「配偶者は相続税がかからないんでしょう?夫が亡くなっても全部私に相続するし心配ないわ!」などと思っている方はいませんか?
平成27年の相続税法の改正によって相続税負担が大きくなり、これまで相続税と無縁だった世帯にも相続税について真剣に考えなければならない時代がやってきました。
そんな中でよく聞かれる「配偶者は相続税がかからない!」という正しいようで誤解を招く恐れのある言葉。鵜呑みにしてしまうと将来想像しなかった税金の恐怖に襲われるかもしれません。
この記事では、相続税の基本的な知識から思わぬ落とし穴、解決策まで解説していきますので相続税対策が無縁だと思っている方もぜひ読んでみてくださいね!
目次
1.相続税の基礎知識
1−1.法定相続人の数え方
1−2.相続税が上がった?相続税の基礎控除とは
1−3.法定相続通りに分けるとどれくらいの税金がかかるの?
2.配偶者控除ってどんな制度?
2−1.配偶者控除とは?
2−2.使える人の条件は?
2−3.申告期限を過ぎるとどうなるの?
3.他にもある!配偶者が使える税制優遇
3−1.自宅の相続にかかわる税制優遇
3−2.贈与で税制優遇
4.配偶者控除はじっくり考えてから利用して!二次相続の恐怖
4−1.二次相続って何?
4−2.二次相続のリスクと解決策
5.節税、どんな対策がある?
5−1.生命保険を使って節税できる?生命保険の非課税制度とは?
5−2.生前贈与で計画的に節税をする!?
6.役に立つおすすめ保険
7.まとめ
目次
1.相続税の基礎知識
「相続税は何千万、何億と資産を持っている人だけが関係するもの」そう考えている方も多いのではないでしょうか?確かに、相続税には基礎控除と呼ばれる税金が課されない部分が設けられているので、不動産や銀行の預金などの金融資産が基礎控除内でおさまる場合にはそれほど心配する必要はないのかもしれません。
しかし、平成27年の法改正によってこの基礎控除の金額がぐっと減りました。その結果、東京都内では、それまでの倍の約12%の世帯が相続税の対象となりました。
もはや、相続税は他人事ではないかもしれません。
まずは、この章で法定相続人の考え方、基礎控除の計算方法などを見て、ご自身に相続税が関係あるかどうかをチェックしていきましょう。
1−1.法定相続人の数え方
法定相続人の数え方は、基礎控除金額を算出する大前提としてとても重要です。ご自身に万が一のことがあった場合、誰が法定相続人となるのかということを確認してみたいと思います。
まず、大切になってくる考え方は法定相続人となる優先順位です。
常に法定相続人となるのは配偶者、次いで第一順位が子(子がなくなっている場合は孫)、第二順位が父母(父母がなくなっている場合は祖父母)、第三順位が兄弟姉妹となります。
配偶者と子がいる場合は配偶者と子が法定相続人となり、子がいない場合には配偶者と父母が法定相続人になります。また、子がなく、父母と祖父母も亡くなっている場合には配偶者と兄弟姉妹が相続人となります。よって、次のような家族構成の場合の法定相続人数は下記のとおりになります。
・配偶者と子2人の場合・・・法定相続人は3人
・子なし、配偶者と父母が健在の場合・・・法定相続人は3人
・子なし、配偶者と兄弟姉妹3人が健在の場合・・・法定相続人は4人
・配偶者他界、子2人の場合・・・法定相続人は2人
そして、さらに亡くなった人と法定相続人の関係によって法定相続分の割合も変わってきます。ポイントは、配偶者と子の組み合わせの場合、配偶者が1/2、子が1/2となること。また、配偶者と父母の組み合わせの場合、配偶者が2/3、父母が1/3となること。配偶者と兄弟姉妹の組み合わせの場合には、配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4となること。配偶者が他界(もしくはもともといない)場合には法定相続人が均等分割するということです。
上の例で考えてみましょう。
・配偶者と子2人の場合・・・配偶者が1/2、子が1/4ずつ(1/2を更に2人で分けるため)
・子なし、配偶者と父母が健在の場合・・・配偶者が2/3、父母が1/6(1/3を更に2人で分けるため)
・子なし、配偶者と兄弟姉妹3人が健在の場合・・・配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/12(1/4を更に3人で分けるため)
・配偶者他界、子2人の場合・・・子が1/2ずつ
法定相続分についてもご理解いただけましたか?「法定相続分」という基準は存在しますが、遺産分割協議の上で「子がいても全額配偶者に相続する」など自由に決めることが可能です。
法定相続分はあくまでもその人が受け取ることができる基準ですので、必ずしも法定相続分通りに分割する必要はなく、「参考値」のようなものです。遺産分割協議は家族間であっても揉めることも多いようです。
1−2.相続税が上がった?相続税の基礎控除とは
法定相続人の人数が把握できたら、次は基礎控除の金額について確認してみましょう。
基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の人数」で算出することができます。再度、先ほどの例で考えてみましょう。
・配偶者と子2人の場合・・・基礎控除は4,800万円(法定相続人3人)
・子なし、配偶者と父母が健在の場合・・・基礎控除は4,800万円(法定相続人3人)
・子なし、配偶者と兄弟姉妹3人が健在の場合・・・基礎控除は5,400万円(法定相続人4人)
・配偶者他界、子2人の場合・・・基礎控除は4,200万円(法定相続人2人)
冒頭から繰り返しているように、実はこの基礎控除額、平成27年1月から大幅に減少してしましました。平成26年12月までは「5,000万円+1,000万円×法定相続人の人数」だったんです。法定相続人が3人いる場合には、以前は8,000万円の基礎控除があったにも関わらず現在は4,800万円。4割も削減されてしまったんですね。
相続資産には不動産も入ってきますので、都心部で土地付きの住宅を保有していれば基礎控除の枠の多くを使うことになりそうですよね。
1−3.法定相続通りに分けるとどれくらいの税金がかかるの?
それでは、実際に法定相続分を相続すると仮定して、どれくらいの相続税がかかってくるのかということを見ていきましょう。基礎控除内でおさまる場合には相続税はかかってきませんが、ここでは相続遺産額を8,000万円として計算してみます。
まず、相続税を計算するときには相続遺産額から基礎控除額を引いて課税遺産総額を求めます。そして、各人の法定相続分に基づいて相続税総額を計算します。以下の速算表を使います。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ー |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
そして更にその相続税額を実際の分割割合に応じて計算します。
先ほどの具体例の一つを使って計算してみましょう。
・配偶者と子2人の場合
①課税遺産総額を求める
8,000万円-4,800万円=3,200万円
②各人の法定相続分に基づいた課税遺産総額を算出する
配偶者 3,200万円×1/2=1,600万円
子1 3,200万円×1/4=800万円
子2 3,200万円×1/4=800万円
③速算表で相続税額を計算する
配偶者 1,600万円×15%—50万円=190万円
子1 800万円×10%=80万円
子2 800万円×10%=80万円
よって、相続税総額は190万円+80万円+80万円=350万円となります。
④相続税額を実際の分割割合に応じて計算する
配偶者 350万円×1/2=175万円
子1 350万円×1/4=87.5万円
子2 350万円×1/4=87.5万円
ここまでで、法定相続人の人数が3人、遺産総額が8,000万円の場合にどれくらいの相続税がかかってくるかということがわかりましたね。かなりの高額な税金ですよね。
ただし、この記事の本題となってきますが、配偶者に相続する場合には税額軽減として1億6千万円か配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い方まで相続税がかからなくなる法律があるため、この例でも配偶者の175万円の相続税はゼロとなります。
よって、子どもたちのみ相続税が発生するのです。それでもトータルで175万円の相続税。
この税負担を発生させないように配偶者に全額相続してしまおうという考え方もあるようですが、それはそれでリスクがあるのです。次章以降で説明していきます。
2.配偶者控除ってどんな制度?
前章では、配偶者と子2人が相続人となった場合の相続税の計算例を見てきました。配偶者に課せられるはずの175万円の相続税が配偶者の税額軽減によってゼロになるということは前述のとおりです。
この章では、この税額軽減の制度内容について見ていきます。
2−1.配偶者控除とは?
相続税の配偶者控除とは、相続が発生したときに配偶者がもらった財産が1億6千万円以下、または1億6千万円を超えた場合であって法定相続分までであれば、配偶者が負担する相続税がゼロとなる制度です。
前章の配偶者と子2人に相続する例では、法定相続割合で遺産分割をすると子にはそれぞれ87.5万円の相続税が発生していましたが、例えば全額を配偶者が相続すると8,000万円の遺産総額は1億6千万円以下であるため相続税負担はなくなります。
また、極端な例ですが、10億円の相続財産があった場合でも、配偶者の法定相続分1/2の5億円までは相続税はかからないのです。
配偶者に税制面でこのようなメリットがあるのは、一般的に資産は夫婦が協力して築いてきたものだという考え方が背景にあります。また、残された配偶者の今後の生活を保障するためという意味合いもあります。
相続税は、相続資産が基礎控除内でおさまり税負担が発生しない場合には基本的に申告不要ですが、配偶者控除を使って税負担が発生しないという場合は相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告をしなければいけません。
よって、それまでに遺産分割が確定している必要があります。これらのことがなされない場合には納める税負担が大きくなってしまう可能性があります。
2—2.使える人の条件は?
相続税の配偶者控除を利用できるのは、被相続人の死亡の時点で婚姻関係にある配偶者です。離婚が成立している相手や、内縁の妻などは利用することができません。そもそも、内縁の妻の場合には法定相続人になることもできません。
「結婚して◯◯年以上の」などの条件は特にないので非常にシンプルでわかりやすいですよね。
2−3.申告期限を過ぎるとどうなるの?
相続の発生を知った日の翌日から10ヶ月以内に申告をしなければ配偶者控除を使うことができないというのは先ほど説明しましたが、実は救済措置もあるんです。
遺産分割の話し合いがスムーズに進めば何も問題はありませんが、お金が関わってくると例え家族であっても意見が対立しそれぞれが自分の権利を主張し合うということも珍しくないようです。「相続」は「争族(争う家族)」なんていう別称もあるほど・・。
救済措置は配偶者の相続分がなかなか決まらないというときに使うことができます。
申告書と併せて「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を税務署に提出します。遺産分割がスムーズに進まない事情や今後の予定を書く書類です。
一旦は相続税を全額支払うことになるのですが、この届出をすることによって3年以内に遺産分割が確定すれば分割が決まった日から4ヶ月以内に税務署に届出をすることによって払いすぎた税金の還付が受けられます。
3年が過ぎても遺産分割がなされない場合にも所定の届出をすることによって期間の延長も可能です。
しかし、遺産分割協議が進まず何年も家族がバラバラという事態は避けたいものですよね。最近は、亡くなる前に家族みんなが納得するような遺言を残しておくというのもブームになっているようです。
3.他にもある!配偶者が使える税制優遇
相続税において、配偶者には大きな税制のメリットがあるということはご理解いただけたかと思います。実は、相続税の配偶者控除だけではないんです!
他にも配偶者が利用できる税制上の優遇があるので、一挙紹介していきます。
3−1.自宅の相続にかかわる税制優遇
夫が亡くなったときに自宅が夫名義だった場合、こちらも相続資産に含まれてきますよね。でも、これまで住んできた家、これからも住んでいく家に相続税が大きくかかってくることになるなんて考えると将来が不安で仕方ありませんよね。
実は、居住用の家は「小規模宅地等の特例」という制度によって相続税が大きく軽減されています。「小規模」と言っていますが、330㎡(100坪)までであれば、居住用スペースに使っている土地に対して8割の評価減をしてくれるというものです。
1億円の土地であっても、居住用であれば2,000万円まで評価額を下げて計算することができるのです。あくまでも「居住用」であることが大切。空き地であったり、他の用途に使われている土地はこの制度の対象にはなりません。配偶者であれば無条件で使うことができる制度です。
3−2.贈与で税制優遇
小規模宅地の特例というのは、相続が発生したあとの話でした。次に紹介するのは、相続発生前、まだ夫婦どちらも健在の場合の制度「贈与税の配偶者控除」です。
夫婦間で居住用不動産を購入するための資金贈与する場合には、2,000万円まで非課税になるという制度です。
こちらは配偶者であれば無条件でOKというものではなく「婚姻の届出から贈与日までの期間が20年以上」「国内にある居住用不動産や国内にある居住用不動産取得資金である」「贈与を受けた年の翌年3月15日までに居住する見込みであり、かつ今後引き続き居住していく予定」「過去に今回の贈与者から、この特例の適用を受けていない」などの要件はありますが、こちらの制度を利用することで、資産が多い方の配偶者の相続財産を減少させて将来の課税遺産額を減らすこともできるため、場合によっては節税効果を期待できることがあります。
相続税の配偶者控除の他にも、居住用の住宅については、この章で紹介した「小規模宅地等の特例」や「贈与税の配偶者控除」など配偶者には相続税の負担を軽減できる税制が用意されているんですね!
4.配偶者控除はじっくり考えてから利用して!二次相続の恐怖
「相続税の配偶者控除を使えば、たいていの場合相続税の負担は避けられる!」というほど、配偶者への優遇が大きいことがわかりましたよね。
特に、平成27年に相続税の基礎控除額が減額してからは配偶者控除はより広く知られるようになり「配偶者は相続税ゼロでしょ!?」という考えも広まりました。
でも、実はこの制度、安易に使ってしまっては後々恐怖が訪れることになるんです。それが「二次相続」の恐怖です。詳しく見ていきましょう。
4−1.二次相続って何?
親から子へ資産が移動する過程を考えてみます。まずは夫婦のどちらか一方が亡くなって、配偶者と子への相続が発生します。そして、残った配偶者もいずれ亡くなりこのタイミングで親の資産の全額が子へ移動することになりますよね。
どちらか一方が先に亡くなるときの相続を「一次相続」、残った配偶者が亡くなり子へ相続されるときのことを「二次相続」と言います。
一次相続では相続税の配偶者控除を使うことができるため、一般的に相続税はそれほど大きくかからないとされていますが、二次相続では配偶者控除などの税制優遇はなく税負担が重くのしかかってくることも珍しくありません。二次相続のリスクについて考えてみましょう。
4−2.二次相続のリスクと解決策
二次相続のリスクを具体的に考えるために、最初に見てきた配偶者、子2人へ8,000万円を相続する場合に立ち返ってみましょう。
・配偶者と子2人の場合
①課税遺産総額を求める
8,000万円-4,800万円=3,200万円
②各人の法定相続分に基づいた課税遺産総額を算出する
配偶者 3,200万円×1/2=1,600万円
子1 3,200万円×1/4=800万円
子2 3,200万円×1/4=800万円
③速算表で相続税額を計算する
配偶者 1,600万円×15%—50万円=190万円
子1 800万円×10%=80万円
子1 800万円×10%=80万円
よって、相続税総額は190万円+80万円+80万円=350万円となります。
④相続税額を実際の分割割合に応じて計算する
配偶者 350万円×1/2=175万円・・・配偶者控除によってゼロに!
子1 350万円×1/4=87.5万円
子2 350万円×1/4=87.5万円
法定相続分ずつ相続すると子2人にそれぞれ87.5万円の相続税が発生することになりました。
例えば、一次相続のタイミングでこれらの税負担を避けたいがために(もしくは配偶者の今後の生活のために)8,000万円全額配偶者に相続していたとします。
そして、残った配偶者がその直後に死亡し二次相続が発生した場合を考えてみます。今度は子2人が法定相続人となるため基礎控除額は4,200万円です。この条件で再度相続税額を計算してみます。
・法定相続人が子2人の場合
①課税遺産総額を求める
8,000万円-4,200万円=3,800万円
②各人の法定相続分に基づいた課税遺産総額を算出する
子1 3,800万円×1/2=1,900万円
子2 3,800万円×1/2=1,900万円
③速算表で相続税額を計算する
子1 1,900万円×15%−50万円=235万円
子2 1,900万円×15%−50万円=235万円
よって、相続税総額は235万円+235万円=470万円となります。
違いはお分かりでしょうか?一次相続で子にも相続していれば相続税額は175万円で済み、二次相続時には残った配偶者からの相続は基礎控除額の4,200万円以内でおさまって課税対象にはなりませんが、配偶者に安易に全額相続してしまった場合には、470万円もの相続税が二次相続で発生します。その差はなんと295万円!
配偶者控除が使えないことと法定相続人が減り基礎控除額が減ってしまうことが要因です。更に、残された配偶者は、被相続人から受け継いだ相続資産の他にも、もともとご自身の資産を保有している場合も珍しくありません。そうなると更に高額な課税遺産総額となり結果として相続税も膨れ上がります。これが二次相続の恐怖です。
誰にでもいつかは二次相続のタイミングがやってくるので、解決策は「一次相続発生前に二次相続のことまで見越して対策をしておく!」ということに尽きますが、対策方法として生命保険を使った節税方法や、生前贈与であらかじめ相続資産を小さくしておくなどの方法があるので、次の章で紹介していきます。
5.節税、どんな対策がある?
基礎控除額の計算や二次相続について考えてみて「相続税、なんとなく自分にも関係がありそうだな」と思った方は、「節税」に興味が出てくるのではないでしょうか?
資産を思いっきり使ってしまうという究極の方法もあるかもしれませんが、節税しながらしっかりとお子さんたちに残す方法もあります!
生命保険と生前贈与という選択肢について見ていきましょう。
5−1.生命保険を使って節税できる?生命保険の非課税制度とは?
「生命保険で相続税対策ができる」というのは、非常に有名な話なので、資産家の方たちの間ではすでに使っている方や保険会社や銀行の外交員から説明を受けたことがある方も多いかもしれませんね。
「生命保険で相続税対策」が一体どういうことなのか、簡単に説明していきます。
生命保険には非課税制度があり、銀行預金などで持っている金融資産を生命保険の形に変えることで「500万円×相続人の人数」の金額が非課税となるんです。基礎控除額とは別に非課税となる金額が追加されるのです!
毎度お馴染みの相続資産8,000万円、法定相続人が配偶者、子2人のパターンで考えてみましょう。
預金の一部を生命保険1,500万円にしておくことで、相続資産8,000万円から、基礎控除額4,800万円を差し引き、更に1,500万円の非課税分も引くことができてしまいます。
そうすると課税遺産総額は1,700万円になるので法定相続分ずつ分けた場合の相続税額は子がそれぞれ42.5万円ずつのトータル85万円までに縮小することとなります。生命保険を活用しなかった場合の175万円とは実に90万円も変わってくるのです。
相続税を気にされている方は、法定相続人の人数で決められた非課税枠の最大限まで利用して生命保険契約をされている場合が多いです。
残念ながら、昔のように生命保険で資産を増やすということは難しい低金利時代となってしまいましたが非課税枠を使うことで残された家族が支払う相続税を減らすことができるのであれば使う価値は十分有りではないでしょうか?
5−2.生前贈与で計画的に節税をする!?
「生前贈与」という言葉を聞いたことはありますか?生前贈与は「相続税」ではなく「贈与税」の話になってきます。
贈与税は一般的に相続税以上に税負担が大きい傾向がありますが、年間110万円以内であれば非課税となります。
相続時の節税を意識する人たちの間では、親から子や孫に110万円の非課税枠を利用して毎年コツコツと贈与をして相続時の資産を減らすということを行っている方も多いようです。
例えば、8,000万円の遺産を配偶者・子2人に相続することになる場合には、生前に10年間かけて子2人へ110万円ずつ贈与していれば、「110万円×2人×10年間」で総額2,200万円の資産を子へ移動できていることになりますよね。
この生前贈与によって、相続時の課税遺産額を8,000万円−4,800万円(基礎控除額)−2,200万円=1,000万円まで抑えることができます。残りの1,000万円も先ほど紹介した生命保険の非課税制度を使ってしまえば、同じ金額を家族に残しているにも関わらず相続税負担がゼロになってしまうんです!
何も対策を打っていなければ、175万円もの相続税が発生していましたが、生前贈与や生命保険の非課税制度などを駆使することでゼロにまで持っていくことができるため対策をするのとしないのとでは大違いですよね!
そして、この生前贈与は、法定相続人に限らず活用することができるので、孫などにも資産の移動の範囲を広げることも可能です。子や孫の人数が多ければ多いほど短期間で高額の資金の移動ができますよね。
ただし、生前贈与にしても生命保険の非課税制度にしても、相続資産がキャッシュであることが重要となってきます。
例えば、相続資産の大半が土地や不動産だった場合には110万円ずつの贈与や生命保険の形に変えることなどは困難を極めますので、あくまでも預貯金などで大きな資産をお持ちの方向けのスキームと言えます。
6.役に立つおすすめ保険
生前贈与について見てきましたが、実は生前贈与というのはしっかりと確実に行おうと思うとなかなか大変なものなんです。
毎年110万円の非課税枠があるとは言え、子や孫の口座に毎年ぼんぼん振込をしていくだけでは危険な場合が多いです。「名義預金」ではないかと疑われてしまうんです。
名義預金とは、しっかりした贈与契約を結ぶことなしにただお金の置き場所を移し変えているだけの資産のことを言います。極端な例で言えば、子や孫の名義で親や祖父母が銀行口座を作って通帳・印鑑を自分で管理してしまう預金があります。これは確実に名義預金。
毎年お金が入っている口座を変えていたとしても、親や祖父母の資産と見なされ、万が一のことがあったときにご自身の遺産の中に含まれる結果になってしまいます。
一方で、しっかりと子や孫が管理する口座に移していたとしても毎年「贈与契約書」を作成し、贈与しておかなければこれもまた名義預金を疑われることに。何人もの子や孫へ贈与している場合には骨の折れる作業なのです。
若いうちはささっと出来てしまうかもしれませんが、だんだんと高齢になってくるとこういった作業の一つ一つが煩わしくなってしまうかもしれませんよね。
そういった手続き上の簡略化と名義預金を疑われないようにするために、生前贈与に保険商品を活用する方法もあります。
全国の地方銀行などを中心に約70の銀行で販売されている三井住友海上プライマリー生命の「やさしさ、つなぐ」という商品です。
契約時に、受贈者に「毎年◯◯円のお金を◯◯年間贈与する」と決めて、一時払いで保険料を支払います。そうすると、毎年保険会社が決められた受贈者にお金を振り込んでくれるのです。贈与契約書の作成なしに正当な贈与として認められますし、振込手数料も発生しません。
高齢になったとしても毎年の贈与を忘れることなく続けられるので手続き面での心配もなくなりますよね。
万が一、贈与が終わらないうちに被保険者が亡くなった場合には死亡保険金となるので、こちらは生命保険の非課税制度の対象となります。
すでに他の生命保険をお持ちの場合は、非課税枠を超過してしまう可能性もあるので、贈与契約期間が終了するまで続けられることが理想ですが、死亡保険金として保険金受取人が指定されていれば、銀行などに預けた預貯金などよりスピーディーに現金化することが可能なので、その点もメリットと言えるのではないでしょうか?
外貨建てタイプもありますが、もっともリスクの低い円建てタイプは85歳まで契約が可能となっており、贈与できる親族の範囲は3親等以内です。
また、三井住友銀行では同商品が「幸せの贈りもの」という商品名で販売されています。
7.まとめ
配偶者の相続税について見てきましたが、いかがでしたか?「配偶者の相続税は実質ゼロ!」は間違えではないかもしれませんが、より深く見ていくと二次相続などの恐ろしい展開が待っている可能性があることをお分かりいただけましたか?
一次相続、二次相続ともにあらかじめ対策をしておくことで後々発生する税金が大きく変わるということも往々にしてあるので、ぜひ一度ご自身の相続税について確認し、何か打てる対策がないか検討してみてください!特に、生前贈与はある程度時間が必要になってくる節税方法なので早めの対策をおすすめします。