そろそろ花粉が飛び始めるシーズンです。この季節のアレルギーとして頭が痛いのは、『花粉症』です。花粉症を発症した方々はマスクに目薬・飲み薬、点鼻薬の準備を開始していることでしょう。
しかし、アレルギーはこれだけに限りません。食物アレルギーをはじめダニやゴキブリの糞、はては猫や犬の皮膚までアレルギーとなり得るのが現状です。
「アレルギー検査でいっそ全項目を検査したい。」と、切実に考えている方々もいらっしゃるはずです。
全項目を検査することは可能ですが、一度に全てのアレルギーを検査することは無理です。
また、アレルギー検査では公的保険が適用される場合、されない場合があります。アレルギー症状がみられないのに医療機関で検査をすれば、予想外に高額な費用を請求されるおそれもあります。
そこで今回は、アレルギー検査の方法とその費用について解説します。この記事を読めば、アレルギー検査の基本的な知識とそれにかかる費用、アレルギーの診断確定後の対応がよくおわかりのなるはずです。
目次
1.アレルギー検査について
私は毎年花粉症に悩まされています。春は桜の季節で皆さんうれしいでしょうけど、私自身はウンザリです。
そもそもアレルギーって一体何なのでしょう?この検査に保険は適用されるのでしょうか・・・?
こちらでは、アレルギーとは何か?検査や公的保険の適用について解説します。
1-1.アレルギーとは
アレルギーとは、免疫反応が外来の異物(例:花粉症の人の場合は花粉)に対し、過剰に引き起こされることを言います。
本来なら免疫反応は、外来の異物(抗原)を排除するために作用する、人間にとって不可欠な生理機能です。
アレルギーが起きる原因は人によって様々で、その人の生活環境はもちろん、遺伝等もあげられます。
では不潔な環境で育てばアレルギーを引き起こしやすい体質になるのか、といえばそうではありません。
実は乳幼児期に育つ環境が清潔すぎると、アレルギー疾患の罹患率は高まることが明らかとなっています。
1-2.そもそもどこで検査を受ける?
最近では先進国を中心にアレルギー患者が急増しており、日本では診療科目・標榜科の一つとして、アレルギー専門の「アレルギー科」が設立されています。
ご自分が何らかのアレルギーで悩んでいるなら、まずはこのアレルギー科の医師へ相談しましょう。
ただし、どの医療機関にもアレルギー科は常設されているといえません。
自宅近くの医療機関でアレルギー科が無い場合は、皮膚科・耳鼻科でも検査を受けられます。
例えば、アレルギーを引き起こすと言われている、卵や小麦、大豆、乳製品等を飲食し、顔や口、身体に発疹等があらわれたときは皮膚にアレルギー反応の出ているおそれがあります。その場合は皮膚科の医師に相談してみましょう。
一方、特定の季節または環境下で鼻水、鼻づまり、くしゃみが止まらないという症状に悩まされていることもあるでしょう。
この場合は、花粉症をはじめとしたアレルギー性鼻炎である可能性が考えられます。こちらの症状なら耳鼻科で相談することがおすすめです。
1-3.公的保険は適用はされるの?
自分が本当に、特定の外来の異物にアレルギーを持っているかを確認したいなら、医療機関でアレルギー検査を受けてみましょう。
ただし、全てのアレルギー検査で公的医療保険が適用されるわけではありません。
公的医療保険が適用されれば、費用は3割自己負担で収まります。ただし、公的医療保険が適用されるためには、①アレルギー症状の自覚が本人にあり、②所定の条件を満たしていることが条件となります。
逆に言えば、何となく調べたいからという理由で、本人に自覚症状もなく検査を受け、結局アレルギー反応が確認されなかった時は、全額自己負担となります。
2.アレルギーの検査方法について
特定の季節で引きこされる鼻水やくしゃみは本当に花粉症だけなのか、それとも他の影響でアレルギー反応がでているのか、正直わかりません。
アレルギーに関する全項目におよぶ検査はできるのでしょうか・・・?
第2章では、アレルギーの検査の限界とIgE抗体等について解説します。
2-1.世の中アレルゲンだらけ
アレルゲンとはアレルギー症状を引き起こす原因となるものを指します。このアレルゲンは無数に存在するとみて良いでしょう。
米、小麦、酵母、ゼラチン等、食事として摂取するものから、ハウスダスト、花粉等、鼻で吸い込んでしまうもの、ダニやゴキブリの糞さらにはペットである猫や犬の皮膚まで、あらゆる日常生活にアレルゲンは潜んでいます。
日常を送る中で、身体に何らかの異常が生じた場合には、まずはご自分の周りに存在する食物、動植物等を疑い、アレルギー検査をする場合の参考としましょう。
医師と相談する場合も、何に反応して身体の過剰反応が生じるかご自分で目星をつけていないと、スムーズに検査が進まなくなることもあります。
2-2.アレルギーの検査は一度に全項目は無理
アレルギー検査の対象となるアレルゲン全項目を調べることは可能ではありますが、一度に全ての検査を行うことはできません。
アレルギー検査は主に血液検査で行われます。現在200種類以上のアレルゲンに関する測定が可能と言われています。
ただし、検査にはそれなりの費用がかかり、主な血液検査の方法では全項目から数種類の検査項目を任意で選んだり、あらかじめ定められた検査項目を検査対象としたりして、検査が行われます。
検査方法によって5項目から39項目を対象に検査できますが、検査する項目が多い場合や、ご自分が自由に検査を選ぶことのできる検査は、費用が割高となります。
2-3.IgE抗体とは?
IgE抗体とはあまり耳慣れない名称ですが、アレルギー反応を起こす大きな原因物質です。
ある原因でアレルゲンによる感作がおこると、当該アレルゲンにだけ結合することの可能な特異IgE抗体が形質細胞(血液細胞の一種)で作り出されます。
アレルゲンが花粉であれば花粉特異IgE抗体、大豆であれば大豆特異IgE抗体が作り出されます。
この作り出されたされたIgE抗体は、身体の血液中を流れて、私たちの皮膚や粘膜のすぐ下にいるマスト細胞(※1)や、血液中を流れる白血球の一種である好塩基球(※2)の表面に付着し、アレルゲンと出会うのを待ちます。
アレルギーの血液検査で測定するのが、このIgE抗体の量で、現在200種類以上のアレルゲンに対する特異IgE抗体が測定可能です。
この測定値はクラス0~6まで7段階で示す方法がとられています。値が高ければ高いほど特異IgEの量が多いことを示します。
ただし、この値が高いからと言って必ずアレルギー反応が出るといわけではありません。
特に食物アレルゲンでは、特異IgE抗体がある程度高い数値であっても、そのアレルゲンを摂取して症状が出なかったというケースは存在します。
そのため、測定値の高低はあくまで参考資料一つとしてとらえた方が良さそうです。
(※1)マスト細胞:気管支・鼻粘膜・皮膚等、外界と接触する組織の粘膜や結合組織に存在する細胞です。
(※2)好塩基球:白血球の中で、普通染色の塩基性色素により暗紫色に染まる大型の顆粒をもつもので、炎症性反応に関わりアレルギー反応を引き起こす、重要な役割を果たしています。
3.アレルギーの検査方法と費用・その1
やはりアレルギーの検査は血液検査で行われるということですか。この血液検査にはどんな種類があるのでしょう?
その検査方法の種類と費用について知りたいです・・・・。
こちらでは、特異的IgE抗体検査(RAST)、IgE-MAST33検査、HRT検査それぞれの特徴と費用を解説します。
3-1.特異的IgE抗体検査(RAST)
こちらの検査方法は、各アレルゲンのIgE値をはかる方法です。ご自分が調べたいアレルギー物質を13項目まで選択し検査をすることが可能です。
検査の手順は次の通りです。
- 濾紙(ろ過をするとき使用される紙)にアレルゲンを固着
- 濾紙を患者の血液と反応させる
- 患者血液中に、例えば花粉IgEが大量に存在すると、濾紙にIgEがたくさん結合し、逆に患者が花粉IgEを少ししか産生しなければ、濾紙に結合するIgEの量も少ない
- さらに放射性アイソトープ(※)で標識した抗IgE抗体を結合させれば、放射線数をカウントすることが可能なので、特異的IgE量を測定する
採血し検査後、だいたい翌診療日には医師からの説明が可能となります。基本的に公的保険適用の範囲は、1回の検査で13項目までとなっています。
そのため、アレルゲンの可能性が高い項目を医師との相談・診察を通して決定し検査します。
ご自分に自覚症状があり、アレルギー反応が確認できるならば、公的医療保険が適用されると検査費用は5,000円前後が自己負担です。ただし、診察料等は別途必要となります。
(※)放射性アイソトープ:放射性同位元素とも呼ばれます。この生体高分子を標識し、これを検出する方法は免疫学的検定(アレルギー反応等)で応用されています。
3-2.IgE-MAST33検査
こちらの方法は、検査したい項目が任意で選べないものの、患者に疑われるアレルギー物質が検査対象へ含まれているならば、一度に33項目の物質を検査することができます。
公的医療保険が適用されると、検査費用は4,800円前後が自己負担です。
こちらの33項目は定められており、次のようなアレルゲンを検査します。
①穀物等(計6項目) |
ソバ、小麦、ピーナッツ、大豆、米、ゴマ |
②魚介類(計4項目) |
マグロ、サケ、エビ、カニ |
③肉類(計3項目) |
牛肉、豚肉、鶏肉 |
④その他の食品(計5項目) |
卵白、オボムコイド(卵白中に存在する耐熱性の糖タンパク質)、牛乳、キウイ、バナナ |
⑤花粉(計8項目) |
オオアワガエリ、カモガヤ、ブタクサ混合物Ⅰ、ヨモギ、スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカバ |
⑥室内(計4項目) |
コナヒョウヒダニ、ハウスダストⅠ、ネコ皮屑、イヌ皮屑 |
⑦その他(計3項目) |
ガンジダ(カンジダ属の真菌)、アルテルナリア(ススカビ)、ラテックス(ゴムノキ類の樹液:ゴム) |
3-3.HRT検査
この検査は、 「ヒスタミン遊離試験」とも言われているアレルギー検査です。
HRTでは、採取した血液中から分離させた好塩基球という細胞へ、アレルゲンを添加、 そのとき放出されたヒスタミンの量を測定します。
公的医療保険が適用されると、検査費用は2,000円前後が自己負担となりリーズナブルです。ただし、検査項目は5項目が上限です。
下表の中から5項目を選びます。
①穀物等 |
ソバ、小麦、ピーナッツ、大豆、米、ゴマ、ゼラチン |
②魚介類 |
マグロ、サケ、エビ、カニ、サバ |
③肉類 |
牛肉、豚肉、鶏肉 |
④その他の食品 |
卵黄、卵白、オボムコイド(卵白中に存在する耐熱性の糖タンパク質)、オバルブミン(卵白を構成する主要タンパク質)、牛乳 |
⑤花粉 |
ヨモギ、ヒノキ |
⑥室内 |
コナヒョウヒダニ、ハウスダスト、ネコ皮屑、イヌ皮屑 |
⑦その他 |
ガンジダ(カンジダ属の真菌)、アルテルナリア(ススカビ)、ラテックス(ゴムノキ類の樹液:ゴム)、ヒト汗 |
4.アレルギーの検査方法と費用・その2
いろいろな検査方法がありますね。でも、もっと一度にたくさんの項目を検査したいです。
また、血液検査だけではない他の検査方法も知りたいです・・・・。
こちらでは、血液検査の一つViewアレルギー39検査、皮膚テスト、食物アレルギー検査について解説します。
4-1.Viewアレルギー39検査
こちらの検査方法では、定められた39項目のアレルゲンを一挙に検査することが可能です。
公的医療保険が適用されれば、4,800円~6,000円程度が費用の目安となります。検査からおよそ1週間~2週間で結果がわかります。
こちらの39項目は定められており、次のようなアレルゲンを検査します。
①穀物等(計6項目) |
ソバ、小麦、ピーナッツ、大豆、米、ゴマ |
②魚介類(計5項目) |
マグロ、サケ、エビ、カニ、サバ |
③肉類(計3項目) |
牛肉、鶏肉、豚肉 |
④その他の食品(計6項目) |
卵白、オボムコイド(卵白中に存在する耐熱性の糖タンパク質)、牛乳、キウイ、リンゴ、バナナ |
⑤花粉(計8項目) |
オオアワガエリ、カモガヤ、ブタクサ混合物Ⅰ、ヨモギ、スギ、ヒノキ、ハンノキ、シラカバ |
⑥室内(計4項目) |
ヤケヒョウヒダニ、ハウスダストⅠ、ネコ皮屑、イヌ皮屑 |
⑦真菌:カビ(計4項目) |
ガンジダ(カンジダ属の真菌)、アルテルナリア(ススカビ)、アスペルギルス(アスペルギルス属の真菌)、マラセチア(人や動物の皮膚などに常在する真菌) |
⑧職業性(計1項目) |
ラテックス(ゴムノキ類の樹液:ゴム) |
⑨昆虫(計2項目) |
蛾(鱗粉)、ゴキブリ(糞) |
4-2.皮膚テスト
血液検査以外ではまず皮膚テストがあげられます。こちらのテストを医師が患者にとって必要であると認めた場合、公的医療保険の対象となります。
費用の方は保険適用を受ければ、1項目400円前後で受けられます。主に4種類のテストがあります。
(1)プリックテスト
主に薬剤アレルギー、食物アレルギーの原因を調べるための検査です。少量の抗原液を患者の皮膚にたらして、皮膚の表面を針で軽く刺し反応を見る方法です。だいたい15分後、30分後、1時間後に皮膚の状態を判定します。
痛みが少ないので小さい子供でも 簡単に検査できます。ただし、アレルギー反応は人それぞれであり、疑わしい物質をつけて症状が強いならば、安全のために入院した上で検査を行うケースもあります。そうなると検査費用は必然的に高くなります。
(2)スクラッチテスト
じんましん、アナフィラキシー(※)等のアレルゲンを探る検査です。やり方はプリックテストとほぼ同じで、まず皮膚表面にアレルゲンを含んだ試料を付着させます。
アレルゲンを皮膚内に十分吸収させるため、皮膚表面を針で引っ掻き、15分後以降の反応を見ることになります。
(※)アナフィラキシー:主に蜂に刺されたり、食物アレルギーで引き起こされたりする重篤なアレルギー反応です。皮膚炎のみならず、呼吸困難、吐き気、腹痛、下痢、めまい等の様々な症状が引き起こされます。血液循環の異常が急激に生じた場合、「アナフィラキシーショック」と言って、生命が危険な事態に陥ることもあります。
(3)皮内テスト
前述したプリックテスト・スクラッチテストで反応がはっきり出ないときに行う方法で、少量の抗原液を直接皮内に注射します。
こちらの方法は強い反応が出て危険なこともあるため、抗原の種類・症状の程度によって、いきなりこの検査から実施することはありません。注射後15分または20分後に、発赤・腫れの有無や大きさでアレルゲンかどうか判定します。
(4)パッチテスト
こちらは金属類や化粧品、薬品などによって起こるアレルギーを調べる方法です。
大きなガーゼ付き絆創膏のような物に何種類かの抗原をつけ、患者の皮膚に貼り付けて24~72時間後の反応を観察します。
血液検査のようにしっかりと検査結果が出るわけではないので、少なくとも3回程度は医療機関でチェックを繰り返すことになります。
2日または3日の間を置き再診になるため、正確な結果出るまで1週間~2週間程度かかります。費用は1,500円程度が目安です。
4-3.食物アレルギー検査
食物アレルギー検査には血液検査の他、次の2種類の検査でも可能です。
(1)食物除去試験
アトピー性皮膚炎型の食物アレルギーの場合、その原因と疑われる食物を1~2週間食べないようにします。こちらに関しては小児科で行われる場合が多く、詳細は第6章で解説します。
(2)食物負荷試験
原因と疑われる食物を患者が実際に食べてみて、症状が出るかどうかをみる検査方法です。
食物負荷試験には、①食物除去試験に続いて診断のために行うケースと、②食べられなかった食物が年齢を経ったから食べられるようになっているかを確認するケースの2つで実施されます。
一見、自分でもできそうと思いがちですが、前述したアナフィラキシーを引き起こすこともあります。
安全かつ正確な検査を行うため、専門の医師の指導の下、入院設備のある医療機関で行うことが賢明です。
こちらに関しても小児科で行われる場合が多く、詳細は第6章で解説します。
5.アレルギー検査の手順について
実際にアレルギー検査を受けてみたくなりました。検査で自分のアレルゲンを特定したいです!
アレルギー検査の手順や注意するべき点を教えてください・・・。
こちらでは、アレルギー検査の流れ、診断確定後の対応等について解説します。
5-1.アレルギー検査の流れ
こちらでは食物検査のアレルギーについてその手順を解説していきます。
- 問診:何らかの異常な症状が出たとき、どんな物をどれくらい食べたかを、医師が患者さんから聞き取ります。
- 血液検査・皮膚試験:診断を補助する検査を行い、原因と考えられる食物に対し、前述したIgE抗体を調べます。原因食物である可能性を確認することができます。
- 食物経口負荷試験:確定診断のための検査を行います。食物を実際に食べ、症状が出るかどうかを調査します。原因食物は何か、それをどの程度食べても良いのかを確定します。
- 診断確定
このようにアレルギー検査は1種類だけの検査にとどまらず、複合的に検査を組み合わせてアレルゲンを特定していきます。
ただし、問診の時点で原因食物と症状の因果関係が明らかになった時、血液検査の数値が明確に高い場合には、食物経口負荷試験は行わず、アレルゲンとなる食物を確定させることがあります。
5-2.問診は大切!
問診は、原因食物を確定するための非常に大切な過程となります。患者側は、できるだけ何を食べてどんな症状があらわれたかを、日誌にして記録していれば医師に伝えやすくなります。
次のような点を明確に伝えられれば、検査項目も絞られアレルギー検査がスムーズに進みます。
(1)何を食べたか
食物以外であれば何を触ったか、吸い込んだかが該当します。
食物の場合なら例えば卵を例にとってみましょう。医師に伝える場合は、単に「卵」という種類だけではなく、調理方法も伝えます。卵であるなら目玉焼き(加熱)にしたのか、卵かけご飯(非加熱)にしたのか具体的に話しましょう。
ただし、加工食品の場合は、食品のパッケージ等を持参し、書かれている食品表示を医師に確認してもらいましょう。そこから疑わしい食物をピックアップしていきます。
(2)食べた量
アレルギー症状の程度は、その食物に含まれるタンパク質の量に比例することとなります。
よって、できるだけ正確にどのくらい食べたかを伝えましょう。例えば目玉焼きなら卵二つ分という感じで報告します。
(3)身体に異常がみられた時間・症状がどれくらい持続したか
異常の現れた時間がアレルギーを疑われる食物を摂取後、2時間以内ならば「即時型アレルギー」、それ以降を「非即時型アレルギー」と呼びます。概ね食物アレルギーは即時型に該当します。
もしも、卵を食べて10分程度で身体に異常が出たら即時型アレルギーとして、食物アレルギーであることが非常に疑われます。重症を除いてアレルギー症状は半日以内に消えます。
症状の持続時間は、食物アレルギーのタイプを知るうえで重要な手がかりになります。
この場合、2時間程度で症状が収まったら即時型アレルギーとして検査が必要と判断されます。
(4)症状の特徴
どんな症状が起きたか具体的に医師へ報告します。写真まで撮る必要は無いですが、各部位で次のような症状が生じた場合は忘れずに伝えましょう。
- 皮膚症状→じんま疹、発疹、かゆみ、むくみ等
- 消化器症状→おう吐、腹痛、下痢等
- 気道症状→せき、ぜんそく、呼吸困難等
- 全身症状→倦怠感等
5-3.アレルギーの診断確定後の対応
食物アレルギーが確認されたからと言って、対象食品を一切摂取しないということは不適切です。
例えば、食物経口負荷試験の結果が陽性の場合、たとえ対象食物を食べても症状が出ない量が決定されたならば、その範囲内で十分摂取できることがあります。
ただし、アレルギー反応が激しく原因食物を完全に除去しなければならない場合もやはりあります。
その場合には、対象食物を発酵させたり高温で加工したり、加熱調理等で低アレルゲン化した食品は、問題なく食べることが可能です。
例えば、大豆アレルギーであっても、しょう油やみそはアレルギーの影響がなく食べられることもあります。
その際に気を付けるべきは、自分の判断だけで行うのではなく、必ず医師や栄養士の指示に従い摂取しましょう。
6.子供のアレルギー検査について
近頃は子供のアレルギー症状がとても問題になっていますね。子供のアレルギーで心配な親御さんも多いことでしょう。
子供のアレルギー検査はどのように行えば良いか教えてください・・・。
第6章では、子供のアレルギーの相談、検査方法、注意点を解説します。
6-1.子供は小児科で相談を
子供の場合はまず小児科で相談を受けましょう。そうはいっても当然ながら子供ではどこが苦しい、気持ち悪いと率直に医師へは伝えられません。
「5-2.問診は大切!」で解説した、(1)何を食べたか、(2)食べた量、(3)身体に異常がみられた時間・症状がどれくらい持続したか、(4)症状の特徴について、お母さんまたはお父さんが医師へ伝えてください。
そのため、子供が食品を摂取してどんな症状になったかを、しっかり確認して日誌等に記録しましょう。
6-2.子供のアレルギー検査方法
子供の場合は大人と全く同じ検査方法で、アレルギーを判断することはありません。
子供の身体・体力に負荷のかからない検査方法がとられます。多くの医療機関では、皮膚検査等も検査対象ですが、主に食物アレルギー検査を実施しているようです。
こちらでは、児童に食物アレルギー検査を受けさせた場合の、検査内容・かかる費用について解説します。
(1)医師への相談、問診後、時期をみて食物除去試験を行う |
まずはご自宅で原因と疑われる食物を子供へ1~2週間与えないようにします。これで当面影響が出なければこの方法を維持します。
なお、食物除去試験の場合は、患者さんが授乳中ならば、お母さんも共に食物を除去しなければなりません。
⇓
(2)食物負荷試験実施 |
例えば、乳児期に食物アレルギーがあったものの3~4歳になり、ご両親が食事除去を解除できるのではないかと考えたなら、子供が食べられるかどうかを検査してみます。実際に今まで除去していた食物を食べることを医師の指示の下で行います。
この食物負荷試験は、外来・入院の2つの方法があります。
- 外来:診察→負荷試験(自宅から食品を持参:3回に分け摂取)→診察(ただし、事後の症状によっては入院へ変更)
- 入院:診察→負荷試験(自宅から食品を持参:3回に分け摂取、ただし卵・小麦・牛乳以外は5回)→診察→宿泊→診察→退院
入院による食物負荷試験の方が、医療機関へ1泊して子供の症状も慎重に確認できるのでおすすめです。
必要な費用は外来・入院でそれぞれ異なります。
- 外来による食物負荷試験:9歳未満10,000円前後(ただし、乳幼児医療証で0〜3000円程度に減額)
- 入院による食物負荷試験:9歳未満24,000円前後(ただし、乳幼児医療証で780〜2,000円程度に減額)
6-3.子供のアレルギーに関する注意点
子供のアレルギーに関し、ご両親としてはまず医師の指示に従って対応しましょう。
アレルギー対象食品を頑として子供に与えないのではなく、指示通りに摂取するように心がければ問題ありません。
現在の子供のアレルギーに関する対応は、以前に「アレルギー食品を与えない」から、「徐々に与え慣らす」方向に変わっています。
ただし、この方向にシフトしても、ご両親の判断だけでアレルギー対象食品を与えるのは控えましょう。
7.まとめ
いよいよ花粉症の季節が迫ってきました。この時期に飲み薬や点鼻薬をしっかり常備する方々もいらっしゃるはずです。
市販薬で過剰反応を抑制するのも方法の一つですが、症状が気になるならまずは医師に相談してみましょう。
ご自分に合った良い花粉症対策をアドバイスしてくれるかもしれません。
そもそも花粉症は春だけに限らず、1年を通して何らかの花粉に影響されアレルギー反応を起こしていしまいます。
検査にてその原因となる花粉を特定しアレルギー反応を起こす前に、その対応策をとっておくことも良い方法です。
また、お薬だけでアレルギーを抑える方法はあまりおすすめできません。花粉症の季節には、外出時に花粉用のマスクやゴーグル等を着用し、鼻や目の負担をできるだけ軽減しましょう。