役員の退職金は生命保険で積み立てるとお得?ズバリ解説します!

会社経営者とともに重い責任を担ってきた役員、彼らが退職する際には、その努力に報いてあげたいものです。

世間では、彼らの退職金に活用するお金として貯蓄よりも、生命保険が有利と言われています。特に生命保険の中で「法人向け」が人気といえます。

この法人向けの保険には、解約返戻金を退職金に充てることの他、法人税の節税にも役立つ保険商品があります。

ただし、法人向けの生命保険には、いろいろなタイプの保険商品があり、そのタイプごとにメリット・デメリットが存在します。

法人向けの生命保険を活用し、役員のための退職金を目的に積み立てる場合、その特徴を十分に理解することが必要です。

そして、ご自分の会社の経営状態にも気を配り、ベストな保険を選ぶことが大切です。

今回は、役員の退職金の積立に有利な、法人向け生命保険の種類と特徴、おすすめの保険商品をご紹介します。

この記事を読めば、法人保険の基本的な知識を得ることができ、役員の退職金のための保険選びに有力な参考資料となるはずです。

目次

1.法人保険について

  • 1-1.法人保険とは何か
  • 1-2.法人保険は役員にも会社にも役に立つ
  • 1-3.役員の退職金の積み立てに向いている法人保険

2.長期平準定期保険について

  • 2-1.長期平準定期保険とは
  • 2-2.役員の退職金にすると有利な点
  • 2-3.長期平準定期保険の注意点

3.長期平準定期保険のおすすめ商品

  • 3-1.東京海上日動あんしん生命保険「長割り定期」の概要
  • 3-2.長割り定期の特徴
  • 3-3.長割り定期の注目点

4.逓増定期保険について

  • 4-1.逓増定期保険とは
  • 4-2.役員の退職金にすると有利な点
  • 4-3.逓増定期保険の注意点

5.新逓増定期保険のおすすめ商品

  • 5-1.マスミューチュアル生命「新逓増定期保険」の概要
  • 5-2.新逓増定期保険の特徴
  • 5-3.新逓増定期保険の注目点

6.全額損金定期保険について

  • 6-1.全額損金定期保険とは
  • 6-2.役員の退職金にすると有利な点
  • 6-3.全額損金定期保険の注意点

7.全額損金定期保険のおすすめ商品

  • 7-1.FWD富士生命「生活障がい定期保険」の概要
  • 7-2.生活障がい定期保険の特徴
  • 7-3.生活障がい定期保険の注目点

8.まとめ

1.法人保険について

私と共に重い責任を担ってくれた役員達、彼らが退職する時にはその功績に十分報いたい・・。

役員の退職金の準備は生命保険を活用した方がよい、という意見を耳にする。しかし、退職金の準備へ法人保険を活用することによくわからない点がいまだ多い。

まず、法人保険とは何なのかについて知る必要がある・・・・。

こちらでは、法人保険について、退職金の積み立てに向いている理由や、役員の退職金に有利な保険を説明します。

1-1.法人保険とは何か

法人保険とは、法人が契約者となり経営者、役員、従業員を被保険者として、生命保険会社と契約を締結する保険のことです。

法人保険で退職金の準備をするには、法人保険を途中で解約し、解約返戻金(解約により戻るお金)を利用する方法があります。

法人保険を退職金に活用する場合は、役員が退職するタイミングを見計らい、解約返戻金の返戻率(支払った保険料から受け取るお金の割合)がピークに達した時に、解約することが最も効率的と言えます。

しかし同時に、経営者や役員等が死亡または高度障害状態(※)になった場合、下りる保険金を弔慰金として遺族(親族)に支払うことも大切です。

そのため、遺された家族が安心できるような死亡保障であることは、保険を契約する際に必要な配慮です。

また、死亡保障のある生命保険のみならず、日本人の死因の上位に位置するがんを保障するがん保険や、役員が病気やケガをした場合の医療保障を約束する医療保険等、役員のまさかの事態に活用できる法人保険は、退職金の準備と同様に大切な備えとなります。

(※)高度障害状態:日常生活を送る際に、かなりの支障が出る障害を指します。主に①両眼の視力を失明、②言語またはそしゃくの機能を永久に失う、③両上(下)肢を手(足)関節以上で失う、またはその機能を永久に失う、④胸腹部臓器に著しい障害を残し、終身常に介護を要する等があげられます。

1-2.法人保険は役員にも会社にも役に立つ

法人保険は役員の退職金や死亡保障・医療保障のみならず、加入した会社にも役に立ちます。

①契約者貸付制度

この制度は、解約返戻金の一部を生命保険会社から借り入れ、資金を調達する仕組みを言います。

要するに借金をすることになるので金利はかかりますが、審査も無く手続きが簡単なので、いざという時の資金調達手段となります。

また、会社の決算が近付き、その年は赤字になりそうな場合、法人保険の一部または全部を解約し、解約返戻金を受取って赤字に補填することが可能です。

つまり、解約返戻金の使途は自由であるため、会社の資金調達手段として役に立ちます。

②節税効果

法人保険に加入すれば、会社にとって節税効果が期待できることも魅力と言えます。

法人保険の場合、生命保険会社に支払う保険料を「損金」として計上することができます。

この損金とは法人税を軽減できる費用を指し、個人事業主の場合ならば「経費」に当たります。

法人保険の中には、保険料を全額損金算入できる場合や、1/2または1/3を損金に算入できる場合等があります。

特に保険料を全額損金算入できるならば、起業して間もない、かつ資金繰りも安定していない会社には頼りになる保険と言えます。

1-3.役員の退職金の積み立てに向いている法人保険

役員の退職金として向いている法人保険は主に次の3種類があります。

法人保険 内容 返戻率
長期平準定期保険 非常に長い(99年または100年)保険期間が設定されている定期保険です。 解約返戻率のピークが長く続きます。
逓増定期保険 保険期間満了までに保険金額が契約当初から5倍まで増加する定期保険です。 解約返戻率は契約から早い時期に高率になります。
全額損金定期保険 保険料の全額を損金にすることができる定期保険です。 解約返戻率は、長期平準定期保険および逓増定期保険ほど高率にならない場合が多いです。

2.長期平準定期保険について

法人保険や、退職金の積立に向いている保険の特徴はわかった。

では、長期平準定期保険の特徴について詳細を知りたい・・・。

こちらでは、長期平準定期保険を役員の退職金にすると有利な点、および注意点を説明します。

2-1.長期平準定期保険とは

この保険は、保険期間が99歳または100歳までと非常に長期間となる定期保険です。

また、生命保険会社に保険料を支払うと1/2が損金に算入され、その分法人税は軽減されます。一方、もう1/2は資産計上となります。

経営者・役員が今のところ健康でも、万が一の事態は不意に訪れるものです。会社の業務執行や監督中に、死亡はもちろんのこと、死亡に至らなくても高度障害状態になった場合、今後とも変わらずに経営へ携わることは困難になります。

そこで、長い保険期間を活かし、役員の万が一の事態に対応できるよう、適切な額の保険金をかけておきましょう。これは役員の親族(遺族)にとっても、非常に頼もしい金銭的なサポートとなります。

2-2.役員の退職金にすると有利な点

長期平準定期保険は、解約返戻率のピーク期間が長く継続します。そのため、解約するタイミングを判断することが容易で、受け取る解約返戻金が大幅に低くなる事態を避けることができます。

解約返戻率の推移は下表の事例を参考にしてください。

  • 被保険者:役員40歳男性(契約時)
  • 保険期間:100歳
  • 保険料払込期間:60歳満了
  • 死亡保険金:1億円
  • 年払保険料:5,072,800円
経過年数 年齢 支払保険料累計 解約返戻金額 返戻率
1 41 5,072,800円 4,170,000円 約82.2%
2 42 10,145,600円 8,950,000円 約88.2%
3 43 15,218,400円 13,740,000円 約90.2%
5 45 25,364,000円 23,330,000円 約91.9%
10 50 50,728,000円 47,440,000円 約93.5%
20 60 101,456,000円 96,440,000円 約95.0%
30 70 101,456,000円 97,460,000円 約96.0%
40 85 101,456,000円 98,080,000円 約96.6%
50 90 101,456,000円 96,930,000円 約95.5%
60 100 101,456,000円 0円 0.0%

表では、経過年数3年(年齢43歳)からおよそ50年近くも返戻率のピークが継続します。

ただし、役員が60歳になるまで払い込む保険料は、毎年500万円を超える金額となります。

法人保険である以上、会社のお金で積み立てていくことになるため、ご自分の会社の経営状態を十分に把握し、適切な保険料を設定する必要があります。

2-3.長期平準定期保険の注意点

ご自分の経営する会社は、ご自分や役員・従業員の努力で、会社の規模も次第に大きくなっていくことでしょう。

ただし、会社が成長するということは、それだけ経営者であるご自分のみならず役員の責任も更に重くなっていくことを意味します。

つまり、契約時に設定した保険金が、現在の会社の規模や、経営者の重責に見合った金額とはいえなくなっていくケースもあります。

保険期間は長期間であるものの、役員が万が一の事態になった時、下りる保険金は契約時に設定した保険金額のままです。

それならば、役員としても「保険金額は会社の成長に合わせて増額してもらいたい。」と、思うのが率直な感情といえます。

そのため、契約時に長期的な経営拡大を視野に入れながら、適切な保険金額を設定することをおすすめします。

3.長期平準定期保険のおすすめ商品

長期平準定期保険の特徴は概ね理解できた。保険期間が長く解約返戻率のピークも長いが、やはり、それなりに保険料は高くなってしまう。

保険料の支払を工夫して、できるだけその金額を抑えられる保険商品はない物か・・・。

そこで、こちらでは東京海上日動あんしん生命保険「長割り定期」を紹介します。

長割り定期について、保険料の支払方法の特徴と、解約返戻率の推移を取り上げます。

3-1.東京海上日動あんしん生命保険「長割り定期」の概要

この保険では、死亡または高度障害の保障を99歳まで確保することができます。死亡保険金・高度障害保険金は99歳まで変わりません。

また、低解約返戻金特則を付加していない定期保険と比較して、解約返戻率を70%程度に抑える期間である「低解約返戻金期間」を設定することで、保険料を軽減することができます。

長割り定期では低解約返戻金期間を、55歳・60歳・65歳・全期間から設定することが可能です。

また、不慮の事故によるケガで、事故の日を含めて180日以内に所定の身体障害状態になったときは、将来の保険料の支払が免除となります。

3-2.長割り定期の特徴

長割り定期の保障内容は次の通りです。

主契約・特約 内容
死亡保険金 被保険者が死亡したとき、契約時に設定した保険金が支払われます。
高度障害保険金 被保険者が所定の高度障害状態になったとき、契約時に設定した保険金が支払われます。
年金支払特約 この特約を付加すると、保険金を一時金による支払から、分割で受け取れる年金へ変更することができます。
リビング・ニーズ特約 この特約を付加すると、医師より余命が6か月以内と診断されたとき、特定状態保険金が支払われます。
指定代理請求特約 この特約を付加すると、被保険者である保険金の受取人が、病気やケガにより保険金を請求する意思表示ができない時に、事前に指定された指定代理請求人によって、代理請求を行うことが可能となります。

3-3.長割り定期の注目点

長割り定期は解約返戻率が高めで、退職金の備えに適しています。事例を上げて返戻率のピークをみてみましょう。

  • 被保険者:役員40歳男性(契約時)
  • 保険期間および保険料払込期間:99歳まで
  • 死亡保険金:2億円
  • 年間保険料:4,261,800円
  • 低解約返戻金期間:60歳まで
経過年数 20 30 40 59
年齢 60 70 80 99
支払保険料累計 85,236,000円 127,854,000円 170,472,000円 251,446,200円
解約返戻金額 60,140,000円 126,260,000円 160,680,000円 0円
返戻率 約70.6%(※1) 約98.7%(※2) 約94.2% 0.0%

事例では、低解約返戻金期間は60歳までに設定しています。そのため、60歳時点での解約返戻率は(※1)約70.6%に止まります。

しかし、被保険者である役員が70歳になる時には、返戻率が最大になり(※2)約98.7%となります。

そのため、役員が70歳の時に、もっともベストな解約返戻金の受取時期を迎えることになります。

4.逓増定期保険について

長期平準定期保険は保険期間が長く、解約返戻率のピークも長いが、どんなに会社の規模が大きくなっても、保険金が変わらないことには注意すべきだ。

では、保険金額をより手厚くしつつ、役員の退職金に利用できる解約返戻率も高い法人保険はあるだろうか?

こちらでは、逓増定期保険について、その特徴および退職金にすると有利な点、注意点を説明します。

4-1.逓増定期保険とは

逓増定期保険は、長期平準定期保険よりも保険期間は短めですが、契約締結から一定期間経過後、保険期間満了までに保険金額が契約当初の金額より最大5倍まで増加します。

会社の規模が拡大し、その分、経営者・役員の責任は重くなっていきます。この保険は、それに見合った保険金額を準備できることが特徴です。また、解約返戻率が契約後の早い段階で高率になることも魅力と言えます。

この保険も、支払った保険料の一部を損金に算入することが認められていますが、被保険者の年齢・保険期間によって1/2、1/3、1/4の3タイプが設定されています。

4-2.役員の退職金にすると有利な点

逓増定期保険は、解約返戻率が最大になる時期が早く(契約時から5年~10年くらい)訪れます。また、長期平準定期保険と同様にピーク時の返戻率も高いのが特徴です。

解約返戻率の推移は下表の事例を参考にしてください。

  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員50歳男性(契約時)
  • 保険期間および保険料払込期間:72歳まで
  • 死亡保険金:1億円
  • 年払保険料:8,485,900円
経過年数 年齢 支払保険料累計 解約返戻金額 返戻率
1 51 8,485,900円 6,320,000円 約74.4%
5 55 42,429,500円 38,310,000円 約90.2%
7 43 59,401,300円 54,850,000円 約92.3%
10 60 84,859,000円 80,520,000円 約94.8%
11 61 93,344,900円 89,190,000円 約95.5%
12 62 101,830,800円 98,000,000円 約96.2%
13 63 110,316,700円 106,090,000円 約96.1%
14 64 118,802,600円 112,360,000円 約94.5%
15 65 127,288,500円 114,780,000円 約90.1%
22 72 186,689,800円 0円 0.0%

表では、契約時から経過年数12年(年齢62歳)で返戻率が最大になります。

ただし、毎年払い込む保険料は、850万円近くまで達し非常に高額となります。

そのため、会社の資金繰りが安定し、経営規模の拡大が続いている企業に、逓増定期保険は向いていると言えます。

4-3.逓増定期保険の注意点

注意点としては、解約返戻率のピークが早いので解約するタイミングが難しくなってしまうケースが考えられます。

解約返戻金の返戻率が最大になるのは、契約してから5年~10年前後という近い将来で設定されており、その返戻率のピークもおよそ5年~10年間と長期間は継続しません。

そのため、経営者の引退がそろそろ近づいてきており、ピーク時に解約して返戻金を役員退職金に支出されないと、多額の益金に算入されてしまい、それだけ支払う法人税が多くなってしまいます。

役員の引退するタイミングをしっかり確認して、この保険に加入することが効率的な運用に資することになります。

5.新逓増定期保険のおすすめ商品

逓増定期保険の特徴は概ね理解した。契約期間に保険金が増加すること、返戻率の高さも魅力だが、やはり保険料は高額だ。

この保険料を安く抑えられる保険商品はないものか・・・・。

そこで、こちらではマスミューチュアル生命「新逓増定期保険」を紹介します。

こちらでは、新逓増定期保険について、保険料の支払方法の特徴と、解約返戻率の推移を取り上げます。

5-1.新逓増定期保険の概要

新逓増定期保険は、会社の成長と共に重くなっていく役員の責任に対応して、保険金が増えていく商品です。

この商品は、第1保険期間と、第2保険期間に区分され、第1保険期間が経過すれば保険金額が段階的に増えていきます。最大で契約時に設定した保険金額の5倍になります。

また、こちらの保険も低解約返戻金期間を設定することで、保険料を軽減することができます。

5-2.新逓増定期保険の特徴

この保険で設定できる低解約返戻金期間は、次のようになります。

第1保険期間が5年→4年間が対象

第1保険期間が7年以上→設定した保険期間の-2年が対象

低解約返戻金特則を付加した場合は、特則を付加しない場合の保険料と比較して次の割合で安くなります。下表を参考にしてください。

保険年度 低解約返戻金期間(4年) 低解約返戻金期間(5年~)
第1保険年度  0%  0%
第2保険年度  5%  30%
第3保険年度  10%  60%
第4保険年度  15%  90%

第5保険年度

~期間終了まで

 -  90%

5-3.新逓増定期保険の注目点

この保険の解約返戻率および死亡・高度障害保険金額の推移について、事例をあげ説明します。

  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員39歳男性(契約時)
  • 基本保険金額:1億円
  • 保険期間および保険料払込期間:70歳まで
  • 第1保険期間:7年
  • 年間保険料:6,192,400円
  • 低解約返戻金特則付加
経過年数 年齢 死亡・高度障害保険金額 支払保険料累計 解約返戻金額 返戻率
1 40 10,000万円 6,192,400円 0円 約0.0%
5 44 10,000万円 30,962,000円 11,976,000円 約38.6%
6 45 10,000万円 37,154,400 36,542,000 98.3%(※1)
7 46 15,000万円 43,346,800円 42,362,000円 約97.7%
8 47 22,500万円 49,539,200円 47,708,000円 約96.3%
9 48 33,750万円 55,731,600円 52,236,000円 約93.7%
10 49 50,000万円(※2) 61,924,000円 55,446,000円 約89.5%
30 69 50,000万円 185,772,000円 0円 0.0%

こちらの事例では表を見てもわかるように、契約してから5年で(※1)約98.3%と返戻率は最大になります。

この時期の解約返戻金を退職金へ活用したい場合には、契約時に役員の年齢や引退時期をしっかり確認して加入することをおすすめします。

また、死亡・高度障害保険金額は、契約後10年で当初契約した保険金額の5倍となる(※2)5億円に増加します。

6.全額損金定期保険について

現在のわが社は、まだ起業してから日が浅く、資金繰りもまだまだ安定していない。

そんな中で役員のために退職金を準備するとなれば、どんな保険に加入するべきなのだろうか?

こちらでは、全額損金定期保険について説明します。この保険にも、有利な点や注意点が存在します。

6-1.全額損金定期保険とは

この保険は、払い込んだ保険料の全額を損金にすることができる商品です。つまり、保険料の全てを経費として扱うことができるので、法人税の節税に非常に役に立ちます。

会社経営がまだまだ安定していない状況であっても、役員等の福利厚生は充実させる必要があります。

そのため、解約返戻金を退職金に活用でき、節税に大きな効果を発揮する全額損金定期保険は、資金繰りが安定していない企業にとって頼りになる保険と言えます。

6-2.役員の退職金にすると有利な点

全額損金定期保険は、まさかの事態のために死亡・高度障害保険金として活用できます。

しかし、定期保険であるため、その後に緊急事態等がなければ、いずれ解約返戻金として積み立てた保険料を使用しなければなりません。

ただし、全額損金定期保険は、解約返戻金を受け取ってしまうと全額雑収入として計上され、税務上は益金となってしまいます。

つまり、このまま受け取った解約返戻金を放置しておくと、多額の法人税がかかっていまいます。

そのため、この解約返戻金を役員の退職金として利用し、法人税の支払を回避することができます。

6-3.全額損金定期保険の注意点

全額損金定期保険は、解約返戻金をどのように使用するかが問題となります。前述したように受け取った解約返戻金をそのままにしておけば、多額の法人税を納めなければいけません。

しかし、役員がいまだ引退の時期でなく退職金として利用することができないと、別の方法で解約返戻金を使う必要が出てきます。

そのため、解約返戻金のピークに役員の退職時期に合わせて保険契約を行うか、他には会社の設備投資を行ったり、会社でイベント事を催したりして、うまく解約返戻金を使用することが大切です。

7.全額損金定期保険のおすすめ商品

全額損金定期保険は、節税に関して非常に頼りになる保険であることはわかった。

しかし、節税も大事だが役員の保障も大事だ。死亡保障や高度障害のみならず、日本人の死因の上位に位置する『がん』のような病気に備えられる保険はないものだろうか?

そこで、FWD富士生命「生活障がい定期保険」を紹介します。

こちらでは、生活障がい定期保険について、その特徴と解約返戻率の推移を取り上げます。

7-1.生活障がい定期保険の概要

個人契約でもこの保険に加入できますが、法人契約の場合、一定の要件の下で保険料を全額損金扱いにできます。

この保険は、経営者・役員の死亡、所定の高度障害状態・要介護状態のみならず、5つの疾病による重篤な状態を保障します。

特に保障の対象であるがんは、日本人の死因の3割を占める厄介な病気です。この病気を保障の対象にしている点は評価できます。

節税や退職金のみならず、役員のための疾病保障も重視している保険といえます。

7-2.生活障がい定期保険の特徴

生活障がい定期保険の保障内容は次の通りです。

  • 死亡保険金:被保険者である役員が死亡した場合に、保険金を支給します。
  • 生活障害保険金:被保険者が①所定の高度障害状態になったとき、②所定の要介護状態になり、その状態が180日間継続し、終身回復する見込みがないことを医師から診断確定されたとき、③5つの疾病により所定の重篤な状態になったとき、支給されます。

○5つの疾病について

疾病 条件
悪性のがん 被保険者が①今までに悪性のがん(悪性新生物)と診断確定されたことがない、②初めて“転移性”の悪性新生物に罹患した、と医師により診断確定された場合。
急性心筋梗塞 被保険者が①急性心筋梗塞を発病したと医師によって診断され、②医師の判断により、7日以上継続して人工心肺を使用した時、または心臓弁を人工弁に置換した場合。
脳卒中 被保険者が①脳卒中を発病しとこで所定の要介護状態になり、②その状態が90日間継続、③更に終身回復する見込みがない、と医師により診断確定された場合。
慢性腎不全 被保険者が①慢性腎不全になったと医師によって診断され、②医師の判断により治療を目的として一生涯行う人工透析を開始した場合。
肝性脳症を伴う肝硬変 被保険者が①医師によって、肝性脳症を伴う肝硬変になったと診断され、②治療を目的として肝移植を行った場合。

7-3.生活障がい定期保険の注目点

事例を上げて返戻率の推移をみてみましょう。

  • 契約者:法人
  • 被保険者:役員45歳男性
  • 保険期間および保険料払込期間:75歳
  • 年払保険料:3,012,922円
  • 保険金額:1億円
経過年数 1 5 10 30
年齢 46 50 55 75
支払保険料累計 3,012,922円 15,064,610円 30,129,220円 90,387,660円
解約返戻金額 1,974,100円 12,664,700円 25,135,400円 0円
返戻率 約65.5% 約84.0% 約83.4% 0.0%

前述した長期平準定期保険や逓増定期保険よりも返戻率は低めですが、節税および役員のまさかの事態に対する充実した保障も考慮すれば、価値ある保険と言えます。

8.まとめ

法人保険は、特に経営者・役員等の退職金に有利な解約返戻率の高さや、より節税に役立つ内容が注目されます。

しかし、それと同じくらい大切なのは、会社の発展のために経営者と苦楽を共にしてきた役員等の、まさかの事態に対応する保障です。

万全な保障対策こそ、役員のみならず従業員も含め、彼らが安心して業務に打ち込める重要な備えと言えます。

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