事業用の什器・備品、機械、器具、商品または個人の高価な動産に保険をかけたい、そんな事業主や個人もいることでしょう。そんな時に役に立つのが「動産総合保険」です。
この動産総合保険では、保管中・運送中・展示中の動産はもとより、火災、風災、雪災、落雷、ガス爆発、衝突等も補償されます。
一見すれば「火災保険の家財補償と同じでは?」、と疑問に感じられる方々もおられるかと思います。
しかし、動産総合保険と火災保険に補償内容の違いは存在し、この違いこそが動産総合保険の強みと言えます。
そこで今回は、動産総合保険の特徴とその役割について解説します。この記事を読めば、動産総合保険の基本的知識と、おすすめ動産総合保険商品について、よくおわかりになることでしょう。
目次
1.動産総合保険について
私は小さな事業所を経営していますが、事業用の什器・備品、機械は大切な商売道具なので保険をかけたいと思います。
ただ、この動産の補償については火災保険だけで対応するしかないのでしょうか・・・?
実は、事業用などの動産を補償する保険に「動産総合保険」という商品があります。
こちらでは、動産総合保険とは何か?その特徴等について解説します。
1-1.動産総合保険とは
動産総合保険は動産を対象とした幅広い補償を約束する商品です。各損害保険会社で取り扱われています。
この保険は、動産であるなら原則として全ての物が対象とされます。保険加入は事業主(法人)に限らず個人も対象となります。
所有する大型汎用コンピュータ・サーバ・PCやFAX・複写機、通信機器はもちろん、レンタル・リース等の対象となる動産も補償対象です。
ただし、動産とはいっても自動車や船舶、航空機のような乗り物には、車両保険・船舶保険・航空保険というように、その乗り物に関する個別の保険が適用されます。
また、動産総合保険で補償を受ける条件は、偶然発生した事故・自然災害等による損害であることが必要です。
1-2.動産総合保険の特徴とは
こちらではどんなケースで保険が下りるのか、下りないのかを解説します
(1)保険が下りるケース
動産総合保険の場合、具体的には次のような偶発事故が補償対象となります。
- 火災、落雷、破裂、爆発で動産が滅失・破損
- 風災(台風・突風)による動産の滅失・破損
- 盗難による動産の滅失・破損
- 破損(動産を誤って落下させた場合等)
- 落下物による事故(航空機の墜落等の予測不能な事態)
- 煙害、水漏れ、雪害で動産が滅失・破損
- 建物の崩壊(地震を除き、例えば強度不足で不動産が倒壊する等)したことで中の動産が滅失・破損
(2)保険が下りないケース
動産総合保険では、次のような場合が補償対象外となります。動産の自然損耗はもちろん、あまりにも規模の大きい自然災害等では、保険金が下りないことになります。
- 使用者の故意(わざと)や重大な過失(とんでもないミス)による事故
- 地震や噴火それに伴う津波で火災等が発生し、動産が焼失・流出・破損
- 自然の消耗や瑕疵、虫食いやねずみ食い、カビ・サビ・変質・変色等によって生じた動産の損害
- 原子力による損害
- 戦争や暴動・その他の事変、行政の公権力行使による動産の滅失・破損
- 修理・清掃等の作業上の過失や技術的拙劣による損害
- 単なる置き忘れ、紛失による損害
- 物件に加工を施し、その着手後の損害 等
1-3.動産総合保険が役立つケース
前述した動産総合保険の保険金が下りるケース・下りないケースは、火災保険と似た内容となっています。
そのため、「火災保険の補償対象である家財補償だけをかけておけば十分だろう?」と思われる方々もおられるはずです。
しかし、火災保険の家財(動産)補償はいろいろな制約があることも事実です。それを補完し、事業所や個人の大切な財産を補償することは動産総合保険の役割です。
第2章以降では、火災保険との違いを比較しつつ、動産総合保険の役割を詳細に解説していきます。
2.動産総合保険の役割について・その1
動産総合保険は事業用であっても、個人用であっても補償対象になるのはありがたいです。
では、どんな動産が補償されるのか具体的に教えてください・・・。
第2章では、動産を扱うどのようなケースで動産総合保険が役立つのかを解説します。
2-1.動産の製造・保管・運送・販売の補償
事業所の中には製造および保管、運送から販売まで、ほとんどの工程を一手に行う所もあるでしょう。そんな場合には、動産総合保険をかけておくことが非常に有効です。
それは、物品の原材料や商品、在庫品の仕入時から販売するまでの間の保管や、事業所の所有するトラック等で運送するリスクを全てカバーするからです。
一方、商品を委託業者等から運搬してもらい販売するならば、それまでの保管はいずれも外部の業者が管理責任を負います。このような運送作業を行う場合、運送業者は運送保険に加入していることでしょう。
この運送保険は正確には「運送業者貨物賠償責任保険」と呼ばれており、利用者から預かった荷物を運送中・保管中の事故で、損害が発生したとき保険が下りる商品です。
一方、ご自分の店舗、事業所等の敷地内・建物内にある物品のみをカバーしたい場合、事業用火災保険で足りるケースがほとんどです。
2-2.高価な動産を補償
事業所で骨董品や貴金属等の高価な動産を商品として扱っている場合、または個人が家屋内でこのような高価な物品を保有している場合にも、動産総合保険が役立ちます。
確かに、建物内にある動産(家財)は火災保険の補償対象となります。しかし、火災保険には次のような制約があることも事実です。
〇明記物件とは?
たとえ家財の火災保険を契約していても「明記物件」と呼ばれる物品に該当した場合は、事前に保険会社へ申告しないと補償外になるか、補償内容が制限されることになります。
この明記物件に該当するのは、30万円を超える貴金属や美術品、宝石、骨董品等が該当します。
仮に、申告のない明記物件の損害への対応は、保険会社によって大きく異なり、保険金の支払い限度額を30万円までとするケース(このケースがほとんど)、1事故あたり100万円を上限とするケース等があります。
〇申告しても対応は保険会社による
一方、明記物件をしっかり申告しても、保険金支払い限度額について、保険会社により内容が大きく異なります。
火災保険の契約内容によっては500万円や1,000万円までが上限となるケースや、申告した金額の範囲に関して制限を設けない(つまり、申告した金額が上限)とする保険会社もあります。
〇動産総合保険の場合は時価額
一方、動産総合保険の場合、損害保険金には上限額は500万円や1,000万円というように、明確に金額を定められていません。
あくまで損害額は「時価額」に基づき算定されます。時価額とは損害を被った物品の再調達価額から、使用期間・経過年数等に応じた消耗分を差し引いた金額のことです。
ただし、動産総合保険を対象物に設定する場合は、保険対象となる動産を一つ一つ指定しなければいけません。
2-3.多額の現金・小切手等を補償
業務を行う上で、事業所内に多額の現金・小切手等が保管されている場合も、動産総合保険が役立ちます。
〇火災保険だけでは補償が心許ない
火災保険では、事務所(店舗)内にある業務用通貨の場合、盗難被害に限り、上限30万円(こちらの条件がほとんど)または100万円まで補償されます。
火災保険ではあるのですが、お金が火事で燃えてしまった場合等は補償されないことになります。また、小切手はそもそも補償の対象になりません。
意外とお金に関しての補償は、火災保険加入時に担当者から十分説明されていなかったり、利用者が確認していなかったりするケースがあります。
その後、建物内に保管していたお金が焼失してはじめて、お金の損害が十分に補償されないことに気づき、愕然とする場合もあります。
〇動産総合保険の場合
動産総合保険では現金等に関する補償が充実しており、事業所の売上代金はもとより従業員の給与・賞与等の現金、小切手や手形を保管中する場合、現金等を運送する際の危険、集金中の現金までも包括的に補償されます。
例えば、保管だけではなく現金を事業所へ運搬している最中に、ひったくられた場合も補償対象です。
〇ただし、白地小切手および白地手形は無理
動産総合保険でも、あらゆる現金・小切手・手形が補償対象になるわけではありません。
白地小切手や白地手形は補償対象外です。この「白地」とは、こちらで要件の全部または一部を空白にし、後日その空白部分の要件を相手方に補充させる意思で振り出した小切手また手形を指します。
要するに「未完成」の状態である小切手や手形は、動産総合保険でも補償されません。
3.動産総合保険の役割について・その2
動産総合保険は火災保険を補完するような役割があるようですね。火災保険では補償対象外とされても、この保険があれば安心です。
では、リースや巡回販売とかの場合はどうなるのでしょう・・・?
第3章では、動産のリースやその他の補償について解説します。
3-1.動産のリースを補償
ご自分の事業者が貸主として保有動産をリースし、借主へ渡している場合も動産総合保険の補償対象となります。
〇リースは火災保険だと補償対象外
火災保険はあくまでも建物内にある動産が補償対象です。つまり、店舗や事業所からリースに出したら、その補償範囲外となります。
貸主からしてみてみれば、借主の管理下に置かれてしまうと、貸主側では事故のリスクに気をつける術がなくなり、ちゃんと破損もなく返してもらえるか不安です。
〇動産総合保険をかけていれば良いアピールにも
動産総合保険の契約の際、保険対象となる動産を一つ一つ指定することになるので、ご自分の店舗や事業所内になくても補償対象となります。
一方、これは借主側にとってリース動産を利用しやすくなることも意味します。そのため、借主側もこの保険に入っている事業者となら安心してリース契約を結べることでしょう。
ただし、動産総合保険をかけているリース動産でも、他人の物である以上、借主側が粗雑に扱って良いわけでない点は変わりません。
3-2.展示品や巡回販売も補償
展示会等に出品する動産であるとか、巡回販売する動産については、やはり事業所や店舗から運送し、展示等を行った後、元の場所に戻すまでのリスクは火災保険で補償されません。
こちらの場合も動産総合保険で補償されることになります。なお、巡回販売とは主に継続的な取引関係先である顧客を対象として、定期的に訪問して販売活動を行うことです。
その際に、偶然の事故や盗難で損害を被る場合も考えられます。そのリスクへの備えのために動産総合保険の加入は不可欠です。
3-3.その他の補償
動産総合保険に加入することで、対象動産自体の損害は当然補償されます。
しかし、ケースにより対象動産自体が補償されるだけでは済まない事態も考えられます。
そんな場合にかかった費用等も、動産総合保険の対象となることがあります。
主に次の費用が補償対象となります。
(1)損害防止費用
損害防止義務を履行するため、保険契約者(被保険者)が支出した必要な費用や有益となった費用を指します。
例えば、建物内で火事が発生し動産を守るため、消火活動に使用した消火薬剤の再取得費用等、損害の発生を未然に防いだり、被害拡大の防止の図るため支出したりした費用へ保険金が下ります。
(2)残存物片付け費用
事故の際に損害を受けた動産は、そのまま放置しておくわけにはいきません。この残存物は遅かれ早かれ処分する必要があるでしょう。
その残存物が動産であっても、それなりの大きさや重量ならば、解体や、取り壊し、後片付けに結構な費用がかかってしまう場合もあります。その費用は動産総合保険で賄うことができます。
(3)臨時費用
事業所の所有する動産へ損害が発生してしまうと、事業主や担当者等はその対応に追われることとなるでしょう。
そのため、交通費や宿泊費等いろいろな出費が想定されます。このような臨時の費用も動産総合保険で賄うことができます。
4.動産総合保険の加入申込と保険金請求について
動産総合保険は補償範囲が広く、対象動産はもちろん、動産の損害に関連する諸費用へ保険金が下りて助かりますね。
では、動産総合保険に関するいろいろな手続きを教えてください・・・。
第4章では、加入申込の手順および保険金請求の手順等について解説します。
4-1.加入申込の手順
加入申し込みは保険会社窓口や代理店等で行います。基本的に次の手順で進められます。
(1)保険会社等から資料請求 |
ご自分の事業用の物品または個人の高価な品に合った補償内容かを確認します。質問等があれば遠慮なく保険会社のカスタマーセンターや、代理店等へ確認しましょう。
⇓
(2)必要書類への記載 |
保険加入申込書は、法人または個人情報、補償を希望する動産情報、設定保険金額を記載します。
⇓
(3)必要書類の提出 |
保険加入申込書等を提出します。保険会社側が特に添付を要求する書類があれば、必ず用意して申込書とともに提出しましょう。
⇓
(4)審査後、保険証券送付 |
保険会社が書類を審査後、問題が無ければ保険契約は締結されます。その際、保険料の納付期限があるので忘れずに納付しましょう。しばらくしたら、保険証券がご自分の事業所またはご自宅へ送付されます。
4-2.保険金請求の手順
事故が発生し保険金を請求する場合は、保険会社へ手続き行います。基本的に次の手順で進められます。
(1)保険会社へ連絡 |
事故が発生し補償対象の動産が損害を被った場合、速やかに保険会社へ電話連絡します。動産の損害状況や事故の経緯等をできるだけ明確に伝えましょう。電話担当者の指示に従い、請求手続きを進めてください。
⇓
(2)保険会社が保険金請求書等を送付 |
連絡を受けた保険会社は、速やかに保険金請求書等を保険加入者へ送付します。
⇓
(3)必要書類への記載、添付書類収集 |
保険金請求には多くの添付書類が必要です。そのため、事業所なら各担当者または個人ならば家族が手分けして収集を行いましょう。それと同時に保険金請求書へ必要事項を記載します。
⇓
(4)必要書類の提出 |
保険金請求書および添付書類を提出します。書類の不備がないかチェック後、保険会社へ送付します。
⇓
(5)書類受理後、被災場所の調査を行う |
提出書類が保険会社へ到着したら、速やかに損害の調査がはじまります。保険会社の事故調査員や代行業者が、事業所(自宅)を訪問するかもしれません。調査に協力しましょう。
⇓
(6)保険金支払へ |
調査により保険会社が、保険金を支払う必要があると判断したら、保険加入者の指定口座に保険金が振り込まれます。必要書類の提出から保険金支払まで、約30日が目安です。
4-3.保険金請求の必要書類
保険金請求の際の書類は保険金請求書はもちろん、ケースによってそれぞれ添付書類が異なる場合もあります。
(1)保険金請求書
各保険会社の所定用紙に必要事項を記載していきます。
(2)事故内容報告書等
事故に関する報告書、損害または費用の発生を確認する書類や、その他これに類する書類損害または費用の発生を確認する書類、その他これに類する書類が必要です。
これらの書類で、事故発生の状況および日時や場所、事故の原因、損害発生の有無を確認することになります。
具体的な書類の例として次のような証明書・画像・報告書等があげられます。
- 警察署、消防署の証明書
- 事故原因や損害状況に関する写真・画像データ
- 修理業者等からの報告書
(3)保険価額・損害額確認書類
次の確認書類が必要です。
①保険価額確認書類
こちらの書類は主に次のような契約書や領収書等が該当します。
- 固定資産台帳
- 売買契約書
- 動産取得時の領収書
- 棚卸台帳・仕入伝票
- 現金出納帳・売上伝票
- 動産の図面・仕様書
②損害・支出額確認書類
こちらの書類は主に次のような見積書や明細書等が該当します。
- 動産の修理見積書、請求書、領収書
- 損害明細書
- 復旧通知書
(4)必要に応じ添付する書類
損害を被った動産によって次のような書類が必要です。
①保険対象、保険金支払対象となる動産等であることを確認する書類
- メーカー保証書
- 売買契約書
- 送り状
- 発送伝票
②保険金請求権者確認書類
- 委任状
- 印鑑証明書・代表者資格証明書
- 住民票
- 戸籍謄本
③損害が生じた動産の所有者確認書類
- 固定資産台帳
- 賃貸借・リース契約書
- 入出庫伝票
④質権が設定されている場合
- 質権者の保険金請求書・債務残高証明書
- 所定の保険金直接支払指図書
⑤事故、損害の調査のために必要な書類
- 調査同意書
⑥他より支払われる損害賠償金・保険金・給付金額の確認書類
- 示談書
- 判決書
- 保険会社等の支払通知書
保険会社によっては、更に追加の書類を要求する場合があります。
また、添付書類に不明な点があれば、保険会社の担当者と相談しながら書類を集めていきましょう。
指示に従い書類を収集・提出すれば、それだけ保険金をスムーズに受け取れます。
5.おすすめ動産総合保険・その1
動産総合保険の特徴や申込手続き等についてよくわかりました。是非、加入を検討したいです。
何かおすすめの動産総合保険商品はありませんかね・・・?
こちらでは、東京海上日動「動産総合保険」を解説します。
5-1.東京海上日動とは
正式な名称は、「東京海上日動火災保険株式会社」です。1944年(昭和19年)3月20日に設立された保険会社です。
火災保険はもちろん、動産総合保険、総合自動車保険、傷害総合保険等も販売しています。
東京海上日動の会社データは次の通りです(2018年3月31日現在)。
名称 | 東京海上日動火災保険株式会社 |
設立 | 1944年(昭和19年)3月20日 |
資本金 | 1,019億円 |
総資産 | 9兆6,698億円 |
従業員数 | 17,483人 |
損害サービス拠点 | 242ヵ所(国内):2018年4月1日現在 |
代理店数 | 50,616店(国内) |
5-2.東京海上日動「動産総合保険」の概要
動産総合保険の補償内容である、事業用動産や個人の高価な動産、商品・製品、現金・有価証券、展示物、リース等の動産が漏れなく補償されます。
事例をあげて設定できる保険金額・保険料を解説します。
(例)高価なカメラだったので、破損した場合のことを考えて動産総合保険へ加入した。
- 保険対象:カメラ(1台)
- 保険金額:20万円
- 免責金額:1事故2,000円
- 補償範囲:国内
- 保険期間:1年間
- 払込方法:一時払い
→約3,000円
なお、免責金額とは事例の場合、カメラが事故で破損したとき、2,000円分が差し引かれる(つまり、自己負担となる)金額を意味します。
5-3.動産総合保険の補償内容
こちらの商品の補償内容は次の通りです。
(1)損害保険金
損害額は対象動産の時価額に基づき算定されます。対象動産が全損した場合は、時価額または保険金額(契約金額)のいずれか低い金額が支払われます。
なお、一部損の場合は修理費用を損害額とし、免責金額を差し引いて支払われます。
(2)臨時費用保険金
1回の事故で300万円までを上限とし、損害保険金30%分に相当する金額が支払われます。
なお、この臨時費用保険金と損害保険金の合計額が、保険金額を超過したとしても、問題なく支払われます。
ただし、臨時費用保険金は、主契約に自動付帯されている「臨時費用保険金不担保特約」を外して設定します。
(3)残存物片付け費用保険金
「損害保険金×10%」の金額を限度とし、実際に保険加入者の支出した費用が支払われます。
残存物片付け費用保険金も損害保険金の合計額が、保険金額を超過したとしても、問題なく支払われます。
(4)損害拡大防止費用
保険金額または時価額のいずれか少ない金額から、損害保険金額を差し引いた残額を限度に支払われます。
(5)権利保全費用
保険会社から保険金を受け取らず、相手方(被害の原因を作った人)から損害賠償等を受けるための権利行使や、証拠資料の収集に必要な費用が支払われます。
6.おすすめ動産総合保険・その2
東京海上日動「動産総合保険」は、権利保全費用も補償されるのでありがたいですね。
では、損保ジャパン日本興亜の保険商品はどんな補償内容でしょうか・・・?
第6章では、損保ジャパン日本興亜「動産総合保険」について解説します。
6-1.損保ジャパン日本興亜とは
正式名称は「損害保険ジャパン日本興亜株式会社」です。もともと1944年(昭和19年)2月12日に設立された安田火災海上保険株式会社が前身となります。
2014年(平成26年)9月1日に、損害保険ジャパンと日本興亜損害保険とが合併して現在の名称になりました。
損保ジャパン日本興亜の会社データは次の通りです(2018年3月31日現在)。
名称 | 損害保険ジャパン日本興亜株式会社 |
設立 | 1944年(昭和19年)2月12日 |
資本金 | 700億円 |
総資産 | 7兆6,881億円 |
従業員数 | 26,189人 |
代理店数 | 56,340店 |
6-2.損保ジャパン日本興亜「動産総合保険」の概要
こちらの動産総合保険も、ほとんどすべての動産が保険対象となります。
事例をあげて設定できる保険金額・保険料を解説します。
(1)特定動産契約(法人の場合)
(例)次のような事業用動産を保管するため、破損した場合のことを考えて動産総合保険へ加入した。
- 保険金額:1,000万円
- 免責金額:100,000円
- 保管場所:広島県
- 保管建物:鉄骨造(耐火構造)
- 保険期間:1年間
- 払込方法:一時払い
対象動産 | 免責金額 | 保険料 |
大型電子計算機 | 100,000円 | 36,500円 |
事務用機器 | 100,000円 | 56,500円 |
エアコン、冷蔵庫 | 100,000円 | 46,500円 |
置時計、掛時計 | 100,000円 | 126,500円 |
(2)特定動産契約(個人の場合)
(例)次のような家財の保管をするため、破損した場合のことを考えて動産総合保険へ加入した。
- 保険金額:100万円
- 免責金額:10,000円
- 保管場所:山梨県
- 保管建物:鉄骨造(耐火構造)
- 保険期間:1年間
- 払込方法:一時払い
対象動産 | 免責金額 | 保険料 |
置時計、掛時計 | 10,000円 | 12,650円 |
ピアノ、オルガン、ギター | 10,000円 | 7,650円 |
テレビ、エアコン | 10,000円 | 4,650円 |
(3)現金・小切手・手形包括契約
(例)自社の現金・小切手・手形を保管・運送中のリスクに備えるため、動産総合保険へ加入した。
- 保険金額最高保管額:1,000万円
- 年間輸送額1億円
- 免責金額:10,000円
- 保管場所:東京都
- 保管建物:鉄骨造(耐火構造)
- 運送経路:東京都→大阪府まで
- 保険期間:1年間
- 払込方法:一時払い
対象動産 | 免責金額 | 保険料 |
置時計、掛時計 | 10,000円 | 130,000円 |
原則として、1事故につき免責金額(自己負担額)が保険金額1%以上で設定されることとなります。
6-3.動産総合保険の補償内容
こちらの商品の補償内容は次の通りです。
(1)損害保険金
保険金額(契約金額)が保険価額と同額以上の場合、その保険価額を上限として、損害額から免責金額を差し引いた金額が損害保険金として支払われることになります。
また、保険対象の動産の種類、その動産が適切な維持・管理等がなされていたかにより、再調達価額に次の割合を乗じた金額を上限とします。
対象動産 | 適切な維持・管理されていた | 適切な維持・管理されていない |
設備や装置または機械 | 70% | 90% |
上記以外 | 50% | 90% |
なお、これらの限度割合は、その損害が生じた各動産へそれぞれ適用されることになります。
(2)臨時費用保険金
1回の事故で300万円までを上限とし、損害保険金30%分に相当する金額が支払われます。
なお、労働争議等の集団による破壊行動は補償範囲に含まれますが、盗難による事故は補償対象外となります。
(3)残存物取片づけ費用保険金
清掃費用等の後片づけ費用として、「損害保険金×10%」の金額を限度とし、実際に保険加入者の支出した費用が支払われます。
7.まとめ
火災保険や動産総合保険の保険金を請求する場合に、気を付けるべき事柄があります。
それは、保険金が下りる場合でも、あくまで保険対象物の「実損害」のみが補償されるという点です。
例えば、火災保険で家財に1,000万円の保険金をかけ、動産総合保険で1,000万円の保険金をかけた場合を考えてみましょう。
もしも建物内で火災が発生し、補償対象物が焼失し全部で1,000万円の損害額と算定された場合、単純に「火災保険1,000万円+動産総合保険1,000万円=2,000万円」、ということにはなりません。
下りる保険金額は、たとえ複数の保険会社と契約していても、損害額と同額の補償金額1,000万円が下りるだけですので、火災保険金や動産総合保険金で、保険加入者の『得』になるということはありません。