老後、その生活を支える資金として受け取ることになるのは、ご自分が若い頃からコツコツ納付してきた公的年金です。
公的年金は、年金受け取りが開始されたならば、亡くなるまで受け取ることができます。
非常に頼もしい身近な存在といえる公的年金ですが、この年金には「国民年金(老齢基礎年金)」、「厚生年金」の2種類があります。
それぞれこの年金は、対象になる方々、納付方法、保険料、受給金額においても違いがあります。
特にお若い方々は、年金制度といわれてもあまりピンとこないばかりか、国民年金(老齢基礎年金)、厚生年金の違いもよくわからないことでしょう。
しかし、ご自分にとっていずれ必要になってくる制度であり、若いうちからしっかりと公的年金制度の知識をもっておくべきです。
また、公的年金に頼るだけでは、老後の資金が不足する心配なデータも行政から報告されています。
そこで今回は、国民年金(老齢基礎年金)、厚生年金の仕組みを比較し、その特徴および注意点を解説します。
この記事を読めば、国民年金と厚生年金の基礎知識と、これら公的年金を補完する備えについて、よくおわかりになることでしょう。
目次
1.公的年金について
現在私は会社員ですが、今のところ公的年金と言われてもピンときません。
確かに毎月の給与から天引きされていることはわかるのですが。
まずは公的年金とは何かから教えてもらいたいです・・・・。
こちらでは、公的年金である国民年金と、厚生年金のそれぞれの特徴について解説します。
1-1.公的年金とは
公的年金とは我が国が導入している終身年金制度です。日本に住む人ならば、原則として誰もが年金保険料を納付し、積み立てた年金を受け取る権利があります。
〇年金被保険者
年金の被保険者として次の3種類があります。
- 第1号被保険者:自営業者、自由業者、農業従事者、学生、フリーター、無職の人が該当します。年金受給が開始された場合、老齢基礎年金(国民年金)を受け取ることができます。
- 第2号被保険者:厚生年金保険の適用を受けた事業所(会社等)へ勤務する給与所得者が該当します。年金受給が開始された場合、基本的に老齢基礎年金+厚生年金を受け取ることができます。
- 第3号被保険者:第2号被保険者(給与所得者)の配偶者で、かつ年収が130万円未満の20歳以上60歳未満の人が該当します。年金受給が開始された場合、老齢基礎年金(国民年金)を受け取ることができます。
〇国民年金と厚生年金の比較
国民年金と厚生年金をわかりやすく比較すれば下表の通りです。
公的年金 | 国民年金 | 厚生年金 |
窓口 | お住いの市区町村役場 | 事業所(管轄:年金事務所) |
加入対象者 | 日本に住む20歳~60歳未満の全員 | 厚生年金に加入している事業所へ勤務する70歳未満の人 |
納付方法 | 毎月16,340円(平成30年度)を、 振込・口座振替・窓口持参 |
給料から天引き |
最低加入期間 | 10年 | 事業所へ在職する限り(70歳になるまで) |
1-2.国民年金とは
前述した第1号被保険者(自営業者、自由業者等)に該当する方々が、保険料を納付し、年金受給開始時に受け取る権利がある公的年金です。
公的年金制度の土台となる年金となるため、「基礎年金」とも呼ばれています。
この国民年金(基礎年金)には、ご自分が一定の年齢になってから受け取る「老齢基礎年金」、ご自分が障害状態となった時に受け取れる「障害基礎年金」、ご自分が亡くなった時に遺族の受け取れる「遺族基礎年金」もあります。
今回は「老齢基礎年金」を解説し、その特徴と注意点、厚生年金(老齢厚生年金)との比較を行います。
1-3.厚生年金とは
こちらは給与所得者を対象とした公的年金です。毎月の給与から天引きされる形で年金保険料が納められ、年金受給開始時に受け取る権利がある公的年金です。
この厚生年金には、ご自分が一定の年齢になってから受け取る「老齢厚生年金」、ご自分が障害状態となった時に受け取れる「障害厚生年金」、ご自分の亡くなった時に遺族が受け取れる「遺族厚生年金」もあります。
今回は「老齢厚生年金」を解説し、その特徴と注意点、国民年金(老齢基礎年金)との比較を行います。
2.国民年金と厚生年金の比較・その1
国民年金と厚生年金は職業によって分かれていますが、その納付方法も納付金額も違うのでしょうか?
納付方法・納付金額の違いも教えてもらいたいです・・・・。
こちらでは、国民年金と厚生年金の納付方法・納付金額の違いを解説します。
2-1.納付方法の違い
納付方法は国民年金と厚生年金とで違いがあり、厚生年金の場合は毎月の給与から天引きされる形となります。
一方、国民年金の納付方法はご自分で納付書と保険料を、全国の銀行、農協、漁協、信用組合、信用金庫、郵便局、コンビニエンスストアを利用して納めることができます。
その他、申込手続きを行えば、預金口座から年金保険料を毎月自動的に引き落とす「口座振替」、継続的にクレジットカード会社が立替納付を行う「クレジットカードによる納付」も可能です。
国民年金は厚生年金とは違い、被保険者の事情に合わせ様々な納付方法の選べる点がメリットと言えます。
更に国民年金制度には前納制度もありますが、こちらは次項で解説します。
2-2.国民年金の納付金額
国民年金保険料は、毎年一律の金額を納付するわけではなく、毎年度、若干納付額に違いがあります。
〇保険料の推移
下表で過去10年間の保険料の推移をみてみましょう。
各年度 | 毎月の保険料 |
平成21年4月~平成22年3月 | 14,660円 |
平成22年4月~平成23年3月 | 15,100円 |
平成23年4月~平成24年3月 | 15,020円 |
平成24年4月~平成25年3月 | 14,980円 |
平成25年4月~平成26年3月 | 15,040円 |
平成26年4月~平成27年3月 | 15,250円 |
平成27年4月~平成28年3月 | 15,590円 |
平成28年4月~平成29年3月 | 16,260円 |
平成29年4月~平成30年3月 | 16,260円 |
平成30年4月~平成31年3月 | 16,340円 |
表を見てもわかる通り、年々保険料は増額傾向にあることが窺えます。
ただし、一律に保険料が増額されているわけではなく、若干減少している年度もあります。
〇前納制度で保険料の軽減も!
国民年金保険料は、毎月の納付だけではなく「前納制度」を利用できます。この制度を利用すると保険料が割引になります。
前納制度は、「6ヵ月前納」・「1年前納」・「2年前納」の3種類があり、2年前納は最も割引率が高くなります。
また、支払が口座振替か現金またはクレジットカード納付かでも、割引額に違いが出ます。
下表を参考にしてください(平成30年度)。
前納制度(平成30年度) | 口座振替 | 現金・クレジットカード |
6ヵ月前納 | 96,930円→1,110円割引 | 97,240円→800円割引 |
1年前納 | 191,970円→4,110円割引 | 192,600円→3,480円割引 |
2年前納 | 377,350円→15,650円割引 | 378,580円→14,420円割引 |
表を見れば、口座振替でかつ2年前納が15,650円割引と、最も割引率は高くお得なことがわかります。
2-3.厚生年金の納付金額
厚生年金保険料は国民年金の場合と大きく異なり、標準報酬に従い、各等級へ分けられて算出されることになります。
下表を参考にしてください(1等級~10等級まで表示)。
[厚生年金保険料額表:平成29年9月分(10月納付分)]
標準報酬 | 報酬月額 | 保険料・全額 保険料率18.300% |
保険料・折半 保険料率9.150% |
1等級 (月額88,000円) |
~93,000円未満 | 16,104円 | 8,052円 |
2等級 (月額98,000円) |
93,000円~101,000円未満 | 17,934円 | 8,967円 |
3等級 (月額104,000円) |
101,000円~107,000円未満 | 19,032円 | 9,516円 |
4等級 (月額110,000円) |
107,000円~114,000円未満 | 20,130円 | 10,065円 |
5等級 (月額118,000円) |
114,000円~122,000円未満 | 21,594円 | 10,797円 |
6等級 (月額126,000円) |
122,000円~130,000円未満 | 23,058円 | 11,529円 |
7等級 (月額134,000円) |
130,000円~138,000円未満 | 24,522円 | 12,261円 |
8等級 (月額142,000円) |
138,000円~146,000円未満 | 25,986円 | 12,993円 |
9等級 (月額150,000円) |
146,000円~155,000円未満 | 27,450円 | 13,725円 |
10等級 (月額160,000円) |
155,000円~165,000円未満 | 29,280円 | 14,640円 |
保険料は、直接、ご自分の給与である報酬月額から算出されるわけではありません。
表のように、ご自分の報酬月額が該当する標準報酬に従い、計算されます。
例えば、報酬月額が15万7,000円の人なら、10等級で報酬月額が16万円の区分となります。
なお、厚生年金保険料は、事業主(会社)と従業員(ご自分)が半分ずつ 負担します(労使折半)。
3.国民年金と厚生年金の比較・その2
公的年金の被保険者として気になるのは、やはり保険料を支払ってきた以上、どの位の年金が受け取れるかです。
国民年金・厚生年金で受け取れる金額について是非知りたいです・・・。
こちらでは、国民年金・厚生年金で受け取れる金額について解説します。
3-1.国民年金で受け取れる金額
現在の公的年金制度では、原則としてご自分が65歳となり、年金の支給が開始されたならば、国民年金と厚生年金とでは受け取る金額に違いが出ます。
〇満額は77万9,300円
国民年金の場合、被保険者が20歳~60歳まで40年間にわたり、全期間の保険料を納めたならば満額が支給されます。
老齢基礎年金の満額は77万9,300円(平成30年)で、毎月に直せば64,941円が受け取れる計算となります。
ただし、毎月64,941円がご自分の指定口座に振り込まれるわけではなく、年金の振り込み回数は毎年6回となります。
〇年金の支払月
国民年金は、年6回に分けて支払われ、支払月は、2月、4月、6月、8月、10月、12月になっています。
それぞれの支払月には、その前月までの2か月分の年金が支払われることになっています。
年金の支払日 |
---|
2月→支払対象月:12月、1月の2か月分 |
4月→支払対象月:2月、3月の2か月分 |
6月→支払対象月:4月、5月の2か月分 |
8月→支払対象月:6月、7月の2か月分 |
10月→支払対象月:8月、9月の2か月分 |
12月→支払対象月:10月、11月の2か月分 |
3-2.厚生年金で受け取れる金額
厚生年金の場合は、ご自分が事業所に勤務していた期間・給与で受け取る年金額も変わります。
受け取る金額は、約174万円が平均額と言われ、毎月に直せば145,000円が受け取れる計算となります。
厚生年金の受け取りも、国民年金と同様に、年6回に分けて支払われ、支払月は、2月、4月、6月、8月、10月、12月になっています。
3-3.受け取り時期は変えられる
現在の公的年金は、原則として65歳から年金の受け取りが開始されます。この場合に、年金の繰上げ・繰下げ受給も可能です。
〇年金の繰上げ
国民年金の場合も厚生年金の場合も、希望すれば60歳から65歳になるまでの間、繰上げて受けることができます。
少し早く公的年金を受け取りたい方々には、ありがたい制度ですが、65歳からの年金の受取額よりも減額されて支給されることになります。
減額が心配な時は、それぞれの窓口(国民年金:市区町村役場の国民年金課、厚生年金:事業所または年金事務所)へ相談してみましょう。
〇年金の繰下げ
一方、65歳で国民年金受給者・厚生年金受給者となる方々であっても、「預貯金で十分、まだ年金はいらない。」という場合があるはずです。
そんな時は無理に受け取らず、年金の繰下げ受給を希望すれば、請求時、65歳で受け取るよりも増額された年金が受給されます。
増額率は、国民年金・厚生年金共に「繰下げ月×0.7%(0.007)」、最大で「42%(0.42)」増額となります。
各請求時の年齢の増額率は下表を参考にしてください(昭和16年4月2日以後に生まれた方対象)。
請求時の年齢と増額率 |
---|
66歳0ヵ月~66歳11ヵ月→8.4%~16.1%増額 |
67歳0ヵ月~67歳11ヵ月→16.8%~24.5%増額 |
68歳0ヵ月~68歳11ヵ月→25.2%~32.9%増額 |
69歳0ヵ月~69歳11ヵ月→33.6%~41.3%増額 |
70歳0ヵ月~→42.0%増額 |
4.国民年金と厚生年金の注意点
国民年金・厚生年金は終身年金だし、しっかりと保険料を納めていけば老後の資金の大きな助けになりますね。
これら公的年金に、何か注意点のようなものがあれば教えてもらいたいです・・・・。
こちらでは、国民年金・厚生年金を受け取る前に、確認しておくべき老後の現状について解説します。
4-1.国民年金・厚生年金の受給だけは不十分?
国民年金・厚生年金を受け取る年齢になって、「あとは死ぬまでお金に苦労しない。」とは断言できません。
総務省ではそれを裏付ける不安なデータが報告されています。下表を参考にしてください(総務省統計局「家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017)」を参考に作成)。
高齢夫婦無職世帯(夫婦60歳以上)と、高齢単身無職世帯(60歳以上)の平均的な生活費の見積もり額は次の通りです。
項目 | 高齢夫婦無職世帯平均額 | 高齢単身無職世帯平均額 |
実収入:年金等 | 204,587円 | 114,027円 |
非消費支出:税金等 | 27,952円 | 12,544円 |
消費支出:食費・医療費・水道光熱費等 | 237,682円 | 142,198円 |
4-2.ぎりぎりの生活で豊かな老後とは言えない
ご自分が仕事を退職して余生をどんな風に使うか、いろいろと考えておられる方々も多いことでしょう。
自分の趣味を楽しむか、ご夫婦で旅行を楽しむか、各被保険者の皆さんそれぞれ希望はあるはずです。
しかし、年金を主な収入源とする高齢世帯の現実は深刻な領域に達しています。
〇毎月数万円の赤字!
前述した年金を主に頼るとする高齢夫婦無職世帯(夫婦60歳以上)と、高齢単身無職世帯の実収入と各支出を計算すれば、それぞれ次のようになります。
①高齢夫婦無職世帯
204,587円[実収入]-(27,952円[非消費支出]+237,682円[消費支出])=-61,047円
②高齢単身無職世帯
114,027円[実収入]-(12,544円[非消費支出]+142,198円[消費支出])=-40,715円
高齢夫婦無職世帯では毎月6万円以上、高齢単身無職世帯では毎月4万円以上の赤字になることがわかります。
〇高齢になってからも働く?
いずれも、生活費や税金が収入(年金)を上回り、その補填のためには何らかの対策が必要といえます。
もちろん、貯蓄が潤沢にあればこのままの状態でも、問題があるとは言えません。
しかし、貯蓄がさほどないならば退職後も、パート・アルバイト先を見つけて赤字分を補填する必要が出てきます。
そうはいっても歳を重ねれば、若い方々と交じって仕事をする体力も、認識能力も次第に衰えていくのは当然です。
また、せっかく退職しても再び仕事に負われてしまう日々が、豊かな老後とは一概に言えないことでしょう。
4-3.働いている時からプラスαの備えを!
公的年金を受け取るためには、やはりご自分の若いうちからしっかり納付することが大前提です。
しかし、ご自分が豊かな老後を送るために、それにプラスαした備えが必要になってきます。
その備えが「私的年金」です。国民年金・厚生年金は、いわば国の制度として強制された側面があります。
一方、私的年金の加入は、ご自分の判断に任せられます。
ただし、私的年金の利用は公的年金を補完し、豊かな老後を実現する一つの手段と言えます。
第5章以降では私的年金制度である「個人年金保険」と、「個人型確定拠出年金」を取り上げ、これらの特徴と注意点を解説していきます。
5.個人年金保険について
個人年金保険は、返戻率が高くておすすめだといわれています。
保険料が手ごろならば、今の内から加入したいのですが・・・。
こちらでは、個人年金保険の特徴、メリット・デメリットについて解説します。
5-1.個人年金保険とは
個人年金保険とは、若いうちからコツコツ年金保険料を積み立て、ご自分が決めた年齢から年金受け取りを開始する保険商品です。
個人年金保険は、毎月保険料を納めるならばプランにもよりますが、1万円~1万5千円程度となります。
また、ある程度貯蓄に余裕があるならば半年払いや、年払いで払い込めば、その分保険料額も軽減され、その後年金を受け取る際の返戻率(払い込んだ保険料よりも受け取るお金が多い割合)も、利用者に有利となります。
個人年金保険の返戻率はといえば、概ね101%~108%となります。ただし、リスクはありますが外貨建て商品の利用で、150%近くまで返戻率が高くなるものも存在します。
5-2.個人年金保険はいろいろある
こちらでは個人年金保険の種類を取り上げます。下表を参考にしてください。
〇確定年金
年金を受け取れる期間が5年・10年・15年等と確定している保険商品です。
この確定期間内であれば、もしもご自分が年金を受け取っている間に亡くなっても、直ちに年金を受け取る権利は消滅しません。
その後はご遺族が、確定された残りの期間まで年金を受け取れることができます。
確定年金は、加入したご自分のみならず遺族の生活費の負担を軽減する効果も期待できます。
〇終身個人年金保険
公的年金と同じく、ご自分(被保険者)が生きている限り、年金を受け取り続けることができる保険商品です。
この保険は、長期の生存により貯蓄等が底をつくような事態に備える上で最も効果的です。
ただし、逆にご自分が早く亡くなってしまうと、払い込んできた年金保険料より、実際に受け取った年金額が少なくなる事態も想定されます。
〇変額個人年金保険
保険会社がご自分の払い込んだ保険料を運用し、その成果で受け取る年金額が変動する保険商品です。
投資対象は利用者が自分で選び、運用が好調ならば受け取り金額は増え、不調だと減ります。
好景気のときは運用成績も上がるため、物価上昇に強いことが利点です。
しかし、元本の保証されない場合が多く、運用に失敗すると損失を被るリスクがあります。
〇外貨建て個人年金保険
米ドルや豪ドル等の外国の通貨で運用される保険商品です。 円建ての個人年金保険よりも利率が高く、支払う保険料が安いため、効率的な貯蓄が可能です。
しかし、外貨から日本円に両替すると為替手数料が発生します。
また、利益を日本円で受け取る際、契約時よりも円高だった場合は、為替変動の影響で損失が出てしまうリスクもあります。
5-3.個人年金保険のメリット・デメリット
こちらでは個人年金保険のメリット・デメリットを解説します。
〇メリット
(1)老後の生活資金の確保
毎月の年金保険料の支払方法は、ご自分の指定口座より強制的に引き落とされて積み立てられます。積み立てたお金は、他の目的に使用することが難しいので、貯金が苦手な人でも、確実にお金を貯蓄できます。
(2)個人年金保険料控除が受けられ節税にも役立つ
加入した個人年金保険の条件さえ整っていれば、生命保険料控除の一つである「個人年金保険料控除」が、年末調整または確定申告の時に活用できます。この申告をすれば所得控除が受けられ、節税効果が期待できます。
〇デメリット
(1)中途解約は損
個人年金保険を中途解約しても、これまで支払った保険料全額が戻るわけではありません。解約の時期により、受け取る解約返戻金が非常に少ない事態もあります。解約を希望するならば、保険加入時に受け取った解約返戻金の算出表を参考に、どの位のお金が戻ってくるか確認してから決定しましょう。
(2)保険会社の失敗・破綻のリスクも
ご自分が加入した個人年金保険の種類によっては、国内外で金融危機・政情不安を理由とした景気の変動、大規模自然災害等が原因で、保険会社の運用が上手くいかず、損失を出してしまう場合があります。
つまり、商品の中には為替変動に大きな影響を受けるものもあるのです。支払った年金保険料よりも、年金として受け取る分が下回ってしまうリスクも想定されます。
また、加入している保険会社が破綻した場合、資金運用は加入者ごと個人単位で管理していないので、個々人が受け取る年金額に大きな影響を及ぼす場合もあります。
6.個人型確定拠出年金(iDeco)について
現在、巷では個人型確定拠出年金(iDeco)が人気のようです。
この私的年金についても詳細を知りたいです・・・・。
こちらでは、個人型確定拠出年金(iDeco)の特徴、メリット・デメリットについて解説します。
6-1.個人型確定拠出年金(iDeco)とは
個人型確定拠出年金(iDeCo)は、任意で加入するという面では私的年金の一つです。
こちらは保険会社ではなく、証券会社が中心となって運用される商品です。
なお、「iDeCo(イデコ)」とは個人型確定拠出年金の愛称のことです。
この年金の特徴は投資信託・定期預金等で運用が行わる点です。この運用の良し悪しで、将来にご自分が受け取る年金額は変動することになります。
6-2.個人型確定拠出年金(iDeco)のメリット
個人型確定拠出年金の利点は次の2つです。
(1)税金面で非常に有利
個人型確定拠出年金の掛金を積み立てている時は、その全額が「小規模企業共済等掛け金」として扱われ、全額所得控除の対象となります。
また、運用期間中の運用益は非課税となります。年金を受け取っている時も、退職所得・年金所得として扱われるので、税金はかかりにくくなっています。
(2)証券会社等が破綻しても影響無し
ご自分の年金の資金運用は加入者ごと個人単位で管理しています。そのため、お金を預けている証券会社、銀行が仮に破綻してもご自分の運用資産へ影響はありません。
6-3.個人型確定拠出年金(iDeco)のデリット
個人型確定拠出年金の注意点は次の2つです。
(1)月額手数料の存在
運用コストとして管理費が毎月170円~600円程度と、運用する投資信託の信託報酬がかかります。
信託報酬とは、投資信託を管理・運用してもらうための経費として、投資信託を保有している場合は、ずっと投資家が支払い続ける費用となります。ただし、別にご自分で報酬を支払うわけではなく、信託財産のより「純資産総額に対して〇%」といった形で差し引かれます。
この月額手数料は、取扱う証券会社によって差が大きいので、各証券会社の手数料の内容をしっかりと比較して、ご自分が納得する証券会社を選びましょう。
(2)中途解約は不可
個人型確定拠出年金は、家計に負担となってきたからと言って、途中解約しお金を返してもらうことはできません。掛け金の積み立てが負担になってきたならば、掛金の変更を行い、その金額を減らして対応することができます。
7.まとめ
公的年金を若い内からしっかり納め、老後の資金となる年金収入の土台を確保しつつ、私的年金をプラスし、老後になっても豊かな生活を送る工夫が理想的と言えます。
さいごに、次の資産運用に関して注意を喚起しておきましょう。
〇最近の外貨建て保険トラブル
利回りの高さ、保険料の安さが魅力となっている「外貨建て保険」に加入し、保険会社と利用者(特に高齢者)がトラブルとなっているケースは多く報道されています。
外貨建て保険は前述した個人年金保険の他、死亡保険や養老保険でも販売されており、老後の資産活用として人気になっています。
しかし、外貨建て保険は、円建て保険のように内容がシンプルとはいえず非常に複雑な仕組みとなっています。
〇「儲かる!」のフレーズだけに惑わされない
外貨建て保険は、確かに日本円よりも数段利回りが良い米ドルや豪ドルで運用される商品です。
しかし、日本円に外貨を両替する場合、為替変動の影響を大きく受けてしまいます。
円安ならば利用者であるご本人は得をしますが、円高ならば利用者に不利です。
その為替相場の推移を見定める責任は結局、保険加入者(利用者)であるご本人となります。
〇不明な点は担当者に相談、理解が難しい時は加入を回避
外貨建て保険にどうしても関心があるならば、その利点・注意点を保険担当者からしっかり聞き出しておきましょう。
不明な点は何とかなると考えるのではなく、納得するまで保険担当者に確認しましょう。
それでも、ご自分ではどうしても理解できないと感じるならば、加入を思いとどまることも、賢明な選択肢と言えます。