかってきます。

外貨建て年金保険の保険料の支払いは、外貨のほか日本円でも支払いが可能です。

一括して保険料を払い込む「一時払い」型が主流ですが、最近では月ごとや年ごとに保険料を定期的に払い込む「積み立て」型もあります。

個人年金保険は長期間のリスクにさらされるので、年金原資を単一通貨に頼るより複数通貨に分散したほうがリスク低減効果が望めます。

また、円建てと同様に外貨建ての年金保険も特約を付加すれば年金控除を受けられます。

4-4 運用実績で受け取り額が変わる変額年金保険

変額年金保険とは保険会社の運用次第で将来受け取る年金額が変動する個人年金保険のことです。

運用原資は他の個人年金保険と同様、契約者が払い込んだ保険料になりますが、契約者が複数種類の投資信託の中から、自分が払い込んだお金の運用先を選び保険会社が運用するという運びになります。

変額年金保険は一時払い型が殆どで、契約時に保険料を一括して支払い、運用委託専用の特別勘定という運用枠に移して保険会社が運用を行います。

一時払い型の変額年金保険は主に銀行で販売されており、まとまった金額を一括して払う必要があることから、退職金を積極的な運用をする目的で加入する方が多いようです。

ただ、運用のリスクを全面的に負うのは契約者で、年金の受け取り時点での運用実績が良くないと、元本割れ(支払った保険料より受け取る年金額が少ない)する恐れがあります。

もし加入するのであれば、年金額に最低保証のある変額年金保険を選ぶのがいいでしょう。

5 個人年金保険の選びかた

これまで、老後に必要な費用や個人年金の種類や特徴などを見てきましたが、それでは具体的にどのように個人年金保険を選んでいけばよいのでしょうか。

個人年金保険は一生に何度も契約するものではなく、長期にわたって自分のお金を預けていくものなので、慎重に選びたいものです。

ここでは、個人年金保険の選び方の一例をご紹介したいと思います。

まず、加入したい個人年金保険の種類を選び、次に年金の受け取り期間を決め、最後に保険会社(具体的な商品)を選びます。

5-1 はじめに個人年金保険の種類を選ぶ

個人年金保険の種類を選ぶということは、自分がどのように年金を受け取っていきたいかを決めるということです。

個人年金保険の主な種類をおさらいすると、確定年金保険、終身年金保険、変額年金保険、外貨建て年金保険となります。

自分がいつ頃まで年金を受け取りたいのか、リスクを取って将来の年金額を大きく増やしたいかにより、先ほどの個人年金保険の種類のなかでどれを選んだらいいか、自ずとわかってくると思います。

確定年金保険にするか、終身年金保険にするかは悩みどころだと思います。

平均寿命を心の隅に置きつつ、ご自分のご両親や親せきなどがどれくらい長寿であるかを参考にされてみてはいかがでしょうか。

また、払い込んだ保険料の運用方法を保守的(一般的)な貯蓄型の確定年金保険にするか、そこそこのリスクを取って予定利率を上げられる外貨建て年金保険にするか、それとも大きなリスクを取って積極的なリターンを期待する投資型の変額年金保険にするかは、その人の資金状態に余裕があるかどうかで決定してよいように思います。

資金を老後の年金として固定化して長期的に使えない状態にするので、働き盛りで子供がいたり、高齢の老親がいる家庭などはリスクを取ってまで年金保険に加入する余裕はないでしょう。

万一のときにお金が必要になることもあるので、どうしても保守的な貯蓄型の確定年金保険になると思います。

反対に、子どもの手が離れて夫婦2人で暮らしいるなど、ある程度ゆとりがある暮らし向きなら、リスクを許容できる外貨建て年金保険などを選択肢に入れてよいと思います。

5-2 受け取りたい年金額と払える保険料のすり合わせ

この記事の目次2のところで、老後にかかる費用の平均額を紹介しました。

あくまで平均額なのでお住まいの地域の事情を考慮していただきたいとは思いますが、定年時の退職金も想定し、公的年金をあわせて月額で+αしたい金額としてどの程度欲しいのかを考えてください。

その金額をたたき台として、保険会社の個人年金保険のシミュレーションを試してみるのもいいでしょう。

ただし、このシミュレーションは受け取る年金額ではなく、払い込む保険料から受け取り年金額(年額)を算出しますのでご注意ください。

このシミュレーションの結果はいがかだったでしょうか。

自分が希望する年金額と保険料のバランスがよくなければ、他の金融商品も含め検討をし直した方がいいでしょう。

また、将来の年金シミュレーションをホームページで公開していない会社でも、保険料と受け取れる年金額の例が載っていますので、これを参考にしたり、見積り金額をサポートセンターに問い合わせてみるのもいいでしょう。

 

5-3 保険会社の選びかた

個人年金保険に加入するということは長期にわたって大事なお金を預けるので、一般的な商品を購入するのとは違い、販売・運営先の保険会社を慎重に選ぶ必要があります。

予定利率や返戻率も個人年金保険の重要な選択のポイントですが、一番影響が大きいのは保険会社の破たんです。

保険会社が経営破たんしても、各生命保険会社が加入する生命保険契約者保護機構という組織が契約者の保護を行いますが、予定利率の大幅な引き下げが行われて結局加入の意味がなかったということになりかねません。

保険会社の経営の健全性を判断する基準は主に3つあり、ソルベンシー・マージン比率や基礎利益、格付け機関による格付けがそれになります。

こういった指標の意味を知り、これらの3つの基準を見て経営状態が危なくないかどうかをある程度知って、保険会社の選定の目安とすることもできます。

それでは、各基準について説明します。

ソルベンシー・マージン比率は保険会社の財務の健全性を表す指標で、原則200%を基準とするのですが、過去に破たんした会社の多くは200%を超えており、この数値は参考にし難いのが実情です。

日本の大手各社は1,000%程度のやそれ以上あるところが多いですので、中堅の保険会社であればそれを下回るところは避けたほうがいいかもしれません。

基礎利益は保険会社の収益力を示す指標で、保険事業の保険料の収入/支払い収支と、契約者から預かった保険料の運用損益の期間収支の状況を示すものです。

この利益が十分に確保されていれば、近年の0金利や0成長下であっても逆ザヤ(運用結果が赤字)にならず、集めた保険料がうまく運用されていると考えられます。

格付け機関による格付けは、各保険会社の財務の健全さや保険金の支払い能力をAからCのアルファベットで表記するものです。

格付けが高い順にAAA⇒AA⇒A⇒BBB⇒BB⇒B⇒CCC⇒CC⇒Cとなります。

格付けがBBB以上の会社が望ましいとされていますが、格付けを取得していない保険会社もあるので注意してください。

6 個人年金保険料と所得控除

個人年金保険の保険料支払いに際し、税金の控除が受けられますので、他の金融商品の積み立てより有利になります。

個人年金保険のような長期の積み立てを行う場合、利回りもさることながら、それにかかるコストも運用益を左右します。

払い込みした個人年金の保険料は所得から控除されるので、年金保険の運用コストとは直接関わりがありませんが、通常の金融商品を購入した場合は、普通の消費とみなされ課税されてしまいます。

本来課税されるはずだった積み立ての分が税制上優遇されるので、その分有利といえます。

ただし、個人年金保険の契約であればどれでも税金の控除対象になるわけではありません。

6-1 税額控除が受けられる特約とは

個人年金保険料の控除を受けるには、特定の条件を満たし、税額控除が受けられる特約をつけなくてはなりません。

税額控除を受けられる特約は「個人年金保険料税制適格特約」といい、4つの条件を満たせば無料でつけることができます。

4つの条件とは、

  • 年金受取人が契約者または配偶者である
  • 年金受取人が被保険者と同一である
  • 保険料の払込期間が10年以上である(一時払いは含まない)
  • 確定年金か有期年金の場合は、年金受け取り開始日の被保険者が60歳以上で、年金受け取り期間が10年以上である

これらをまとめると、契約者(保険料を払い込む人)は本人もしくは夫婦である必要があり、年金の積み立て期間が10年以上、年金受給を60歳以上で10年以上にわたって被保険者(保障の対象者)本人が年金を受け取れる個人年金保険に加入する、ということです。

個人年金保険のなかには、5年間年金が受け取れる確定年金や10年以下の払込期間で年金が受け取れる商品もあるので、特に定年間近で契約する場合は注意しましょう。

また、配偶者の保険料を代わって支払う契約にした場合、配偶者が受け取る年金は贈与税の対象となりますので、税優遇による実利を得たいなら契約者=被保険者(=年金受取人)にしたほうがいいでしょう。

 

6-2 個人年金保険料税制適格特約の注意点

「個人年金保険料税制適格特約」は、この特約は一度付加すると加入後10年以内は解除できないので注意が必要です。

つまり、保険料の支払い期間中に何らかの事情によって保険料の支払いができない事態におちいると、契約自体を解約する羽目になります。

個人年金保険の中途解約は元本割れが起こるのがほぼ確実なので、個人年金保険の保険料は契約者が余裕を持って支払える範囲で設定すべきです。

この特約は一般の生命保険とは別枠の控除枠を設けるものなので、学資保険や収入保障保険に加入してない中高年層であれば、あえて特約の付加をしないプランを選ぶという方法もあります。

なお、その場合は一般の生命保険の控除枠に個人年金保険の保険料を入れることができます。

6-3 税額控除を受ける方法

では、「個人年金保険料税制適格特約」による税額控除には手続きが必要です。

手続き方法はサラリーマンかそれ以外の職業かによって違います。

サラリーマンの場合は年末調整をするときに会社から渡される「保険料控除申告書」を記入し、保険会社から送付される「生命保険料控除証明書」とともに提出します。

自営業者のようなサラリーマン以外の職業では、確定申告による手続きとなります。

申告書に生命保険料控除の欄がありますので、そこに金額を記入し「生命保険料控除証明書」とともに提出してください。

この手続きを確実にすることで、実質的に保険料の割り戻しもしくは利率のアップが望めますので、忘れずに行いましょう。

 

7 個人年金保険の注意点

個人年金保険は加入時や年金受け取り時、長期の契約による各種のリスクなど、いくつか注意する点があります。

個人年金保険は契約者にとっては貯蓄型の積み立て商品という面が強いですが、死亡時の保障も主要な機能として持っている生命保険です。

そのため、持病や既往歴を持っている方は個人年金保険に加入できるか気にしている方もいるでしょう。

また、長期間の契約という面から、生命保険の存続が危機に瀕したり、経済環境の変化による保障内容が劣化することもあり得ます。

ここではこういった個人年金保険の気になる点について説明しています。

7-1 個人年金保険と告知

個人年金保険は通常の生命保険に加入するときのような、被保険者の健康状況の告知は不要です。

それは、基本的に死亡保障は契約者が積み立てた保険料の範囲で支払いが行われるため、生命保険の1種とうたいつつ、健康状態を問わない貯蓄型の金融商品であるためです。

通常の生命保険は持病や既往歴によっては加入が難しくなりますが、それでも老後に万一のことがあった場合の備えをしておきたいと思う方が多く、告知の不要な個人年金保険に注目される方が多いです。

一般の銀行預金などに比べ、長期に資金が固定されますが、途中解約をしなければ予定利率や税控除などかなり好条件の貯蓄型商品といえます。

ただ、一部の保険料払込免除特約付きの個人年金保険ですと、保険料が免除になる条件はいろいろあるのですが、普通の生命保険に準じた健康状態の正確な告知が必要になってきます。

現在、健康状態が良好だという方はこういった特約をつけてみるのもいいでしょう。

7-2 保険会社が破たんしたら

長期間の個人年金保険を契約期間中に生命保険会社が万一破たんした場合、生命保険契約者保護機構が契約者の保護を行います。

ただし、一般の生命保険は予期せぬケガや病気などで窮地におちいったときのためのセーフティネットという極めて重要な機能を担っています。

こういった人々を生命保険会社の破たんから救うために設けられた機関といってもよく、個人年金保険のような貯蓄性の高い長期の商品は、契約解除にはなりませんが保障金額の減少幅が大きくなります。

また、加入期間が同じ契約であっても、満期までの期間が長いほど減少幅が大きくなります。

個人年金保険の契約は長期で安定した貯蓄をしている感覚に陥りがちですが、一般の銀行金利より高い予定利率を謳っている以上、保険会社に長期投資をしているというリスクをはらんでいることを自覚すべきでしょう。

7-3 経済情勢の変化によるリスク

個人年金保険の最大の特徴は超長期固定金利型の商品ということに尽き、これは今後の経済状況によって利点ともなれば弱点ともなります。

例えば、現在の団塊の世代の個人年金保険なら、契約後の0金利の現代ではバブル時期の高金利を謳歌できる『お宝保険』になったりしますし、現代の0金利世代にとっては今後の日銀の金融緩和政策の終焉による将来の金利上昇リスクに注意すべき商品であるともいえるでしょう。

また、金利だけでなく物価の状況も考慮する必要があります。

昨今のインフレ率はマイナスもしくは0に近く、上昇することはありませんでしたが、アベノミクスや新興国の成長による商品価格の上昇や消費税増税などが日本の物価上昇に大きな影響を及ぼすことが考えられます。

個人年金保険は物価スライド制ではありません。

老後の備えを個人年金保険だけに頼らず、インフレヘッジのために他の投資商品も検討したほうがいいと思われます。

 

8 まとめ

今回、個人年金保険の概要から、老後の費用を算定し個人年金保険をどう選ぶか、気になる税控除や個人年金保険の注意点まで、かなり詳しく説明してきました。

個人年金保険の利点やリスクについても理解していただけたのではないかと思います。

気軽に購入できる一般的な商品と違い、時間や自分と保険会社を取り巻く環境まで含めて考えて契約するのはかなり難しいのですが、この記事を参考にご自分にあった個人年金保険を選んでいただけると幸いです。

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