確定申告でお金が返ってくる医療費控除ですが、いくつかの条件があることをご存知ですか?
医療費控除の基礎から受け方、申請方法まで説明して参ります。
- 確定申告とは、1年間の収入を確定した後、国に対して納める税金の金額を計算し、申告すること。
- 医療費控除の申請は5年を期限とされている。
目次
確定申告ってナニ?
確定申告とは、1年間の収入を「確定」して、国におさめる税金の金額を計算して、申告すること。
個人事業主以外の会社や法人格のある団体組織は、確定申告を必ずしなければなりません。
会社などは年度ごとの決算月を基準に計算します。
個人事業主は、1年間(その年の1月1日~12月31日まで)を基準に計算します。
わざわざ税務署に行かなくても郵送もしくはe-Taxから提出できます。
医療費控除ってナニ?
確定申告書に、1年間で得た収入すべてを記入します。
副業の収入、不動産売買、株などで得た利益も、収入とみなされます。
収入から、収入を得るためにかかった経費などを、項目ごとに引き、税金から免除される項目があれば、1年間に得た収入から引き去ります。
所得とは?
年間の収入から、必要経費を引いた金額。
年間合計所得とは、年間収入の合計から必要経費などを引いた金額を合計したものです。
控除とは?
「税金から免除される」ことを、「控除」と言います。
所得控除とは、1年間の収入から控除として引けるものを言います。
人的控除は8種類、物的控除は7種類の控除があります。
所得控除は、15種類の控除があります。
所得控除の中で7種類に分かれている物的控除のひとつに「医療費控除」があります。
人的控除の条件と控除される金額
控除名 条件 控除される金額 1.基礎控除 ・納税する人に一律に適用されます 38万円 2.配偶者控除 ・納税する人の配偶者で合計所得額 38万円以下の場合・配偶者の年齢で控除される金額が分かれます一般配偶者(70歳未満)老人控除対象配偶者(70歳以上)38万円(一般=70歳未満)
48万円(老人=70歳以上)
3.配偶者特別控除 ・配偶者の合計所得金額が38万円を超え123万円以下であるの場合 配偶者の所得に応じて16万~38万円 4.扶養控除 ・納税する人と生計が同じであり、かつ、合計所得金額が38万円以下である親族を扶養している場合
・一般(年齢が16歳以上19歳未満、または、23歳以上70歳未満の親族)、特定(年齢が19歳以上23歳未満の親族)、老人(年齢が70歳以上の親族)に分かれます
・納税する人の直系尊属の親族との同居をしている場合には、同居老親等加算として10万円が加算されます。
38万円(一般)
63万円(特定)
48万円(老人)
48万円(一般同居)、58万円(老人同居)
5.障害者控除 ・納税する人が障害者であるか、または、配偶者・扶養親族が障害者である場合
・特別障害者(特に重度の障害がある場合)で、控除される金額が分かれています(配偶者・扶養親族が特別障害者、同居の有無)
27万円(障害者)
40万円(特別障害者)
75万円(特別障害者と同居)
6.寡婦控除(シングルマザー控除) ・納税する人が、夫と死別、あるいは夫と離婚した場合で、かつ、扶養親族である子(合計所得金額38万円以下)がいる場合
・納税する人が、夫と死別し、合計所得金額500万円以下の場合(子の扶養有無は関係しない)
27万円 7.寡夫控除(シングルファーザー控除) ・妻と死別、または離婚した場合で、かつ、扶養親族である子(合計所得金額38万円以下)がおり、納税する人の合計所得金額が500万円以下の場合 27万円 8.勤労学生控除 ・納税する人が、学校教育法第1条で規定された学校の学生、または各種学校の生徒であり、合計所得が65万円以下の場合 27万円 物的控除と控除される金額
控除名 控除される金額1.社会保険料控除 健康保険、国民健康保険、介護保険、雇用保険、国民年金、厚生年金の保険料や共済組合の掛金などの支払い金額の全額2.雑損控除 災害・盗難・横領などにより生活用資産(家や家財、現金)に損害を受けたときに、次のいずれか多いほうの金額
①【損失額】-【保険金等で補填される金額】-【総所得金額等の10%相当額】
②【損失被害額のうち災害関連支出金額】-【5万円】
3.小規模企業共済等掛金控除 小規模企業共済掛金(iDeCo)の支払い金額の全額 4.地震保険料控除 支払った地震保険料の全額(最高限度額5万円) 5.寄付金控除 国や地方公共団体、特定公益増進法人などに「特定寄附金」を支出した場合に、次のいずれか低い方の金額から2千円を減じた金額
①「特定寄附金」の合計金額額
②年間所得金額×40%
なお、政治活動に関する寄附金、認定NPO法人等に対する寄附金及び公益社団法人等に対する寄附金の場合は、税額控除を選択することができます
6.生命保険料控除 一般生命保険料、介護医療保険料及び個人年金保険料を支払った場合に、次の金額を限度として控除されます
●平成24年1月1日以降に契約した生命保険の生命保険料控除
①一般生命保険(最高限度額4万円)
②介護医療保険(最高限度額4万円)
③個人年金保険(最高限度額4万円)
● 平成23年12月31日以前に契約した生命保険の生命保険料控除
①一般生命保険料(最高限度額5万円)
②個人年金保険(最高限度額5万円)
※ただし、合計適用限度額は、12万円となります
7.医療費控除 1年間に支払った医療費の総額から、保険金等で補填された金額を差し引き、次のいずれか低い方の金額を差し引いた金額が控除されます
①総所得金額の 5%相当額
②10万円
※ただし、控除される額の最高限度額は200万円となります
医療費控除のメリットはコレ!
大きく2つの種類に分けられる税金である「国税「地方税」を納めています。
「国税」とは、国に対して納める税金であり、消費税や相続税、所得税など約25種類が存在します。
「地方税」とは、住民票がある自治体に対して納める税金です。
「地方税」には、住民税や、固定資産税、自動車税などがあります。
医療費控除が受けられれば、国税=所得税から還付金を受け取れるのです。
地方税=住民税から還付金を受け取ることはできませんが、自動的に住民税が減額される仕組みとなっています。
「住民税のお知らせ」などで減額がどれくらいなのか、確認しましょう。
松葉 直隆
どうすれば、医療費控除できる?
年末調整とは?
会社が行ってくれるサラリーマンのための確定申告のようなもの。所得税の過不足金の金額が計算され、払い過ぎた所得税がある場合、払い過ぎた金額を12月末か翌年の1月に受け取れる制度。
「雑損控除」・「医療費控除」・「寄付金控除」は、個人で申請すしましょう。
特定の団体に寄付をすると寄付金控除として所得控除を受けられ、ふるさと納税もこれに該当します。
医療費控除ができるのは、原則、薬代が10万円を超えた場合のみ。
会社員ですと、年収200万円以下や1箇所以上から給与の支払いを受けていないことが条件です。
年間の医療費を計算してみよう
1年間(1月1日~12月31日)に医療費として支払った金額をすべてを足し合わせて計算し、家族分の医療費も合わせて計算できます。
松葉 直隆
一つの生計であれば、妻や子供の所得は関係せず、同居の有無も関係ありません。
誰が支払ったか確認しよう
「生計を一(いつ)にしている」とは、誰の収入で生活しているのか、ということです。
その方が節税に繋がります。
夫婦共働きの場合、個々に国民健康保険や健康保険を支払っていれば、年間の医療費が10万円以下であっても、①または②に該当すれば、医療費控除の申請が可能な場合があります。
①総所得金額の5%相当額 ②10万円
上記から低い金額の方を選択することができます。
たとえば、夫の年収が600万円(うち課税所得が400万円)で、妻の年収が150万円(うち課税所得が130万円)であった場合、①総所得金額の5%相当額は、夫(400万円×5%=20万円)となりますが、妻(130万円×5%=6万5000円)となります。
松葉 直隆
また、仕送りをしている両親にかかった医療費を、子どもの世帯で医療費控除申請すると、両親は、ご自身の「医療費控除」として申請することは不可能となります。
このため、両親の住民税が割高になる場合も出てくるため、親の世帯と医療費を合算する際は注意が必要です。
医療費の種類を確認しよう
平成29年から、セルフメディケーション税制が開始されていることは既に承知でしょう。
スイッチOTC医薬品か確かめるためには、レシートを確認しましょう。
松葉 直隆
医療費控除が可能な場合と不可能な場合
ケガや病気の治療費や入院費、診療のための交通費などが控除の対象です。
松葉 直隆
保険適用外の医療費でも、治療目的でしたら医療費控除として申告できます。
子供の歯列矯正や噛み合わせ矯正なども申請できるのです。
医療費控除の対象になるもの
医療費控除対象は主に次のとおりです。
入院・通院 ・医師による診療費や治療費
・医師などによる一定の特定保健指導
・看護師、准看護師による療養上の世話
・付添人を頼んだときの付添料
・入院中に病院で支給される食事代
・通院や入院のための交通費
(電車やバスなどでの移動が困難な場合のタクシー代を含む)医薬品 ・ケガや病気の治療や療養に必要な医薬品の購入代金
・医師などの処方や指示による医薬品の購入代金その他 ・治療のためのあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、
柔道整復師などによる施術代
・医療用器具の購入費や賃借料
・義手、義足、松葉づえ等の購入代金
・6か月以上寝たきりの人のおむつ代(医師による証明書がある場合)
・人間ドッグや健康診断費用(異常がみつかり治療を受けた場合)
・介護福祉士など等による喀痰吸引など
・介護保険制度で提供される一定の施設・居宅サービス
医療費控除の対象外のもの
医療費控除対象外のものには、おもに、次のようなものがあります。
入院・通院 ・身の回り品の購入代金(寝巻き・洗面具など)
・差額ベッド代
・病院内のレストランや病院外から取り寄せた食事代
・入院時の寝具、洗面具の費用
・入院時の借用料(テレビ・冷蔵庫など)
・自家用車で通院したときのガソリン代・駐車場代医薬品 ・疲労回復、健康増進のためのサプリメント その他 ・診断書の作成費用
・予防接種の費用
・人間ドッグ・健康診断費用(異常がみつからない場合)入院や通院時の交通費は、原則として、公共の交通機関やタクシー代に限られますが、緊急性がみとめられる場合などであれば、マイカーの駐車場代などが申請可能になることもあります。
このように、個人の事情によって判断されるケースがありますから、詳しくは、管轄の税務署に問い合わせするなどして、よく確認してみることをおすすめします。
ケース別の医療費控除って?
妊娠・出産時の費用
妊娠・出産時の医療費控除は主に次のとおりです。
医療費控除の対象となるもの
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他にも、未熟児の入院費用や無痛分娩費用なども医療費控除として申請することができます。
医療費控除の対象とならないもの
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歯の治療費
歯の治療を受けた場合では、おもに、次のようになります。
医療費控除の対象となるもの
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医療費控除の対象とならないもの
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なお、歯科ローンを利用した場合、ローン契約が成立した年度にて医療費控除対象となります。
松葉 直隆
眼の治療費
眼の治療を受けた場合では、おもに、次のようになります。
医療費控除の対象となるもの
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医療費控除の対象とならないもの
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眼鏡の購入代金については、医療費控除の対象となる斜視、弱視、難治性疾患などの疾患にのみと定められています。
医療費控除に必要な書類
平成29年(2017年)より、医療費控除を申請する際には、「医療費控除の明細書」(または、「セルフメディケーション税制の明細書」)の添付が必要となりました。
医療費控除の明細書の添付が必須です。
ですが領収書は申告後5年間、保管しておくのが義務です。
医療費通知がある場合、原本を添付する必要がある場合があります。
通院にかかった交通費も書面に添付します。
●寝たきりの人のおむつ代
※市町村長等が交付するおむつ使用の確認書などを「おむつ使用証明書」に代えることができる場合もあります。医師が発行した「おむつ使用証明書」 ●温泉利用型健康増進施設の利用料金 温泉療養証明書 ●指定運動療法施設の利用料金 運動療法実施証明書 ●ストマ用装具の購入費用 ストマ用装具使用証明書 ●B型肝炎患者の介護に当たる同居の親族が受ける同ワクチンの接種費用 医師の診断書
(その患者がB型肝炎にかかっており、
医師による継続的治療を要する旨の記載のあるもの)●白内障等の治療に必要な眼鏡の購入費用 処方箋
(医師が、白内障等一定の疾病名と治療を必要
とする症状を記載したもの)●市町村又は認定民間事業者による在宅療養の介護費用 在宅介護費用証明書
- 医療費控除の明細書
- 医療費のお知らせの原本
- 通院時の交通費が確認できる書面
- 医療費控除を申請する人の給与所得や公的年金等源泉徴収票(申告年度分)
- マイナンバーカード(ない場合には、マイナンバー入りの住民票と身元確認書類として、運転免許証、パスポート、被保険者証、在留カードのうちにいずれか一つ)
- 還付先の銀行の通帳や
- 印鑑(認印)
必要な書類 入手先 医療費控除の明細書 税務署(郵送で取り寄せ可、HPからダウンロードしてたものでもよい) 「医療費のお知らせ」がある場合には、その原本※コピーしたものは不可 国民健康保険や健康保険組合(郵送されてきたハガキ) 通院時の交通費がわかるもの 1年間の交通費を取りまとめた書面(合計金額がわかるもの、メモていどのものでよい) 交通費以外にも控除を受けるものがある場合には、その書類 上記参照 源泉徴収票 給与所得の場合は会社より配布される、公的年金の場合は、年金機構から送付されたもの マイナンバーカード ない場合には、住民票(マイナンバーの記載されたもの)を自治体の窓口で申請する 身元確認書類 運転免許証・パスポート・被保険者証・在留カードのうちのいずれか1つ※ただし、マイナンバーカードがない場合のみ 銀行の通帳やキャッシュカード 還付金の入金先がわかるもの 認印 シャチハタ不可
医療費控除でいくら?計算してみよう
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還付金として還付される実際額は、医療費控除額の10万円に対し、所定の税率を乗じた金額となります。
課税所得金額 ~195万円 ~330万円 ~695万円 ~900万円 ~1800万円 1800万円以上 税率 5% 10% 20% 23% 33% 40%
たとえば、年収500万円の方で、課税所得が300万円である場合、10万円×10%として計算され、還付される金額は、1万円です。
松葉 直隆
たとえば盲腸の手術のため入院し、病院に支払った医療費の合計が8万円だった時に、給付金を保険金から15万円受け取ると、差額として7万円の給付金が算出されます。
まとめ
還付申告は、原則、いつでも申告できます。
わざわざ混み合う時期に税務署まで出向かなくても良いのです!
何か心配なことがあれば、税務署に問い合わせてみましょう。