今、『人生100年時代』が、盛んに言われるようになってきていますよね。
でも、本当に、そんなに長生きするのかどうか、実感をもたれている方は、決して、多くはおられないのではないでしょうか(実は、私も、まったく実感がありません・・・)。
そんな私たちの気持ちとは裏腹に、100歳以上の方の人口は、年々、増え続けているのが、現状です。
たとえば、65歳で定年を迎えたとしても、100歳までは、35年。
35年・・・健康であるのならば、人生の残り時間は、是非、有意義に過ごしたいところですよね。
もちろん、今まで、頑張ってきたのですから、老後は、のんびりというのもアリですが、年金をもらいながら働くというような、アクティブな過ごし方を選択されるシニアの方も、多く見受けらるようになってきています。
老後に仕事をするにせよ、しないにせよ、シニアの就業事情を知っておくと、今後のライフプランニングが立てやすく、ぐっと、見通しやすくなります。
また、現在、リタイアメント後の生活を考え中のプレシニア世代の方も、必見ですよ!
詳しく解説していきますので、是非、参考にしてくださいね。
1.老後って、いつ?
「老後」とは、言葉そのものには、「年を取ってから後(のち)」という意味があります。
私たちは、誰でも、必ず、年を取ります。
子供が大人になるのも、年を取った結果ですが、その場合は、「年を取った」とは言わずに、「成長した」と言いますよね。
では、「年を取った」とは、どういった時に使われているのでしょう?
一般的には、十分に大人になった後、さらに、年齢を重ねた場合に、「年を取る」と言われていることが多いようです。
たとえば、子供が成長し、青年期を経て、成人期(壮年期)を迎え、やがて、老人になった時に、「年を取った」と言います。
つまり、「年を取る」とは、ざっくり言ってしまうと、「老人になる」ことと、同じことを意味しています。
ですから、老後とは、「老人になった後」のことを言います。
では、「老人になった後」とは、いったい、いつのことを言っているのでしょう?
あるアンケート調査では、年齢によって、「老人になった後」の捉え方は、さまざまで、各世代ごとで、とくに、顕著な違いがあることが、報告されています。
たとえば、20代や30代の方では、「老人になった後」とは、「60歳以降」と回答された方が、最も多く、40代や50代、それ以降の年代の方では、「70歳以降」であると回答された方が、多数を占める結果となっています。
つまり、20代や30代といった若い世代の人では、「60歳」は、すでに、「老人」であり、「老後」とは、「60歳以降のこと」であると考えられていますが、中高年世代の人からすると、60歳では、まだまだ、「老人」とは言えず、体力の衰えや、健康面での不安を感じるようになってからが、本当の「老人」であり、「老後」という捉え方をされていることが、報告されています。
また、同じアンケート調査では、60歳オーバーの年代の人ほど、「身体が思うように動かないと感じたら」や、「気持ちが老け込んだら」など、身体面や精神面に関する回答が上位を占める結果が出されており、このことからも、年齢があがるにつれて、実体験に基づいて、「老後」を判断されていることが、伺い知ることができます。
しなしながら、やはり、社会通念的には、今まで勤めていた会社を定年退職した後や、年金生活が開始される、「60歳以降」※が、「老後」として、考えられています(※以前は、会社を定年退職する年齢や、厚生年金の支給が開始される年齢は、「60歳」と決められていました)。
2.老後の仕事って?
このように、「老後」とは、『定年退職』や、『年金の受給開始』を、ひとつの指標にして判断することができます。
ところで、『定年退職』や、『年金の受給開始』には、いずれにも、「もう、働かなくてもいい」というイメージがありますよね。
たとえば、スポーツ選手が、現役を引退することになぞらえて、会社員の方が定年退職したり、自営業の方が第一線から退くことを、『現役引退』と言うことがあります。
プロのスポーツ選手が、スポーツ界から引退する時に、「年齢からくる体力の衰え」や、「精神的な限界」を理由としてあげられていることを、私たちは、ちょくちょく、耳にしています。
スポーツ選手に現役引退があるように、会社勤めや、自営業の方であっても、ずっと、働き続けることはできません。
健康上の問題が、とくに、なかったとしても、年を取って、働くことができなくなる日は、いつか、必ず、訪れます。
働くことができなくなると、収入を得ることができなくなり、日々の生活を維持することが難しくなります。
こういった事態に備えて、日本では、高度成長期真っただ中の昭和36年(1961年) に、国民年金制度が、スタートされました。
年金制度の発足当時、日本のサラリーマンの方が、定年退職を迎える年齢は、55歳でした。
厚生労働省によりますと、昭和36年(1961年)当時、55歳の人の平均余命(ある年齢の人が、何年生きられるかという指標のことを言います)は、男性、18.78年、女性、21.93年であったことが、公表されています。
その後、昭和40年(1965年)には、サラリーマンの方のための年金制度(厚生年金制度)が、創設されました。
厚生年金制度には、民間の企業などに、お勤めされている人(雇用されている人=被用者)が、雇用先(=雇用主)を通じて、加入します。
このため、厚生年金制度は、別名、被用者年金制度とも言われています。
年金を受け取る時には、国民年金(=原則、日本にお住まいの20歳以上の人全員が加入するため、基礎年金とも言われています)に、厚生年金部分が上乗せされて支給されるため、厚生年金は、年金の「2階建て部分」と言われています。
厚生年金制度がスタートされた、昭和40年(1965年)の55歳の人の平均余命は、男性、18.94年、女性、22.54年で、男女ともに、わずかながらですが、のびがみられています。
その後、定年退職の年齢である55歳の人の平均余命は、さらに、のび続け、コンスタントに、平均余命が、20年を超えるようになった、昭和61年(1986年)に、「高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)」によって、60歳定年制がスタートされました。
なお、昭和61年(1986年)当時、55歳であった人の平均余命は、男性23.7年、女性28.1年であったことが、公表されています。
2.1「高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)」って?
「高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)」とは、正式名称、「高年齢者等の雇用の安定に関する法律」と言います。
「高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)」は、もともとは、高度成長期であった昭和46年(1971年)に、おもに、45歳以上の中高年の人の雇用を、企業側に働きかける目的で、「中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法」として制定された法律でした。
その後、中高年の人の中でも、とくに、55歳以上の高年齢の人を対象に、たびたび、法律の改正が加えられるとともに、名称も、「高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)」として、改められています。
「高年齢者雇用安定法(こうねんれいしゃこようあんていほう)」の改正によって、雇用する側には、次のような義務(努力義務)が発生しています。
昭和51年 | 1976年 | 高年齢者の雇用率を法定するとともに、達成することを義務づけ |
昭和61年 | 1986年 | 定年時の年齢を60歳まで延長すること(努力義務) |
平成2年 | 1990年 | 60歳での定年退職後、定年退職者を再雇用すること(努力義務) |
平成6年 | 1994年 | 60歳未満定年制を禁止 |
平成12年 | 2000年 | 従業員の65歳までの雇用を確保すること(努力義務) |
平成17年 | 2004年 |
従業員の65歳までの雇用を確保すること(段階的に義務化=以下の3つのいずれかを選択すること) 1.60歳定年制を廃止する 2.定年時の年齢を65歳に引き上げる 3.65歳までの継続雇用制度を導入する ※2013年(平成25年)までに、3つのうちのいずれかを選択しなければならないことが義務づけられています。 |
平成24年 | 2012年 |
従業員の希望者全員を65歳まで継続して雇用すること(義務) ※2025年(令和7年)までに、希望者全員を65歳まで雇用する体制を整えなければならないことが義務づけられています。 |
2.2定年退職する年齢と公的年金の関係って?
このように、民間の企業などにお勤めされている、サラリーマンの方の定年退職時の年齢は、当初、55歳であったものが、1986年(昭和61年)には、60歳にまで延長されています。
定年退職時の年齢が延長された背景には、平均寿命が、年々、のびていることや、厚生年金の支給開始年齢が、引き上げられたことなどが、関係しています。
以前から、基礎年金部分である国民年金は、一律、65歳になった年から、支給が開始されていましたが、サラリーマンの方の厚生年金(2階建て部分)は、制度開始当初は、55歳から支給されていたものが、段階的に引き上げられ、2030年度(令和12年度)には、一律、65歳になった年から、支給されることが決定しています。
●平均寿命って?
平均寿命とは、ある年に生まれた子供が、何歳まで生きるかの平均的な数値(推定余命年齢)を示したもののことを言います。
たとえば、1950年(昭和25年)に生まれた子供の平均寿命(0歳児時点での推定余命年齢)は、男性、58歳、女性、61.5歳でしたが、1989年(平成元年)には、男性、75.91歳、女性、81.77歳と、男女ともに、約40年ほどで、20歳以上の飛躍的な数値ののびがみられています。
これは、私たちの健康意識の高まりや、医療技術の進歩などによって、若くして亡くなる人の数が減少したため、国民全体の死亡率が改善された結果です。
なお、直近の2017年(平成29年)では、男性、81.09歳、女性、87.26歳と、平均寿命の過去最高年齢がたたきだされています。
ただし、この年齢は、2017年(平成29年)に、生まれた子供が、何歳まで生きるかの推定余命年齢であり、2017年(平成29年)に、亡くなられた方の平均死亡年齢ではないことに、注意しなければなりません。
現在、65歳の人が、あと何年生きるかをとりまとめると、次の表のようになります。
●現在、65歳の人は、何歳まで生きる?
男性 | 女性 | |
70歳 | 93% | 97% |
80歳 | 68% | 84% |
90歳 | 25% | 49% |
100歳 | 1% | 6% |
出典:厚生労働省 高校生が知っておくべき将来の話
実に、男性では、4人に1人、女性では、2人に1人が、90歳まで生きる時代であることが、見てとれます。
また、医療技術の進歩や、日本の社会情勢を踏まえて、平均寿命は、今後も、ますます、のび続けることが予測されています。
平均寿命ののびとともに、現在、65歳の人が、90歳まで生きる確率も、4人に1人だったところが、3人に1人になることなども、十分に、考えられます。
65歳より下の若年層である30代、40代の方であれば、男女ともに、90歳まで生きる確率は、もっと、高くなることが予測されます。
現在、20代である方であれば、さらにもっと・・・と、年齢が若くなるにしたがって、90歳まで生きる確率は、どんどん、高かまっていきます。
このようなことからも、これから老後を迎える方であれば、「95歳」までを念頭に、生活設計をプランニングするべきであると、盛んに言われ始めています。
3.長生きリスクって?
私たちの老後は、思った以上に長いものになることが、わかっています。
では、会社員の方が、60歳で現役を引退した場合、どういったことが起きるでしょうか?
生きている限り、私たちには、生活するためのお金が必要になります。
現在、老後の生活にかかる生活費は、次のように試算されています。
60歳代世帯の毎月の生活費は、約30万円、70歳代以上の世帯では、毎月、約22万円が、必要であると言われています(総務省総計局「家計調査」より)。
なお、現役世代である50歳代世帯の毎月の平均的な生活費は、39万円と報告されていますので、リタイアメント世代である60代世帯の生活費(=30万円)は、現役時代の約8割の生活費ですから、基本的な生活にかかる資金は、あまり減少しないことが伺えます。
95歳までの必要になる生活費を、ざっくり計算すると、60歳代では年間、360万円(30万円×12カ月)、70歳代以降では、年間、264万円(22万円×12カ月)になりますので、「360万円×10年」+「264万円×25年」=1億200万円と、試算されます。
では、現役引退時の年齢を、60歳ではなく、65歳として試算した場合は、どうなるでしょう?
「360万円×5年」+「264万円×25年」=8400万円と、60歳~65歳までの5年分(1800万円)を、老後に必要な生活費の総額から、差し引くことができます。
仮に、70歳まで現役であった場合には、60歳~70歳までの10年間(3600万円)を、圧縮することができます。
このように、長生きすることは、本来は、喜ばしいことなのですが、その分だけ、生活費がかかってしまいます。
老後の生活では、基本的な生活費の大部分は、年金や、現役時代の貯金でまかなうことになりますが、「生活資金をどうやってまかなうか」という問題は、常に、つきまといます。
そういった意味で、長生きはリスクである(=長生きリスク)と言われています。
4.老後の仕事はどうなる?
昨今、なにかと話題の『働き方改革』、みなさんの職場では、どうでしょうか?
我が家では、夫の職場で、残業禁止・休日出勤禁止命令が、励行されてしまい、家計的には、大打撃です。
サラリーマン家庭の多くでは、阿鼻叫喚、戦々恐々ではないでしょうか?
それどころか、残業代がなくなってしまったために、住宅ローンが払えなくなって、自宅を手放さざるをえなくなってしまったケースも、聞こえてきます。
今後、しばらく、このような事態が、日本全国のサラリーマン家庭のあちこちから、聞こえてくるのではないでしょうか。
私は、高度成長期の終わり頃に生まれていますが、父親世代は、まさに、会社人間であり、お休みは週に1日(日曜日)だけ、お盆やお正月のお休みも3日づつ、サラリーマン人生40年の間で、父が、有給休暇を使ったのは、後にも先にも、手術入院のための10日間だけという有様でした。
夫も似たようなもので、とにかく、いったん、サラリーマンとしての人生がスタートすると、プライベートな時間は、2の次、3の次、場合によっては、ほぼほぼ、なくなってしまいます。
今までは、そうやって、現役時代は、しっかりと働き、現役引退後に、ゆっくりと旅行を楽しんだり、趣味に没頭したり、自由な時間を満喫することを楽しみにして、仕事人生を勤め上げることが、一般的な、社会の常識とされていました。
ところが、私たちの老後は、社会人生活を送った時間と、ほぼほぼ、イコールの長さになりつつあります。
そこで、残業時間を減らしたり、有給休暇の取得を法律で義務づけるするなどして、会社にお勤めのサラリーマンの方のプライベートな時間を充実させることによって、今までのように、老後の楽しみとして、旅行や趣味の時間を先延ばしにするのではなく、その分、仕事人としての人生を、少しでも、長くしてもらうことを目的としているものが、『働き方改革』です。
『働き方改革』では、他にも、「同一労働、同一賃金」などが有名です。
『働き方改革』の一環として、定年退職を迎える年齢(=60歳)に達した人の働き方も、捉えることができます。
4.1定年はどうなっている?
現在のところ、定年を定めている企業は、定年の年齢を、60歳以上にしなければなりません(高年齢者雇用安定法第8条)。
また、定年時の年齢を、65歳未満に定めている企業では、65歳までの安定した雇用を確保するために、
1.65歳まで、定年時の年齢を引上げる
2.65歳までの「継続雇用制度」を導入する
3.定年制度の廃止する
以上の3つから、いずれかを選択して、実施しなければなりません(高年齢者雇用安定法第9条)。
●「継続雇用制度」って?
「継続雇用制度」とは、本人が希望すれば、定年後も引き続いて雇用される制度のことを言います。
「継続雇用制度」には、「再雇用制度」と、「勤務延長」の2つがあります。
2017年(平成25年度)以降、「高年齢者雇用安定法」の改正によって、企業側は、希望する人全員を、再雇用の対象としなければならないことが、義務づけられています。
つまり、会社にお勤めされている人であれば、本人が希望すれば、それまで勤めていた会社に、引き続き、65歳まで、勤めることができると、法律で、決められていますので、「継続雇用制度」の利用は、老後の仕事を考える場合、第一の選択肢になると言えるでしょう。
4.2再雇用契約と勤務延長との違いって?
定年退職の年齢になった人が、「60歳以降」も、引き続き、同じ会社で働き続けことができる制度のことを、「継続雇用制度」と言いますが、その代表的なものが、「再雇用制度」と言われているものです。
「再雇用制度」では、定年年齢(60歳)に達した人に、一度、形式的に、退職(定年退職)してもらい、新たに、雇用契約を結び直します。
2017年(平成29年)では、約8割の企業で、この「再雇用制度」が導入されており、現段階で、60歳以上の人の働き方として、最も、ポピュラーなものとなっています(厚生労働省「平成29年就労条件総合調査結果の概況」より)。
再雇用後には、嘱託社員(フルタイムの有期雇用社員)になることが、一般的ですが、パートタイムとして、雇用されるケースもあります。
一方、定年を迎えた人が、定年退職することなく、そのまま継続して雇用される制度が、「勤務延長」と言われているものです。
「勤務延長」とは、ざっくり言うと、「定年を過ぎても、正社員のまま、仕事を続けること」です。
「勤務延長」では、今までの勤務形態が、そのまま延長されることになりますから、役職や、仕事内容、賃金などが、大きく変わることはありません。
「勤務延長」の期間は、1年ごとの更新で、最長3年間であることが、一般的です。
また、60歳であった定年の年齢を、一律、65歳まで延長する制度のことは、「定年延長」と言います。
定年延長を選択している企業は、大企業を中心として、全体の約2割であることが、報告されています(厚生労働省「平成29年就労条件総合調査結果の概況」より)。
お勤め先の企業などに定年制度があり、かつ、定年の年齢が、「65歳未満」であるのであれば、定年後の再雇用について、就業規則などに、必ず、記載されている必要があります。
お勤め先の就業規則を、今一度、よく確認するようにしておきましょう。
4.3再雇用契約の注意点って?
60歳以上の人が、同じ会社に継続して雇用される、再雇用制度を利用した場合、収入は、定年時の賃金に比べると、5~7割程度になるという調査結果があります。
また、1週間の労働時間は、社員と同じ40時間、あるいは、やや短い、30~38時間がほとんどであり、仕事内容も、定年時と、おおむね、変わらないという調査結果もあります。
このため、「仕事内容は、ほぼ以前と変わらないのに、お給料だけが減った」や、「定年前と待遇が全く違う」など、不満を抱えるケースも、少なくありません。
再雇用制度を利用して、引き続き、同じ会社で働き続けることを選択される場合では、後々のトラブルを避けるためにも、再雇用時の契約内容を、きちんと確認するようにしましょう。
たとえば、定年後の再雇用についての面談が行われた際には、最低でも、「賃金」、「勤務時間」、「契約期間」、「雇用形態(正社員、嘱託社員、パート社員、契約社員など)」の4つについては、口頭でなく、きちんと書面にしてもらい、チェックするようにしましょう。
正社員として働いていた期間が長い人ほど、こういった勤務形態に関わる雇用契約などについては、疎いものです。
くれぐれも、確認を怠ることがないように、注意するようにしましょう。
5.老後に仕事をすると、年金はどうなる?
現在のところ、国民年金の支給開始年齢は、65歳からとなっています。
一方、厚生年金の支給開始年齢は、生まれた年月日に応じて、60歳、61歳、62歳と、段階的に、64歳まで変化しています。
男性では、1961年(昭和36年)4月2日生まれ以降、女性では、1966年(昭和41年)4月2日生まれ以降の方から、国民年金と同じ、65歳から支給が開始されます。
サラリーマンの方が、厚生年金をもらいながら働く時の年金のことを、「在職老齢年金」と言います。
「在職老齢年金」は、60歳~64歳の方では、毎月、会社から受ける賃金と年金の合計額が、月28万円を超えると、超過分の半額が、年金支給分から差し引かれます。
また、毎月、会社から受ける賃金が、47万円を超えた場合には、年金支給分に調整が入ります。
たとえば、60~64歳の方の毎月の会社からの賃金が、30万円、毎月の年金の支給額が「18万円」であった場合、年金の支給金額は、「(30+18-28)×1/2=10万円」として、「18万円-10万円」として計算され、8万円となります。
ただし、65歳以上であれば、月47万円を基準に、超過分が減額されます。
また、60歳~64歳の「在職老齢年金」制度は、厚生年金の支給開始年齢が、65歳まで引き上げられた段階で、消滅します。
男性では、2025年度、女性では、2030年度に、「在職老齢年金」制度の廃止が予定されています。
また、雇用保険の「高年齢雇用継続給付」を受給した場合にも、支給される厚生年金が減額されます(最高、月給の6%相当分)。
雇用保険の「高年齢雇用継続給付」は、雇用保険の被保険者期間が、5年以上である、60歳~64歳のサラリーマンの方で、再雇用後の給与が、一定割合未満に低下した時に支給される、失業保険の一種です。
ざっくりとは、再雇用前(60歳時の給与)に比べて、再就職後の給与が、75%未満であった場合に、再雇用後の給与の15%(最大)の金額を、65歳の誕生日(誕生月)まで、受け取ることができます。
6.老後に仕事をする時の注意点!
ここで、老後の仕事を考える前提として、高齢になった時、私たちは、どういった状態になるのか、身体的機能や、知能面などを、今一度、確認しておきましょう。
●高齢者の身体的特徴
高齢になると、肌にしわがよったり、白髪になるなど、見た目が変化するだけでなく、内臓の臓器も変化していきます。
代表的なものでは、心臓の筋肉(心筋)の力が、高齢になると、徐々に、低下していくため、それを補うかのように、肥大していきます。
心肥大があると、血液を心室に引きもどす働き(拡張機能)が低下することになり、運動をしたときに息切れがしやすくなったり、不整脈がおこり易くなり、動悸・息切れ・めまいなどの症状が重くなりがちになります。
全身の血管も、高齢者では、動脈硬化がみられ、内腔が狭くなります。
そのため、血圧が高くなります。
また、全身の各臓器への酸素や栄養の供給が少なくなるため、機能低下が進みます。
肺活量も減少し、とくに、息を吐き出す速度が、低下します。
歯の欠損や、胃腸管のぜんどう低下などによって、食べる量が少なくなったり、食べた物を栄養として取りこむ機能も低下するため、低栄養や、消化不良、便秘の原因になります。
骨では、骨量が減少し、「骨粗しょう症」になりやすくなります。
感覚器系の機能低下もみられます。
高齢者の老眼や、白内障、難聴などは、よく知られていますが、これらによって、生活自体が変わってしまうことがあります。
また、高齢になると、T細胞というリンパ球に由来する細胞性免疫が低下し、がん細胞を破壊する機能が低下するため、悪性腫傷の発生が増加します。
また、ウイルスを排除する機能が低下するために、感染症にかかりやすくなります。
こういった身体面の変化は、早い人では、40代半ばから、始まると言われています。
●高齢者の知能の特徴
高齢になると、計算能力には、低下がみられます。
また、新しい環境になじむ能力や、記憶力、判断力なども低下します。
ただし、言語能力には衰えが少なく、学習したことを習得する能力は、むしろ発達していくといわれています。
高齢になると、新しいことを記憶するのは苦手であっても、理解力や、洞察力が深まるため、時間をかけることで、学習能力を維持することは可能であると言われています。
60歳までは、知的能力の著しい低下は、あまりみられないことなどは、研究結果でも、多数、報告されており、世界的な常識となりつつあります。
7.まとめ
以上、老後の仕事について見ていきましたが、いかがでしたか?
ある研究結果では、今の高齢者の身体機能は、昔の同年齢の人に比べて、10歳くらいは、若返っていることが報告されています。
また、何歳から高齢者というかなどの、「老人の定義」を見直す動きも、ちらほらと、でてきています。
確かに、ファーエバーヤングな、若々しい老人は、増えているようにも思います。
しかしながら、高齢者が引き起こす重大事故などのニュースも後を絶ちません。
やはり、年齢を重ねると、できること、できないことがあることを、素直に認めて、加齢による変化には、臨機応変に対応するように、心がるようにしたいですね!