個人年金は必要?セカンドライフをより良くするポイントとは?

長引く景気低迷で、私たちは漠然とした不安を、セカンドライフに対して抱えています。

特に公的年金制度の存在そのものを訝しむ声や、受給資格、受給額に対する具体的不安も、一向に減る気配をみせません。

そこで今回は、私的年金の雄である個人年金の存在や必要性などを、あらゆる角度から知ることによってもたらされる恩恵を、見てまいりたいと思います。

また、現在年金を受給されている方が見落としがちになっている、確定申告を利用した還付金受給の可能性も、併せて検証してまいります。

きちんとした情報をもとに、堅牢なセカンドライフを迎える準備を始めましょう。

目次

1.公的年金制度
1.1概略
1.2公的年金の支給額目安

2.セカンドライフとは
2.1セカンドライフの実情
2.2セカンドライフに用意すべき金額
2.3セカンドライフへの備え

3.私的個人年金とは
3.1個人年金の概略
3.2個人年金の必要性

4.個人年金の種類
4.1受取期間別
4.2年金形態別
4.3保険料払込別

5.個人年金のデータ解析
5.1個人年金加入率
5.2加入している個人年金の種類
5.3個人年金保険料の相場
5.4個人年金の受取開始年齢
5.5個人年金の受取期間

6.個人年金契約での節税
6.1契約者と受取人の関係性
6.2所得税と住民税の控除限度額
6.3個人年金保険料控除の手続き

7.受け取っている個人年金に掛かる税金
7.1契約者と受取人の関係性
7.2贈与税の計算と税率
7.3所得税の速算表

8.受取個人年金を確定申告で還付
8.1個人年金の雑所得計算式
8.2年金受取開始後に被保険者死亡の場合
8.3年金受取開始前に被保険者死亡の場合
8.4申告書の記入方法

9.まとめ

1.公的年金制度

公的年金は相互扶助の理念に基づいた、現役世代が老齢世代を支えて行くシステムとして、私たちにはとても身近な存在です。

決して少なくはない金額が給料などから天引きされたり、年金機構から送付される振込用紙などによって支払を行っています。

そこには「いつか受け取れる」と言う大前提があり、具体的な受給金額や受給開始年齢を、アバウトに捉えている方も、少なくはないでしょう。

そこで、まずは「公的年金制度」を押さえておきましょう。

 

1.1概略

20歳~60歳までの日本に住所を置く全ての方に、国民年金への加入が義務付けられています。

「??私は厚生年金だけど??」と疑問を感じる方もいらっしゃることでしょう。

実は公的年金制度は、下記のように3階建てになっているシステムです。

 

 

まず1階部分に国民年金の存在があり、その上の2階部分に企業勤務者などが加入している厚生年金や、公務員が加入している共済年金の上乗せがなされており、3階部分に各種厚生年金基金や適格退職年金、確定給付企業年金などがおかれています。

 

制度 概略
国民年金 日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての人
厚生年金 厚生年金保険の適用を受ける会社に勤務する全ての人
共済年金 公務員・私立学校教職員など

 

下記の画像をご覧いただくと、「あ!確かに私のもこれだ!」と思われることでしょう。

 

 

 

この公的年金制度により、私たちは下記のように、その状況に応じて、各種年金の受給が可能となっています。

 

さてそんな中、公的年金で私たちが最も気になるのが、老後に受け取れる老齢年金ではないでしょうか。

そんな老齢年金ですが、下記3種類があり、それぞれ支給額や条件などが異なります。

老齢基礎年金 国民年金加入者
老齢厚生年金 国民年金+厚生年金加入者
退職共済年金 公務員などの共済年金加入者

また、受給に関しては、それぞれに下記を満たしている必要があります。

老齢基礎年金 保険料納付期間+保険料免除期間≧25年かつ65歳以上(例外あり)
老齢厚生年金 厚生年金保険期間が1カ月以上(65歳未満は1年以上の被保険者期間が必要)
退職共済年金 1年以上の組合員期間があること
組合員期間+国民年金期間+厚生年金期間≧25年

 

またその受給額は、下記のような様々な事由により、随時見直しがなされます。

物価の変動
給料の変動
現役世代の人口数
公的年金加入者の増減

 

しかしながら不定期に制度の改定がなされていますので、まずは現行の受給開始年齢早見表から見てまいりましょう。

 

 

ご覧いただくとお分かりのように、当初は60歳から受給可能であったものが、現在では年齢によっても異なりますが、65歳からへと受給開始年齢が上昇しています。

このような年齢の引き上げが今後も続くのではないかと言う予想により、私たちは現行の公的年金制度に不安を感じずにはいられません。

下記は、支給開始年齢を帰属年金ごとに、まとめたものです。

老齢基礎年金 原則65歳だが、減額年金であれば60歳からの繰上受給可*1

66~70歳までの公方年齢から増額された年金の繰下げ受給可*2

老齢厚生年金 原則60歳で厚生年金被保険者期間が1カ月以上

65歳未満は厚生年金被保険者期間が1年以上

退職共済年金 65歳

 

国民年金加入部分の老齢基礎年金は、できるだけ受取開始年齢を引き上げるため、年金受給額に幅を持たせると同時に、受給開始年齢が任意で選択できるように、設定されています。

実際の受給年金額は下記のような率が設けられており、受給開始年齢を早めに設定すると減額され、遅めに設定すると増額されるようになっています。

しかしながら、一体いくつまで自身が健康で寿命を全うできるかなどと言うことは誰にも分かるはずもなく、減額されてもよいから確実に年金を受給したいと考える方は、決して少なくないのが現状です。

*1繰上げ請求と減額率

請求時年齢 減額率
60際 42.0%
61歳 35.0%
62歳 28.0%
63歳 20.05
64歳 11.0%

 

*2繰下げ請求と増額率

請求時年齢 増額率
66歳(1年を超え2年に達するまで) 112%
67歳(2年を超え3年に達するまで) 126%
68歳(3年を超え4年に達するまで) 143%
69歳(4年を超え5年に達するまで) 164%
70歳(5年を超えるまで) 188%

 

 

1.2公的年金の支給額目安

次にライフプランニングには欠かせない、実際の具体的な年金額を見てまいりましょう。

年金額は先ほどもお伝えしたように、下記のような経済的背景によって、随時改訂がさなれますので、あくまでも目安として考えておく方が無難です。

物価の変動
給料の変動
現役世代の人口数
公的年金加入者の増減

 

下記は実際に受け取れるであろう、現時点での年金額に関するデータです。

それぞれの世帯によって受け取れる年金の種類や、金額が異なります。

年金の世帯としての受給額
夫婦の場合
夫婦ともども会社勤め 約28万8千円
(男性18万円+女性10万8千円)
男性:会社勤め

女性:会社勤めでない

約23万円
(男性18万円+女性5万円)
男性:会社勤めでない

女性:会社勤め

約15万8千円
(男性5万円+女性10万8千円)
夫婦共々会社勤めでない 約10万円
(男性5万円+女性5万円)
独身の場合
男性:会社勤めしてきた人 約18万円
男性:会社勤めでない人 約5万円
女性:会社勤めしてきた人 約10万円8千円
女性:会社勤めでない人 約5万円

 

また、年金受給額の決定はそれまでの加入(払込)実績によっても、変動します。

自身の加入実績は、年金機構から「ねんきん定期便」というお知らせが届きますので、そちらを確認しましょう。

 

 

 

また、国民年金では平成27年10月から平成30年9月までの3年間に限り、支払損じた保険料を過去5年分まで納めることができる救済措置としての後納制度が、設けられています。

やむを得ない事情で時効を経過してしまった保険料期間のある方は、この後納制度を利用すると、受給年金額が増額となるケースもあります。

どうしてもこの手のお知らせは難解な傾向にあり、おざなりに見てしまうこともあるかと思いますが、大切なことなのでしっかりと確認をしておきましょう。

 

2.セカンドライフとは

さて、前章でご自身が受け取れる年金額のおおよそを把握できたところで、セカンドライフについて、考察してまいりましょう。

セカンドライフと言うと漠然としていますが、退職後などおおむね60歳以降を指しています。

先進医療の進化などで、私たち日本人は平均寿命だけでなく、健康寿命も伸びを見せており、若々しいシニアをたくさん見かけるようになりました。

そう言った意味では、従来の「老後」の概念は、大きく変化してきたわけです。

それでは次章にて、そんな元気なセカンドライフを送るシニアの皆さんの、様々なデータを見てまいりましょう。

 

 

2.1セカンドライフの実情

それまで頑張って働き、家計を支えてきた一家の大黒柱や配偶者の方々にとってのセカンドライフは、住宅ローンの完済のめどが立ち、子供も無事に巣立ち、これからの自由時間を謳歌しようと考えるステージでもあります。

 

 

上記のように、余暇を利用してチャレンジしてみたい趣味や、やりたいことに思いを巡らせ、胸躍らせることだと思いますが、あくまでもそれらを実現するには、元手が必要となります。

そこで次章では、そんなセカンドライフを経済的側面から、見てまいりましょう。

 

 

2.2セカンドライフに用意すべき金額

それでは一般的なセカンドライフの生活費と、ゆとり費用を見てまいりましょう。

 

 

それまで月々確保できていた収入は、当然退職と共に減滅します。

しかしながら生活は続くので、上記のような生活費を、公的年金や預貯金などから捻出する必要が出てきます。

それではこの数値を具体的な金額に、置き換えてみましょう。

 

必要最低限の生活費22万円+ゆとり生活費13.4万円=月額生活費35.4万円

月額生活費35.4万円×12カ月=年額生活費424.8万円

下記データによる平均寿命を80歳と設定した場合の、セカンドライフ年数20年×年額生活費424.8万円=セカンドライフ生活費総額8,496万円

実に、多額の資金がセカンドライフに必要であることは明白です。

 

 

しかしながら今一度、世帯としての年金受給額を思い出して下さい。

最高額で28.8万円の受給額では、到底前述の「必要最低限の生活費22万円+ゆとり生活費13.4万円=月額生活費35.4万円」には及ばず、実に月額6.6万円の不足が生じるのです。

 

年金の世帯としての受給額
夫婦の場合
夫婦ともども会社勤め 約28万8千円
(男性18万円+女性10万8千円)
男性:会社勤め

女性:会社勤めでない

約23万円
(男性18万円+女性5万円)
男性:会社勤めでない

女性:会社勤め

約15万8千円
(男性5万円+女性10万8千円)
夫婦共々会社勤めでない 約10万円
(男性5万円+女性5万円)
独身の場合
男性:会社勤めしてきた人 約18万円
男性:会社勤めでない人 約5万円
女性:会社勤めしてきた人 約10万円8千円
女性:会社勤めでない人 約5万円

2.3セカンドライフへの備え

セカンドライフの経済的実情が非常に厳しいことが、前章で明確になりました。

 

 

では、一体どのように経済面のバックアップを行っていけば、良いのでしょうか。

私たちのセカンドライフへの備えとしてのイメージは、下記のようなものになるかと思います。

銀行/証券会社などの金融商品活用による預貯金
公的年金制度の活用
保険商品などの私的年金

 

前述の6.6万円の赤字分を補てんするためには、リタイヤまでの現役期間で、実に最低でも1,584万円の確保が必要となります。

実際の生活を送りながらの貯蓄は、決して簡単なものではありません。

特に景気低迷による低金利時代を迎えている現代では、銀行などの金融商品には大きな増額が、見込めません。

また、現役時代は何かと物入りで、人生の中で最も経費が掛かる年代でもある為、家計費から預貯金に回せる額には、かなりの制約が伴います。

そこで次章にて、新たに取り入れるべきライフプランニングツールとしての、民間の生命保険会社の保険商品にスポットを当ててまいりましょう。

 

3.私的個人年金とは

「個人年金って、老後前後に考える商品でしょ?」と思われる方も、少なくはないでしょう。

しかし前章でもお伝えしたように、充実したセカンドライフを送る上で、その準備期間は長ければ長いほど良いわけです。

そこで着目したいのが、公的年金制度に近しいスタイルを持っている、個人年金保険です。

そこで次章では、個人年金に関するデータを見てまいりましょう。

 

3.1個人年金の概略

個人年金保険とは、冒頭で見ていただいた、公的年金の不足分を補てんする目的を持っています。

契約時に任意で設定した年金受取開始年齢から、10年や15年などと言ったやはり任意の期間中に、毎月の給与さながらに年金が受け取れる生命保険です。

 

 

保険料払込期間中に被保険者が死亡した場合には、それまで払い込んだ保険料相当額の死亡保険金が受け取れるようになっているので、いずれ何がしかの保険金が受け取れるというわけです。

 

3.2個人年金の必要性

個人年金は3階建ての上に位置する、任意加入の私的保障商品です。

 

実際には、多くの方が下記のように、セカンドライフや公的年金額に対して、大きな不安を抱えています。

 

 

 

それぞれの加入先や、保険料納付実績によって受け取れる年金額はことなりますが、3階建て迄では不足しがちなセカンドライフの生活費を、しっかりと支えてくれるプランニングツールとして個人年金保険は、下記のように多くの方の注目を集めています。

 

 

個人年金は、銀行金利と比較すると非常に優遇された利率で年金受給がなされる上、毎月支給されるので、退職後の収入面の不安が軽減できます。

預貯金でのバックアップが厳しい方ほど、有効活用すべきツールであると言えるでしょう。

 

4.個人年金の種類

一口に個人年金と言っても、様々なバリエーションが用意されています。

そこでここからは、種別ごとの個人年金商品を見てまいりましょう。

 

4.1受取期間別

年金の受取期間によって、個人年金は下記のような種類が存在します。

 

 

保障期間付終身年金 被保険者が生存中は年金が受け取れる
年金支払い開始日から一定の保障期間を設定、保障期間経過後は終身年金となる
夫婦年金 夫婦いずれかが生存していれば、年金が受け取れる
確定年金 被保険者の生死に関わらず、契約時に定めた一定期間に(10年/20年など)年金が受け取れる
年金受給期間に被保険者が死亡した場合、契約残期間に相当する年金または一時金が受け取れる
有期年金 契約時に定めた一定期間(10年/20年など)、被保険者が存命してる場合のみ年金が受け取れ、死亡と同時に年金の支給はなくなる
保障期間付有期年金 保障期間中であれば被保険者の生死にかかわりなく、年金が受け取れる
その後契約時に定めた一定の期間中、被保険者が存命している間中年金を受け取れる
保証期間中に被保険者死亡の場合は、残期間相当の年金または一時金を遺族が受け取れる

 

4.2年金形態別

個人年金の形態によっては、下記のような種類が存在します。

 

 

定額型 受取年金額が全期間一定
逓増型 受取年金額が毎年あるいは数年ごとに一定額ずつ増える
前厚型 受取年金額が年金受取開始から一定期間(5年など)手厚い

4.3保険料払込別

保険料払込の形式によって、個人年金には下記のような種類が存在します。

 

 

積立型 年金原資となる保険料を、一定期間または一定年齢まで払い込んでいく
一時払型 年金原資となる保険料を、契約時に一時に払い込む

5.個人年金のデータ解析

前章までで、個人年金保険の必要性や有意性がお分かりいただけたところで、

「では、一体どの程度の個人年金保険に加入すれば良いの?」

と言う疑問がわいてくることだと思います。

そこでこの章では、加入状況に関して解析してまいりましょう。

5.1個人年金加入率

下記データをご覧いただくとお分かりのように、働き盛りの青年期での個人年金への加入率は、非常に低い傾向にあります。

 

 

これは、住宅ローンや学資など、人生の中で最も必要経費が多額な期間であり、家計から捻出できる生命保険料には、おのずと制限があるのも一因となっています。

また、この期間の万が一の保障としては、死亡時にある程度まとまった保険金が受け取れる、保険料の割安な掛捨て型の定期保険などに人気が集まっていることも、挙げられます。

一方、壮年期の入り口である40歳代になってくると、必要経費額が減少してくる傾向にある上、セカンドライフがより身近になってくるので、個人年金への加入検討が増加します。

 

 

もちろん、セカンドライフへの備えを開始することに、遅すぎるということはありません。

しかしながら、より若い世代で加入することで得られる有用性も、無視はできません。

個人年金は保険料払込期間の長さが将来受け取れる年金額に反映されるので、青年期からライフプランの一ツールとして、検討材料に入れておきましょう。

5.2加入している個人年金の種類

みなさんどのような個人年金に加入しているのか、気になるところだと思います。

そこで下記のデータをご覧ください。

生命保険会社以外の個人年金の利用もみられますが、契約時に将来の年金原資が確定する、定額個人年金が圧倒的人気を誇ります。

これはハイリスクを避け、確実性を求める傾向を如実に示しており、安定性が買われている証拠でもあります。

 

 

5.3個人年金保険料の相場

次に下記は、1世帯が年間に払込んでいる保険料のデータです。

 

 

月額1万円~1.5万円が、最も多いのが見て取れます。

まずは自身の家計を洗い出し、一体いくらまでなら保険料として捻出できるのかを、把握しましょう。

個人年金保険1種類のみを契約される方は少なく、他に定期保険や終身保険などの何がしかの保険商品を契約している場合が多いので、個人年金保険料を高額に設定する際には注意が必要です。

生命保険商品全般に共通して言えることですが、契約時に定める一定期間経過前に解約をすると、元本割れの危険性が出てきます。

あくまでも期間満了まで保険料を払い続けるだけの、経済的体力の見極めが肝要です。

 

 

5.4個人年金の受取開始年齢

次は個人年金の受取開始年齢です。

一体みなさん、何歳からの受取にしていらしゃるのでしょうか。

最も多い分布を見せるのが、やはり定年退職年齢である60歳です。

 

実際に第1章でお伝えしたように、公的年金受取開始年齢が65歳に引き上げられたことにより、退職から公的年金受給まで、5年のブランクが発生してしまうのを見越した、防御措置だと言えるでしょう。

近年は、早期退職制度などの導入が各企業でも見られるので、自身の退職年齢とブランク期間の経済的体力を鑑みて、年金受取開始年齢を設定しましょう。

 

5.5個人年金の受取期間

圧倒的人気を誇るのが受取期間10年で、ついで終身となっているのが、お分かりいただけるかと思います。

 

 

 

健康寿命の延びを考えると、10年では心もとないと思われる方が、終身を選択している傾向があります。

自身のセカンドライフプランに併せた期間を、慎重に検討しましょう。

 

6.個人年金契約での節税

さて、ここまでで個人年金の加入に関するみなさんの傾向を知ることが出来たので、より個人年金が身近に感じられるようになったかと思います。

そこで折角なら、払い込んでいる保険料で節税対策を、講じてみましょう。

 

 

個人年金の保険料は、実は一定の条件をクリアすれば、控除対象となることを、ご存知でしょうか。

折角私たち契約者に有利な制度があるのであれば、これを利用しない手はありません。

そこでこの章では、個人年金保険料控除について見てまいりましょう。

6.1契約者と受取人の関係性

個人年金の契約は、下記の要件を満たしていれば、年末調整や確定申告の際に、一般的に行われる生命保険料控除とは別に、個人年金保険料控除の対象とされています。

 

個人年金保険料控除の対象契約

年金受取人が契約者または配偶者
年金受取人が被保険者と同一
保険料の払込期間が10年以上(一時払いは非対象)
確定年金/有期年金の場合、年金受け取り開始日の被保険者が60才以上で、
年金受け取り期間が10年以上

*「個人年金保険料税制適格特約」を付加していない場合や、変額個人年金保険は一般生命保険料控除の対象

*災害入院特約・疾病入院特約など特約を付加している場合はその保障内容ごとに「一般生命保険料控除」または「介護医療保険料控除」に分類

 

ここで注意したいのが、付加している特約によっては、控除対象外となる保険商品もあるので、契約先保険会社に確認をしておきましょう。

 

 

6.2所得税と住民税の控除限度額

それでは次に、実際の保険料控除額などを、見てまいりましょう。

生命保険料の控除に関しては下記のように、平成24年1月1日以前の契約か、以後の契約かによって、その限度額が異なります。

 

 

その算出方法は、次のようになります。

新制度 旧制度
所得税 住民税 所得税 住民税
区分 年間払込保険料額 控除される金額 年間払込保険料額 控除される金額 区分 年間払込保険料額 控除される金額 年間払込保険料額 控除される金額
個人年金
保険料
20,000円以下 払込保険料全額 12,000円以下 払込保険料全額
個人年金
保険料
25,000円以下 払込保険料全額 15,000円以下 払込保険料全額
20,000円超
40,000円以下
(払込保険料×1/2)
+10,000円
12,000円超
32,000円以下
(払込保険料×1/2)
+6,000円
25,000円超
50,000円以下
(払込保険料×1/2)
+12,500円
15,000円超
40,000円以下
(払込保険料×1/2)
+7,500円
40,000円超
80,000円以下
(払込保険料×1/4)
+20,000円
32,000円超
56,000円以下
(払込保険料×1/4)
+14,000円
50,000円超
100,000円以下
(払込保険料×1/4)
+25,000円
40,000円超
70,000円以下
(払込保険料×1/4)
+17,500円
80,000円超 一律40,000円 56,000円超 一律28,000円 100,000円超 一律50,000円 70,000円超 一律35,000円

それではより分かりやすくするため、新制度での上限を例にとり、具体的な数値でみてまいりましょう。

保険料控除の種類
所得控除の限度額
対象となる保険料
所得税 住民税
個人年金保険料の控除 4万円 2.8万円 個人年金保険料税制適格特約を付加した個人年金保険に係る保険料
一般生命保険料の控除 4万円 2.8万円 生存または死亡に起因して支払う保険金・その他給付金に係る保険料
介護医療保険料の控除 4万円 2.8万円 入院・通院等にともなう給付部分に係る保険料

 

年間で8万円以上の個人年金保険料を支払うとした場合、
最大で4万円+2.8万円=6.8万円(新制度)の所得控除

が可能となります。

 

これは具体的に計算すると、月額保険料と考えた場合、実に900円もの値引きとなります。

 

 

「ええええ、たかが900円?」と考えるのは早計です。

実際月額900円あれば、保険料の割安な定期保険への加入が可能になりますし、一生涯保障の終身保険の保険料の足しにもなり得ます。

折角の制度だからこそ、きちんと把握して、年末調整や確定申告に臨みましょう。

 

 

ネット隆盛の昨今、生命保険料控除を算出するサイトも多数存在しますので、ぜひシミュレーションをして、その有用性を実際に確認されることをお勧めいたします。

生命保険料控除額計算サポートツール

 

6.3個人年金保険料控除の手続き

それでは、実際の手続き方法を見てまいりましょう。

 

個人年金保険料の控除手続きは、次のようになります。

申請書 添付書類 提出先 注意点
企業勤務者 給与所得者の保険料控除等申告書 保険料控除証明 勤務先企業 年間給与総収入額が2,000万円超過の場合は、要確定申告
自営業者 確定申告書 保険料控除証明 税務署

 

年末調整時期や確定申告時期が近づく年末に入ると、契約した分の保険料控除証明書がお手元に届くかと思います。

それをもって、年末調整や確定申告を忘れずに行いましょう。

 

7.受取っている個人年金に掛かる税金

さて、ここからは実際にシニア世代に突入し、個人年金を受け取られていらっしゃる方にお伝えしたい、税金に関するお話です。

折角受け取れるようになった年金に課税がなされるのは、なんとも残念なことになってしまいます。

そこでこの章では、個人年金の節税対策について、見てまいりましょう。

 

 

7.1契約者と受取人の関係性

生命保険全般に言えることですが、受取人と契約者の関係性で、課税内容が変わってきます。

契約時には保険料や年金額だけに捕らわれず、税制を理解した上での検討を行う必要があります。

契約者 被保険者 年金受取人 税金の種類
所得税:毎年受け取る年金に対して所得税が課税される
贈与税:年金受取開始時点での年金に対する権利評価額に贈与税が課税

毎年受け取る年季に対しても所得税が課税

 

7.2贈与税の計算と税率

それではここで、まずは贈与税の計算と税率を見てまいりましょう。

基礎控除後の課税価格 税率 控除額
200万円以下 10%
300万円以下 15% 10万円
400万円以下 20% 25万円
600万円以下 30% 65万円
1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超 50% 225万円

 

7.3所得税の速算表

所得税に関しては、下記の速算表を参考になさってください。

課税される所得金額 税率 控除額
195万円以下 5% 0円
195万円を超え 330万円以下 10% 97,500円
330万円を超え 695万円以下 20% 427,500円
695万円を超え 900万円以下 23% 636,000円
900万円を超え 1,800万円以下 33% 1,536,000円
1,800万円超 40% 2,796,500円

 

以上のように、契約者と受取人の関係性によって、課税がことなります。

また、通常所得税と贈与税とでは、所得税の方が低い税率となりますので、個人年金保険契約の際には十分に内容を精査しましょう。

 

 

8.受取個人年金を確定申告で還付

さて前章までで、受け取っている個人年金が課税対象であることが、ご理解いただけたかと思います。

実際、下記にあります年金を受け取っている方は、基本的に確定申告が必要となっています。

 

年金の種類 対象となる年金
公的年金 老齢基礎年金
老齢厚生年金
私的年金(個人年金) 民間の生命保険会社との契約で受け取る個人年金など

 

 

なかでも個人年金で得た額は、「雑所得」として区分され、年金収入に応じた所定の計算式により「所得金額」が、算出されます。

どのような年金であれ受給年金額が一定以上の場合、実は受給の際にあらかじめ、所得税が源泉徴収されています。

それら年金受給に関するデータを確定申告書に反映させることで、還付が受けられる可能性が出てまいります。

「確定申告ってわかりにくいし面倒」

と持っていらっしゃる方も多いことだと思いますが、いたってシンプルです。

そこでこの章で見る確定申告の方法で、還付金受給の可能性を高めましょう。

 

8.1受取個人年金の雑所得計算式

ここで、契約者と年金受取人が同一の場合を例に取り、雑所得などの税金をシミュレーションしてみましょう。

「まさか、高額な税金が徴収されてしまうの?」

いえいえ、そのご心配は無用です。

「年金受取金額=所得額」となるわけではありませんので、高額な個人年金保険への加入でなければ、多額の税金徴収にはつながりません。

 

まずはじめに、必要経費と認められる部分からまいりましょう。

契約例1 個人年金保険(10年確定年金)<定額制>

 

契約者
被保険者
年金受取人
年金受取開始年齢 60歳
年金受取期間 10年間
年金年額 86万円
保険料払込合計額 720万円

 

 

※年金の総支給見込み額は、下記のように年金の種類によって異なります。

終身年金 年金年額×余命年数
確定年金 年金年額×(余命年数と保証期間年数のいずれか長い年数)
保証期間付終身年金 年金年額×(余命年数と保証期間年数のいずれか長い年数)
有期年金の場合 年金年額×(支給期間と余命年数のいずれか短い年数)

 

ここまでで、年金年額から保険料払込の必要経費が求められました。

そこで次は、雑所得の計算に入りましょう。

 

雑所得計算式

下記の計算例を見ていただくとお分かりのように、こちらもいたってシンプルですので、ご安心ください。

その年に受け取った年金額1年分-必要経費として認められる保険料=雑所得14万円

 

 

ちなみに、下記も念頭に置いて置いておいてください。

 

雑所得≦25万円→源泉徴収なし

年金以外の所得なしもしくは基礎控除範囲内≦38万円→所得税なし

雑所得≧25万円→保険会社が雑所得10.21%を所得税として、あらかじめ源泉徴収

 

なお、源泉徴収額=確定税額とは限らないので、雑所得とその他の収入がある場合はそれらと合算して確定申告を行い、可不足分を清算しましょう。

その状況如何では、還付金の可能性が望めます。

 

それでは最後に、納付税額を見てまいりましょう。

納付税額はその年の所得と合算して、計算を行います。

 

 

これらのデータをもって確定申告を行います。

なお、確定申告への記入方法や様式などは、第8章でご説明してまいりたいと思います。

さて、ここまでは年金受取に関するお話でしたが、年金受給前に被保険者が死亡してしまったり、受取途中で死亡してしまう場合などが想定されます。

そこでこれらのケースを、次章にて見てまいりたいと思います。

 

8.2年金受取開始後に被保険者死亡の場合

ここで年金受給中に考えられるシーンとして、被保険者が死亡してしまった場合の課税状況を、見てまいりましょう。

 

契約例1 個人年金保険(確定年金/保障期間付き年金の場合)

契約者
被保険者
年金受取人
一括受取 相続税 被保険者死亡による法定相続人が受け取る未払い年金に対して、相続税が掛かる
年金受取
相続税 年金受取継続人が受け取る年金権利評価額に対し、相続税が掛かる
2年目以降
所得税(雑所得)
2年目以降の受取年金に、所得税(雑所得)が掛かる

 

契約例2 個人年金保険(確定年金/保障期間付き年金の場合)

契約者  –
被保険者
年金受取人
一括受取 所得税(一時所得) 年金受取開始時点での年金の権利評価額が、贈与税の対象となる為、

受取人に対して未払年金の原価に、一時所得である所得税が掛かる

年金受取 2年目以降

所得税(雑所得)

年金受取開始時点での年金の権利評価額が贈与税の対象となる為、

年金受取人に対して2年目以降、毎年受給する年金に雑所得である所得税が掛かる

 

契約例3 個人年金保険(確定年金/保障期間付き年金の場合)

契約者  –
被保険者
年金受取人
一括受取 所得税(一時所得) 年金受取人が受け取る未払い年金の原価に対して、一時所得である雑所得が掛かる
年金受取 所得税(雑所得) 年金受取人に対して、毎年受け取る年金に雑所得である所得税がかかる

契約例4 個人年金保険(確定年金/保障期間付き年金の場合)

契約者
被保険者
年金受取人
一括受取 契約者が一括受取をする場合 未払い金の原価に対して、一時所得である所得税が掛かる
契約者以外が一括受取をする場合 未払い年金の原価に対して、贈与税がかかる
年金受取 契約者が年金継続受取人の場合 毎年受け取る年金に雑所得である所得税が掛かる
契約者以外が年金受取をする場合 年金権利評価額に対して、贈与税が掛かる
2年目以降の毎年受け取る年金に、雑所得である所得税が掛かる

8.3年金受取開始前に被保険者死亡の場合

契約内容により異なりますが、年金受取開始前に被保険者が死亡した場合には、一時金として死亡保険金を受け取ることが出来ます。

その際の税金を見てまいりましょう。

2013/01/01~2037/12/31 所得税+復興特別所得税(所得税額×2.1%)
所得税の課税対象となった場合は、住民税の課税対象となる

 

なお、ここまでお話をしてまいりました税制は、逐次改訂がなされますので、税務署などへご相談されるのが望ましいでしょう。

 

8.4申告書の記入方法

前章までで、自身の受け取っている個人年金に対する課税種類が、お分かりいただけたかと思います。

ここでいよいよ確定申告に進みましょう。

下記は、国税庁から配信されている、実際の確定申告書の書き方などのリンクへと、移動するようにしてあります。

申告書の様式や手引きはクリックにて閲覧や印刷が可能となってますので、ぜひ活用してください。

 

所得税及び復興特別所得税の確定申告書

申告書A様式(別ウィンドウで開きます。) 手引き(別ウィンドウで開きます。)
申告書B様式(別ウィンドウで開きます。) 手引き(別ウィンドウで開きます。)
申告書第三表(別ウィンドウで開きます。) 申告のしかた(株式などの譲渡所得等)
申告のしかた(土地建物等の譲渡所得)
申告書第四表(別ウィンドウで開きます。) 手引き(別ウィンドウで開きます。)

贈与税の申告書

申告書 第1表(別ウィンドウで開きます。) 申告のしかた
申告書 第1表の2(別ウィンドウで開きます。)
申告書 第1表の3(別ウィンドウで開きます。)
申告書 第2表(別ウィンドウで開きます。)
相続時精算課税選択届出書(別ウィンドウで開きます。)

 

相続税の申告のしかた(平成28年分用)

一括ダウンロード(PDF/5,845KB)

項目 ページ 容量(KB)
相続税のあらまし 1 PDF/386KB
相続税の申告 2~41 PDF/1,736KB
相続税の納付 42~48 PDF/529KB
相続税の申告書の記載例 等 49~85 PDF/4,898KB
(参考)相続税の申告の際に提出していただく主な書類 79~81 PDF/853KB

 

年金収入がある方の確定申告

動画での解説がなされていますので、ぜひ活用なさってください。

年金収入がある方の確定申告 年金収入のある方が、「確定申告書等作成コーナー」で申告書を作成し、書面で提出する方法をご紹介します。
また、年金所得者の「確定申告不要制度」についても説明しています。
動画を見る

 

 

9.まとめ

いかがでしたでしょうか。

セカンドライフをこれから迎える方には、堅牢なライフプランニングに登用すべきツールとしての、個人年金をご理解いただけたかと思います。

また、すでにセカンドライフをエンジョイされている方には、確定申告の活用で還付金の受取が可能であることが、ご理解いただけたかと思います。

長引く景気低迷、一生涯一企業で収入を得られる保障がない就労状況、正社員雇用の間口の狭さ、生活費は上昇傾向にあるのに、収入の増加が見込めないなど、様々な不安要素が私たちを取り巻いています。

もはや公的年金などを待っているだけでは、自身の生活を豊かにすることは難しいと言わざるを得ないのが、現代社会です。

私たちは自身の人生に対し、個人年金などの生命保険商品などをフルに活用して、より積極的な経済的バックアッププランを展開していく必要があります。

今回の記事が、皆さんの頑強なセカンドライフの礎となっていただければ、こんなに嬉しいことはありません。

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