現在の日本では、高齢化が進展により介護を必要とする高齢者の増加や、介護期間の長期化で、充実した介護の重要性が増しています。
介護保険制度は、高齢者を取り巻く日本国内の変化に伴い創設された制度です。この制度は、高齢者の介護を日本国民全体で支えることが目的です。
介護保険は要介護度によって、介護を必要する高齢者の介護給付が決定され、その充実が図られています。
この制度を維持するため、介護を利用する方々の負担も必要ですが、国や地方自治体、なにより我々国民の支払う保険料が貴重な財源となっています。
そこで、今回は介護保険の保険料の計算と納付方法について解説します。この記事を読めば、介護保険の基本的な知識と、保険料の納付額・減免措置等もおわかりになることでしょう。
目次
1.介護保険について
公的な介護保険サービスは、私が高齢になったとき必要となるかもしれません。
まずは介護保険の特徴についておさらいしたいです・・・・。
第1章では、介護保険とは何か?その特徴について解説します。
1-1.介護保険とは
介護保険は、2000年4月1日から施行された我が国の公的制度です。
介護保険制度では、介護が必要となった高齢者を、その要介護の進行度に合わせ、適切な介護サービスが提供されます。
介護が必要となる高齢者は、この認定を受ける際、要支援1・2、要介護1~5と区分され、それぞれの区分で異なった介護サービスが、介護保険の対象となります。
また、高齢者に介護が必要となったら、公的介護保険の実施主体であるお住いの市区町村が自動的に認定してくれるわけではなく、介護認定してもらいたい高齢者側から申請する必要があります。
1-2.介護保険の特徴
介護保険制度は介護を必要する高齢者へ、単に介護サービスを提供するだけで完結する仕組みではありません。
介護を必要する高齢者が、なるべく自立して、高齢者自身の希望に則った介護を受けられるよう、柔軟かつ効率的な取り組みが行われます。
それを踏まえ次の5つが介護保険の主な特徴となります。
(1)介護予防という考え方 |
介護保険では、介護を必要とする方々について、現在の状態を悪化させることを予防し、症状を軽減させる取り組みが実施されます。 取り組みとしては、介護施設・医療機関でのケア、ご自宅へ介護士等が訪問、運動能力のケアを目的した介護があげられます。 |
(2)医療との連携で効率の良い治療 |
介護を必要とする方々の疾病の治療も踏まえたケアを考慮すると、入院・転院・退院の各段階で、介護ケアを中断せずに行うため医療機関との連携が不可欠です。 介護を必要とする方々は、介護保険のサービスを利用しながら、公的医療保険からも医療サービスを利用することが想定されます。 この場合、公的な介護保険・医療保険で重複しているサービスがあれば、原則として介護保険サービスが優先されます。 |
(3)ケアマネジメント |
ケアマネジメントは、介護が必要な方々と、福祉や医療サービス実施主体とをつなぐ手法です。 原則として介護支援専門員(ケアマネージャー)が、介護を必要とする本人・家族と面接し、その意見を踏まえつつ適した介護を分析します。 その後、ケアマネージャーは介護サービス計画を立案・実施し、その評価を行います。その上で改善点を探り、更に新たなプランを立てて介護が実施されます。 利用者本人・家族は、自主的にケアプランを策定することもできますが、その複雑さから、ケアマネジメントは基本的にケアマネージャーが行うこととなります。 |
(4)在宅生活の継続と介護の充実 |
介護のための施設は各地域に設置されていますが、介護のためとはいえ、住み慣れた我が家から離れることは誰でも嫌なものです。 そこで、ご自宅での介護サービスを受け、介護状態の改善を目指すことも介護保険制度では重視します。 |
(5)民間事業者等の活用 |
介護保険制度の実施・協力は、医療機関・既存の介護事業者だけではありません。積極的に民間業者・非営利活動法人(NPO)の参入も促します。 民間業者等の参入は、訪問看護の他、介護が必要な方々の健康・身体状態の異常の有無を確認する定期巡回、認知症の方々の徘徊を防ぐ見守り活動等で活かされています。 |
1-3.被保険者は2種類
介護保険の被保険者は65歳以上の方々が対象となる「第1号被保険者」、40歳~64歳までの「第2号被保険者」に分かれます。
第1号被保険者も第2号被保険者も、介護保険制度の維持のため介護保険料を納付する必要があります。
ただし、どの位の保険料を毎月納付するのか、納付方法についてもそれぞれ異なります。
第1号被保険者の介護保険料と納付方法については第3章以降で、第2号被保険者の介護保険料と納付方法については第6章でそれぞれ解説します。
2.介護保険の給付について
介護保険は、非常に柔軟な対応や様々な介護サービスが利用できて、頼りになる仕組みのようですね。
では具体的な介護給付内容について知りたいです・・・。
第2章では、要介護度が認定される利用者の状態、それに応じた介護サービス等を解説します。
2-1.要介護度は7つ
どの位の要介護なのかは、利用する本人・家族側で決定するわけではありません。介護保険の実施者である市区町村によって認定されます。
ケアマネジャーの訪問調査等を基に、お住いの市区町村の「介護認定審査会」が介護の度合い(ランク)を判定します。
この介護ランクは、次の要支援・要介護の次の7つのランクに区分されます。
介護ランク |
要支援1 |
要介護状態とまではいきませんが、何らかの社会的支援を必要とする状態の人が該当します。 |
要支援2 |
生活の一部について介護を必要とする状態で、介護予防サービスを利用し、現在の状態の維持・改善の見込まれる人が該当します。 |
要介護1 |
生活の一部で部分的に介護を必要とし、①食事・排泄に時折介助が必要、②立ち上がり・歩行等がやや不安定、③問題行動や理解の低下の確認される人が対象となります。 |
要介護2 |
軽度の介護を必要とし、①食事・排泄に何かしらの介助を必要、②立ち上がり・片足での体勢保持、歩行等に何らかの支えが必要、③衣服の着脱がやや困難、④物忘れ・直前行動理解の一部低下の確認される人が対象となります。 |
要介護3 |
中等度の介護を必要とし、①食事・排泄に一部介助が必要、②立ち上がり・片足での体勢保持、歩行等が単独で不可能、③入浴・衣服の着脱に介助が必要、④問題行動・理解力低下に該当する人が対象となります。 |
要介護4 |
重度の介護を必要とし、①食事に介助を要する、②排泄、入浴、衣服の着脱に全面的な介助を要する、③立ち上がり・両足での体勢保持がほぼ不可能、④問題行動が目立ち・理解力はかなり低下していることが確認できる人を対象とします。 |
要介護5 |
最重度の介護を必要とし、①食事・排泄が単独で不可能、②立ち上がり・両足での体勢保持が不可能、③意思伝達のほぼ不可能な人が該当します。 |
2-2.介護給付内容
介護保険が適用される介護サービスは、前述した介護ランクによってそれぞれ利用できるサービスが異なります。
〇要支援1・2で受けられる介護サービス
要支援サービスは主に、在宅での介護予防給付がメインとなります。主に下表のようなサービスが受けられます。
介護予防訪問介護 | 要介護に進行しないよう、身体介護・生活援助等が実施されます。 |
介護予防訪問入浴介護 | 要介護に進行しないよう、入浴車で利用者宅を訪問、入浴サービスを行います。 |
介護予防訪問看護 | 介護予防のため、看護師等が訪問し看護を行います。 |
介護予防訪問リハビリテーション | 要介護を防ぐため、介護スタッフが利用者宅を訪問し、適切なリハビリを実施します。 |
介護予防通所介護 | 要支援対象者本人が施設へ通い機能訓練・レクリエーションに参加し、要介護の進行を予防します。 |
介護予防通所リハビリテーション | 要支援対象者本人が施設に通い、筋力トレーニング・栄養指導・口腔ケア等を受け、要介護の進行を予防します。 |
その他に、要支援対象者本人へ福祉用具の貸与、住宅改修等のサービスも利用できます。
施設の利用に関しては、介護予防特定施設入居者生活介護、介護予防認知症対応型共同生活介護等、本人の症状に合った生活介護が選べます。
また、本人が認定された要支援にふさわしいサービスを利用するため、本人・家族の依頼を受け、ケアマネジャー・保健師等がケアプランの作成、連絡調整を行う支援が継続して実施されます。
〇要介護1~5で受けられる介護サービス
要介護サービスは、要介護者がこれ以上症状を悪化させないことを目的に実施されます。
主に下表のようなサービスが受けられます。
介護訪問介護 | 要介護者の入浴、食事、排せつ等の身体介護、掃除、洗濯、調理等の生活援助が実施されます。 |
介護訪問入浴介護 | 入浴車で利用者宅を訪問、入浴サービスを行います。 |
介護訪問看護 | 看護師等がご自宅を訪問し、要介護者へ療養上の世話・診療補助を実施します。 |
介護訪問リハビリテーション | 要介護者宅へ介護スタッフが訪問し、適切なリハビリを実施します。 |
介護通所介護 | 要介護者本人が施設へ送迎等の方法で通い、機能訓練・レクリエーションに参加し、要介護の進行を予防します。 |
介護通所リハビリテーション | 要介護者本人が施設へ送迎等の方法で通い、筋力トレーニング・栄養指導・口腔ケア等を受けます。 |
介護老人保健施設 | 状態が安定している要介護者を対象とし、ご自宅への復帰を目指すリハビリテーション、介護・看護を受ける施設です。ただし、この施設利用に介護保険が適用されるのは、①原則として65歳以上、②要介護1以上の人が対象となります。 |
指定介護療養型医療施設 | 医療面が充実しており、長期間療養を必要とする要介護者が治療・療養するための施設です。この施設利用に介護保険が適用されるのは、①原則として65歳以上、②要介護1以上の人が対象となります。 |
特別養護老人ホーム | 認知症・寝たきり等の要介護者が日常生活上の介護を受ける施設です。この施設利用に介護保険が適用されるのは、①原則として65歳以上、②要介護3以上の人が対象となります。 |
要介護サービスでは、要介護度の違いで介護保険が適用される施設も異なります。しかし、決して指定された要介護度にならないと施設を利用できないわけではありません。
介護保険が適用されなくとも施設を利用したい場合、自費でよければ問題なく利用可能です。
前述した他に、「地域密着型サービス」という各市区町村の提供するサービスがあります。例えば認知症高齢者を対象としたグループホーム等が該当します。気になる人は各市区町村の窓口で利用条件等を確認してみましょう。
また、要介護者の場合も、福祉用具の貸与や、住宅改修等のサービスがあります。
当然のことながら、要介護者に合ったサービスを利用するため、要介護者本人・家族の依頼を受け、ケアマネジャー・保健師等がケアプランの作成、連絡調整を行う支援が継続して実施されます。
2-3.介護給付の財源
前述したように介護サービスを利用する方々の状態に合わせ、細やかな介護保険給付が実施されています。
この介護保険給付は我が国全体で支える仕組みとなっており、その財源負担は次のような割合になります。
(1)介護保険利用者:1割
(2)保険料・公費:9割
- 第1号保険料19%
- 第2号保険料31%
- 市町村公費:12.5%
- 都道府県公費:12.5%
- 国費:25%
この(1)+(2)で介護保険の財源は賄われています。
次章では、重要な財源の一つである第1号保険料(第1号被保険者の納める介護保険料)について解説します。
3.介護保険料の計算(第1号被保険者)
第1号被保険者は65歳以上の方々を対象とするわけですが、介護保険料はどのように算出されるのでしょうか?
詳細を詳しく知りたいです・・・。
こちらでは、介護保険料の計算と、納付方法等について解説します。
3-1.第1号被保険者の介護保険料の計算
ご自分が65歳になった場合は、第1号被保険者に該当します。65歳以上の方々が払い込む保険料は、介護保険料の基準額を基に計算されます。
ただし、介護保険料の基準額は国が一律に指定しているわけではありません。あくまで介護保険料は、お住いになる市区町村の介護実情に則り、所得段階に分け算出されます。
〇介護保険料は各市区町村で様々
もちろん計算の仕方は定められています。「各市区町村の介護サービス総費用の中で第1号被保険者分負担分÷各市区町村の第1号被保険者数=介護保険料の基準額」で計算されます。
ただし、所得段階の区分については、各市町村が独自に判断して分けています。各市町村によって概ね11段階~14段階に分かれ若干差があります。
それに加え、介護保険料自体も一定期間に改定されます。原則として3年毎に保険料は増減されます。
このように介護保険料は、被保険者本人の合計所得金額、被保険者本人・世帯員の市民税の課税状況、で段階別に決定されます。そのため、3年ごとに所得区分や保険料をしっかり確認しておく必要があります。
〇年間介護保険料の一例
こちらでは宮城県仙台市の設定した所得段階・年間保険料を参考に、下表を使って説明します。
- 参考自治体:宮城県仙台市
- 対象被保険者:第1号被保険者(65歳以上)
- 所得段階:13段階
- 介護保険料の基準額(年額):70,700円(平成30年度~平成32年度)
所得段階 | 対象 | 調整率 | 保険料年額 |
1 |
①生活保護受給者 ②世帯全員が市民税非課税で、かつ老齢福祉年金受給者 |
基準額×0.45 | 31,800円 |
2 | 世帯全員が市民税非課税、前年の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下の人 | 基準額×0.45 | 31,800円 |
3 | 世帯全員が市民税非課税で、前年の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円超~120万円以下の人 | 基準額×0.65 | 45,900円 |
4 | 世帯全員が市民税非課税で、前年の合計所得金額と課税年金収入額の合計が120万円超の人 | 基準額×0.75 | 53,000円 |
5 | 世帯の誰かが市民税を課税されており、本人は前年の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円以下の人 | 基準額×0.85 | 60,100円 |
6 | 世帯の誰かが市民税を課税されており、本人は、前年の合計所得金額と課税年金収入額の合計が80万円超の人 | 基準額×1.00 | 70,700円 |
7 | 本人が市民税を課税され、前年の合計所得金額が125万円未満の人 | 基準額×1.10 | 77,700円 |
8 | 本人が市民税を課税され、前年の合計所得金額が120万円~200万円未満の人 | 基準額×1.25 | 88,300円 |
9 | 本人が市民税を課税され、前年の合計所得金額が200万円~300万円未満の人 | 基準額×1.50 | 106,000円 |
10 | 本人が市民税を課税され、前年の合計所得金額が300万円~500万円未満の人 | 基準額×1.70 | 120,200円 |
11 | 本人が市民税を課税され、前年の合計所得金額が500万円~700万円未満の人 | 基準額×1.90 | 134,300円 |
12 | 本人が市民税を課税され、前年の合計所得金額が700万円~1,000万円未満の人 | 基準額×2.10 | 148,500円 |
13 | 本人が市民税を課税され、前年の合計所得金額が1,000万円以上の人 | 基準額×2.30 | 162,600円 |
3-2.介護保険料の納付方法
第1号被保険者の納付方法は2種類あります。
- 特別徴収:老齢・退職・遺族・障害年金のいずれかの受給額が年額18万円以上の人が対象となり、年に6回支給される年金から、介護保険料が事前に差し引かれることになります。
- 普通徴収:特別徴収に該当しない人が対象となり、納入通知書等でコンビニ・金融機関等で納付します。納入通知書は毎年6月に送付され、6月~翌年3月まで10回に分け納める必要があります。
なお、年度途中で65歳になった人は、その年度内には普通徴収となります。65歳になった日(誕生日の前日)が含まれる月の翌月(なお、4月に65歳になられた人は6月)中旬に送付される納入通知書で納付します。
特別徴収で本来納付することとなる人には、普通徴収から特別徴収へ切り替わる際、事前に案内が送付されます。それまで納入通知書または口座振替で納付しましょう。
3-3.介護保険料の計算の注意点
介護保険料は各市区町村で介護保険料の基準額も、所得段階もそれぞれ異なります。
さらに第1号被保険者の方々は何らかの事情で、ナカナカ介護保険料が支払えないケースもあるかと思います。
普通徴収に該当する方々は、家計が厳しいからという理由で滞納するのはやはり賢明な対応といえません。
各地方自治体では、いろいろなケースを想定して「介護保険料の減免・徴収猶予制度」等を設けています。
市区町村の担当者と相談した上でこの制度を活用し、対応する必要があります。
4.介護保険料の減免・徴収猶予、境界層措置制度・その1
近頃は日本各地で地震被害が発生しています。こんな事態に遭遇したら正直、介護保険料の納付どころではなくなってしまいます。
そんな時に、何か良い納付免除措置は無いものでしょうか・・・?
こちらでは、特別な事情による介護保険料の減免・徴収猶予措置等について解説します。
4-1.特別な事情による介護保険料の減免・徴収猶予措置
自然災害等の特別な事態に遭遇し、第1号被保険者が介護保険料の納付困難と認められるならば、一定基準の範囲内で保険料減免をすることができます。
また、介護保険料の減免に準じ徴収猶予を利用することが可能です。徴収猶予期間は6か月以内、納付不可能と認められる金額が限度とされます。
当然、市区町村側が自動的に被災者となった第1号被保険者の被害を算定し、減免措置等を講じてくれるわけではなく、第1号被保険者本人が申請する必要があります。
4-2.災害等による減免措置
災害等の減免措置は次の通りです。
〇災害等による損害に伴う減免措置
第1号被保険者本人・世帯の生計中心者が、震災、風水害、火災などで、自宅、家財等に著しい損害を受けたとき、申請することで介護保険料の減免措置を利用できることがあります。
減免対象となる住宅や家財が災害により損害を受け、その損害額(保険金等で補てんされる金額を差し引いた金額)が住宅または家財の3/10以上で、その世帯の前年中の合計総所得金額が1,000万円以下の場合に適用されます。
必要書類は次の通りです。
- 介護保険料減免申請書
- 印鑑
- り災証明書:市区町村の消防局が発行する書類です。
- 損害保険金・共済金・賠償金から補てんされる金額のわかる書類
これらの書類を、市区町村の窓口(主に介護保険課が担当)に提出します。
〇災害等による死亡・障害に伴う減免措置
第1号被保険者の属する世帯の生計中心者が、震災、風水害、火災などで、残念ながら死亡または重大な障害を受けた場合、申請することで介護保険料の減免措置を利用できることがあります。
必要書類は次の通りです。
- 介護保険料減免申請書
- 印鑑
- 身体障害者手帳の写し等:心身の障害を受けた場合に証明するための書類です。
これらの書類を、市区町村の窓口(主に介護保険課が担当)に提出します。
4-3.その他の減免措置
自然災害が原因となるケースの他、長期入院・失業・農作物の不作等でも減免措置が活用できます。
〇長期入院等による減免措置
第1号被保険者の属する世帯で、生計中心者の収入が、死亡、障害、長期入院(3か月以上)により著しく減少したら、申請することで介護保険料の減免措置を利用できることがあります。
当該年の世帯合計所得金額の合算額の見積額が、前年中の合計所得金額の合算額の7/10以下に減少し、かつその世帯の前年中の合計総所得金額は600万円以下であることが条件です。
必要書類は次の通りです。
- 介護保険料減免申請書
- 印鑑
- 身体障害者手帳の写し等:心身の障害を受けた場合に証明するための書類です。
- 入院期間証明:長期入院を証明するとき、医療機関が発行する書類です。
- 遺族年金・障害年金・恩給法に定める給付金・仕送り・贈与等がある人は、その金額が確認できる書類
これらの書類を、市区町村の窓口(主に介護保険課が担当)に提出します。
〇失業等による減免措置
第1号被保険者の属する世帯で、生計中心者の収入が、事業または業務休廃止、事業における著しい損失、失業が原因で著しく減少したら、申請することで介護保険料の減免措置を利用できることがあります。
当該年の世帯合計所得金額の合算額の見積額が、前年中の合計所得金額の合算額の7/10以下に減少し、かつその世帯の前年中の合計総所得金額は600万円以下であることが条件です。
必要書類は次の通りです。
- 介護保険料減免申請書
- 印鑑
- 雇用保険法に定める失業給付金・遺族年金・障害年金・恩給法に定める給付金・仕送り・贈与等がある人は、その額が確認できる書類
- 離職したことが確認できる書類
- 給与証明書等当年中の収入見込みを証明する書類
これらの書類を、市区町村の窓口(主に介護保険課が担当)に提出します。
〇農作物の不作等による減免措置
第1号被保険者本人・世帯の生計中心者の収入が、干ばつ等による農作物の不作等により、著しい減少を受けたとき、申請することで介護保険料の減免措置を利用できることがあります。
不作等による損失額の合計額が、平年における収入額の合計金額の3/10以上で、その世帯の前年中の合計総所得金額が1,000万円以下の場合に適用されます。
必要書類は次の通りです。
- 介護保険料減免申請書
- 印鑑
- 減収量証明書:農業共済組合等から取得する書類です。
これらの書類を、市区町村の窓口(主に介護保険課が担当)に提出します。
5.介護保険料の減免・徴収猶予、境界層措置制度・その2
介護保険料の納付について、低所得者の方々はそもそも難しい場合があります。
その場合の減免措置についても教えてください・・・・。
こちらでは、低所得者等に関係する介護保険料の減免措置を解説します。
5-1.介護保険料の納付が難しい理由は色々ある
各市町村によって制度を実施しているか否か温度差はあるものの、低所得者が無理なく介護保険料を納められるように配慮している場合があります。
例えば、各市町村の判断で一定の基準以下と判定されるときは、保険料の一部が第1段階相当額へ減額される措置をとることがあります。
ただし、低所得者向けの介護保険料の減免措置は、各市区町村で対応にバラツキがあります。
申請を希望する場合、低所得者層の減免措置の有無を、お住いの市区町村へ事前に確認してから検討しましょう。
5-2.低所得者等に対する介護保険料の減免措置
減免の対象となる条件は、当該措置を設けている市区町村の場合、概ね介護保険料の所得段階が①第2段階~第5段階程度で、②世帯の収入・資産の状況は生活保護基準以下と認められる場合が該当します。
必要書類は次の通りです。
- 介護保険料減免申請書
- 印鑑
- 年金支払通知書、給与支払明細書、預貯金通帳等:世帯全員の収入・資産のわかる書類を用意します。
これらの書類を、市区町村の窓口(主に介護保険課が担当)に提出します。
5-3.境界層措置制度とは
境界層措置制度とは、①ご自分の介護保険料・サービス利用料を支払うことが経済的に困難で、生活保護の申請を希望する人が該当し、②それらの利用者負担の軽減を受けると、生活保護に該当しなくなることが証明される場合に、介護保険の利用者負担・保険料軽減を受けられる制度のことです。
この制度を利用する場合、生活保護の申請が却下または生活保護が廃止になった人は、福祉事務所から境界層該当証明書等を発行してもらい、それを市区町村の窓口(主に介護保険課が担当)に提出しましょう。
6.介護保険料の計算(第2号被保険者)
まだ私は65歳になりませんので、第2号被保険者ということになります。
第2号被保険者の介護保険料の計算について教えてください・・・・。
こちらでは、第2号被保険者の介護保険料の計算を、社会保険の場合、国民健康保険の場合に分けて解説します。
6-1.第2号被保険者の介護保険料の計算
第2号被保険者の介護保険料は、加入している公的医療保険の保険料に含まれ、保険料額の算定方法も加入している公的保険ごとに異なります。
なお、生活保護受給者の場合は、国民健康保険から既に脱退しているため、加入している公的医療保険がなくなります。よって介護保険制度の第2号被保険者には該当しません。
一方、介護保険制度の第1号被保険者にそのような要件はなく、生活保護受給者になってる人でも65歳になると第1号被保険者へ該当します。
6-2.社会保険の場合
社会保険(被用者保険)に加入する人は各事業所の給与所得者となります。こちらは、基本的に標準報酬月額へ保険料率を乗じて保険料額を算出します。
原則として労使折半で保険料を負担します。なお、65歳到達時点で社会保険や共済組合に加入していると、65歳到達時点で第2号被保険者としての介護保険料分がなくなって、直接市町村に第1号被保険者としての介護保険料を支払うことになります。
各市区町村に支払う第1号被保険者としての介護保険料は、ご自分が65歳到達後も引き続き就労することになっても、労使折半とはなりません。
6-3.国民健康保険の場合
社会保険(被用者保険)以外の方々が該当します。基本的に所得割「賦課基準額×保険料率」と均等割「均等額×加入者数」を合算し、その限度額が世帯で設けられます。
注意すべき点は、65歳になる年度は、月割とした保険料額をさらに年度全体の納期に分散されます。
こちらは、介護保険料が二重になっているかのような捉え方をするかもしれません。しかし、総額は月割で計算されているので安心しましょう。
例えば、年度の介護分保険料が12万円の場合、10月で65歳になるなら、月割で120,000円×(6/12)=60,000円となります。
普通徴収は、3月までの10期に分割するため、1期6,000円×10期となります。
また、国民健康保険は世帯単位になので、世帯主の夫65歳以上・妻65歳未満の場合、妻の介護分保険料も夫宛となります。
こちらも介護保険料が二重となっているように感じます。しかし、保険料は個人単位でちゃんと計算されています。
7.まとめ
介護保険料は、介護保険制度を維持するために欠かせないものです。特に65歳から普通徴収で納付する場合もあるので、滞りなく介護保険料を納付しましょう。