日本は、公的な健康保険による給付が手厚いことで世界的にも評価されています。
公的な健康保険は、健康保険と国民健康保険に分かれ、原則として強制加入とされています。
この公的な仕組みのおかげで、誰でも十分な医療給付を受けることが可能となっています。
また、一定の年齢に達すると加入することになる、公的な健康保険制度が存在します。
一見、非の打ち所がない公的制度ともいえますが、公的保障が適用されない医療に関するサービスもあります。
つまり、公的な健康保険だけでは対応できない医療費も実際にあるのです。
ご自分が医療サービスを受ける前に、公的制度だけでは対応できない費用に備える必要も出てくることでしょう。
そこで今回は、日本の公的な健康保険制度と、民間の医療保険について解説します。
この記事を読めば、公的な健康保険制度の基本的な知識と、民間の医療保険の必要性について良くおわかりになるはずです。
1.公的な健康保険について
私はこれまで大きなケガや病気もせずに生きてきた。公的な健康保険には加入もしているし、保険料の納付もしている。
しかし、歳を重ねていくうちに病気やケガもしやすくなるだろう。
そこで、公的な健康保険についてもう一度おさらいしたい・・・・。
こちらでは、公的な健康保険とは何か?その種類等について解説します。
1-1.公的な健康保険とは
公的な健康保険は、加入している誰もが安価な費用で、保険診療を受けることができる制度のことです。
公的な健康保険は公的医療保険制度として、日本に住む人なら原則として加入が強制されています。
- 生活保護受給者等の一部の人を除き、日本国内に住所を有する全国民
- 1年以上在留資格があって日本国内に居住する外国人
つまり、外国人であっても、加入しなければならないケースもあるということです。
この制度には、大きく分けて健康保険(被用者保険)と国民健康保険があります。これらの公的保険はそれぞれ加入対象者が異なることになります。
1-2.公的保険の種類
健康保険(被用者保険)と国民健康保険は更に、加入者やその業種がなんであるかによって次のように分かれます。
〇健康保険(被用者保険)
会社員や船員、公務員等の雇用されている従業員が対象となる公的な健康保険です。
この被用者保険に該当する健康保険としては、主に次の4つが挙げられます。
(1)組合管掌健康保険
健康保険組合により運営および管掌される保険です。主に大企業が設けている健康保険制度です。
従業員の同意を得て規約を作り、厚生労働大臣の認可が下りた後、事業主が単独または共同で健康保険組合を設けます。雇用されている従業員が被保険者となります。
(2)全国健康保険協会管掌健康保険
主に中小企業・零細企業の従業員が加入する健康保険です。全国健康保険協会(通称:協会けんぽ)が運営および管掌しています。
保険料率は定率で、費用負担は事業主と従業員とが共に折半するという形になります。
(3)船員保険
船員保険も全国健康保険協会が運営および管掌しています。船舶の所有者に使用される船員を被保険者とする健康保険です。
通常の健康保険に相当する部分(職務外疾病部門)と、船員労働の職務上の特徴に応じた独自の上乗せ給付が設定されています。
(4)共済組合
公務員が加入する「公務員共済」と私立学校の教職員が加入する「私立学校共済」があります。
共済組合は、医療保険や年金基金の役割を担います。なお、この組合員は法律に基づく保険料の徴収及び給付は行われません。
〇国民健康保険
国民健康保険は事業所に勤務する人以外の方々が加入する保険です。自営業者、自由業者、無職者等が加入することになります。国民健康保険の種類は次の2つです。
(1)国民健康保険
市区町村が保険者となる健康保険です。被保険者は、定められた期間内に自主的に納付する必要があります。
一方、都道府県の役目は、国民健康保険事業の運営が適切に行われるため、市区町村へ適切な指導をするという形で協力していくことになります。
(2)国民健康保険組合
自営業者が、一定の条件で各同種同業者が連合して設立した組合を指します。
健康保険組合を設立している主な職業として、建設業・医師・歯科医師・薬剤師等があげられます。
1-3.年齢によっても加入する公的保険は異なる
前述した公的な健康保険は、被保険者が亡くなるまでずっと加入を継続するというわけではありません。
一定の年齢になれば、また違った公的な健康保険の対象者となります。それが、「前期高齢者医療制度」と、「後期高齢者医療制度」です。
前期高齢者医療制度は、原則として70歳~74歳の高齢者に適用されます。一方、後期高齢者医療制度は、75歳から適用されることになります。
この2つの高齢者医療制度も、その内容や利用方法が異なります。詳細については第4章で解説します。
2.国民健康保険について
国民健康保険は、給与所得者以外の方々の加入する保険だが、私の加入している健康保険とどんな点が違うのだろうか?
詳細を知りたい・・・・・。
こちらでは、国民健康保険の特徴とその注意点ついて解説します。
2-1.国民健康保険とは
国民健康保険は、ご自分のお住いの市区町村が保険者となる健康保険です。
国民健康保険に加入していれば、保険診療の患者負担額は、3割負担となります。
なお、子が生まれた場合、ご夫婦とも国民健康保険の加入者ならば、出生日を含めて14日以内に、子のため国民健康保険の加入申請が必要となります。
加入申請に必要な書類は概ね次の通りです。
- 国民健康保険加入申請書:お住まいの市区町村窓口(国民健康保険課)から取得しましょう。
- 母子手帳:「出生届出済証明」欄に記入があるもの
- 世帯主の本人確認書類:マイナンバーカード・運転免許証等
- 世帯主の国民健康保険被保険者証
- 印鑑
なお、市区町村から追加の書類を要求される場合があります。窓口に向かう前に、どんな書類が必要かを、お住いの市区町村のホームページや電話等で確認しておきましょう。
2-2.国民健康保険の特徴
ご自分が病気やケガをした場合、医療を給付する方法は現物給付(実際の医療サービス)となります。
〇保険診療
国民健康保険の適用対象、いわゆる「保険診療」に該当するのは次の医療行為です。
(1)診察等
医師による診察・検査・画像診断等を患者の身体に施し、異常があるかどうか調べます。
また、患者が来院する場合の他、医師の判断で緊急に患者宅へ向かい診療を行う「往診」も該当します。
(2)医薬品支給
担当した医師より処方箋をもらい、保険薬局で医薬品の支給をうけることです。なお、ご自分の判断で市販薬を買う行為は対象外です。
(3)物品支給
患者の治療に使用されるガーゼ、包帯等の給付が該当します。なお、足の骨折等で使用する松葉杖は、医療機関から貸与される物品です。いずれは返す必要があります。
(4)治療
医師が患者にとって必要と判断した①処置、手術、注射、②リハビリテーション、③うつ病等の精神科療法も対象です。
(5)入院
医師が患者にとって必要と判断した入院治療・看護が対象になります。いわゆる大部屋を使用する場合には、その入院費用は0円となります。
〇保険診療は一律料金
保険診療が適用される医療行為は数多く、患者はどの医療機関でも全国一律料金で支払うことになります。
保険診療の料金は明確に法定されており、医療機関側で自由に金額を決めることは禁止されています。そのため、患者側も安心して治療を受けることができます。
また、入院・外来以外で、医師が患者にとって在宅療養の必要性を判断した場合、こちらも保険診療の対象になります。
2-3.国民健康保険の注意点
国民健康保険に加入してさえいれば、ほとんどの医療機関での診療は3割自己負担のみで受けることが可能です。
ただし、国民健康保険の場合だと、加入者の生活保障までは対象とならないの点に留意しておくべきでしょう。
第3章で解説する健康保険の場合と違い、「傷病手当金」のように被保険者が病気やケガで就労できず、生活が困窮しないための手当金のような制度は、残念ながら国民健康保険にはありません。
ご自分が病気やケガで入院している間は、貯金を切り崩すか、家族にその分稼いでもらうか、何らかの方法で金銭的負担を補填する措置を講じる必要があります。
3.健康保険について
私は現在、事業所に勤務しており「協会けんぽ」の健康保険に加入している。
加入している健康保険の特徴をもう一度確認したい・・・。
こちらでは、健康保険の特徴とその注意点ついて解説します。
3-1.健康保険とは
健康保険も、国民健康保険と同様に原則3割自己負担となります。健康保険料は、勤務先の事業所により、毎月支払われる給料から天引きされることになります。
健康保険の保険者は、全国健康保険協会または各健康保険組合となります。
〇扶養制度の存在
健康保険には、国民健康保険とは異なり、「扶養」という制度があります。保険者に、ご自分が養っている家族の扶養手続きをすれば、家族も被扶養者として、その保険者から保険給付が受けられます。
ご自分が被扶養者としたい家族には次のような条件があります。
(1)ご自分(被保険者)と、同居の必要なく被扶養者とできる家族
- 配偶者
- 子、孫や兄弟姉妹
- 父母、祖父母等の直系尊属
(2)ご自分(被保険者)と同居していないと被扶養者にできない人
- おじ・おば、甥姪とその配偶者等
- 内縁関係の配偶者の父母や子
〇収入要件
扶養の範囲が限定されている他に、被扶養者となる人の収入にも制約があります。
(1)年間収入
被扶養者に該当する時点や、認定された日以降の年間見込み収入額が次の場合に該当することも必要です。
- 原則として130万円未満
- 60歳以上の人か障害者の場合、年間収入180万円未満
(2)同居または別居している人の年間収入
更に同居・別居いずれかのケースでも年間収入が次のように制約されます。
- 同居:扶養認定を受ける人の収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
- 別居:扶養認定を受ける人の収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満
(1)と(2)の双方の条件に該当すれば、被扶養者として保険給付の対象となります。
〇手続き方法と必要な書類
手続き方法は、被扶養者となる事実の発生から5日以内に、事業所の事務担当者(総務課等)へ書類を提出します。
必要書類は次の通りです。
- 健康保険 被扶養者(異動)届:勤務先の事務担当者等から取得します。
- 続柄確認のための書類:ご自分(被保険者)との続柄がわかる戸籍謄本・住民票が該当します。ただし、①被保険者・扶養認定を受ける人双方のマイナンバーが届書に明記され、②事業主が続柄が届書の記載と相違ないことを届書に記載していれば、続柄確認のための書類は不要です。
- 収入要件確認のための書類:課税(非課税)証明書等が該当します。
なお、手続きの際には、事務担当者等から追加の書類が要求されることもあります。
3-2.健康保険の特徴
健康保険は国民健康保険よりも、保険加入者(被保険者)に対して柔軟な措置がとられています。
協会けんぽに加入していれば保険内容は一定ですが、事業者が設けた健康保険組合では、例えば保険料率を自主的に決定することができます。
保険料は労使の負担割合の比重を事業主により重くすることが可能です。
また、通常の保険診療では対象外の医療サービス(差額ベッド代・先進医療等)を、組合管掌健康保険の対象として保障することも可能です。
〇傷病手当金制度
協会けんぽ・各健康保険組合に共通している手当金制度に、「傷病手当金」があります。
傷病手当金は、従業員が業務外で病気やケガを負い労務不能となり、賃金が支払われず、従業員本人・その家族が生活に困窮することを防ぐために、受け取れるお金です。
ただし、受け取るお金は「一律で〇〇万円」と設定されているわけではなく、次のように算出されます。
(支給開始日以前の継続した12ヵ月間の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3
つまり、各従業員の給与を基準として手当金が算定されることになります。
〇傷病手当金の申請方法と必要書類
申請方法は、申請者が申請書等を、保険者へ郵送・持参または勤務先の担当部署を経由して保険者へ提出することになります。
必要書類は次の通りです。
- 傷病手当金支給申請書:勤務先の事務担当者等から取得します。
- 療養担当者の意見書:医師から傷病手当金支給申請書に記載してもらいます。
- 事業主の意見:事業主から傷病手当金支給申請書に記載してもらいます。
また、初回の支給申請時・変更が生じる度、提出が必要なのは次の書類です。いずれもコピーを用意します
- 年金証書
- 年金額改定通知書
- 休業補償給付支給決定通知書
なお、申請者本人(被保険者)の加入している保険者から、追加の書類を要求される場合があります。
3-3.健康保険の注意点
従業員の生活保障が充実している健康保険(被用者保険)ですが、退職したり転職したりしてしまうと、現在と同水準の保険給付が受けられない場合もあります。
また、各事業所が設定した健康保険組合(組合健保)は、現在、非常に運営が厳しい状況となっています。
平成29年度の健康保険組合の約7割が赤字になっていると言われています。
組合を維持するためには、保険加入者の保険料を上げる等の方法もとられますが、それが厳しくなると組合の解散という事態にもなります。
解散後は協会けんぽに移行するわけですが、解散前の組合と同じ内容の保険給付が受けられなくなることは、やむを得ない事態と言えます。
その際、保険内容に不安を感じたならば、公的な健康保険に+αとなる何らかの備えをご自分で検討する必要があります。
4.高齢者の保険について
公的な健康保険は制約や注意点も存在するが、頼れる保険給付制度であることは間違いない。
では、自分が高齢者になった時の公的保険制度について詳細を知りたい・・・。
こちらでは、「前期高齢者医療制度」および「後期高齢者医療制度」について解説します。
4-1.前期高齢者医療制度
ご自分が70歳になると、健康保険加入者は協会けんぽ等から、国民健康保険加入者は市区町村から「高齢受給者証」がご自宅へ発送されます。
なお、健康保険の場合は、保険加入者(被保険者)のみならず被扶養者が70歳になったときも同様です。
高齢受給者証は70歳~75歳未満の間まで利用でき、お持ちの健康被保険者証と一緒に、医療機関へ提示すると、原則として自己負担額が2割に軽減されます。
ただし、高齢受給者証の提示をしないと、前期高齢者医療制度の対象者でも、自己負担額が3割になってしまうので注意が必要です。
一方、平成30年4月1日交付以降分から国民健康保険証と高齢受給者証が一体となった、「国民健康保険証兼高齢受給者証」が交付されています。
こちらの場合は、この受給者証のみを提示するだけで構いません。
4-2.後期高齢者医療制度
原則として75歳以上の高齢者になれば「後期高齢者医療制度」が利用できます。
保険者より交付された後期高齢者医療被保険者証を医療機関窓口へ提示すると、医療費が原則として1割自己負担になる等、更なる手厚い保障が受けられます。
75歳になった方々は、これまでの被保険者資格を喪失し、あらたに各都道府県の後期高齢者医療広域連合が運営主体のとなる、後期高齢者医療制度に加入することになります。
なお、基本的に75歳の誕生日から自動的に加入することとなるので、特別な手続きは不要です。
4-3.費用負担に注意!
前期高齢者医療制度・後期高齢者医療制度で注意すべきなのは、当該医療制度対象者が一律に前期高齢者なら2割負担、後期高齢者なら1割負担となるわけではないということです。
〇前期高齢者医療制度の場合
健康保険の場合ならば原則として、標準報酬月額28万円以上、国民健康保険の場合ならば同一世帯で住民税課税所得が145万円以上に該当すると、現役並み所得者として扱われ3割負担となります。
ただし、住民税課税所得が145万円以上に該当しても、次の場合は申請で2割負担にすることができます。
- 単身世帯で前年中の収入が383万円未満
- 複数世帯で前年中の収入の合計が520万円未満
- 複数世帯に後期高齢者医療制度の被保険者がいて、前年中の収入の合計が520万円未満
申請方法は事前に保険者へ確認しておきましょう。
必要書類は概ね次の通りです。
- 健康保険高齢受給者基準収入額適用申請書
- 所得を証明できる書類:課税(非課税)証明書等が該当します。
〇後期高齢者医療制度の場合
後期高齢者の場合で3割負担になる方々は次の通りです。
(1)現役所得者I
住民税課税所得が145万円~380万円未満の被保険者本人と同じ世帯にいる被保険者
(2)現役所得者II
住民税課税所得が380万円~690万円未満の被保険者本人と同じ世帯にいる被保険者
(3)現役所得者III
住民税課税所得が690万円以上の被保険者本人と同じ世帯にいる被保険者
(1)と(2)に該当する方々は基準収入額適用申請により、一部負担金の割合が1割に軽減できる場合もあります。
必要書類は概ね次の通りです。
- 後期高齢者医療基準収入額適用申請書
- 所得を証明できる書類:課税(非課税)証明書等が該当します。
申請方法は、ご自分が加入している後期高齢者医療広域連合窓口にお問い合わせください。
5.高額療養費制度について
公的な健康保険で、医療費の自己負担分が原則として3割に軽減されることはありがたい。
しかし、医療費が高額になれば3割負担分もそれなりの金額となるはずだ。
この場合の負担を軽減する公的な制度はあるのだろうか?
こちらでは、高額療養費制度について解説します。
5-1.高額療養費制度とは
医療機関での手術等の医療費は保険診療に該当することが多いものの、ケースによっては費用が100万円に上ることもあります。
この場合、3割負担でも30万円を支払う必要があり、貯蓄が十分にない人や低所得者の方々にとって重い負担となってしまいます。
その場合に利用するのが「高額療養費制度」です。
高額療養費制度は、1ヶ月にかかった医療費が、自己負担限度額分を超えていた場合、その差額が戻ってくる公的な制度です。
この制度には、特別な加入条件がなく公的医療保険に加入している人なら誰でも利用可能です。
5-2.高額療養費制度の特徴
自己負担限度額分は加入者の年齢および所得水準によって異なります。
〇上限額
(1)70歳以上の方々
現役並み | ひと月の上限額(世帯ごと) |
年収:約1,160万円~
・標報:83万円以上 ・課税所得:690万円以上 |
252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収:約770万円~約1,160万円
・標報:53万円以上 ・課税所得:380万円以上 |
167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収:約370万円~約770万円
・標報:28万円以上 ・課税所得:145万円以上 |
80,100円+(医療費-267,000)×1% |
一般 | ひと月の上限額 |
年収:156万円~約370万円
・標報:26万円以下 ・課税所得:145万円未満 |
外来(個人ごと):18,000円(年14万4,000円)
世帯ごと:57,600円 |
住民税非課税等 | ひと月の上限額 |
II住民税非課税世帯 | 外来(個人ごと):8,000円
世帯ごと:24,600円 |
I住民税非課税世帯
(年金収入80万円以下等) |
外来(個人ごと):8,000円
世帯ごと:15,000円 |
(2)69歳以下の方々
適用区分 | ひと月の上限額(世帯ごと) |
年収:約1,160万円~ [健保]標報:83万円以上 [国保]旧ただし書き所得:901万円超 | 252,600円+(医療費-842,000)×1% |
年収:約770万円~約1,160万円 [健保]標報:53万円~79万円 [国保]旧ただし書き所得:600万円~901万円 | 167,400円+(医療費-558,000)×1% |
年収:約370万円~約770万円 [健保]標報:28万円~50万円 [国保]旧ただし書き所得:210万円~600万円 | 80,100円+(医療費-267,000)×1% |
年収:~約370万円 [健保]標報:26万円以下 [国保]旧ただし書き所得:210万円以下 | 57,600円 |
住民税非課税者 | 35,400円 |
〇申請方法
申請は事前申請と事後申請とがあります。なお、70歳以上の方々は原則として申請不要です。
(1)事前申請
- 限度額適用認定申請書:保険者より取得します。
- 健康保険証
- 印鑑
- 本人確認書類:マイナンバーカード・運転免許証等
患者側がいったん自己負担分を医療機関窓口に支払い、保険者へ申請します。
- 高額療養費支給申請書:国民健康保険の場合は自宅に送付されます。健康保険の場合は事業所の担当部署(総務課)等から取得しましょう。
- 健康保険証
- 印鑑
- 領収証等
- 振込口座のわかる通帳等
- 本人確認書類:マイナンバーカード・運転免許証等
5-3.高額療養費制度の注意点
高度療養費制度は自己負担限度額まで医療費を抑えられますが、保険診療の範囲内の医療費に限定されます。
つまり、保険診療とはならない有料の病室を希望した場合の費用(差額ベッド代)や、病院の食事代(1食460円分の入院時食事療養費)、医療機関に通院する際の交通費は自己負担となります。
また、自由診療を受ける場合は、自由診療分のみならず本来保険診療が適用される部分も全額自己負担となり、先進医療を利用した場合は、先進医療費分が全額自己負担となります。
これらの費用は高額になってしまう傾向があり、その費用を補填する備えが必要になる場合もあります。
6.民間の医療保険の必要性その1
公的な健康保険制度が適用されない医療に関するサービスがあるは聞いていた。
いざ自分がそれを利用する場合には、金銭的な不安を覚えることになるかもしれない。
民間の医療保険について是非知りたい・・・。
こちらでは、民間の医療保険の特徴について解説します。
6-1.公的な健康保険制度には限界がある
公的な健康保険制度、そして高度療養費制度であっても、適用対象外となってしまう医療に関するサービスは存在します。
前述した差額ベッド代や入院時食事療養費(1食460円分)、通院費、先進医療費、そして医師の診断書の費用も公的保険は適用されません。
全額自己負担になってしまうサービスでも、ある程度の貯蓄があれば安心ではあります。
しかし、ご自分の生活水準にある程度影響が出てしまうことを憂慮するならば、公的な制度だけに頼るのは賢明と言えません。
そこで、次項では民間の医療保険の必要性を解説していきます。
6-2.民間の医療保険とは
民間の医療保険は生命保険会社・共済等が販売する任意の保険商品です。当然、任意である以上、加入するかどうかはご自分次第です。
民間の医療保険には保障期間が一生涯の終身タイプ、保障期間が限定されている定期タイプの2種類があります。
民間の医療保険の保障内容は現金給付であり、加入者(被保険者)が入院したり手術したりした場合に給付金が下ります。
民間の医療保険に加入する場合には、申込書の他、同意書、告知書への記載が必要です。
中でも重要なのは告知書で、ご自分の持病や傷病歴等について質問する項目に回答しなければなりません。その内容によっては、加入を拒否されることもあります。
また、民間の医療保険であっても自由診療については適用外とされます。自由診療を保障対象とする商品は、わずかにがん保険の商品で扱われているのが現状です。
6-2.民間の医療保険の特徴
前述した通り、民間の医療保険は現金給付となります。主に次の保障が設定されています。
- 入院給付金:入院した場合に保険会社から下りる給付金です。入院1日につき3,000円~15,000円という形で契約時に設定します。
- 手術給付金:手術した場合に保険会社から下りる給付金です。給付金は例えば「入院1日×10倍」という形で設定します。
- 通院給付金:特約として設定する場合が多いです。通院1日につき、3,000円~10,000円という形で契約時に設定します。
- 先進医療給付金:こちらも特約として設定します。通算で2,000万円程度が設定されています。
ただし、各保険商品や保険プランによってサービス、受け取る給付金額はかなり異なります。
7.民間の医療保険の必要性その2
民間の医療保険は、自分の加入している公的な健康保険と合わせてどのように利用するべきなのだろう。
民間の医療保険の活用方法について知りたい・・・・。
こちらでは、民間の医療保険の有用性について解説します。
7-1.国民健康保険と民間の医療保険
国民健康保険は、前述した通り被保険者への生活保障が全く設定されていません。
つまり、保険診療には3割負担が適用されるものの、例えば入院する際に、大部屋ではなく有料の病室を利用する場合、全額自己負担となります。
いわゆる差額ベッド代と呼ばれるこの料金は、1日平均6,000円程度と言われています。
有料の病室で長期入院する場合には、それなりの負担となります。その際に、活用できるのが民間の医療保険の入院給付金です。
これはその他の給付金にも言えることですが、入院・治療を受けた場合には、請求により設定された給付金額が、実際にかかった医療費と関係なく支給されます。
つまり、被保険者には、実際にかかった医療費よりも多額のお金が下りることもあるのです。
給付金の使途は自由ですので、前述した例でいえば入院費を支払ってお金が余った場合、医療とは関係のない生活費に充てても全く問題ありません。
国民健康保険加入者は、民間の医療保険に加入しておいた方が、国民健康保険の生活保障の不備を補填することに、大いに役立つことが期待できます。
7-2.健康保険と民間の医療保険
健康保険(被用者保険)の場合は、国民健康保険以上に保障が充実していると言えます。
しかし、民間の医療保険を不要と判断する前に、一度、ご自分が加入している健康保険の内容を確認してみましょう。
当該保険の内容で金銭的サポートが不十分と思われるならば、民間の医療保険に加入し、その不十分な保障へ備えておくことが無難です。
また、現在の事業所に定年退職まで所属するつもりはなく、独立を検討していたり、転職を考えたりしている方々は、民間の医療保険にあらかじめ加入しておくことが賢明です。
7-3.自分に合った医療保険選びを!
公的な健康保険を補完する意味で、民間の医療保険への加入は有効です。
特に、ご自分が病弱であり、一度入院すると長期の入院や通院が必要となりそうな場合は、民間の医療保険で事前に手厚い保障を備えることが大切です。
ただし、20代の方々のように体力もあり健康的で、心配なのはケガだけというような場合には、毎月支払保険料が1,000円前後の安い医療保険(定期タイプ)で、当面の備えにしておいても十分でしょう。
民間の医療保険への加入は、ご自分が加入している公的な健康保険の内容、健康状態、経済状態を考慮して判断することが重要です。
8.まとめ
公的な健康保険は、割安な医療費で質の高い医療サービスを受けることができる頼もしい制度です。
しかし、その保障範囲には限界もあるので、それを補完する方法として、民間の医療保険への加入を検討してみることも大切です。