火災保険は、火災や爆発、自然災害から、ご自分の所有する住居や住居内の財物被害を補償する保険です。
設定する保険金額によっては、巨額になる場合も考えられます。建物の規模や構造に見合った保険金を設定できます。
ご自分や家族の生活再建のための備えとなる保険商品ですが、一方でそれを悪用しようとする人間も多いのは事実です。
火災保険金が必ず下りると住民を唆し、リフォーム工事等を強引に進めようとする悪徳業者や、自己所有の建物へ自分で放火して保険金を得ようとする個人もいます。
当然、この様な事態では保険金が下りないどころか、契約解除や保険金詐欺として刑罰を受けることにつながります。
ご自分も保険金詐欺の被害者そして犯罪者とならないように、火災保険を理解し、悪事に加担しない心構えが必要です。
そこで今回は、火災保険に関する詐欺と、その被害に遭わないコツを解説します。この記事を読めば、火災保険詐欺の手口や、保険会社から詐欺行為と誤解されないための知識を得ることに役立つはずです。
目次
1.火災保険について
現在、我が家に火災保険をかけようと思っています。火災も心配ですが、台風や洪水にも備えたいですから。
でも、巷では火災保険を悪用した詐欺が横行しているようですね。
まずは、火災保険の特徴について詳細を知りたいです・・・。
第1章では、火災保険という保険商品、その特徴等を解説します。
1-1.火災保険とは?
火災保険とは、火災はもちろんのこと風水害等の自然災害の被害から、ご自分の建物や家財を補償する保険商品です。
火災保険は日本全国の世帯で8割を超える加入率となっており、日本人の防犯意識の高さが窺えます。
建物の設定保険金額、築年数や構造、床面積によって保険料は異なります。
また、建物と家財にそれぞれ火災保険をかけないと、両方が補償されないので注意が必要です。
火災保険は最長10年まで長期契約できる商品もありますが、毎年自動更新して契約を継続する保険商品も多いです。
1-2.火災保険の特徴
火災保険は、隣家からの延焼や台風、洪水、盗難被害を受けた場合も補償対象になります。
しかし、被害が起き、保険加入者が保険金を請求したら、保険会社から自動的に保険金が振り込まれるわけではありません。
保険会社から依頼を受けて、建物の被害を鑑定する鑑定人が訪問し調査を行います。
この鑑定人は、正確には「損害保険登録鑑定人」と呼ばれており、建物や家財の損害額算定、保険価額の評価、事故状況・原因の調査を行うプロです。
一般社団法人「日本損害保険鑑定人協会」に所属し、中立の立場から鑑定を行います。
保険加入者は鑑定人が訪問した場合は、損害の認定がスムーズにできるよう、調査に協力することが求められます。
1-3.火災保険は頼りになるが・・・。
火災保険の保険金は、その設定金額によっては巨額となり、火災や自然災害の大きな損害に頼もしい保険となります。
ただし、この保険金を目当てに詐欺行為が後を絶たない状況もあります。
この詐欺行為のケースは大きく2つに分かれます。それは、業者が火災保険で詐欺を企てる場合と、個人が火災保険金目当てに詐欺を企てる場合です。
業者で詐欺を企てる場合は非常にその手口が巧妙となり、素人ではとても詐欺被害に遭ったとは気づかないようなケースがあります。
一方、個人が火災保険金目当てに詐欺を企てるケースは、自分の所有建物等に放火するような荒っぽい手口で行われるケースがあります。
当然、後者は近隣に火災被害が拡大することもあり、消防の調査や警察の捜査も行われ、その過程で詐欺が発覚する場合もあります。
2.火災保険で詐欺を企てる業者について
火災保険詐欺、許されない犯罪と言えますね。私のような素人が悪徳業者に騙されるケースはそんなに多いのでしょうか?
悪徳業者の詐欺の手口について是非教えてください・・・・。
こちらでは、悪徳業者の使う手口と詐欺の事例を解説します。
2-1.そもそもどんなケースが多い?
国民生活センターの報告では、「(火災)保険金を使い住宅を修理する」、「保険金が出るようサポート(保険金代行等)する」と言葉巧みに家主を騙して勧誘する、悪徳業者の存在を指摘しています。
日本全国の消費生活センター等に寄せられた、これら勧誘詐欺と考えられる住宅修理サービスのトラブルは年々増加しています。
こちらでは、各年度別の相談件数をみてみましょう(独立行政法人「国民生活センター」の統計を基に作成)。
各年度 | 相談件数(うち60歳以上の割合) |
2008年 | 36件(53%) |
2009年 | 80件(53%) |
2010年 | 111件(41%) |
2011年 | 282件(64%) |
2012年 | 548件(65%) |
2013年 | 690件(72%) |
2014年 | 663件(75%) |
2015年 | 817件(74%) |
2016年 | 1,081件(80%) |
2017年 | 1,177件(75%) |
この表を見ると、60歳以上の方々が高い割合でトラブルに遭い、消費生活センター等へ相談していることがわかります。
悪徳業者の手口としては、ある程度老朽化が進み、傷み始めた建物の家主を狙い、言葉巧みにリフォーム詐欺を行ってることが想定されます。
2-2.悪徳業者の詐欺事例その1
こちらでは、悪徳業者の詐欺事例を取り上げ解説していきます。
(事例)業者が火災保険を適用できるかどうかわからない建物に、火災保険をかけることを勧め、家主が加入後、火災保険の適用前提で修理を行う。
(解説)リフォーム業者が、満足な火災保険金が下りるかどうかもわからないのに、家主に火災保険へ加入させ、屋根等の修理を行うようなケースです。
保険をかけたからといって、保険金を請求すれば必ず下りるとは限りません。
また、前述したように鑑定人の調査が行われるため、修理を終えた場合でも不自然な部分(単なる経年劣化や明らかに壊した痕跡等)を見つけられ、保険金が全く下りないこともあります。
保険加入者(家主)が、業者に言われたからと弁解しても、業者が火災保険への加入を勧める場合、口約束がほとんどで書面に残すことはありえません。
よって、工事費用は全て自腹で払うことになり、「業者が自分を騙した!」と修理費の支払いを拒否したり、修理費を支払ったりした場合はその返還を要求する等、法的なトラブルになるケースが極めて高いです。
2-3.悪徳業者の詐欺事例その2
既に家主が火災保険へ加入していた場合も要注意です。業者にその火災保険を悪用され、本来保険の適用されない修理費用に、保険金が適用されると唆す場合もあります。
(事例)利益が欲しい業者は、住宅に火災保険がかけられていることに目を付け、修理を渋る家主に対し、屋根の経年劣化が原因の腐食にもかかわらず、風災のせいにしてリフォームすることを持ちかけた。
(解説)風災とは、台風、暴風雨、強風被害を指します。主に屋根の破損で補償が適用されるケースは多いです。
業者は事例の建物の家主に、経年劣化にもかかわらず、風災のせいにして保険金請求を行い、修理を渋る家主からリフォーム費用を得ようと画策しています。
このようなケースでは、業者が「火災保険金の代行請求を行う。」と、持ちかけてくることが多いです。
保険加入者(家主)にとっては、一見、面倒な手続きがなくて便利な方法と言えます。
しかし、業者が保険加入者(家主)を装い、自己の利益に有利な事実を書き連ねるケースも考えられます。
また、保険加入者(家主)が経年劣化は補償外と知った上で、風災のせいにして保険金請求を行うことへ同意したら、保険金詐欺の共犯となってしまいます。
鑑定人に業者との悪だくみが暴かれれば、保険金が下りないどころか、契約解除、裁判で訴えられる可能性もあります。
3.風水害の被害と火災保険その1
屋根の状況に関しては、建物の家主でも把握できないケースがほとんどでしょう。
そこを狙い撃ちにする業者のやり方は卑劣です。我々も安易に業者の企てに乗らないことが第一ですね。
では、リフォーム詐欺に遭いやすい風水害の被害について、騙されないようにその補償範囲と、騙されないコツを教えてください・・・。
第3章では、風水害の補償範囲、堅実な業者を見つけるコツを解説します。
3-1.風水害はどんな場合が補償範囲
屋根は集中豪雨や台風等の風水害の影響を直接受ける、建物の主要部分です。
そのため、自然災害が原因で破損した箇所の修理費用は火災保険の補償対象です。
〇経年劣化は補償外
しかし、破損の原因が「経年劣化」の場合なら、火災保険は適用されません。
この経年劣化は、屋根の場合なら、雨や風等にさらされ、その年月が経ちその品質・性能が低下することを意味します。
これは、屋根に限らず外壁や、門、塀でも起きる現象であり、やむを得ない事態であることは皆さんも納得するはずです。
経年劣化は直接的に火災保険で認定された被害の影響と言えないので、基本的に火災保険では保険金が下りないこととなります。
〇ただし、素人の目で判断するのは早計
ご自分の所有する築年数が古い建物でも、その原因の全てが経年劣化と認定されるとは一概に断言できません。
我々のような素人にとっては、屋根の破損が自然災害が原因か、経年劣化なのか、見極めることは非常に難しいですよね。
そのため、強風があったとき等、破損個所を発見したら保険加入者の独断で判断をせず、修理業者に調査してもらうか、保険会社へ連絡し鑑定人に調査を行ってもらいましょう。
経年劣化は認められるものの、自然災害で破損した可能性が高ければ、保険金が下りることも期待できます。
3-2.保険金が下りるかを待つのは遅い?
業者のリフォーム詐欺に遭わないように、まず保険会社に連絡して、自然災害でおきた破損か鑑定人に調査してもらうことがあるでしょう。
ただし、修理をしないまま放置することは非常にリスクが伴います。屋根が傷めば、雨が降った時に雨漏りも発生し、住居内の家財へ被害の及ぶことが懸念されます。
また、風災でひび割れた箇所がさらに拡大し、被害を大きくすることも想定されますよね。
特に、台風シーズンの8月~9月は暴風雨の被害に気を付けなければなりません。
保険会社の対応を待っていたのでは、二次被害の危険性も考えられます。
そのため、修理業者に破損箇所をチェックしてもらい、修理の見積もりや、危険な場合は応急処置を行ってもらうことが大切です。
3-3.堅実な業者を見つけるコツ
被害箇所を発見した場合は、締結した保険契約の内容、必要書類を約款や保険のしおり等で確認し、まず保険会社に相談することが理想です。
しかし、自然災害は待ってはくれません。何らかの応急措置が必要と思ったなら、業者への相談や、修理してもらう必要も出てきます。
悪質な業者へ修理を依頼しないために、次のようなケースに注意しましょう。
(1)ことさら自己負担せずに、住宅の修理ができると勧誘する業者
まず火災保険を悪用する業者であるとみて良いでしょう。修理にはある程度、家主の自己負担となる費用はあります。
このような業者は家主へ嘘をついて、保険金請求を勧めてくる場合がほとんどです。
自己負担0円を売りにする業者の誘いは、絶対に乗らないことが必要です。
(2)保険金請求代行サービスを強調する業者
建物のリフォーム等の際に、業者自らが保険金請求代行をすると提案してくるケースです。
家主にとっては面倒な保険金請求手続きから解放されて、楽ではありますが、業者が虚偽を記載して、後にトラブルとなるケースもあります。
保険金請求書は、あくまで保険加入者自身で記載する必要があるのです。
(3)できれば馴染みのある業者に依頼する
例えば、祖父や親の代から贔屓にしている業者であれば、間違いはないでしょう。
建て替え等を行わない限り、建物の特徴を熟知し、効率的な補修を行ってくれるはずです。
しかし、なかなか顔見知りの業者がいない場合も多いはずです。その時は、前述した自己負担0や、ありえない低価格を売りにする業者、保険金請求代行を強調する業者へ依頼しないことです。
4.風水害の被害と火災保険その2
悪質な業者にひっかからないコツはよくわかりました。自分にとって信頼できる業者を選んでいきたいです。
では屋根・外壁の補償を行う場合、どんな手順で進めるのが良いか教えてください・・・。
第4章では、屋根の修理を依頼する手順、その必要書類について解説します。
4-1.屋根の修理を依頼する時は
台風・暴風雨が過ぎ去って何らかの被害(雨漏りの発生等)がわかったら、家主が屋根に上がって直接確認することもやり方の一つとは思います。
しかし、屋根が依然として濡れていると、足場も悪い状況のため、転落事故が起きる可能性もあります。
素人がこのような慣れない作業を行えば、とんでもない大ケガを負うかもしれません。
そのため、速やかに保険会社に状況を報告し、調査の依頼をする方が良いでしょう。
そうは言っても、自然災害で保険会社への問い合わせが多く、調査の日程が遅くなることも考えられます。
そのため、保険会社の担当者と相談し合い、業者に被害を調査してもらい修理を開始するかどうか判断しましょう。
この場合に行わなければならない作業は、被害箇所の証拠写真と、正確な修理見積書の作成です。
次項では、保険金請求の流れについて解説します。
4-2.保険金請求の流れ
自然災害による屋根の被害で、被害発覚から保険金の受け取りまでの流れは次のようになります。
(1)屋根から雨漏りが発生 |
自然災害に遭うまではみられなかった、雨漏り等の異常な現象が起きたら、その状況をメモ等で記録しておきましょう。室内ならば異常個所の写真撮影は容易だと思います。外に出て外壁等もチェックしましょう。
ただし、2階部分の外壁や屋根に上って行うご家族の調査は、危険を伴うため控えた方が無難です。
⇓
(2)保険会社へ連絡・保険金請求書送付依頼 |
台風や暴風雨等の自然災害が過ぎ去った後で、起きた建物の異常を保険会社へ連絡します。
事前に保険契約の内容等は確認しておきましょう。その方が話し合いもスムーズに進みます。保険会社から保険金請求書も送付してもらいましょう。
もし、信頼できる修理業者を知っているなら、保険会社へ連絡前に屋根の状況を調査してもらい、破損箇所をチェックしてもらっても構いません。
修理業者へ依頼する際は、火災保険の利用したいことを伝え、証拠写真・見積書が必要である点を理解してもらいましょう。
⇓
(3)業者が修理見積書作成 |
業者が修理見積書を詳細に記載します。この書類が保険金額の決定に大きな意味を持ちます。
⇓
(4)保険金請求書等を作成し提出 |
自宅へ送付された保険金請求書等へ必要事項を記載し、添付書類も集めて保険会社へ提出します。
⇓
(5)保険会社から依頼された鑑定人の調査 |
前述した日本損害保険鑑定人協会から派遣された鑑定人が、被害状況の調査を行います。
ただし、修理見積書が保険会社の納得するような適正な内容、金額に収まるならば、鑑定人の調査は行われない場合もあります。
なお、保険金の請求が高額になったり、詐欺ではないかと疑わしかったりする場合は、鑑定人の調査が行われます。
⇓
(6)保険会社から保険金が支払われる |
調査後、1週間程度で保険金の支払いの有無が保険加入者へ伝えられます。保険金が支払われるならば、保険加入者の指定口座へその金額が振り込まれます。
4-3.保険金請求の必要書類
保険金請求の際には、主に次の4つの書類が必要となります。ただし、ケースによっては印鑑登録証明書や建物登記簿謄本等も要求されることがあります。
必要な書類の疑問点は、しっかりと保険会社の担当者へ確認しておきましょう。
(1)保険金請求書
保険加入者本人が必ず記載する書類です。記載事項へ目を通し正確に記載します。
(2)事故内容報告書
被害の発見の経緯や、その状況等を正確かつ誠実に記載していきます。保険金を効果的に受け取るため、信頼できる業者ならば、アドバイスを受けながら作成しても良いでしょう。
しかし、こちらもあくまで保険加入者本人が必ず記載する書類です。うっかり、業者等に代行してもらった場合、保険会社からあらぬ疑いをかけられることもあります。
(3)証拠写真
破損箇所を撮影します。破損箇所が複数あればそれなりに枚数は増えます。
ご自分で撮影するのも間違いではないですが、屋根の上の危険な場所では業者に撮影をしてもらう方が賢明です。
(4)修理見積書
保険金が確定する重要な書類となります。業者に作成してもらいます。大切なのは、修理にかかる金額の表記だけはありません。
業者が修理のため使用する材料名・その数量・単価等も正確な記載が要求されます。
保険金に関する修理作業へ経験豊富な業者ならば、保険会社も納得する内容・金額を算定するはずです。
5.偽装放火で保険金詐欺を企てる個人について
火災保険を悪用しようとするのは、悪徳業者だけとはいえないと思います。個人単位でも、火災保険で一儲けを企てる連中もいるはずです。
この保険金詐欺を企てる個人の手口についても知りたいです・・・。
第5章では、個人の手口として非常に危険な偽装放火を解説します。
5-1.放火は甚大な事態を招く
保険金詐欺を企てるのは悪質な業者だけと限りません。個人でも火災保険を悪用し、保険金を騙し取ろうとする者も存在します。
非常に厄介なのは、短絡的かつ浅はかな考えでトンデモナイ犯罪行為に手を染めるケースが多いことです。
〇放火により被害は補償範囲だが
放火であっても失火と同様に被害が生じれば補償対象です。保険金請求により鑑定人等の査定を考慮して保険金が下ります。
中には、誰も見ていなければ放火とバレないと思い込み、自らの所有建物に放火し、保険金を得ようとする者もいます。
このような放火は、保険会社のみならず消防機関や警察機関の徹底的な調査・捜査が行われます。
当然、その過程で不自然な点が発見されれば、偽装放火を突き止められることになるはずです。
〇放火は周辺地域にも被害を及ぼす場合あり
火の怖さやその後の徹底的な調査等が行われることも知らず、無知と無責任な判断で引き起こされるのが偽装放火です。
放火により目的の建物を焼損させるだけではなく、火の粉が近隣に飛散すれば、周辺の住宅へ被害が及ぶかもしれません。
この浅ましい悪だくみのせいで、亡くなる方々がいるかもしれません。
偽装放火を企て警察に捕まった犯人は、保険金どころか詐欺罪やその他の重い罰が適用され、自分の人生すら台無しとなります。
5-2.偽装放火の詐欺事例
最近の傾向では自らが所有する空き家へ放火し、保険金を騙し取ろうとする偽装放火が多くなっています。
保険金を騙し取る目的の他に、空き家の処分に困り、その建物を解体する費用がもったいないということから、犯行に及ぶことが推察されます。
最新の偽装放火事件は次の通りです。
〇最近の事例
2019年2月、大阪府摂津市パチンコ店の実質的経営者の韓国人と、知人の男が保険金詐欺を共謀し、経営するパチンコ店に放火、保険会社に保険金を請求した事件があります。
しかし、その出火原因に疑惑を持った保険会社は、保険金の支払いに応じませんでした。
〇捜査の進展
大阪府警は韓国人経営者とその知人が、保険金目当てに偽装放火した事実を突き止め、両名を4月3日に逮捕しました。
2人は詐欺未遂容疑で逮捕され、非現住建造物等放火罪等でも起訴されています。
5-3.偽装放火の罪は重い!
前述した事例で問われた罪は、当然ながら重いものになります。
こちらでは、罪名とその内容を解説します。
(1)詐欺未遂
詐欺罪(刑法第246条)とは、人を騙して財物の交付や、不法に財産上の利益を得ようとする犯罪です。偽装放火によって保険会社へ保険金を請求し、保険会社がこれを支払った場合には、こちらの罪が成立します。
犯罪を行った者は10年以下の懲役、この犯罪によって得た財物は没収または追徴されます。
詐欺未遂(刑法第250条)も処罰されます。未遂である以上、10年以下の懲役よりは軽くなるかもしれませんが、刑事裁判にて実刑判決を受ければ刑務所へ収監されることとなります。
(2)非現住建造物等放火罪
非現住建造物とは、日ごろから住居に使用されおらず、かつ現に人がいない建造物を指します。事例はパチンコ店ですから従業員やお客が帰れば誰もいなくなりますよね。
この建物に放火したので非現住建造物の放火罪が適用されるわけです(同法第109条1項)。この罪が成立すると6ヶ月以上7年以下の懲役(同法第109条2項)となります。
なお、そのパチンコ店への放火により、それ以外の建造物等へ燃え広がった場合は延焼罪(同法第111条)が成立します。この罪の法定刑は3ヶ月以上10年以下の懲役となります。
6.その他の火災保険に関する注意点
やはり、保険会社の調査だけではなく、警察の捜査能力も侮っていけませんね。悪いことはできないものです。
では、無知である余り、保険金詐欺と誤解を招きやすいケースというものはあるのでしょうか・・・?
こちらでは、火災保険で下りる保険金の特徴と、保険加入者の誤解について解説します。
6-1.火災保険の補償は実損害のみ!
火災保険をはじめとした損害保険で下りる保険金は、死亡保険や医療保険のような生命保険金(給付金)とは異なります。
〇生命保険は契約通りの保険金額が下りる
生命保険金(給付金)の場合、保険契約時に設定した金額通り保障が下ります。
例えば、世帯主を被保険者として、死亡保険金額を設定したならば死亡時その金額通りに保険金が受け取れます。
医療保険も同様で、入院給付金(日額)を設定し契約すれば、実際の入院費用が設定した入院給付金を下回っても、契約通りの給付金額が受け取れます。
〇火災保険をはじめとした損害保険は実損害のみ
一方、損害保険はというと、鑑定人等の査定額に従い算定された実損害の範囲でのみ保険金が支払われます。
つまり、実損害額が2,000万円ならば、2,000万円の範囲内でしか支払われないことになります。
当然、火災保険も損害保険商品の一つである以上、このような仕組みとなるわけです。
6-2.複数契約は意味がある?
そのため、損害保険を何契約も締結するのはあまり意味がない方法と言えます。
前述したように保険契約した分、保険金が上乗せされて受け取れるわけではありません。
損害保険は文字通り、実際の損害を補填するために役立つ保険です。損害保険で儲けようなどという考えは最初から持たない方が良いでしょう。
火災保険の複数契約も同様に、保険料が余計にかかるだけで、補償の充実にはあまり影響のないことが多いです。
6-3.疑われないために
保険加入者の中には複数契約を行い、例えば甲保険会社に火災保険金を請求し、受け取ったことを忘れ、乙保険会社にも同様の請求をしてしまうこともあるでしょう。
各保険会社は、相互に保険加入者の情報共有をしているので、請求の事実はすぐに把握できます。
甲保険会社に保険金請求の事実を欺罔して、乙保険会社に満額を請求した場合はもちろん詐欺行為です。
しかし、ウッカリ請求してしまった場合も、乙保険会社から疑いの目が向けられることでしょう。
乙保険会社から問題なく保険金が受け取れるケースは、主に次の通りです。
- 実損害額より甲保険会社に設定していた保険金額が少なく、十分実損害額に充てることができなかった→この場合は乙保険会社から差額分が下ります。
- 建物の火災保険は甲保険会社へ加入、家財の火災保険は乙保険会社へ加入していた→こちらでは、先に甲保険会社へ請求しても建物分の保険金しか下りなかったはずです。よって、家財の補償は乙保険会社から下ります。
7.まとめ
最近では火災保険のみならず、地震保険でも保険金詐欺が目立つようになりました。
日本各地で地震被害の多発していることが原因と指摘されています。
保険金詐欺に遭うのは保険を締結していながら、保険の知識に疎い方々が多いこともあげられます。
確かに、保険内容は複雑で、加入しても意味が良くわからない部分もあるかと思います。
悪徳業者は、ご自分の保険知識の及ばない部分に付け込んで悪だくみを行うのです。
そのため、火災保険にせよ、地震保険にせよ、契約締結の際には内容をよく確認し、ご自分が納得した上で加入しましょう。
また、お時間のある内に何度か見返して内容を確認することも大切です。
そして保険金を請求する時は、他人まかせではなくご自分で行うことが重要です。
保険会社の電話担当者は、請求方法に良くわからない点があれば、丁寧に教えてくれます。
その指示に従いながら、焦らずに請求手続きを行いましょう。
保険加入者が、悪徳業者に隙を作らない心がけこそ、被害に遭わない最良の方法です。