医学が発達するに伴い、保険診療ではない高度先進医療や自費診療が増加しています。
もし、あなたや家族が高度先進医療の適応と言われたら、どうしますか?
高額な治療費を、用意できますか?
高度先進医療の基本から費用体系、意外に多い身近な歯科・眼科領域の対象疾患までまとめて紹介します。
生命保険に先進医療特約をつけるかお悩みの方、必見です!
目次
1.高度先進医療って何なの?
1.1高度先進医療と、民間療法との違い
1.2高度先進医療の医療費は保険+自費の総額
1.3高度先進医療の種類と全国の指定医療機関の一覧
2.高度先進医療でよく耳にする陽子線って、どんな治療方法!?
2.1陽子線治療の特徴
2.2陽子線治療の実際の流れ
2.3陽子線治療の適応
3.誰もが受けられるわけじゃない!?陽子線治療の実際
3.1陽子線治療の適応、例えば肝臓ならこうなる
3.2陽子線治療にかかる費用は、200万!?
3.3陽子線の治療成果は「90%が消失または縮小」、生存率は?
4.歯科領域の高度先進医療、バイオリジェネレーション法って?
4.1驚愕の事実、現代人の7割以上は歯周病!
4.2歯周病による骨の欠損を再生!!バイオリジェネレーション法
4.3気になるバイオリジェネレーション法の費用は?
5.高度先進医療を受けるなら、眼科領域の可能性が最も高い?
5.1白内障治療の高度先進医療、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術
5.2多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は、クリニックで受けられる!?
5.3多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術、気になる費用は?
6.高度先進医療特約は、果たしてお得なのか?
6.1高度先進医療特約をつけると、保険料はどのくらい上がるのか?
6.2特約だけの契約はできません!医療保険から加入の是非を考えるべし
6.3先進医療を受ける可能性・受けられる可能性は?
7.まとめ
目次
1.高度先進医療って何なの?
1.1高度先進医療と、民間療法との違い
高度先進医療というのは、
「厚生労働大臣が定める高度の医療技術を用いた療養その他の療養であって、保険給付の対象とすべきものであるか否かについて、適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な療養」
とされており、ただ高度な医療技術のことを指すのではありません。
その認定には、
- 技術妥当性(優等性・安全性・技術的成熟度)の審査
- 社会的妥当性(倫理性・普及性・費用対効果)の審査
を受け、医療技術ごとに一定の施設基準を設定し、施設基準に該当する保険医療機関は届出により保険診療との併用ができることとしたものです。
そして、先進医療には先進医療Aと先進医療Bの枠組みがあります。
どんなにハイテクを駆使しても、一定の基準を満たして厚労省に認められたものでなければ「先進医療」とは言わないわけです。
それ以外は広い意味で「民間療法」となり、金額を問わず国が安全性や効果を認めていないものとなります。
1.2高度先進医療の医療費は保険+自費の総額
高度先進医療は、国が様々な審査をした上で医療として行うことを認めただけであって、費用に関しては原則自費です。
ただし、患者が病院に支払う医療費のうち、一定ラインまでの検査や投薬等に関しては、保険診療となります。
<高度先進医療と保険診療の考え方>
普段私達が医療機関を受診する際には、保険証を提出して医療保険の適応を受けています。
そのおかげで、原則として本来の治療費のうち3割の負担で医療を受けることができます。
しかし、先進医療の部分については10割自己負担になりますよ、ということになります。
上の図では先進医療の分が20万円となっているので、保険診療分の自己負担金24万円と合計して44万円の自己負担となります。
先進医療の種類によっては数百万円にも及ぶものもありますから、保険診療と併用できるからといって、誰もが受けられるものではありません。
1.3高度先進医療の種類と全国の指定医療機関の一覧
2018年6月1日現在、厚労省が認可している高度先進医療は28種類あります。
<先進医療技術B 一覧>
- 高周波切除器を用いた子宮腺筋症核出術
- 陽子線治療
- 骨髄細胞移植による血管新生療法
- 神経変性疾患の遺伝子診断
- 重粒子線治療
- 抗悪性腫瘍剤治療における薬剤耐性遺伝子検査
- 家族性アルツハイマー病の遺伝子診断
- 腹腔鏡下膀胱尿管逆流防止術
- 泌尿生殖器腫瘍後腹膜リンパ節転移に対する腹腔鏡下リンパ節郭清術
- 末梢血単核球移植による血管再生治療
- 歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法
- 樹状細胞及び腫瘍抗原ペプチドを用いたがんワクチン療法
- 自己腫瘍・組織及び樹状細胞を用いた活性化自己リンパ球移入療法
- 多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術
- 培養細胞によるライソゾーム病の診断
- 培養細胞による脂肪酸代謝異常症又は有機酸代謝異常症の診断
- 角膜ジストロフィーの遺伝子解析
- MEN1遺伝子診断
- ウイルスに起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)
- 細菌又は真菌に起因する難治性の眼感染疾患に対する迅速診断(PCR法)
- LDLアフェレシス療法
- 多項目迅速ウイルスPCR法によるウイルス感染症の早期診断
- CYP2D6遺伝子多型検査
- MRI撮影及び超音波検査融合画像に基づく前立腺針生検法
- 腹腔鏡下傍大動脈リンパ節郭清術
- 糖鎖ナノテクノロジーを用いた高感度ウイルス検査
- 腹腔鏡下スリーブ状胃切除術及び十二指腸空腸バイパス術
- 血中TARC濃度の迅速測定
各先進医療の実施している医療機関の一覧は、厚労省ホームページより検索することができます。
自分の住んでいる近くに対象医療機関があるか、調べてみるとよいでしょう。
2.高度先進医療でよく耳にする陽子線って、どんな治療方法!?
2.1陽子線治療の特徴
あなたがもし生命保険の先進医療特約をつけるか悩んでいるのなら、実際にどんな高度先進医療を受ける可能性があるのか考える必要がありますね。
高度先進医療の中で一般人に知られているのは、がん治療の適応となっている陽子線ではないでしょうか。
ここからは、陽子線治療についてお伝えしていくことにしましょう。
陽子線というのは放射線の一種です。
私達が通常レントゲン撮影を行うときには、体に害のないレベルのX線を浴びて写真を撮影します。
放射線には、がんの病巣に狙いを定めて照射すると増殖能力を奪う作用があります。
この力を利用したX線による放射線治療は保険診療でも行われていますが、陽子線治療は体の中に「止まる」特徴を生かしたものです。
X線は狙った部位の後ろに突き抜けてしまいますが、陽子線は「止まる」ため、がんの病巣より後ろの臓器にはほとんど影響しません。
陽子線のエネルギーを調節して「より深く」「より細胞へのダメージを与える」ことで、がんに集中して放射線をあてることが可能になったのです。
陽子線とは何かイメージをつかんでいただいたところで、陽子線治療についての理解を深めていただくことにしましょう。
2.2陽子線治療の実際の流れ
陽子線治療を行う際には、綿密な準備が必要です。
まず治療中の身体の動きを抑えるための固定具を作成し、その上でCT撮影を行い放射線医師・主治医・放射線技師等で話し合って治療計画を立案します。
治療は原則として1日1回・週3~5日行い、1回の治療時間はおよそ15分~30分です。
陽子線の治療回数は、病気の種類や進行度・部位など個々の身体状況によって異なります。
場合によっては、抗がん剤の内服と併用で陽子線照射を行うこともあります。
<実際の陽子線治療の様子>
2.3陽子線治療の適応
陽子線治療は、全てのがん患者さんに効果が立証されているのではありません。
ですから、あなたがもしがんと診断されてできる限りの治療を受けたいと希望して費用も用意したところで、適応になる人はがん患者の中でもごく一部です。
<陽子線治療の適応>
- 頭頚部腫瘍(脳腫瘍を含)
- 肺・縦隔腫瘍
- 消化管腫瘍
- 肝胆膵腫瘍
- 泌尿器腫瘍
- 乳腺
- 婦人科腫瘍又は転移性腫瘍(いずれも根治的な治療法が可能なものに限る。)
実際はこの中でも更に細かい分類があり、白血病などの全身に広がったがんや胃がんは適応外となっています。
このように陽子線治療の適応範囲はかなり限定されていますが、今後技術の進歩とともに広がっていくものと期待されています。
3.誰もが受けられるわけじゃない!?陽子線治療の実際
3.1陽子線治療の適応、例えば肝臓ならこうなる
肝臓は血流の豊富な臓器なので、肝臓がんには他の臓器から血液によってがん細胞が流れてきて発症する「転移性肝がん」と、肝臓そのものでがんが発症した「原発性肝がん」が存在します。
ここでは、原発性肝がんの陽子線治療の適応と治療についてお伝えしていくことにしましょう。
肝臓がんの治療法は主に4つの方法があります。
- 肝切除(肝移植)
- 穿刺療法(ラジオ派による照射療法、経皮的エタノール注入療法)
- 冠動脈塞栓術
- 陽子線
どの治療方法を選択するかどうかは、肝機能がどのくらい保たれた状態なのか(発見されたときには既に肝硬変になっていることが多い)や、深さ・広さなどによって決定します。
これを図に示すとこうなります。
がんの範囲が限局している場合に一番治療成績のよいのは肝切除で、腫瘍の大きさが3㎝以下、個数が3個以下なら穿刺療法が有効とされています。
そして、肝臓がんの4割程度にあたる切除も穿刺もできない症例に肝動脈塞栓術(腫瘍を栄養する血管を潰してしまう)治療が選択されます。
しかし、4㎝を超えるがんの半数以上に、肝臓内の血管など画像上見えない範囲にがん細胞が広がっていることがあり、このような場合に陽子線治療が出番となるのです。
更にICG検査(ジアグノグリーンという特殊な色素を注射し、15分後にその血中濃度を測定する)において肝機能良好と判断されたものに限り、陽子線治療が適応になるわけです。
陽子線は放射線による人体への害が少ない治療法ですが、胃や十二指腸・小腸・大腸等の消化管に照射されると潰瘍や出血が生じるリスクがあります。
ですから、肝臓がんであって肝機能が保たれていても、消化管に接する腫瘍は原則、陽子線治療の適応になりません。
<肝臓がんにおける陽子線治療の適応>
- 肝臓の一部にがんが限局している
- ICG15分値が20%以下(肝機能良好)→値によって照射範囲を限局すれば一部可能
- 腹水や肝不全の症状がない
3.2陽子線治療にかかる費用は、200万!?
陽子線治療は、保険適応外の高度先進医療となりますので、全額自己負担です。
一部保険適応となる部分があるものの、実際の治療には最低でも200万円かかるといわれています。
照射回数や医療機関によっても幅がありますのが、治療総額は300万円にものぼることもあります。
これに加え、近隣に治療可能な医療機関がない場合、交通費や宿泊費もかかります。
いきなり「あなたは肝臓がんですが、陽子線治療を受けたら生存率が上がります」と言われたら、どうしますか?
預貯金だけで乗り切れる人は、治療適応となる以上に低い確率なのかもしれませんね・・・。
そのため、治療費を限度とした貸し付けを行っているカード会社や、数十万円の補助を出す自治体もあります。
中には、生命保険の先進医療特約に加入している場合には、患者が立て替え払いをすることなく直接医療機関に支払う制度を導入している生命保険会社もあります。
もし陽子線治療を現実のものとして検討するのであれば、医療機関・加入している保険会社に相談してみるとよいでしょう。
3.3陽子線の治療成果は「90%が消失または縮小」、生存率は?
少し古いデータになってしまいますが、国立がん研究センター東病院が2007年7月までに行った陽子線の治療成績において、全く再発のない3年生存率は18%でした。
ラジオ派や動脈塞栓術などとの併用によって再発に対する治療を行ったケースも含めると、3年生存率は56%となりました。
この数値をどうとりますか?
がんは再発との闘いです。
ラジオ派で焼いても焼いてもまた出てくる・・・それが肝臓がんです。
少なくとも、陽子線を照射した部分の主要は90%の確率で焼失または縮小した状態が3年維持されたということが証明されたのですから、もし適応となったのなら受けておきたいですよね。
(そのためには、多額の費用を工面する必要があるのですけれど)
4.歯科領域の高度先進医療、バイオリジェネレーション法って?
4.1驚愕の事実、現代人の7割以上は歯周病!
突然ですが、日本の成人で歯周病にかかっている人は、どのくらいの割合でいると思いますか?
なんと、7割です!
歯周病は、歯垢(デンタルプラークや細菌)によって引き起こされる病気です。
歯茎の炎症がひどくなってしまうと歯茎が腫れたり歯がぐらぐらし、最終的には歯を抜く(抜歯)ことになります。
歯周病は加齢による変化だけではなく、全身状態と深い関係があることが様々な研究結果によりわかってきました。
生活習慣病の1つである糖尿病は感染に罹りやすくなってしまう特徴があるため、歯周病の原因となります。
口の中は、もともと細菌の最近の多い場所。
本来なら体に害を及ぼさないような細菌でも、体の免疫力が低い場合には重大な感染症を引き起こしてしまうのです。
この糖尿病の患者数が増えたことも、歯周病の患者数を押し上げている原因。
加えて、忙しい現代人は定期的に歯医者に通うのは難しいため、気付いたときには重度の歯周病になっているケースが多いのです。
4.2歯周病による骨の欠損を再生!!バイオリジェネレーション法
これまで、歯周病によって歯を支えることができなくなった組織を治療する方法は存在しませんでした。
ですから、歯がぐらぐらしてきたら抜歯するしかありませんでした。
ところが、近年開発されたエムドゲイン®ゲルというタンパクを主成分とする歯周組織再生材料によって、歯周組織の再生が可能になったのです。
日本では1998年から厚労省の認可のもとで使用されていますが、高度先進医療の枠組みの中で行われています。
<歯周外科治療におけるバイオ・リジェネレーション法>
残念ながら、バイオ・リジェネレーション法は全ての慢性歯周炎に適応があるわけはなく、歯や歯肉・骨の形状によっては適応外となることもあります。
また、効果判定には術後半年から数年かかり、その間も通院の必要があります。
人生100年時代において大切なのは、健康寿命。
高齢になってもどのくらい自分の歯が残っているかで、健康寿命は変わります。。
このバイオ・リジェネレーション法は、私達に一番身近な再生医療と言えるのではないでしょうか。
4.3気になるバイオ・リジェネレーション法の費用は?
バイオ・リジェネレーションは、歯周組織の代謝が活発でうまく再生を促すことができれば、健康な状態に近いところまで回復可能とされています。
抜歯するしかなかった過去と違い、大きな進歩ですね。
しかし、気になるのはその費用。
バイオ・リジェネレーションは厚労省の認可を受けている治療法ですが、保険適応とはなりません。
繰り返しますが、高度先進医療にかかる費用は全額自己負担となります。
一般的にバイオ・リジェネレーションに係る総治療費は7万~8万5000円ほどで、このうち先進医療にかかる費用は4万~5万円と言われています。
先進医療以外の部分には保険が適応されて現役世代は3割負担ですから、自己負担額は1歯の治療につき8万5000円
10万円前後かかります。
また、実施医療機関はまだ大学病院レベルの規模で、費用のみでなく都市部に住んでいる人しか実質受けられないことは悩ましいところです。
バイオ・リジェネレーションの実施医療機関一覧は、厚労省ホームページより確認できます。
5.高度先進医療を受けるなら、眼科領域の可能性が最も高い?
5.1白内障治療の高度先進医療、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術
人生100年時代と言われるようになりましたが、人間の身体の中でどうしても100年時代に適応していない部位があります。
どこだと思いますか?
それは、目です。
全くの裸眼で一生を終える人は、現代人ではほとんどいませんね。
子どもの頃から近視で眼鏡やコンタクトを使用する人が多いですし、若い頃に視力が良かった人は老眼(遠視)になるのが早いと言われ、早い人は30代後半で老眼鏡をかけ始めます。
加齢とともに必ず起こるのがレンズの濁りからくる白内障も、避けては通れない問題です。
個人差はありますが、50代で白内障の手術を受ける人もいます。
このように、目の領域は100年の寿命には程遠いのです。
この白内障手術における高度先進医療が、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術です。
多焦点眼内レンズは世界的には20年以上昔から使われていますが、日本で高度先進医療として承認されたのは2008年であり、これから拡大されていくことになるでしょう。
多焦点眼内レンズは、1か所の見え方は若干膜がかかったように薄くなってしまいますが、見える範囲を広げてくれる特徴があるため、日常生活でなるべくメガネを使いたくない人向けの治療方法です。
一方で、単焦点眼内レンズは1か所に焦点を合わせます。
上の写真で比べるとわかるように、遠くに焦点を合わせると近くはぼやけるため、手元のガイドブックを読むには老眼鏡が必要になりますね。
どちらがよい・優れているというわけではなく、自分のライフスタイルに合ったレンズ・治療法を選択する必要があります。
5.2多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は、クリニックで受けられる!?
陽子線を始めとして他の分野の高度先進医療と違い、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は、個人のクリニックでも受けられます。
大学病院などの大きな医療機関がない地域でも導入されており、2018年6月12日現在で700を超える医療機関が指定医療機関として認可されており、その数は年々増加しています。
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術の実施医療機関一覧は、厚労省ホームページより確認することができます。
あなたの地域の眼科も、実は最先端医療を行っているのかもしれません。
調べておいて、損はありませんね。
5.3多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術、気になる費用は?
いつかはやってくる白内障。
しかし、自分の身近な眼科で高度先進医療を行っているとしたら?
かなりハードルは下がるのではないでしょうか。
視界がクリアになり、でかけるのも億劫ではなくなるかもしれません。
転倒やそれによる骨折・寝たきりのリスクも低下させられるかもしれないとなると、親に受けさせてあげたいと思う人もいるでしょう。
高度先進医療なんて自分達には関係ないと思っていた方も、かなり現実味を帯びた話になってくると思います。
・・・費用さえなんとかなれば。
では、気になる費用はいくらでしょうか?
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術にかかる金額は、先進医療分だけでおおよそ45万~60万円(片目)と言われています。
金額の幅が広いのは、医療機関やレンズの種類によって異なるからです。
多焦点レンズにはどこに焦点を当てるかで種類が別れており、国内承認されているものだけで10種類存在します。
両目合わせると100万円と考えると大きいですが、見えない状態であなたは満足に生きていくことができますか?
目が見えないということは、非常に辛い障害を抱えることになります。
もし多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を受けることによって、QOL(生活の質)をあげることができるのなら、受けたいと思いますよね?
6.高度先進医療特約は、果たしてお得なのか?
6.1高度先進医療特約をつけると、保険料はどのくらい上がるのか?
高度先進医療といっても、適応となる疾患や病気の進行度・実施している医療機関によって、金額はまちまち。
中には慢性歯周炎のバイオ・リジェネレーション法や、白内障の多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術など、命に直接かかわらないけれど100歳まで生きていくことを考えると受けておきたい先進医療もあります。
医療機関が遠方で受けられないという問題もありますが、高度先進医療で一番ネックとなるのはその治療費です。
陽子線の場合最低でも250万円ですし、多焦点レンズなら両目で100万円。
歯周炎のバイオ・リジェネレーションの場合は歯1本に係る金額はそれほど大きくなくても、何本の治療を行うことになるかで負担額が変わります。
もしあなたが何らかの高度先進医療の適応だと医師から告げられた場合、安心して受けることができますか?
ここからは、生命保険の高度先進医療特約について考えていきます。
まず、生命保険について軽くおさらいしましょう。
<生命保険の種類>
- 死亡保険
- 医療保険
- 収入保障(就業不能)保険
- 子ども保険(学資保険)
- 介護保険
生命保険は大きく分けると上の5つの種類があります。
その中の医療保険は、入院1日あたりいくらの給付金を支払いますよという商品です。
これに、加入者が「特約」といって上乗せ部分を追加していきます。
よくあるのががん特約で、「がんと診断されたらがん診断給付金50万円支払います」といった具合に保障が厚くなります。
この特約の1つに、高度先進医療特約があります。
これは、アフラックの医療保険EVERシリーズに付加できる先進医療特約です。
他の生命保険会社の特約も、保障内容は2000万円としていることが多いようです。
それだけ、先進医療を受けるには入院費や通院、場合によっては宿泊費用もかかるからでしょう。
では、この保障を受けるために必要な保険料はいくらでしょうか。
なんと、月額保険料は100円をきります。
100円なんて、普段の買い物であっという間に消えてしまう金額。
年間でも1200円です。
これだけの負担で先進医療にかかる数百万円の治療費の心配がなくなるなら・・・入っておくべし!!となるのでしょうか。
6.2特約だけの契約はできません!医療保険から加入の是非を考えるべし
月額100円前後の負担で数百万円の保障が受けられるなんて、素晴らしい投資効率といえる生命保険の高度先進医療特約。
しかし、ただ100円で加入できるわけではありません。
この土台には、医療保険の契約が必要なのです。
医療保険に加入しているからこそ、100円程度の保険料で保障を上乗せさせることができるのです。
そこで問題となるのが、先進医療には備えたいけれど他の入院治療は預貯金で賄うから医療保険はいらない、という場合。
確かに、高額療養費制度などの公的社会保障制度もありますし、保険適応となる医療なら通常は3割負担で済みます。
だから、医療保険に入らなくても自己資金で対応する考え方もアリです。
それに、近年在宅治療や通院治療が主となり、入院治療の日数は削減されているのが今の日本の現状です。
これは、増えすぎた国の医療費をなんとかしようというための制度です。
ですから、入院日額いくらという保障内容では、その恩恵にあずかれない人も多いのです。
事実、持病を抱えて毎月の通院が必要な人であっても、コントロール良好で入院するような事態がなければ、医療保険による給付金を受け取ることはできません。
それでいて、保険料は持病のある人ほど高くなります。
このように考えると、医療保険そのものに加入する価値があるのか、ということになってしまいます。
毎月数千円の医療保険も、年間にすると数万円、終身となると数百万円の保険料負担になります。
だからこそ、生命保険を見直して医療保険の加入を辞める人も多いのです。
しかし、そうすると特約は受けられない・・・。
先進医療に対する備えを生命保険でと考えるなら、まずは医療保険の加入について考えなくてはなりませんね。
6.3先進医療を受ける可能性・受けられる可能性は?
ここまでにお伝えした通り、高度先進医療は厚労省が安全性や倫理性・費用対効果などを審査した上で承認される治療法です。
陽子線に限ってしまうと自分が適応になる可能性はかなり低く、更に実施医療機関が身近にない場合は現実的には治療を選択する確率は限りなく低いかもしれません。
一方で、白内障手術なら可能性は高いですが、今30代の人がその先進医療を受けるまで、何十年もあります。
先進医療を受ける可能性、そして先進医療特約をつけるために加入する医療保険の負担、ここを考える必要がありますね。
眼科領域の保険外診療であるレーシックは、昔の医療保険なら手術給付金を受けることができました。
しかしあまりにもレーシックが一般的に普及したことから、近年の医療保険では手術対象から外されるようになりました。(すべての保険商品がそうではありませんが)
もしかしたら、数年後に超画期的な治療が新たに承認されるかもしれませんしね。
このように、先進医療などの保険外診療をめぐる保険会社の対応は、これからも変わっていくことでしょう。
あなたは先進医療分野に対する備えをするのか、それとも割り切ってしないのか。
預貯金を貯めるのか、それとも生命保険に高度先進医療特約をつけるのか。
ただ特約をつけるかどうかだけでなく、自分の価値観や健康状態、自分の住んでいる地域の医療状況も加味して高度先進医療をどのくらい受ける可能性があるのか、そこから検討する必要がありますね。
7.まとめ
医療が進歩するに従って高額な治療方法が確立され、治療方法を自ら選択する時代になりました。
そのとき保険適応外となる高度先進医療を受けるのか、それとも高い治療効果が見込まれるのに費用が用意できないからと諦めるのか?
高度な医療を受ければ、病気が治癒するとは限りません。
数百万円かけて、ほんの数か月伸びるだけかもしれません。
その数か月に、あなたが価値を見出すのかどうか・・・現時点で、想像できますか?
いざというときに慌てないように、医療保険も高度先進医療特約も健康なうちに考えておきたいものですね。