厚生労働省の定める「先進医療」実績の多い技術内容と、落とし穴!?

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保険会社のCMなどで、「先進医療」という言葉を耳にしたことがありますか?

CMなどで「先進医療」は高額だというイメージを持っている方も多くいらっしゃることでしょう。しかし、本当に「先進医療」を受けるには高額な医療費がかかるのでしょうか?

また、自分や家族が病気やケガをした時、治療を受けるなら最先端の治療が良い!ということは誰もが思うはずです。その万が一の時「先進医療」を受けられるように、保険で備えているという方もいらっしゃると思います。しかし、本当に「先進医療」は最先端の優れた治療なのでしょうか?

「先進医療」については、理解が足らず誤った認識をしている方も多く、注意しなければならないポイントいくつもあるのです。ここでは、そのぼんやり認識していた「先進医療」について、はっきりした認識を持って頂けるような内容となっています。

これを見て頂けている方は、保険加入や見直しを考えていて「先進医療特約」の必要性を考えている、またはご自身やご家族の治療として「先進医療」を受けようと調べている場合が多いのではないでしょうか。ぜひ、この記事を読んで「先進医療」を知ることで、広告などに惑わされない保険選びを、そして傷病治療の予備知識として役立ててください。

目次

1.厚生労働省の認める先進医療とは

1.1.先進医療とは

1.2.費用は全額自己負担

1.3.先進医療の種類

1.4.先進医療の実施医療機関

2.先進医療とその他の療養制度

2.1.先進医療を受けるには

2.2.混合診療

2.3.評価療養と選定療養

2.4.保険外併用療養制度

3.先進医療の実績報告

3.1.実績報告データの推移

3.2.実施件数の多い技術内容とは

3.3.先進医療の技術料

4.白内障治療での先進医療

4.1.白内障の主な治療法

4.2.多焦点眼内レンズとは

4.3.水晶体再建術

5.がん治療での先進医療

5.1.がんの主な治療法

5.2.陽子線治療

5.3.重粒子線治療

5.4.先進医療の対象部位

6.先進医療にまつわる落とし穴

6.1.先進医療は最先端の優れた医療ではない

6.2.先進医療は高額なのか?

6.3.高額療養費制度と先進医療

7.保険の先進医療特約

7.1.先進医療特約とは

7.2.先進医療特約の必要性

7.3.自由診療に備える保険

8.まとめ

 1.厚生労働省の認める先進医療とは

1.1.先進医療とは

「先進医療」とは、厚生労働大臣が定めた高度の医療技術を用いた治療のことで、健康保険給付の対象とすべき治療法であるか否かについては、検討している段階の治療法です。

通常、病院で治療を受ける時は、病院で保険証を提示することで治療費の負担が3割(被保険者よっては1~2割)になります。この健康保険給付の対象である診療を「保険診療」といいます。それに対して「先進医療」は、まだ保険診療の対象ではないため「評価療養」の1つとされています。

1.2.費用は全額自己負担

「先進医療」にかかる費用は、患者が全額自己負担することとなります。また、先進医療は保険診療ではないため、診療報酬が一定ではなく医療の種類や医療機関によって費用が異なります。なお、先進医療以外の通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料等)の費用は、一般の保険診療と同様に扱い、その部分は一部の負担金だけを支払うこととなります。

例)総医療費が100万円、うち「先進医療」にかかる費用が20万円だった場合(70歳未満の一般所得者)

  • 先進医療に係る費用20万円は、患者が全額負担します。
  • 通常の治療と共通する部分(診察、検査、投薬、入院料など)の費用は「保険診療」として扱い、80万円の3割=24万円を患者が負担し、残りの7割は各健康保険制度から給付されます。

1.3.先進医療の種類

厚生労働省が定める「先進医療」は、平成30年6月12日現在92種類です。この「先進医療」は。「第2項先進医療【先進医療A】」と、「第3項先進医療【先進医療B】」に分類されています。また、先日まであったはずの技術が無くなっているということもありますが、これは保険診療への導入が決まり「先進医療」でなくなった場合や、様々な要因により保険診療には適さないと評価され、承認が取り消しされた場合が考えられます。もちろん新たに承認追加される技術もあり、「先進医療」の技術は医療技術の発展ととも日々変動していきます。なお、技術の一覧は厚生労働省ホームページ「先進医療の各技術概要」より確認することができます。

【先進医療A】28種類

先進医療技術とともに使用する医薬品や医療機器等について薬事法上の承認・認証・適用がある場合、または承認等が得られていない検査薬等を使用する技術であっても、人体への影響が極めて低いものは「第2項先進医療【先進医療A】」として位置づけています。

【先進医療B】64種類

一方、薬事法上の承認等が得られていない医薬品や医療機器を使用しても、一定の条件を満たせば保険診療との併用を可能とする技術を「第3項先進医療【先進医療B】」と位置づけています。なお、薬事法上の承認等が得られた医薬品や医療機器を使用する場合でも、安全性や有効性等を検討するために、実施に当たって実施環境や技術の効果等について特に重点的な観察・評価を必要とします。

1.4.先進医療の実施医療機関

「先進医療」は、厚生労働大臣の定める「評価療養」の1つとされており、有効性と安全性を確保するため、医療技術ごとに一定の施設基準が設定されています。その施設基準に該当する医療機関のみで、「先進医療」の技術を実施することが許され、保険診療との併用ができるのです。

【先進医療A 】 28種類の技術を実施できる医療機関は、全国872件(平成30年6月1日現在)、【先進医療B】64種類の技術を実施できる医療機関は、全国658件(平成30年6月1日現在)あり、厚生労働省ホームページ「先進医療を実施している医療機関の一覧」より確認することが出来ます。

 

2.先進医療とその他の療養制度

2.1.先進医療を受けるには

病院にかかる時の手続きは一般の保険診療の場合と同じです。被保険者証(老人医療対象者は健康手帳も)を窓口に提出します。「先進医療」は、一般的な保険診療を受けるなかで、患者が希望し、医師がその必要性と合理性を認めた場合に行われることになります。 つまり、先進医療を受けたくとも、治療法が最善ではないと医師が判断した場合、「先進医療」を受けることは出来ません。

2.2.混合診療

健康保険が適用される保険診療と、適用されない保険外診療の両方を受けることを「混合診療」と言いますが、日本では、原則として「混合診療」が禁止されています。そのため、混合診療になった場合は、保険適用の診療も含めて全ての医療費が全額自己負担となってしまいます。

ただし、厚生労働省が定める「評価療養」と「選定療養」に該当する診療については、例外的に「混合診療」が認められています。

2.3.評価療養と選定療養

「評価療養」と「選定療養」を受けたときは、療養全体にかかる費用のうち基礎的な部分については保険給付がされますが、特別料金部分については全額自己負担をする必要があります。なお、「選定療養」や「評価療養」にあたる費用が発生する時は、医療機関は事前に治療内容や負担金額等を患者に説明し、同意を得なければなりません。

【評価療養】

現時点では保険適用となっていない高度な医療技術や新薬など、将来的に保険適用になることを前提として、保険適用の可否について評価中の療養のことです。

  • 先進医療
  • 医薬品、医療機器、再生医療等製品の治験に係る診療
  • 医薬品医療機器法承認後で保険収載前の医薬品、医療機器、再生医療等製品の使用
  • 薬価基準収載医薬品の適応外使用(用法・用量・効能・効果の一部変更の承認申請がなされたもの)
  • 保険適用医療機器、再生医療等製品の適応外使用(使用目的・効能・効果等の一部変更の承認申請がなされたもの)

【選定療養】

下記の場合は、「選定療養」にあたり、費用は全額自己負担にとなります。予約診療や時間外診療、大病院での初診・再診が健康保険適用外の医療であることを知らない方は多いのではないでしょじか。

  • 特別の療養環境(差額ベッド)
  • 歯科の金合金等
  • 金属床総義歯
  • 予約診療
  • 時間外診療
  • 大病院の初診
  • 小児う蝕の指導管理
  • 大病院の再診
  • 180日以上の入院
  • 制限回数を超える医療行為

2.4.保険外併用療養制度

評価療養と選定療養の「混合診療」の場合、診察・検査・投薬・入院料等の通常の治療と共通する部分の費用は、保険診療と同様に扱われ、負担額は3割(被保険者によっては1割~2割)となります。残りの治療費は、健康保険から「保険外併用療養費」として給付されることとなります。

 

3.先進医療の実績報告

厚生労働省では、平成24年より先進医療会議を定期的に開催しています。先進医療会議では、【先進医療A】、【先進医療B】の評価や取り下げの審議や、年度ごとに先進医療技術の実績報告をしています。平成29年6月30日に、第61回先進医療会議が開催されました。そこでの実績報告をもとに先進医療技術の詳細をご紹介します。

3.1.実績報告データの推移

実績報告から、過去5年の先進医療についてのデータ推移は、以下のようになっています。先進医療の実施医療機関が増加しているとともに、先進医療を受ける患者数も増えています。なお、医療費総額に対する先進医療費の総額も年々増加しており、先進医療にかかる費用は高騰していることが分かります。

参考:厚生労働省、第61回先進医療会議の平成29年度実績報告をもとに作成

3.2.実施件数の多い技術内容とは

実施件数の多い技術トップ10は、下記の通りです。

  • 1位、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術/14,433件
  • 2位前眼部三次元画像解析/11,595件
  • 3位、陽子線治療/2,319件
  • 4位、重粒子線治療/1,558件
  • 5位、Eウイルス感染症迅速診断(リアルタイムPCR法)/255件
  • 6位、歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法/240件
  • 7位、MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法/207件
  • 8位、腹腔鏡下広汎子宮全摘術/185件 ※平成30年4月より先進医療から外れ保険適用となりました。
  • 9位、高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術/180件
  • 10位、切除支援のための気管支鏡下肺マーキング法 (微小肺病変)/154件 ※平成29年11月より先進医療から外れました。

最も実施件数の多い先進医療の技術は、「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」という、白内障の治療に用いる技術です。この「多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術」は、全国555件の医療機関で実施されており、先進医療総額は 83.8億円にも上ります。

以下の「前眼部三次元画像解析」は眼科疾患における検査法、「陽子線治療」「重粒子線治療」は主にがんや腫瘍の摘出のために実施されます。なお、「Eウイルス感染症迅速診断」とは、臓器移植を受けた患者が術後の感染症を検査する技術です。

3.3.先進医療の技術料

先ほどの実施件数の多い技術について、1件当たりの先進医療費用を見てみると、以下の通りです。がんの治療に用いる、「陽子線治療」「重粒子線治療の」技術料が圧倒的に高額であることが分かります。

  • 多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術:581,224円
  • 前眼部三次元画像解析:3,484円
  • 陽子線治療:2,765,086円
  • 重粒子線治療: 3,149,172円
  • Eウイルス感染症迅速診断(リアルタイムPCR法):14,607円
  • 歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法: 65,870円
  • MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法: 110,223円
  • 腹腔鏡下広汎子宮全摘術:719,811円
  • 高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術: 307,008円
  • 切除支援のための気管支鏡下肺マーキング法 (微小肺病変):17,113円

 

4.白内障治療での先進医療

白内障は、目の水晶体という部分が白く濁ってくる病気です。白内障の多くは加齢によるもので、老人性白内障(加齢白内障)ともいわれています。老人性白内障は白内障患者の7割以上を占めますが、他にも先天性や外傷性、アトピー、糖尿病など代謝性の病気、薬剤や放射線による白内障もあります。

4.1.白内障の主な治療法

白内障の治療は、軽度であれば目薬や内服薬を使いますが、完全に治療するには手術をするしかありません。白内障の手術は、濁った水晶体を超音波で砕いて取り除き、代わりに人工の眼内レンズを挿入する手術です。この眼内レンズには、大きく分けて2種類「単焦点レンズ」と「多焦点レンズ」があります。この「単焦点レンズ」は保険診療ですが、「多焦点レンズ」は先進医療の対象となります。

白内障手術を受ける前には、手術が問題なく行えるか、目に合う眼内レンズは何かを選ぶために様々な検査を行います。そして、手術前に医師と相談し、自分のライフスタイルに合った眼内レンズを選択することが大切です。

4.2.多焦点眼内レンズとは

「多焦点眼内レンズ」は「単焦点レンズ」と違い、遠方と近方の両方に焦点を合わせることができます。そのため、この「多焦点眼内レンズ」を挿入することで、近視・遠視・老眼を一度に治療することが可能となり、術後は眼鏡やコンタクトレンズに頼らない生活を送ること出来ます。これに対し、「単焦点レンズ」は、遠方か近方のどちらか一点にしか焦点が合わないため、老眼や乱視は治りません。また、今まで老眼でなかった方も、手術後は老眼鏡が必要となります。

先進医療となる、【多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術】ですが、眼内レンズは半永久的に機能します。もし、将来的に性能の良い眼内レンズが登場したとして交換することは可能ですが、目に負担がかかるため医学的には勧められません。その場合は、「アドオン・レンズ」という保険外治療もあります。これは、過去に手術で挿入した眼内レンズの上に、新たなレンズを追加するという方法で、「アドオン・レンズ」にも単焦点と多焦点があるため、見え方に合わせて選択することができます。

4.3.水晶体再建術

平成29年6月30日の厚生労働省の実績報告において、【多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術】の平均入院日数は1.2日となっています。

水晶体再建術は、白内障は濁った水晶体を超音波で砕いて取り出し、人工レンズ(眼内レンズ)を移植するという方法で手術を行うことが一般的で、所要時間は10分程度です。しかし、白内障が進行して水晶体の核が固くなっている場合は、核を丸ごと取り出す手術となるため、1時間程度かかることもあります。どちらの方法においても、手術後は30分以上絶対安静となりますが、必ずしも入院する必要はなく日帰り手術で実施している医療機関が多いのです。手術後、自宅までの帰り道で、家族などの助けを受けられない方や、高齢の方であれば入院での手術をお勧めします。

 

5.がん治療での先進医療

がんとは、細胞の遺伝子異常によって起こる病気です。

がんの罹患数が多い部位は、1位:肺がん、2位:大腸がん、3位:胃がん(最新がん統計より、2016年の罹患数)となっています。がんは、部位や進行具合によって治療法が異なります。しかし、罹患数が多い肺がんにおいて、先進医療は有効な治療法であるといえます。

5.1.がんの主な治療法

がんと診断されると、標準治療と呼ばれる、【手術】【化学療法(抗がん剤治療)】【放射線治療】の3つの治療をすることになります。

【手術】

メスなどを使って、がんを切除する治療法です。がんの取り残しがないよう、がんの周囲にある正常な組織やリンパ節も含めて切除する必要があるため、体に大きな負担がかかります。しかし、早期に発見されたがんに対しては、効果的な治療法といえます。例えば、転移のない早期胃がんであれば、手術により5年生存率が9割近いというデータもあります。また、最近では内視鏡や腹腔鏡を使った、体への負担が少ない手術も開発されており、入院日数少なくなるという成果も得られています。

【科学療法(抗がん剤治療)】

がんは、手術で切除しても、その後再発することも少なくありません。取り残していたがん細胞が増えてしまったり、血液やリンパから離れた臓器に転移することがあります。そこで、抗がん剤を投与し、がん細胞を攻撃する化学療法が行われます。また、手術の対象とならない進行がんでは、化学療法のみを行う場合もあります。抗がん剤は、副作用を最小限に抑えながら最大限の効果が得られるように投与し、最近は、白血球減少・吐き気などの副作用を軽減する「支持療法」が進歩したこともあり、外来で治療を行うこともあるのです。

【放射線治療】

放射線を照射することにより、がん細胞の増殖を抑える治療法です。エックス線やガンマ線、電子線などを体内のがん細胞に照射して、がん組織を破壊します。放射線治療は、手術とは違い体にメスを入れずにがん細胞を破壊するため、体への負担が少なく済みます。主に、体の外から照射する「外部照射」と、放射線を発生する小さな線源を体内に入れて照射する「密封小線源治療」の2つがありますが、体の外からエックス線を照射した場合、体の表面の細胞が最もダメージを受けるため、がん細胞を破壊するだけの十分な放射線を当てることは困難です。

この放射線治療の一種で、がん細胞だけを破壊する「重粒子線治療」と「陽子線治療」が先進医療に当たるのです。

5.2.重粒子線治療

重粒子線治療は放射線治療の一種ですが、保険の効かない先進医療です。※一部保険適用となった部位もあります。

重粒子線治療とは、炭素イオン線という電子線を照射する放射線療法です。これは、一定距離を進んだ後に急激に高いエネルギーを発してそのまま消失するという特徴を持っており、その特徴を利用して表面の正常細胞へのダメージを最小限に抑えながら、がん細胞を破壊する事が出来ます。また、それだけ効果が高い治療なのにた通院での治療が可能であり、午前中に重粒子線治療を受けて午後には出かけるといったこともできるのです。このように、副作用が無いことがことが一番の魅力となります。ただし、重粒子線治療が行える医療機関は、全国5か所(千葉県、兵庫県、群馬県、佐賀県、神奈川県)しかありません。

  • 照射イメージ

5.3.陽子線治療

陽子線治は、水素の原子核である陽子を照射する治療法で、重粒子線治療と大きな差はありません。ただ、重粒子線に比べて陽子線の攻撃力が低いため、照射回数が多くなってしまいます。陽子線治療も先進医療ですが、先進医療費用は重粒子線よりも若干安く、陽子線治療を行う医療機関も全国14か所にあります。

5.4.先進医療の対象部位

「重粒子線治療」や「陽子線治療」は、放射線治療の中では優れた医療技術ではありますが、すべてのがんに対して行えるわけではありません。これは、放射線治療全般に言えることですが、血液やリンパに乗っているがんや、広範囲に転移のあるがん、また胃や大腸などの不規則に動く臓器のがんについては、照射することが出来ません。

【重粒子線治療の対象部位】

  • 肺がん
  • 肝臓がん
  • 肝内胆管がん
  • すい臓がん
  • 直腸がんの骨盤内再発
  • 食道がん
  • 腎臓がん
  • 婦人科腫瘍
  • 転移性腫瘍(肺・肝・リンパ節の少数個転移)
  • 骨軟部がん※2016年4月より保険適用
  • 前立腺がん※2018年4月より保険適用
  • 頭頸部がん※2018年4月より保険適用

重粒子線治療は、がんの罹患数が最も多い肺がんに対して有効ではありますが、「小細胞肺がん」という喫煙が主な原因となるがんに対しては治療を受けることが出来ません。なお、陽子線は上記以外に脳腫瘍に対しても治療することができます。

 

6.先進医療にまつわる落とし穴

「先進医療」という名称から、最先端の優れた医療であると認識をしている方が多くいらっしゃいます。ここまで、白内障やがんの治療について「先進医療」の実施件数が多いことを紹介してきましたが、その病気について、またはそれ以外の傷病についても本当にその治療法が最良であると言えるのでしょうか?

6.1.先進医療は最先端の優れた医療ではない

新しく開発された治療法や新薬は、必ず治験を行いクリアすることで安全性と有効性が認められ、実際に医療現場で使われるようになります。そして、実績を積み重ね評価を定めてはじめて健康保険が適用され、多くの医療機関で受けられるようになるのです。治験が済み、医療現場で使われるようになったばかりのものが「先進医療」であり、実績を積むことで健康保険の適用の可否などを評価します。

厚生労働省が保険診療に認めたものは、安全性と有効性が十分評価され、医療費負担も少なく治療を受けられることになりますが、逆にいえば、「先進医療」から外れてしまった技術は、厚生労働省が国民の健康を守るための安全性と有効性を確認できず、広く一般に普及すべきではないと判断されたことになります。このように、先進医療を受ける場合は費用も含め全てが「自己責任」ということです。

また、肝臓がんの陽子線治療を例にしてみると、確かにメスを入れず副作用も少ない体に負担をかけないという面で大きなメリットのある治療法ではあります。しかし、陽子線治療と保険診療内の他の治療をした場合の「5年生存率」比べてみると、データが同等であったという治療成績もあるのです。「標準」よりも「先進」の方が優れているように聞こえてしまいますが、医療に関しては「標準治療」が現時点で治療できる最良の治療となり、「先進医療」は評価段階で効果は未知数であること、そして「標準治療」よりも優れていると証明されれば、今後「標準治療」になっていくとなります。

6.2.先進医療は高額なのか?

「陽子線治療」、「重粒子線治療」など、高額な費用がかかる先進医療もありますが、平成29年6月30日の実績報告より先進医療費用をまとめると、実際に実施された87種類の先進医療技術のうち、100万円未満の技術が77%を占めていました。また、先進医療費の平均も60万円で、これも将来的に保険適用となれば3割負担(70歳未満の一般所得者)となります。

参考:厚生労働省、第61回先進医療会議の平成29年度実績報告をもとに作成

6.3.高額療養費制度と先進医療

保険診療の部分にかかり負担する費用については、【高額療養費制度】の対象となります。しかし、先進医療にかかる費用については、【高額療養費制度】の対象外となります。

【高額療養費制度とは】

医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が、1か月間(1日から末日まで)で上限額を超えた場合にその超えた額を支給する制度です。入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。なお、入院診療や外来診療において「認定証」の提示をすることで、窓口での支払いを上限額に留めることができます。この「認定証」は、事前に健康保険組合、協会けんぽ、または市町村(国民健康保険・後期高齢者医療制度)などに問い合わせ、入手する必要があります。

  • 医療費の上限額(70歳未満の場合)

 

なお、先進医療は【医療費控除】の対象にはなります

【医療費控除】

医療費控除とは、自分または生計を共にする配偶者やその他の親族のために支払った年間の医療費に対して、所得控除を受けられる制度のことです。医療費控除を受けるには、確定申告を行い所轄税務署に提出する必要がありますが、その際、医療費の領収書が必要となるため、大切に保管しておきましょう。

控除額=(実際に支払った医療費の合計額 - 保険金などで補填される金額)-10万円

なお、保険金などで補填される金額とは、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きます。引ききれない金額が生じても、他の医療費からは差し引きません。※生命保険契約などで支給される入院費給付金、健康保険などで支給される高額療養費・産育児一時金など

 

7.保険の先進医療特約

7.1.先進医療特約とは

「先進医療特約」とは、医療保険やがん保険に特約として付けられる保障です。先進医療にかかる技術料と同額を給付するという内容で、月々100円程度の保険料で付加することができます。基本的には、医療保険などに付加するもので、先進医療特約のみに加入することは出来ません。

7.2.先進医療特約の必要性

先進医療特約は、比較的安価であるにもかかわらず、全額自己負担しなければならない「先進医療」の技術料の保障を受けられるため、付加するに越したことはないでしょう。

なお、いま先進医療特約に加入しておらず付加したい場合は、「中途付加」をしなければならないのですが、この「中途付加」が出来るかどうかは、加入している保険によって異なります。もし、「中途付加」が出来ないとなると、医療保険ごと新しく加入するか、転換、他社に乗り換えるなどの見直しをする必要があります。先進医療特約は確かに安くて魅力的な保険ですが、これを付加するためだけで転換や他社に乗り換えることはお勧めしません。

なぜなら、保険料が安いということは、給付金が支払われる可能性も低いといえるからです。それに加え保険の見直しとなると、現在の年齢で保険料が計算されるため、以前加入していたものより保険料が高くなるのは当然のことです。

そのため、保険料を上げてまで先進医療特約を付けることについては、疑問を感じます。ただし、先進医療を受ける患者数は年々増えてきているため、それに合わせて先進医療特約の保険料も今後上昇する可能性はあります。

7.3.自由診療に備える保険

【自由診療とは】

健康保険の適用外の治療を受けることを言います。例えば、国内未承認の抗がん剤などによる治療は、健康保険などが適用されず、先進医療にも該当しないため「自由診療」で受けることになります。日本では、この保険外の治療と診察・検査・投薬・入院料等の保険診療を同時に受ける「混合診療」は、認められていません。そのため、「自由診療」を受ける場合、保険診療の費用も含めて全額自己負担となってしまうのです。

がん治療においては、数多くの新たな治療方法が開発されており、最先端の治療を「自由診療」で受けることが可能です。そのがん治療においては、「自由診療」について備える保険があるのです。がん保険において、給付方法は以下の2つです。

  • 実損補填型:実際にかかった医療費を保障するタイプの保険で、一部保険会社のみ取り扱っています。自由診療も保障対象としており、患者は医療費の心配をすることなく希望の治療が受けられるため、非常に心強い保険といえます。例)セコム損保/自由診療保険メディコムSBI損保/がん保険など

 

8.まとめ

日本の医療は、世界的にみても高水準であり、中でも健康保険の適用が認められた技術は、国の厳しい基準をクリアした最も優れた医療です。しかし、最近テレビCMなどで、先進医療は高いもの、最高の治療であるというイメージを植え付けられ、詳しく知らずに「がんになったら先進医療を受ければいい!」と考えている方が多いのではないでしょうか?

しかし、実際には「先進医療=がんの治療」ということではなく、実施件数の多い技術は「白内障」であるということは、あまり知られていません。

また、がん治療においての先進医療も、治療による副作用などから生活の質(QOL)を守るために有効ではありますが、傷病の完治という目的に対して最良であるとは限りません。このように、とりあえず先進医療を受ければ良いだろうということではなく、担当医師と相談しながら、その人それぞれにとって最良となる治療を受けることが大切なのです。

ただし、傷病について先進医療の知識が無ければ、治療法として検討することも出来ません。インターネットの情報が全て正しいとは言えませんが、傷病についてあらゆる知識をること、その上で不安な点があれば担当医師に相談するということが、より良い治療につながるのではないでしょうか。

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