出産一時金にまつわる疑問を一挙解決!出産一時金の基本〜活用法まとめ

出産時に誰もが受け取ることができる「出産一時金」。基本的に出産にかかる費用は保険の対象外となっていることから、出産一時金を頼りにしている方も多いはず。

ただ、待っていればもらえるものではなく申請が必要だったり、場合によっては申請先を自分で選択する必要も出てくることから出産一時金にまつわる疑問を抱えている人が多いのも現状です。

この記事では、出産一時金について寄せられた質問をもとに、出産一時金の基本的な情報から、上級者向けの活用方法をまとめて紹介していきます。ぜひ最後まで読んで出産一時金についてマスターしてみてくださいね!

目次

1.「出産一時金」って?

1−1.出産一時金とは?出産手当金との違いは?

1−2.出産一時金、どこからもらえる?

1−3.出産一時金、もらえない場合もある?

2.「出産一時金」3つの請求方法

2−1.直接支払制度

2−2.受取代理制度

2−3.産後申請方式

3.お悩み解決!パターン別申請先まとめ

3−1.会社を退職して夫の扶養に入る場合

3−2.会社を退職して国民健康保険に入る場合

3−3.夫が転職中の場合

4.知られざる出産一時金活用方法

4−1.出産費貸付制度とは?

4−2.クレカ払いで得ができちゃう?

4−3.余った場合はどうするの?

4−4.付加制度のある会社や自治体

5.出産費用ってどれくらい?出産一時金でカバーできる?

5−1.自然分娩の場合

5−2.無痛分娩の場合

5−3.帝王切開の場合

6.出産一時金以外にも出産でもらえるお金・返ってくるお金がある?

6−1.医療費控除

6−2.高額療養費制度

6−3.民間医療保険

7.まとめ

1.「出産一時金」って?

「出産一時金という言葉、よく聞くけどわたしも対象なの?」「出産一時金はどこからもらえるの?」などと疑問を持っている方は多いのではないでしょうか?

出産に関する制度には様々なものがあり、一度整理しなければ頭の中が混乱してしまいがちです。

特に、出産一時金は全ての妊婦さんが受け取ることができるものなので、しっかり押さえておきたいところです。まずは出産一時金の概要について見ていきましょう。

1−1.出産一時金とは?出産手当金との違いは?

出産一時金とは、正確には「出産育児一時金」という制度で、働いている・働いていないによらず基本的に誰もが子ども一人につき出産時に42万円を受け取ることができるものです。(ただし、産科医療補償制度加入機関以外で出産する場合は39万円となります)

双子の場合は倍の84万円の支給が受けられます。

また、ご主人の会社の社会保険に扶養家族として加入されている妊婦さんの場合には、本人が出産育児一時金を受け取るのではなく、被保険者であるご主人に「家族出産育児一時金」が支給される形になります。

被保険者が誰なのかによって名称が異なるため、よく出産育児一時金と家族出産育児一時金をダブルで受給できるのでは?と誤解される方もいらっしゃいますが、妊婦さん本人が国民健康保険や社会保険の被保険者になっている場合には「出産育児一時金」、ご主人や親の勤務先の社会保険に扶養家族として加入している場合には「家族出産育児一時金」と名称が異なるというだけで、いずれの場合も基本的に42万円という子ども一人あたりにつきもらえる金額には変わりありません。

また、ご自身の勤務先の社会保険に加入している働く妊婦さんのみが受け取ることができる「出産手当金」と混同されることもあるようです。

出産手当金とは、無給となる産休期間に勤務先の健康保険組合から受け取ることができる手当金です。こちらは基本的には産休を取って、その後職場復帰をされる方を対象としている制度です。勤務先の社会保険に加入していることが条件なので、アルバイトやパート、自営業などでご主人の扶養となっている場合やご自身で国民健康保険に加入している場合は対象とならないものです。

このように、出産時にもらえる給付金には会社の社会保険に入って働いている方のみ対象のものと、全ての妊婦さんが対象となるものがあるため、少し紛らわしいですが、出産一時金は誰もが受け取ることができるものです。これから出産予定の方全員に関係のあることなので、制度の概要について把握しておきましょう!

1−2.出産一時金、どこからもらえる?

出産一時金は加入している健康保険から支給されます。ご自身が会社員や公務員の場合や、会社員や公務員のご主人の扶養となっている場合には会社の組合健保や協会けんぽ、または各種共済組合から支給されます。

一方で自営業者や会社を退職し、会社の健康保険の任意継続をしなかった場合には国民健康保険から支給されることとなります。

どの健康保険に加入しているかによって出産一時金の制度に関する問い合わせ先が会社だったり、役所だったりと異なってくるのでご自身の出産一時金がどこから支給されるのかということを確認しておいてくださいね。

1−3.出産一時金、もらえない場合もある?

出産一時金は、妊娠が4ヶ月(85日)以上続いた方が対象です。(早産、死産、流産、人工妊娠中絶なども含みます)逆に言うと、4ヶ月間妊娠期間が続かなかった場合には出産一時金の対象とはなりません。

また、日本は国民皆保険を前提としているため、基本的には全ての妊婦さんを対象としていますが、仮に国民健康保険の保険料を滞納している場合や、転職の間などで一時的に無保険の期間ができてしまっている場合には出産一時金がもらえない可能性があります。

滞納の場合は自治体によって対応は様々ですが、基本的には遡って保険料を支払った上での支給となります。

2.「出産一時金」3つの請求方法

出産一時金には3つの請求方法があります。平成23年から、妊婦さんやその家族の手続き面での負担を緩和するために「直接支払制度」を中心に請求方法が改善されてきています。

最も便利な「直接支払制度」を利用することが大半ですが、出産する病院や、里帰り出産をするかしないかによって請求方法は変わってきますので、ご自身が当てはまるケースをチェックしておきましょう!

2−1.直接支払制度

出産一時金の請求方法で最もポピュラーなのが「直接支払制度」で多くの産院でこの制度が導入されています。出産一時金の制度をより簡素化し利用しやすくするために国によって改善されてきています。そのため仕組みは至ってシンプル!

産院で出産一時金の直接支払制度を利用するための意思確認の書類を記入し産院窓口へ提出します。出産入院の会計時に入院・分娩費用が42万円を超えた場合はその差額を支払い、下回った場合には健康保険に差額の申請をするというものです。差額が後日口座に振り込まれて続きは完了となります。

産院で申し込めば、あとは産院が支給までの手続きを行ってくれるため妊婦さんやその家族は書類を一枚記入するだけで楽々出産一時金を利用することができます。

2−2.受取代理制度

「受取代理制度」は直接支払制度が導入されていない小規模な産院を利用する場合に使われる制度です。

事前に医師から証明をもらい受取代理制度の申請をすることによって健康保険が直接産院に支払いをしてくれます。よって、こちらの制度を利用する場合も窓口で一時的に全額負担する必要はありません。

直接支払制度と同様に差額の支払か、差額分の申請をすることで手続きが完了します。

ご自身の産院が直接代理制度と受取代理制度どちらを実施しているかによって利用する制度が変わってきますので、心配な方は窓口で聞いてみても良いでしょう。出産が近づいてきた段階で案内をしてもらえることがほとんどです。

2−3.産後申請方式

「産後申請方式」は里帰り出産などをされる方が、実際に出産する産院にかかるのが出産予定日に近づいており、直接支払制度や受取代理制度の申請が間に合わない場合に利用される方法です。

退院時に出産・分娩費用を全額支払った後に健康保険に申請手続きをして口座に振込をしてもらうという流れです。

一時的とは言え、大きな金額の現金が必要になってくるので3つの申請方法の中では最も利用者に負担がかかる制度です。

3.お悩み解決!パターン別申請先まとめ

女性の場合、妊娠・出産を機に勤めていた会社を退職するということも珍しくはありませんよね。

退職をした場合には、それまで加入していた会社の社会保険などから脱退し、新たにご自身で国民健康保険に加入したり、ご主人の扶養となる場合が多いかと思います。また、ちょうど出産前後でご主人が転職し、社会保険加入先が変更になるケースもあるかもしれません。

そんなときに「どこに出産一時金を申請すれば良いのかわからない!」と混乱してしまう方が実に多いんです。

この章では、3つのパターン別に申請先や注意点などを解説していきます。

3−1.会社を退職して夫の扶養に入る場合

まずは、ご自身の勤務先の社会保険等を脱退して、ご主人の会社の社会保険に被扶養者として加入する場合の選択肢と注意点についてです。

これまでのご自身の勤務先の社会保険の資格喪失日の前日までに被保険者として加入していた期間が一年以上ある人が、資格喪失日から半年以内に出産した場合には以前の社会保険に出産一時金を請求することが可能です。よって、この条件を満たしている場合には、ご自身の過去の勤務先の社会保険かご主人の社会保険のどちらかを選択することができます。

手続き上楽な方、もしくは条件の良い方を選択基準とする場合が多いようです。

次の章で説明していきますが、社会保険によっては「付加制度」と言って、基本的な出産一時金に上乗せして「プラスα」の金額を支給している健康保険組合もあるようなので、ご自身とご主人の会社の支給内容をしっかりと確認してみてくださいね!

一方で、退職した時点で勤務先の社会保険加入期間が一年未満だった場合にはご主人の社会保険への請求のみ可能となります。

その場合に気をつけたいのが、扶養認定手続きが遅くなってしまい、認定日前に出産となってしまうケースです。そうなってしまうと出産一時金を受け取ることができなくなってしまうので、手続きは速やかに行うことが大切です。

また、先方のミスで手続きが遅れてしまうことも避けたいことなので「出産日がせまってきている」ということをあらかじめ伝えておくことをおすすめします。

選択が可能な場合には、よく重複して受け取ることができるのかという質問も寄せられますが、あくまでも「どちらか一方のみ」を選ぶということになります。

3−2.会社を退職して国民健康保険に入る場合

国民健康保険は、社会保険とは違い「被扶養者」という制度がないため、ご主人が自営業などで国民健康保険に加入している場合には奥様もご自身が被保険者となり国民健康保険に加入することになりますよね。

その場合にも、やはりご自身の勤務先の社会保険の資格喪失日の前日までに被保険者として加入していた期間が一年以上ある方は、半年以内の出産であれば社会保険か国民健康保険どちらかを選択することになります。より有利になる方を選択してください。

国民健康保険の加入手続き自体は、基本的に即日可能です。退職したら、退職証明書を持って速やかに役所へ出向いてくださいね!

3−3.夫が転職中の場合

被扶養者として社会保険に加入していてご主人が転職活動中という場合、転職のタイミングによっては手続きが複雑になってくるケースもあるようです。

出産予定日が決まっていても、必ずしも予定日通りにはいかないことも多いですよね。数日早まったり、遅くなったりするだけで申請先が異なってきますので、ご主人の「転職前に出産」となるケースと「転職後に出産」となるケースの二つのパターンについて見ていきましょう。

・転職前に出産となるケース

ご主人の以前の勤務先で加入していた社会保険への請求となります。転職後まもなく、請求が遅れてしまった場合でも、出産後2年以内であれば申請可能ですので、生活が落ち着いてから申請しても良いかもしれませんね。

・転職後に出産となるケース

こちらの場合は、注意が必要です。転職後に出産となった場合には転職先への申請となりますが、やはり扶養手続きには何かと時間を要してしまう場合があります。出産日に間に合わなかった場合には出産一時金を受け取ることができない場合もありますので、扶養手続きは速やかに行ってください。

また、手続きが間に合わない場合や、以前の会社を退職してから新たな会社の社会保険に加入するまでにどうしても期間が空いてしまうといった場合には、一時的に国民健康保険に加入するという方法もあります。

とにかく、無保険になる期間があると出産のタイミングによって出産一時金を受け取ることができなかったというケースが出てきてしまいますので、転職時期と重なる場合は慎重になることが重要です。

4.知られざる出産一時金活用方法

出産一時金の概要や支給までの流れをこれまで見てきました。実は、出産一時金にはまだまだ広く知られていない活用方法があるんです。

ここでは基本から少しマニアックなところまで出産一時金の情報を更に詳しく見ていきます。

4−1.出産費貸付制度とは?

通常は出産時の入院費を支払うタイミングや出産後に申請することによって利用することとなる出産一時金ですが、妊娠・出産は健康保険適用外で経済的負担も大きいことから、出産一時金の一部を事前に貸付してもらえる制度が存在します。それが「出産費貸付制度」です。

非常に助かる制度ですが、案外広く知られていないのが現状です。ここでは「出産費貸付制度」の概要について説明していきます。

まずは、出産費貸付制度の対象となる方についてです。対象となるのは、妊娠4ヶ月以上の方で産院等に一時的な支払いを要する方です。更に出産予定日まで1ヶ月以内であることが条件です。

「出産費貸付金貸付申込書」に必要事項を記入した上で、全国健康保険協会または役所に届出をします。借りられる金額は出産一時金の8割となる33万円(1万円単位のため1万円未満は切り捨てとなります)が上限です。無利子で、実際に出産を終え出産一時金が支給されるタイミングで返済(相殺)することとなります。

妊娠4ヶ月以降に入院などでまとまった費用が必要になった場合などに助けてくれる制度です。

4−2.クレカ払いで得ができちゃう?

こちらはかなり上級者の方が行っている方法です。

クレジットカードでポイントを貯めるために大きな買い物をするときにはあえてカード払いにされる方も多いのではないでしょうか?

最近、クレジットカード払いができる病院が増えてきていますよね。出産費用も50万円以上と高額になることがほとんどなので、あえて直接支払制度を利用せずにクレジットカード払いで全額負担してしまい、後に産後申請方式で出産一時金を申請するという技を使う方も中にはいるようです。

手続き面での負担も増えてしまうので積極的におすすめはしませんが、このような方法でポイントをゲットするという方法もあるんですね。

4−3.余った場合はどうするの?

「出産費用が40万円で済んだ!残りの出産一時金はどうなるの?」そんな疑問も寄せられています。

出産費用が出産一時金より少なかった場合には差額が支給されます。

出産後に産院に出産一時金の支払いが完了したことを被保険者に通知する「支給決定通知書」というものが届きます。この通知が届き、差額があることがわかった場合には「差額申請書」というものを加入している健康保険組合や役所に提出することで差額が指定口座に振り込まれるようになっています。

ご自身で手続きしなければ支給は受けられませんので、忘れずに手続きをするようにしてくださいね!

4−4.付加制度のある会社や自治体

出産一時金は基本的には子ども一人につき42万円です。しかし、加入している健康保険組合や、自治体によっては「プラスα」の金額を出してくれる場合もあるんです!それが「付加制度」です。

付加制度の具体例をいくつか紹介していきます。

・関東ITソフトウェア健康保険組合・・・90,000万円

・オムロン健康保険組合・・・被保険者の出産12,000円、被扶養者の出産8,000円

・味の素健康保険組合・・・被保険者の出産100,000円、被扶養者の出産30,000円

・私学共済・・・50,000円

・神奈川県共同健康保険組合・・・30,000円

健康保険組合によってはプラス10万円の付加給付を出す場合もあるんですね!

付加給付の情報については、ご自身の加入している健康保険組合のホームページなどで確認することができるのでぜひチェックしてみてください。

退職の予定があり、ご自身の健康保険組合とご主人の健康保険組合を選択できる場合は特に、付加給付が選択の決め手となってきますので要チェックです!

5.出産費用ってどれくらい?出産一時金でカバーできる?

「出産一時金、42万円ももらえるの!?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、出産費用というのはそもそも基本的には健康保険適用外であるためかなり高額なんです!

出産する地域や産院によっては余る場合もあるものの、出産一時金では足りない!というケースがほとんどのようです。

この章では、分娩スタイル別に平均でどれくらいの費用がかかってくるのかを見ていきましょう。

直接支払制度の充実によって、手元に準備しておかなければならない現金はぐっと減っていますが、出産に備えてどれくらいの金額を予算しておけば良いのかということを一緒に確認してみましょう!

5−1.自然分娩の場合

自然分娩の場合は健康保険は適用されず全額自己負担となります。入院料、新生児管理料、分娩料が費用の大部分を占めています。入院日数は6日間程度です。

選ぶ部屋のグレードにもよりますが、全国平均ではおよそ54万円程度かかってくるようです。都心の方が高く、地方ではより価格を抑えられる傾向にあります。

内訳は以下のようになっています。

・入院料・・・20,000円×6日

・新生児管理料・・・・12,000円×6日

・分娩料・・・253,000円

・産科医療保障制度・・・16,000円

・新生児検査・薬・・・29,000円

・母検査・薬・・・18,000円

・出生届・指導料・・・29,000円

・その他・・・3,000円

5−2.無痛分娩の場合

無痛分娩についても、全額が自己負担となります。自然分娩の費用に無痛分娩費用として10万円から20万円程度の上乗せとなることがほとんどです。

よって、平均して64万円〜74万円程度の出産費用となってきます。入院期間は自然分娩と同様に6日程度となっています。

5−3.帝王切開の場合

帝王切開の場合は、費用の一部が保険適用となります。入院期間は手術の経過にもよりますが、9日程度の入院となることが多いです。トータルの費用は自然分娩よりも少し高く、60万円程度です。内訳は以下のようになっています。

・入院料・・・12,000円×8日

・新生児管理料・・・8,000円×9日

・分娩料・・・253,000円

・産科医療保障制度・・・16,000円

・新生児検査・薬・・・29,000円

・母検査・薬・・・18,000円

・出生届・指導料・・・29,000円

・その他・・・3,000円

・保険診療分・・・100,000円

しかし、帝王切開の場合には健康保険が適用となるため、こちらの金額から次の章で説明する「高額療養費制度」が適用となり医療費がキャッシュバックされたり、民間医療保険に加入している場合であれば入院給付金や手術給付金の対象となるため、実質的な負担は自然分娩や無痛分娩よりも少額となる場合がほとんどです。

自然分娩、無痛分娩、帝王切開、いずれのケースにしても、事前に産院で入院費用について金額を確認しておくことで精神的な安心につながりますので、まだ身体や時間に余裕のある初期の段階で問い合わせておくのも良いかもしれませんね。

6.出産一時金以外にも出産でもらえるお金・返ってくるお金がある?

出産一時金以外にも国や民間の制度で出産時に給付されるお金や、申請することで還付されるお金があるケースも珍しくないようです。知らないで損をするよりは活用できるものは全てしっかり活用したいものです。

3つの制度について紹介していきます。

6−1.医療費控除

一つ目は「医療費控除」です。出産以外でもこれまでに入院経験がある方や、家族の医療費の総額が高額になったという経験のある方は利用されたことがあるのではないでしょうか?

医療費控除とは、その年の1月から12月までにご自身や生計を一つにする家族のために支払った医療費の総額が10万円を超えた場合に、確定申告をすることによって10万円を超過した分の金額をその年の所得から差し引くことができるという制度です。すでに納めた税金のいくらかが還付されるのです。

とくに、この制度は健康保険適用外の治療や病院までの交通費なども全て計上することができるため、その年に妊娠・出産をされた方は利用できる可能性が高くなります。

不妊治療を経て妊娠した場合にはかなりの高確率で利用できる場合が多くなっているようです。

注意点は、出産一時金として支給される42万円や自治体からの各種補助金、次に説明する高額療養費や民間医療保険で還付・給付された金額は差し引かなければならないということです。

総医療費や病院にかかるための交通費などの総額からそれらの金額を差し引いてもなお年間10万円を超過するようであれば医療費控除の対象となります。

ただし、その年の総所得金額が200万円未満の人は総所得金額の5%超過分からが控除の対象となります。総所得が180万円だった場合には9万円超過分からが対象となりますね。

具体的に還付される税額は10万円超過分にご自身の所得税率を掛けた金額となります。よくある誤解ですが、10万円超過分が全て返ってくるというものではありませんので注意が必要です。

所得税率は以下の表のとおり、所得によって5%から45%となっています。

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円を超え 330万円以下 10%
330万円を超え 695万円以下 20%
695万円を超え 900万円以下 23%
900万円を超え 1,800万円以下 33%
1,800万円を超え4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

例えば、その年の医療費の10万円超過分が6万円だった場合、課税所得金額が400万円の方は税率が20%なので12,000円の所得税が還付されます。

課税所得金額が1,000万円の方は33%の所得税率が適用されるため約2万円の所得税が還付されることになります。

所得税の還付に加え、住民税については所得に関係なく一律10%の還付もあるため、医療費控除を利用することによって課税所得が400万円の方は所得税・住民税を合わせて18,000円の還付、課税所得が1,000万円の方は25,800円の還付が受けられるんです。

所得が高ければ高いほど還付額が大きくなる仕組みの医療費控除。忘れないうちに翌年の確定申告で手続きをするのがベストですが、タイミングを逃してしまっても5年以内であれば後からでも申告ができるので、返ってくる税金があるのであればぜひ活用してみてくださいね!

6−2.高額療養費制度

二つ目は「高額療養費制度」です。こちらは医療費控除よりも利用できる方は限られていますが、困ったときに助けてくれる大切な制度です!

妊婦検診や自然分娩の場合の入院費はいずれも保険適用外の自己負担医療費です。その場合、高額療養費制度は適用になりませんが、切迫早産や帝王切開などの保険適用となる入院などの場合には、「高額療養費制度」によって所得ごとに定められた自己負担金額上限額を超えた部分の医療費は丸々返還されることになります。

所得ごとの自己負担上限額は以下のとおりです。

課税対象額区分 自己負担限度額(月額)
910万円超 252,600円+総医療費(10割)が842,000円を超えた場合、超過分の1%
600万円超910万円以下 167,400円+総医療費(10割)が558,000円を超えた場合、超過分の1%
210万円超600万円以下 80,100円+総医療費(10割)が267,000円を超えた場合、超過分の1%
210万円以下 57,600円
住民税非課税 35,400円

事前に入院のスケジュールが決まっている場合には勤務先の社会保険や役所で事前申請をしておけば「限度額適用認定証」をもらうことができ、病院の会計時に窓口で自己負担金額だけ支払えば済むようになるので、立て替える必要もありません。

急な入院だった場合には、先に全額支払いをしておき、後に返還請求をするという流れになります。

何もトラブルなく妊娠期間・出産を終えた場合には利用する機会はありませんが、もしも保険適用となる治療が必要になった場合には使うことができる制度なので、覚えておいても損はありませんよね。

6−3.民間医療保険

高額療養費制度に続いて、保険適用の治療が必要となり入院や手術が必要になった場合には、民間医療保険の給付対象となることもあります。

医療保険は、一般的に「入院給付金」「手術給付金」が毎月の保険料掛金に応じて支給されるようになっています。場合によっては「入院前後の通院給付金」が付加されていることも。

高額療養費制度と同様に、保険適用外の妊婦検診・自然分娩のための入院の場合には給付対象にはなりませんが、切迫早産や帝王切開の場合には対象になってきます。

先述したとおり、帝王切開の場合には平均して9日間の入院と手術が必要になってきます。

仮に、加入している民間医療保険の入院給付金が日額5,000円、帝王切開の手術給付金が5万円だった場合には医療保険から95,000円の保険金を受け取ることができるんです。

「妊娠や出産の場合には医療保険は対象にならないんでしょう?」と思っている方も多いようですが、あくまでも保険適用か否かによって変わってくるので、もしもの場合に使えるということを覚えておいても良いですね。

注意点としては、妊娠後に加入した医療保険については多くの保険会社で「今回の妊娠に関する治療については保険対象外」となってしまいます。妊娠後にあわてて帝王切開になった場合に備えて保険に加入しても対象にならないので、「民間医療保険に加入するなら妊娠前!」という鉄則を忘れずにいてくださいね。

7.まとめ

出産一時金について見てきましたがいかがでしたか?実際に分娩にかかる費用や、制度の活用方法などを確認してきたので、出産にかかる費用や支払いの流れについてイメージしていただけたのではないかと思います。

約10ヶ月の妊娠期間。たくさん時間があるようですが、案外あっという間に出産予定日が近づいてきます。

赤ちゃんを迎える部屋の準備、ご自身の入院準備などたくさん用意することがありますが、やはり何よりも「お金の準備」は大切です。この記事を参考にした上で、ぜひご自身の産院の分娩費用についてしっかり確認して安心なお産を迎えてくださいね!

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