働いているともらえない?!障害基礎年金の所得制限の疑問を徹底解説!

病気や障害を持ったときや、子育てでお金がかかるときに受けることができる様々な社会保障給付。児童手当や高額療養費制度など、所得が高いと制限を受けるものがたくさんありますよね。

一定の基準を満たす障害となってしまったときに受けとることができる「障害基礎年金」ですが、この制度の所得制限については、多くの方が「自分は給付対象となるのか?」「働いているともらえなくなってしまうのではないのか?」「所得制限の所得ってどの金額を対象としているのか?」などなど様々な疑問を抱えています。

結論から言うと、所得制限はあるのですが、その制限の対象となってくるのは非常に限定的です。

この記事では、年金制度や障害年金の種類などを整理していきながら、障害基礎年金の所得制限の仕組みについて徹底解説していきます。

悩める皆さんから寄せられる質問にもお答えしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

目次

1.まずは年金制度について確認しておこう!

1−1.国民年金とは?

1−2.厚生年金とは?

2.障害年金は誰がどれくらいもらえるの?

2−1.障害基礎年金の仕組み

2−2.障害厚生年金の仕組み

3.所得制限はあるの?

3−1.障害基礎年金は一部所得制限アリ!

3−2.20歳未満での障害の場合

3−3.特別障害給付金の対象者の場合

4.所得制限の「所得」って何!?

5.「所得」についてもっと踏み込んでみよう!

5−1.こんなとき所得制限はいくら?

5−2.保険の満期で大金をもらえることになったら・・・?

6.よくある質問

6−1.貯蓄は所得制限に影響しますか?

6−2.妻の所得は関係ありますか?

6−3.一度所得制限を受けるとどうなりますか?

6−4.児童手当は所得に入りますか?

7.まとめ

1.まずは年金制度について確認しておこう!

障害基礎年金の所得制限についてお話しする前に、まずは大前提となる年金制度について見ていきたいと思います。

「年金は何歳から何歳まで納める義務があるか」などといった基本的なことを忘れてしまっている場合には、これから解説していく所得制限のことが少しわかりにくくなってしまうと思いますので、まずは年金の基礎知識を確認してみましょう!

1−1.国民年金とは?

「国民年金」とは、日本国内に住んでいる20歳以上の国民全員が加入することになっている「国の保険」です。

「年金は老後の備え」というイメージが強いかもしれませんが、それだけではなく、一家の大黒柱が亡くなったときに遺族が受け取ることができる「遺族基礎年金」や重度の障害を負ってしまったときに受け取れる「障害基礎年金」もあり、これらは年齢に関係なく条件を満たせば受取を開始できるようになっています。

いずれもわたしたちに何か困ったことが起きたときに支えとなってくれるものです。日本が「国民皆年金」としているのは困ったときのセーフティーネットを誰もに準備するためなんです。

国民年金保険料を支払うのは20歳以上60歳未満の方。「あれ?でもわたしは国民年金の支払いしていないよ」という方も中にはいらっしゃるかもしれませんね。

職業や扶養状況によって、次のように第1号被保険者から第3号被保険者に分類されていて直接的に支払っている人もいれば間接的に国民年金の支払いをしている人もいるのです。

加入者の名称 要件
第1号被保険者 日本に住んでいる20歳以上60歳未満の人(自営業者、学生、フリーター、無職の方など)
第2号被保険者 会社員などの厚生年金加入者
第3号被保険者 第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者

この表で見ると、第1号被保険者のみが直接保険料を支払っていることになります。第2号被保険者と第3号被保険者は、国民年金とは別に厚生年金に加入しており、厚生年金が代わって国民年金に保険料を負担しているのです。

国民年金第1号被保険者の1ヶ月あたりの保険料は、16,340円です。まとめて支払うと保険料がお得になる割引制度もあるようです。

65歳から基礎年金の受取が開始しますが、第1号被保険者から第3号被保険者まで現行では月額約57,000円の定額となっています。

よく「日本の年金制度は2階建て」という表現を聞くかもしれませんが、この2階建てが何を意味するかというと、こちらの国民年金は全国民を対象とした1階の部分。そして2階が次に見ていく厚生年金という上乗せ部分のことを表しています。

1−2.厚生年金とは?

国民年金が全国民を対象とするということはここまでの説明でご理解いただけたかと思います。次は、国民年金の上乗せ部分(2階)である「厚生年金」について見ていきましょう。

厚生年金と言うと、「会社員が入るものでしょう?」というイメージをお持ちの方が多いかと思います。その通りなんです。

会社員の方や、個人事業主で従業員が5人以上いる場合に加入することになります。

国民年金との大きな違いは、保険料はや支給額が「定額」ではなく保険料は「給与によってバラバラ」、支給額は「給与や加入していた期間によってバラバラ」ということです。そして自分自身で直接支払うのではなく、保険料を雇用主である会社と折半し、毎月の給料から天引きされます。

国民年金と同様に老齢厚生年金は65歳から支給されますが、受け取ることができるのは第2号被保険者のみ。自営業者や専業主婦よりも会社員の年金が充実しているというのは厚生年金が上乗せされているからなんですね。

老齢厚生年金の他にも、国民年金と同様に「遺族厚生年金」「障害厚生年金」といった一家の大黒柱にもしものことがあった場合の年金、障害を負ってしまったときの年金というものも存在しており、やはり2階建て部分があるのとないのとでは、経済的に大きな差が出てきます。

2.障害年金は誰がどれくらいもらえるの?

年金には国民年金、厚生年金のように複数種類があり、それぞれに障害年金があるということがわかりましたね。

国民年金の障害年金である「障害基礎年金」と厚生年金の障害年金である「障害厚生年金」。これらは、もらえる条件などに違いがあります。

誰がどんな障害年金をもらうことができるか、支給の条件、支給金額など、障害年金の仕組みについて見ていきたいと思います。

2−1.障害基礎年金の仕組み

障害基礎年金は誰がもらえるのでしょうか?日本年金機構のホームページに記載されている支給要件を抜粋してみます。

①国民年金に加入している間、または60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間)で日本国内に住んでいる間に、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)がある病気やケガがもとで一定以上の障害が残り、障害の年金を受けられる保険料の納付要件を満たしているとき。

②20歳前(年金制度に加入していない期間)に初診日がある病気やケガがもとで一定以上の障害が残ったとき。

①の保険料の納付要件とは次のことを言います。

(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)
初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

②のケースでは、そもそも20歳未満の場合は国民年金に加入していないため納付要件はありません。

「一定以上の障害」という言葉が出てきますが、具体的には、障害者等級1級及び2級の方が対象となっています。

金額は次の通りです。

障害等級 支給金額(年間)
1級 974,125円
2級 779,300円

また、「子の加算」という制度もあり、18歳未満の子どもがいる場合や、20歳未満で障害等級が1級または2級の子どもがいる場合に、年間の年金額にプラスαで第一子・第二子は各224,300円、第三子以降は一人につき74,800円が加算されます。

障害基礎年金の対象となる病気や怪我は、眼や聴覚などの外部障害や糖尿病やがんなどの内部障害のほかにもうつ病、統合失調症などの精神障害も含まれています。これらを起因として障害となってしまった場合に、1級もしくは2級に該当すれば障害基礎年金の対象となってきます。

ちなみに1級は「他人の介助を受けなければほとんど自分の用を弁ずることができない程度のもの」と定義されています。

2級は「必ずしも他人の助けを借りる必要はないが、日常生活は極めて困難で、労働により収入を得ることができない程度のもの」とされています。

より詳しい認定基準については日本年金機構のホームページや年金事務所、年金相談センターなどで確認することが可能です。

2−2.障害厚生年金の仕組み

次に障害厚生年金について見ていきましょう。

障害厚生年金をもらうことができるのは次の要件を満たしている方です。こちらも日本年金機構のホームページから抜粋してみます

①厚生年金に加入している間に、障害の原因となった病気やケガについて初めて医師または歯科医師の診療を受けた日(これを「初診日」といいます。)があること

②一定の障害の状態にあること

障害厚生年金にも納付要件があります。
(1)初診日のある月の前々月までの公的年金の加入期間の2/3以上の期間について、保険料が納付または免除されていること
(2)初診日において65歳未満であり、初診日のある月の前々月までの1年間に保険料の未納がないこと

障害厚生年金の「一定の障害」は障害基礎年金と一部異なってきます。障害基礎年金は1級と2級の方のみが対象でしたが、障害厚生年金は3級も対象となってくるのです。

この仕組みの違いによって「障害基礎年金は支給対象ではないけれど、障害厚生年金はもらえる!」というケースも出てくることになりますね。

金額はどうなっているのでしょうか?次の表をご覧ください。

障害等級 支給金額(年間)
1級 (報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕
2級 (報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(224,300円)〕
3級 (報酬比例の年金額) 最低保障額 584,500円

3級の場合には配偶者の加算制度はありませんが、1級、2級の場合には受給者に生計を維持されている「65歳未満の配偶者」がいる場合、年間224,300円が加算されます。

「報酬比例の年金額」となっているため、「誰もが同じ金額」とはならないことと、「子の加算」ではなく「配偶者の加算」という点が障害基礎年金との大きな違いです。

また、3級は「労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの」と定義されています。

3級の場合は、障害厚生年金のみの受給となりますが、1級、2級の場合、障害厚生年金は障害年金の「2階建て部分」となっているので、会社勤めをされていてこちらも対象となる場合には非常に手厚い年金を受け取ることが可能ですね。

3.所得制限はあるの?

年金制度と障害年金の概要について、整理していただけたでしょうか?

障害年金にも障害基礎年金、障害厚生年金といった種類があり、障害基礎年金のみ貰える人と障害基礎年金の上乗せとして障害厚生年金ももらうことができる人がいるということがわかりましたね。

それでは、ここからが本題です!「障害年金に所得制限はあるのか?」さっそく見ていきましょう!

3−1.障害基礎年金は一部所得制限アリ!

障害年金の所得制限は「障害基礎年金」についてのみあります。ただ、誰にでも所得制限があるわけではなく、20歳未満の病気や怪我が原因で障害を負ってしまった場合に所得制限があります。

また、年金制度が改革される以前、学生や主婦の国民年金加入が任意とされていた期間がありました。

その間に病気や怪我が原因で障害を負ってしまった場合には障害基礎年金の支給対象とはならず、代わりに「特別障害給付金」という別の給付を受けることになります。

この特別障害給付金にも一定の所得制限があるので、こちらについても紹介していきます。

この2つのパターンに該当しない場合には、所得が1,000万円でも3,000万円でもいくらでも制限なく障害基礎年金を受け取ることができます。

それでは、所得制限のあるケースと特別障害給付金とは何なのかということをより詳しく見ていきましょう。

3−2.20歳未満での障害の場合

20歳になったら加入することになる国民年金。わたしたちは国民年金の保険料を支払う代わりに、老後や障害を持ったときに支えてもらうことができるということは1章で確認した通りです。

20歳未満の病気や怪我による障害で「所得制限付き」の障害基礎年金になってしまうというのは、実は過去一度も保険料を納めていないということが関係してくるのです。

民間の医療保険などで考えた場合には「保険料を納めていないのに保障を受けられる」なんてことはありえない話だと思います。

しかし、国民年金は国の制度。障害を負ってしまった時期によって「保障は全くありません!」では国民にとって非常に不利な状況を作ってしまいますよね?

20歳未満で障害を負ってしまった方を守るという意味で、20歳から障害基礎年金を支給しますが「その代わり、所得制限ありですよ!」という仕組みになっているんです。

では、所得制限とは一体どれくらいなのでしょうか?次の図をご覧ください。

単身世帯の場合は、所得額が360.4万円を超えると年金額の半額が支給停止、462.1万円を超えると全額支給停止となります。

また、扶養家族が増えると、所得制限にその親族分の加算があります。加算額は次の表の通りです。

全額支給停止 扶養している家族なし 4,621,000
老人の扶養親族(70歳以上)一人あたり +480,000
特定扶養親族(16歳以上23歳未満)一人あたり +630,000
上記に該当しない扶養親族一人あたり +380,000
半額支給停止 扶養している家族なし 3,604,000
老人の扶養親族(70歳以上)一人あたり +480,000
特定扶養親族(16歳以上23歳未満)一人あたり +630,000
上記に該当しない扶養親族一人あたり +380,000

配偶者を扶養している場合には、398.4万円超えで半額支給停止、500.1万円超えで全額支給停止となってくるんですね。

この20歳未満の障害での所得制限は例えば「子どもの頃からの障害がある場合」などが対象になってくるわけですが、なんといっても重要なのがその「初診日」です。

日本年金機構のホームページによると「症状が出現し、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日が、20歳前(年金制度に加入していない期間)にある場合」に所得制限付きの障害基礎年金の対象となるという記載がされています。

「20歳の誕生日直前に初診を受けたとしたら・・・?」と思いませんか?

もちろん、後に障害が残る病気や怪我をしているので、初診日を選ぶことができるという場合は非常に稀かもしれませんが、20歳を迎えているか迎えていないかでその後何十年間も受け取る障害基礎年金の条件が大きく変わってくるということもあるんです。

また、例えば、障害基礎年金の対象であるにも関わらず、障害基礎年金の制度を知らずに国民年金に加入し毎月の保険料を何年間も納めていたとします。その後この制度を知ることになり申請をした場合でもやはり「初診日」というのが肝心なので、20歳未満に初診を受けているのであれば何らかの手違いで申請が遅れ国民年金保険料を払った実績があっても「所得制限付き」の障害基礎年金を受け取るということになります。

3−3.特別障害給付金の対象者の場合

現在は、全国民が20歳になったら国民年金に加入することになっています。いわば「強制加入」です。

しかし、過去には20歳になっても「学生」である場合や「会社員や公務員の配偶者」である場合には「任意加入」で良いとされていた時代がありました。

20歳以上の学生が任意加入とされていたのは平成3年3月まで。会社員や公務員の配偶者が任意加入とされていたのは昭和61年4月までです。

国民年金に加入していなかった場合には、障害基礎年金の支給対象外となってしまいます。その代わりに受け取ることができるのが「特別障害給付金」というものです。

やはり、国民年金に加入していない期間に「初診日」があるからといって何も社会保障を受けることができなければ最低限の生活を維持できない可能性だってありますよね。

福祉的な意味合いから「特別障害給付金を支給しましょう!」という制度です。

特別障害給付金の支給金額は、1級の方が月額51,650円、2級の方が月額41,320円です。

一方で、所得制限については、20歳未満での障害の場合の所得制限と基準額は同様で、以下のようになっています。

このように、障害基礎年金や特別障害給付金では所得制限が設けられていますが、いずれも「国民年金に加入していなかった期間」に病気や怪我をして障害となったケースです。

どちらも福祉的措置として年金や給付金を受け取ることができますが「条件付きで支給しますよ!」という考え方なのです。

4.所得制限の「所得」って何!?

「所得」と一言で言っても、人によって想像するものはバラバラなのではないでしょうか?

「収入」「所得」・・・様々な用語がありますよね。普段の生活の中では、これらの用語の違いはそれほど意識されずになんとなく使われているケースがほとんどです。

それゆえに、「所得って具体的にどの金額のことを言うの?」ということが障害基礎年金の所得制限についての質問でよく話題になっています。

この章では、障害基礎年金の所得の算出方法を確認しながら「所得とは?」というもやもやを解決していきたいと思います。

まず、「収入」と「所得」は往々にして区別なく使われることが多いですが、これらは全くの別モノです。「収入」≠「所得」ということはまず押さえておいてください!

「所得」は「収入」から所定のものを控除して求めていきます。計算式は次のようになります。

「所得」=非課税所得以外の所得の合計額-(雑損控除+医療費控除+社会保険料控除+小規模企業共済等掛金控除+配偶者特別控除+障害者控除+寡婦・寡夫控除+勤労学生控除)

ちなみに、非課税所得以外の所得の合計額というのは、次の所得の合計額のことを言います。

(1)総所得金額(利子所得の金額、配当所得の金額、不動産所得の金額、事業所得の金額、給与所得の金額、譲渡所得の金額、雑所得の金額の総額)
(2)退職所得
(3)山林所得
(4)土地等に係る事業所得等
(5)長期譲渡所得
(6)短期譲渡所得
(7)先物取引に係る雑所得等
(8)租税条約実施特例法による条約適用利子等・条約適用配当等
会社員で「給与収入しかないよ!」という場合には、源泉徴収票の「給与所得控除後の給与の金額」がこちらに該当します。

給与収入から様々な控除を引いて求めるのが障害基礎年金の所得制限で言うところの「所得」なのですが、注意点が一つあります。

「障害者控除」として27万円(特別障害者の場合は40万円)の控除ができるとなっていますが、実はこれ、「受給者本人を除く場合のみ」控除可能なんです。

要するに、受給者本人分は控除できず、扶養家族が障害者に該当する場合のみ控除が可能なんです。この部分の考え方が税制上の計算方法とは異なっていますので、注意が必要です。

いかがでしょうか?様々な控除があるので、給与の支払金額(年収)よりも実際には低い金額となるということを覚えておいていただければと思います。

5.「所得」についてもっと踏み込んでみよう!

障害基礎年金の所得制限の「所得」の算出方法はご理解いただけましたね!

それでは、もう一歩だけ踏み込んでみましょう。

まずは「こんな家族構成の場合、所得制限はいくらになりますか?」といった個別のシミュレーションを紹介します。

続いて、一度に大きな大金を手にしたときの所得制限のお話をしたいと思います。

人生の中のある時点で、これまでかけてきた個人年金保険などの保険が満期を迎えて一度に大きな資金を手にすることになるというケースも珍しくありませんよね。

「大きな金額を受け取ってしまったら、障害基礎年金の所得制限額に達してしまうんじゃないか?」などドキドキしながら保険満期の案内を手にしている方もいらっしゃるかもしれませんね。

この章では、実際のところどういった計算方法をするのかということなども解説しながら個別のケースについて見ていきます。

5−1.こんなとき所得制限はいくら?

所得制限のある障害基礎年金を受給されている方から「自分の家族構成の場合、所得制限はいくらになりますか?」という質問があります。

例えば、妻、19歳の子ども一人、78歳の母を扶養している場合の所得制限は一体いくらになるのでしょうか?求めるのはそれほど難しい作業ではありませんので、一緒にやってみましょう。

3章で確認した所得制限の基準額の話に戻ります。

全額支給停止 扶養している家族なし 4,621,000
老人の扶養親族(70歳以上)一人あたり +480,000
特定扶養親族(16歳以上23歳未満)一人あたり +630,000
上記に該当しない扶養親族一人あたり +380,000
半額支給停止 扶養している家族なし 3,604,000
老人の扶養親族(70歳以上)一人あたり +480,000
特定扶養親族(16歳以上23歳未満)一人あたり +630,000
上記に該当しない扶養親族一人あたり +380,000

78歳の母は老人の扶養家族に該当するので48万円加算、19歳の子どもは特定扶養親族となるので63万円加算、妻は老人扶養親族・特定扶養親族どちらにも当てはまらないので38万円の加算となります。

よって、全額支給停止額は「462.1万円+48万円+63万円+38万円=611.1万円」となります。

同様に、半額支給停止額は「360.4万円+48万円+63万円+38万円=509.4万円」となります。

ご家族がどの扶養親族に該当するかを確認した上で、扶養親族がいない場合の基準額に足していくだけですので、それほど難しい計算ではないですよね?

仕事を始めるに当たって、所得制限が心配だという場合などにはぜひご自身で所得制限の算出をしてみてくださいね。

5−2.保険の満期で大金をもらえることになったら・・・?

「今年、保険の満期で500万円受け取ることになっています。500万円受け取ってしまえば障害基礎年金の所得制限を一発で超えてしまいよね?」という不安を抱えている方もいらっしゃるようです。

でも、障害基礎年金がもらえなくなってしまう・・・と諦めるのはまだ早いかもしれません。

保険の満期金の一括受取のときにその金額がどのような形で所得に加算されるのかということを見ていきます。

まず、保険の満期金は「一時所得」として所得に加算されます。しかし、その計算方法によってまるまる500万円が加算されるのではなく、ほんの一部のみが加算されることになるんです。

一時所得の求め方は次の通りです。

「(総収入—その収入を得るために支出した金額—得別控除額50万円)÷2」

保険の例で言うと、「総収入」に当たるのが500万円の満期金、「その収入を得るために支出した金額」はこれまでに払い込んだ保険料の総額です。

仮に500万円の満期保険金のこれまでの保険料合計が400万円だったとしましょう。

そうすると、「(500万円—400万円—50万円)÷2=25万円」となり、他の所得に加算する金額は25万円となるのです。

所得制限ギリギリまでその他の収入がある場合には、残念ながらこちらを加算することで所得制限に達してしまう場合もあるかもしれませんが、500万円の満期金を受け取ったからといって、即座に所得制限に到達してしまうわけではないということをお分かりいただけましたか?

もし、所得制限に達してしまうという場合には、保険によっては何年間かに渡って分割して受け取りをできるタイプのものもあるので、「一括で受け取るのと分割で受け取るのとではどちらが有利か?」などということを考えて工夫してみるのも良いかもしれませんね。

6.よくある質問

ここまで読んでいただければ、障害基礎年金の所得制限について大部分を把握いただけたかと思います。

障害基礎年金の所得制限について頻発する質問についてまとめて解説していきます。もう答えを見なくてもお分かりの方も多いかもしれませんが、念のため確認していきましょう!

6−1.貯蓄は所得制限に影響しますか?

貯蓄については所得制限とは一切関係がありません。仮に1億円の貯蓄があったとしても障害基礎年金の受給は可能です。

6−2.妻の所得は関係ありますか?

障害基礎年金の所得制限については、あくまでも受給者本人の所得のみが考慮されることになるため、妻の所得は関係ありません。

しかし、所得制限の金額は妻を扶養しているか、していないかで38万円変わってくるので、これから扶養から外れるとなるときには注意が必要ですね。

また、障害厚生年金では支給額について子どもの加算額の他に配偶者の加算額もありますが、配偶者の年収が850万円(または所得で655.5万円)以上になってしまうと加算対象ではなくなってしまいます。よって年間224,300円の差額が出ることになります。

6−3.一度所得制限を受けるとどうなりますか?

所得制限額を超えると、その年の8月から翌年7月までの1年間、障害基礎年金が停止もしくは減額となります。

障害基礎年金を受給している方には毎年7月頃に日本年金機構から所得状況を調査する「所得状況届」というものが送られてきて、所得状況や診断書をお住いの自治体の役所へ提出することとなっています。要するに、毎年一回障害基礎年金を受給できるか否かが判断されるので、一度所得制限を超えたとしても翌年に所得が減ればまた再開できるわけなんです。

6−4.児童手当は所得に入りますか?

児童手当とは、0歳〜3歳の子どもは月15,000円、それ以降は中学生までが毎月10,000円をもらうことができる制度です。

3歳未満であれば年間18万円となかなか高額になってくるため心配される方もいらっしゃるのですが、こちらは非課税のため「所得」には含まれませんのでご安心ください。

7.まとめ

「障害基礎年金には所得制限があるの?」という疑問について解説してきましたが、いかがでしたか?
繰り返しになりますが、障害基礎年金で所得制限があるケースは20歳未満に病気や怪我をして障害となった場合のみです。

それ以外は「所得制限なし」と非常にシンプルですが、やはり「所得」の捉え方や、会社の給与以外の収入があった場合にどのような扱いになるのかという部分について疑問を抱えている方が多くいらっしゃるのは間違いありません。

中には、この所得制限額を「控除前の年収」と捉えて、仕事をセーブしているというケースもあるようです。

これから申請される場合や、今現在申請中の方は今一度、障害基礎年金の所得制限のルールを確認してこの制度を上手に活用していただければと思います。

これは、障害基礎年金に限った話ではありません。社会保障の制度はわたしたちが困ったときに支えてくれるものではありますが、その制度内容が複雑でわかりにくいということがよくありますよね。

もちろん役所や年金事務所などで教えてもらうというのも一つの方法ですが、やはりせっかくある制度を最大限に活用していくためには「制度内容について一度徹底的に調べてみる」というのも大切なことかもしれません。ぜひ、この記事も参考にしてみてくださいね!

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