どんな場合に高額医療費助成制度が利用できるの?わかりやすく解説

日本は世界的にも例が無いほど優れた医療体制が整った医療先進国です。また、公的医療保険制度も非常に充実しています。

健康保険や国民健康保険等に加入しているならば誰でも、保険診療の際に医療費の3割分を自己負担するだけで質の高い医療が受けられます。

しかし、深刻な病気や重い障害を持つ方々が治療を受けた場合、3割の自己負担分でも患者やその家族に重い負担となってしまう傾向があります。

この高額医療費を、患者やその家族の負担とすることは非常に酷と言えます。

そこで、高額医療費を助成するいろいろな制度が設けられています。

病気やケガをした場合の治療に高額な費用がかかったときの公的制度、難病を患った方々の治療を助成する制度、重度心身障害の方々の治療等を助成する制度が存在し、高額になる医療費を軽減する措置がとられています。

そこで今回は、高額医療費を助成するいろいろな制度の特徴と申請方法を解説します。この記事を読めば、各高額医療費助成制度の申請手順と必要書類、申請の際の注意点についてよくおわかりになることでしょう。

目次

1.我が国の公的医療保険

  • 1-1.我が国の公的医療保険の特徴
  • 1-2.3割自己負担だけでは保障が不足する病気・障害も
  • 1-3.深刻な病気や障害のための高額医療費助成制度がある!

2.高額医療費助成制度(高額療養費)・その1

  • 2-1.高額療養費制度とは
  • 2-2.自己負担限度額について
  • 2-3.高額療養費制度の注意点

3.高額医療費助成制度(高額療養費)・その2

  • 3-1.申請には2通りの方法がある
  • 3-2.事前申請と必要書類
  • 3-3.事後申請と必要書類

4.高額医療費助成制度(指定難病医療費)・その1

  • 4-1.指定難病医療費助成制度とは
  • 4-2.指定難病の概要
  • 4-3.自己負担限度額について

5.高額医療費助成制度(指定難病医療費)・その2

  • 5-1.特定医療費として支給対象となるもの
  • 5-2.特定医療費として支給対象とならないもの
  • 5-3.申請の流れと必要書類

6.高額医療費助成制度(重度心身障害者医療費)・その1

  • 6-1.重度心身障害者医療費助成制度とは
  • 6-2.重症心身障害者(児)とその家族の負担
  • 6-3.重症心身障害者(児)の公的医療について

7.高額医療費助成制度(重度心身障害者医療費)・その2

  • 7-1.助成される医療費・助成されない医療費
  • 7-2.申請の流れと必要書類
  • 7-3.一部の医療費で申請方法が異なることも

8.まとめ

1.我が国の公的医療保険

我が国は医療先進国といえるが、公的医療費の負担が安く済むことで世界的に評価も高い。

しかし、病気や障害によっては高額な医療費となり、通常の公的医療保険制度だけでは重い負担となるケースもあると聞く。

まずは、公的医療保険の特徴と深刻な病気や障害を助成する制度について知りたい・・・。

こちらでは、我が国の公的医療保険と、深刻な病気や障害に対応した高額医療費助成制度について解説します。

1-1.我が国の公的医療保険の特徴

我が国の公的医療保険制度は「国民皆保険」と呼ばれており、①原則として日本国内に住所を有する全国民、②1年以上の在留資格があり国内に居住する外国人であれば、何らかの形で公的医療保険へ加入しなければなりません。

公的医療保険制度は、給与所得者・被扶養者が加入する「健康保険(被用者保険)」と、それ以外の「国民健康保険」があります。

この現役世代の医療費の自己負担額は、原則として3割となります。

また、65〜74歳までの高齢者(前期高齢者)の方々は、0〜64歳の人達と同じ公的保険へ加入を継続し、保険者間にて調整が行われることになります。

そして、75歳以上の高齢者になると「後期高齢者医療制度」が利用でき、医療費の更なる軽減が図られます(1割自己負担)。

このように一定の年齢になる度、公的医療費の給付は手厚くなり誰でも質の高い医療サービスを安価に受けることができます。

1-2. 3割自己負担だけでは保障が不足する病気・障害も

公的医療保険制度が充実している日本であっても、病気や障害によっては医療費の負担が重くなり、たとえ3割自己負担であっても家計が厳しくなるケースは存在します。

〇がんをはじめとした深刻な病気

がん治療に関しては、外科手術・放射線治療・抗がん剤治療等いずれも公的医療保険が適用されます。

しかし、医療費自体が高く、3割自己負担だけでは数十万円以上もの医療費を支払う可能性が出てきます。

〇指定難病

指定難病とは、治療方法が確立されていない病気で、かつ厚生労働省が指定した難病のことを言います。

治療方法が確立されていない以上、病気の軽減や病気の進行を遅らせる医療行為が中心となります。

そのため、非常に長期間の医療行為となり患者・家族への金銭的負担が重くなります。

〇重度心身障害

重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態を指します。このような障害を持つ方々は、医療・看護に関しても多額の費用がかかります。

重度心身障害の方々は、免疫力も弱い場合が多く医療機関等での受診は頻繁に行われることになります。こちらのケースでも多額の医療費等がかかります。

1-3.深刻な病気や障害のための高額医療費助成制度がある!

前述した病気・障害には、非常に高額な医療費がかかってしまいます。

そこで、我が国では高額医療費を助成する制度を設け、どうしても重い負担となってしまう患者・家族の医療費軽減を図っています。

第2章以降では、1ヶ月の医療費を自己負担限度額までに軽減する「高額療養費制度」、指定難病患者の医療費を軽減する「指定難病医療費助成制度」、.重症心身障害者の医療費を軽減する「重度心身障害者医療費助成制度」について解説します。

2.高額医療費助成制度(高額療養費)・その1

日本では高額になる医療費を軽減するため、いろいろな公的助成制度が設けられているようだ。

特にがん治療のような場合には、3割自己負担でも高額な医療費になるといわれている。

では、高額療養費制度の特徴について詳細を知りたい・・・。

こちらでは、高額療養費制度の特徴、自己負担限度額や、制度利用の際の注意点を解説します。

2-1.高額療養費制度とは

高額療養費制度とは、患者に1ヶ月の自己負担限度額を超えて支払った医療費がある場合、その超過分のお金が戻ってくる制度です。

例をあげれば、患者が年収330万円の世帯であるなら1ヶ月57,600円が自己負担限度額となります。

つまり、1ヶ月の医療費がどんなに高額になっても、自己負担限度額の57,600円を超えると、その超えた分のお金が患者に戻されることになります。

高額療養費制度の対象となるのは、公的医療保険が適用される医療費となります。

この高額療養費制度の利用に関して、患者や家族に特別な加入条件はありません。前述した公的医療保険に加入している人なら誰でも利用可能です。

2-2.自己負担限度額について

きになる自己負担限度額ですが、年収および70歳未満か70歳以上かで異なってきます(厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ 平成30年8月診療分から」を参考に作成)。

〇70歳未満の人の場合

区分 年収 ひと月の自己負担限度額(世帯毎)
約1,160万円~ 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
約770~1,160万円 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
約370~770万円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
~約370万円 57,600円
市区町村民税非課税 35,400円

〇70歳以上の人の場合

区分 年収 ひと月の自己負担限度額(世帯毎)等
Ⅲ現役並み 約1,160万円~ 252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
Ⅱ現役並み 約770~1,160万円 167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
Ⅰ現役並み 約370~770万円 80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
一般 156~約370万円

57,600円

※ひと月の外来(個人毎):18,000円(年14万4,000円)

Ⅱ住民税非課税世帯 24,600円

※ひと月の外来(個人毎):8,000円

Ⅰ住民税非課税世帯 年金収入80万円以下等

15,000円

※ひと月の外来(個人毎):8,000円

2-3.高額療養費制度の注意点

高額療養費制度が利用できる範囲は、公的医療保険が適用される医療・薬剤等に限られます。

そのため、公的医療保険が適用されない次のようなサービスでは利用できません。

適用外 サービス内容
先進医療 厚生労働大臣の定めた施設基準に適合する医療機関が行う、最先端の技術を駆使した医療で、同大臣の承認した医療が該当します。先進医療を受けた分が全額自己負担となります。
自由診療 公的な健康保険や診療報酬が適用されない診療です。最先端の医療技術を利用できる診療も該当します。本来なら保険診療になる部分も全額自己負担となります。
差額ベッド代  有料の病室を利用する際に発生する料金のことです。こちらも全額自己負担となります。医療機関側が自由に料金を設定できるので、1日の利用料金が10円~数十万円に上る病室まで非常に差があります。

その他、医療機関で治療を受けるために利用したバスや電車の交通費、診断書作成等の文書料、入院中の食事(1食460円分)は自己負担となります。

3.高額医療費助成制度(高額療養費)・その2

高額療養費制度は適用されないサービスもあるが、大幅に1ヶ月の医療費負担が軽減できる便利な制度だ。

是非、この制度の利用方法を知りたい・・・・。

こちらでは、高額療養費制度の事前申請と事後申請について解説します。

3-1.申請には2通りの方法がある

高額療養費制度は患者の自己負担限度額を超えているからといって、保険者が自動的に超過分のお金を戻してくれることは一部の例外を除いてありません。

原則として患者・家族が保険者へ申請する必要があります。例えば、健康保険の加入者なら全国健康保険協会(協会けんぽ)または各健康保険組合へ、国民健康保険の加入者なら各市町村へ申請します。

申請方法は事前申請と事後申請があり、どちらを選ぶかは患者の世帯の家計状況等によって判断するべきでしょう。

3-2.事前申請と必要書類

事前に1ヶ月の自己負担限度額に抑えたいときは事前申請「限度額適用認定申請」を行う必要があります。申請先はご自分の加入している保険者です。申請後に限度額適用認定証が交付されます。

事前申請の際に、1ヶ月の自己負担限度額を超えるかどうか不明な場合もありますが申請自体は可能です。

この申請を行う前に入院した場合でも、当月中に限度額適用認定証を取得したなら、医療機関の窓口に提示することで軽減措置が受けられます。

〇必要書類

  • 限度額適用認定申請書
  • 健康保険証:前期高齢者はそれに加え高齢受給者証、後期高齢者は健康保険証を返納したので後期高齢者医療被保険者証
  • 本人確認書類:マイナンバーカード、パスポート、運転免許証等
  • 印鑑

※保険者によっては追加の書類提出を要求していることがあります。

なお、70歳以上の高齢者で前述した「一般」の年収区分以下に該当する人なら、この申請手続きをしなくとも、医療機関窓口での支払いが自動的に自己負担限度額まで軽減されます。

忘れずに高齢受給者証または後期高齢者医療被保険者証を医療機関窓口へ提示しましょう。

3-3.事後申請と必要書類

保険者へ事後申請をすれば概ね3ケ月程度で、指定口座に超過分のお金が振り込まれます。

申請期間は医療機関を受診した月の翌月の1日から2年以内、または、高額療養費を利用できる旨の通知書を受け取った日から2年以内となります。

〇必要書類

  • 高額療養費支給申請書
  • 健康保険証:前期高齢者はそれに加え高齢受給者証、後期高齢者は健康保険証を返納したので後期高齢者医療被保険者証
  • 本人確認書類:マイナンバーカード、パスポート、運転免許証等
  • 印鑑
  • 領収証等
  • 振込口座のわかる通帳等

※保険者によっては追加の書類提出を要求していることがあります。

国民健康保険に加入している方々の場合、高額療養費制度が利用できるならば、その旨の通知書が患者のご自宅へ送付されてきます。通知書の内容を確認し、支給申請手続きを進めていきましょう。

一方、健康保険組合の加入者の場合なら、組合が医療機関等から提出された「診療報酬明細書(レセプト)」をもとに、自動的に高額療養費を払い戻しすることもあります。この場合、とりたてて患者が申請手続きを行う必要はありません。

ただし、健康保険の保険者の中には、高額療養費の対象となっていてもその通知を行わないケースがあります。その場合には、ご自分で費用を計算して対象となるかどうかを判断する必要があります。

4.高額医療費助成制度(指定難病医療費)・その1

がんのような厄介な病気は高額医療費となるが、まだ治療法すら見つかっていない病気も同様に重い医療費になっているようだ。

このような難病の医療費の助成制度についても詳細を知りたい・・・。

こちらでは、指定難病医療費助成制度について、そして指定難病の概要等を説明します。

4-1.指定難病医療費助成制度とは

この制度は、「難病の患者に対する医療等に関する法律」に定める指定難病の診断を受けた人の内、本人・家族の所得段階に応じて、医療費等の自己負担分を助成する措置です。

本来この制度の事務は都道府県レベルの自治体が行っていましたが、平成30年4月1日より政令指定都市でも行われるようになりました。

政令指定都市にお住まいの方々は、当該制度の受給者証交付等の事務を、都道府県ではなく政令指定都市にて行うことになります。

4-2.指定難病の概要

難病の定義は次の通りです。

  • 発病のメカニズムが明らかでない
  • 治療方法がいまだ確立していない
  • 希少な疾病である
  • 長期の療養が必要である

指定難病の定義はこの4点に加え次の条件を付け加えます。

  • 患者数が我が国において、人口の0.1%程度以下であること
  • 客観的な診断基準が確立し、良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いものであること

そして、指定難病となるためには、更に厚生科学審議会の意見を聴き、厚生労働大臣が指定することとされています。

平成30年4月現在では、指定難病の種類は331種類に上ってます。どのような病気が指定難病かはこちらをご覧ください(厚生労働省ホームページ「指定難病」)。

指定難病とはいっても、直ちに重大な生命の危険に陥る病気ばかりではありませんが、治療法がない以上、症状の軽減や悪化を防ぐ医療行為が長期わたり必要となります。

その費用は、3割自己負担だけでとても対応できないほど高額になるおそれもあります。

4-3.自己負担限度額について

自己負担限度額は、次のように世帯の所得に応じて設定されます。

〇上位所得

区分 上位所得
基準 市町村民税(所得割)課税額251,000円以上
一般の自己負担限度額 30,000円
高額かつ長期(※)の自己負担限度額 20,000円
人工呼吸器等装着者世帯の自己負担限度額 1,000円

(※)高額かつ長期:こちらに該当する人は①申請日の属する月以前の12ヶ月間に、②指定難病の月毎の医療費総額が5万円を超える月が6回以上ある場合です。

〇一般所得2

区分 一般所得2
基準 市町村民税(所得割)課税額71,000円~251,000円未満
一般の自己負担限度額 20,000円
高額かつ長期の自己負担限度額 10,000円
人工呼吸器等装着者世帯の自己負担限度額 1,000円

〇一般所得1

区分 一般所得1
基準 市町村民税均等割が課され、所得割課税年額71,000円未満
一般の自己負担限度額 10,000円
高額かつ長期の自己負担限度額 5,000円
人工呼吸器等装着者世帯の自己負担限度額 1,000円

〇低所得2

区分 低所得2
基準 非課税世帯で収入等が年額800,000円超
一般の自己負担限度額 5,000円
高額かつ長期の自己負担限度額 5,000円
人工呼吸器等装着者世帯の自己負担限度額 1,000円

〇低所得1

区分 低所得1
基準 非課税世帯で収入等が年額800,000円以下
一般の自己負担限度額 2,500円
高額かつ長期の自己負担限度額 2,500円
人工呼吸器等装着者世帯の自己負担限度額 1,000円

〇生活保護

区分 生活保護
基準
一般の自己負担限度額 0円
高額かつ長期の自己負担限度額 0円
人工呼吸器等装着者世帯の自己負担限度額 0円

5.高額医療費助成制度(指定難病医療費)・その2

指定難病、効果的な治療法が未発見の状態なだけに、自己負担限度額は高額療養費以上に軽減されている。

指定難病医療費助成制度はどんな費用が対象になるのだろう?詳細を知りたい・・・・。

こちらでは、指定難病医療費助成制度の対象になる費用と、申請方法を解説します。

5-1.特定医療費として支給対象となるもの

認定された指定難病の治療のため、指定医療機関で受けた医療行為の費用を「特定医療費」と呼びます。この特定医療費に該当すれば助成制度が利用できます。下表を参考にしてください。

〇支給対象

医療 内容
1 診察
2 薬剤の支給
3 医学的処置、手術及びその他の治療
4 居宅における療養上の管理及びその治療に伴う世話その他の看護
5 医療機関への入院及びその療養に伴う世話その他の看護
介護 内容
1 訪問看護
2 訪問リハビリテーション
3 居宅療養管理指導
4 介護療養施設サービス
5 介護予防訪問看護
6 介護予防訪問リハビリテーション
7 介護予防居宅療養管理指導

5-2.特定医療費として支給対象とならないもの

  1. 受給者証に記載された疾病名以外の病気・けがの治療による医療費
  2. 指定医療機関以外で受けた医療や介護の費用
  3. はり、きゅう、あん摩やマッサージ
  4. 装具作成業者と契約し作成した治療用装具等の費用
  5. 文書料(診断書等)
  6. 入院時食事療養費
  7. 差額ベッド代・個室料、おむつ代
  8. 介護療養施設サービスの居住費、食費、日常生活費等

「5.」~「7.」の項目は高額療養費の場合と同様に適用外となります。特に差額ベッド代は患者側が請求すれば、全額自己負担となるので注意が必要です。

5-3.申請の流れと必要書類

指定難病医療費助成制度を利用するためには、必要書類をそろえ申請し、認定を受ける必要があります。

〇申請の流れ

申請の流れは次のようになります。

  1. 申請書類、添付書類の収集
  2. 臨床調査個人票(診断書)を指定医師に作成してもらう
  3. 申請書に必要事項を記載する
  4. 申請書類、添付書類を都道府県または政令指定都市の自治体窓口に提出(受付担当は概ね保健福祉課)
  5. 提出書類の受理・審査
  6. 指定難病支給認定証交付

助成制度を利用する際、指定難病支給認定証は忘れずに医療機関窓口へ提示しましょう。

〇必要書類

  • 特定医療費(指定難病)支給認定申請書:各自治体の窓口やホームページから取得できます。
  • 臨床調査個人票:都道府県または政令指定都市が指定した医師による作成が必要です。
  • 健康保険被保険者証(写し):患者と同じ医療保険に加入されている家族全員の被保険者証の写しが必要です。
  • 本人確認書類:マイナンバー(個人番号)カード、運転免許証、パスポート等

各地方自治体によっては、追加の書類を要求する場合があります。必要書類について、事前に窓口で確認しておきましょう。

6.高額医療費助成制度(重度心身障害者医療費)・その1

大変な病気そしていまだ治療法のない病気どれも深刻だが、それに見合う公的な助成が行われているようだ。

では、重度の心身障害を負ってしまった方々にはどんな医療費助成制度があるのだろう?詳細をぜひ知りたい・・・。

こちらでは重度心身障害者医療費助成制度と、その障害者のある方々を対象にした公的医療を解説します。

6-1.重度心身障害者医療費助成制度とは

障害がある人とご家族の経済的負担の軽減を目的に、医療機関を受診した際の医療費の一部負担金を、都道府県と市町村で助成する制度です。

対象となる方々は次の通りです。

  • 身体障害者手帳1~3級の交付を受けている
  • 療育手帳マルA、A、Bの交付を受けている
  • 精神障害者保健福祉手帳1級の交付を受けている
  • 後期高齢者医療制度の障害認定を受けている

いずれかに該当していることが必要です。次項では、重症心身障害について更に詳しく説明します。

6-2.重症心身障害者(児)とその家族の負担

重症心身障害者に該当するケースを前述しましたが、いまいちどんな障害なのかピンと来ないことでしょう。

こちらでより詳しく重症心身障害者(児)について説明します。

〇重症心身障害者とは

重度の肢体不自由および重度の知的障害とが重複した状態をいいます。このような重いハンディキャップを持つ方々は、日本全国に40,000人以上いるといわれています。

重症心身障害になる原因は様々で、主に次のようなことが考えられます。

  • 胎内感染症、脳奇形、染色体異常等による出生前の原因によるもの
  • 分娩異常・低酸素・極小未熟児等による出生時・新生児期の原因によるもの
  • 脳炎やてんかん等の出生後の原因によるもの
  • 幼児期の水事故や交通事故の後遺症等によるもの

〇重症心身障害者の特徴

重症心身障害者のご家族は次のような障害状態が原因で、日夜介護に多大な労力を費やすことになります。下表をご覧ください。

特徴 障害状態
姿勢 ほとんど寝たままで障害者本人は自力で起き上がれない。
移動 寝返りが困難、移動は自力で非常に困難であるため、座位での移動や車椅子での移動となる。
食事 自力で不可能。家族等がスプーンで食物を摂取させる。食物が気管に入ってしまう誤嚥(ごえん)を起こしやすい。
変形・拘縮 手足が変形または拘縮、胸郭の変形を伴う方々が多い。
筋緊張 極度に筋肉が緊張することで、手足を動かすこと非常に困難。
コミュニケーション 言語による理解や意思伝達が非常に困難、ただし表現力は弱いが笑顔で応えることもある。
排泄 全介助が必要。脱糞を知らせることが困難、自力で始末不可能。
健康 肺炎・気管支炎を非常に起こしやすい。痰の吸引が必要な方々が多い。

日々の介護に加え、肺炎・気管支炎を起こしやすく、ご家族にとって大きな金銭的負担や肉体的・精神的疲労を伴うことになります。

6-3.重症心身障害者(児)の公的医療について

障害のある方々の心身の障害を除去・軽減するための公的医療には、大きく3つがあります。

  • 精神通院医療:統合失調症等の精神疾患を有する方々で、通院による精神医療を継続的に行います。
  • 更生医療:身体の障害を除去・軽減する手術等の治療で、確実に効果が期待できる18歳以上の方々を対象とした医療行為です。
  • 育成医療:障害を除去・軽減する手術等の治療により確実に効果が期待できる、身体に障害のある児童(18歳未満)を対象とした医療行為です。

これらの医療行為は「自立支援医療制度」として医療の自己負担額を軽減する措置がとられます。

ただし、重度心身障害者医療費助成制度を併用する場合、自立支援医療制度の一部負担金からその軽減された金額を控除した分が助成されます。

7.高額医療費助成制度(重度心身障害者医療費)・その2

重症心身障害者となられた方々も大変だが、そのご家族もまた大変だ。

公的助成は、このような方々にこそ行われなければならない。重度心身障害者医療費助成制度の申請方法について詳細を知りたい・・・。

こちらでは、重度心身障害者医療費助成制度の申請方法と、助成対象の医療費ついて解説します。

7-1.助成される医療費・助成されない医療費

こちらでは、助成される医療費・助成されない医療費を取り上げます。

〇助成される医療費

公的医療保険が適用される医療費となります。

  • 医療機関の窓口などで支払う保険診療による医療費の自己負担分
  • 保険診療の訪問看護に係る給付の基本利用料金
  • 保険診療により購入した治療用装具の自己負担分

〇助成されない医療費

高額療養費や指定難病医療費と同様に適用外となるものが多いです。

  • 自費診療や健康診断、予防接種、診断書等の文書料、交通費等
  • 入院時食事療養費・差額ベッド代
  • オムツ代等の保険診療外となる医療品の購入代金
  • 訪問看護療養の交通費
  • ショートステイやホームヘルプサービス、デイサービスの費用等

実は地方自治体の中には、前記した本来なら助成されない医療費であっても助成対象にしているケースがあります。まずはお住いの自治体窓口で確認をとってみましょう。

7-2.申請の流れと必要書類

重度心身障害者医療費助成金制度を利用する場合には、「重度心身障害者医療費助成金受給者証」の取得する必要があります。

こちらでは申請の流れと必要書類について説明します。

〇申請の流れ

申請の流れは次の通りです。

  1. 身体障害者手帳や療育手帳等の取得
  2. 重度心身障害者医療費助成申請書の取得
  3. 申請書へ必要事項を記載
  4. 申請書等を市区町村窓口へ提出
  5. 窓口で受理後、重度心身障害者医療費助成金受給者証を交付

助成制度を利用する際、重度心身障害者医療費助成金受給者証は忘れずに医療機関窓口へ提示しましょう。

〇必要書類

  • 重度心身障害者医療費助成申請書:各自治体の窓口やホームページから取得できます。
  • 健康保険被保険者証
  • 身障、療育、保健福祉手帳等
  • 振込口座のわかる通帳等

各地方自治体によっては、追加の書類を要求する場合があります。必要書類について、事前に窓口で確認しておきましょう。

7-3.一部の医療費で申請方法が異なることも

次のようなケースでは、重度心身障害者医療費助成申請をいきなり行うことは避けましょう。正確な助成措置を得られなくなります。

〇後期高齢者・国民健康保険加入者以外の人が高額療養費に該当した

いわゆる給与所得者が加入する健康保険を利用している人が当てはまります。

加入している健康保険で高額療養費の申請手続きをした後、重度心身障害者医療費助成申請をしましょう。

医療費助成申請時は、高額療養費の支給額が確認できる書類(コピーも可)を申請書等と共に提出します。

〇健康保険より付加給付が適用される場合

加入している健康保険より付加給付金を受け取れる場合、その手続き後に重度心身障害者医療費助成申請をしましょう。

医療費助成申請時は、付加給付金の支給額が確認できる書類(コピーも可)を申請書等と共に提出します。

〇治療用装具(コルセット・治療用眼鏡等)を作った場合

医師が必要と認めた治療用装具を作成した場合、公的医療保険が適用されます。この場合も先に加入している健康保険で療養費手続きを行います。

重度心身障害者医療費助成申請時には、次の書類を申請書等に添付して提出します。

  • 療養費支給額が確認できる書類(コピーも可)
  • 治療用装具領収書(コピーも可)

8.まとめ

各高額医療費助成制度は、それぞれ必要な書類や利用条件が異なり手続きも面倒かもしれません。しかし、高額医療費の負担を軽減する大きな効果が期待できます。

制度の条件に該当するなら、できるだけ助成申請を行うことが大切です。

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