日本人に多いとされる死因には自殺や心疾患などがありますが、最も多い死亡原因とされているものに「悪性新生物」というものがあります。
悪性新生物とは「あくせいしんせいぶつ」と読むのですが、この悪性新生物というものは一体何かというと、いわゆる癌のことです。
今回は、そんな「癌」の種類や死亡率について解説していきます。
1.悪性新生物(癌)の特徴
悪性新生物(癌の事です)は一般的に不治の病であるとされています。
治療には手術や化学療法などを用いる事で知られていますが、実は手術などで取り除いても再発する可能性が極めて高い病気です。
癌には初期症状などの特徴はなく、大体の人は癌検診やその他の病気等によるレントゲン写真などで初めて癌であることに気が付くケースが多いとされています。
初期症状が無いために、癌であることに気が付かずにそのまま放置していると、癌が進行し悪化していくことによって深刻な状態へと発展してしまう病気です。
癌が進行するにつれて生存率が下がっていく
癌は不治の病と言われるように、癌が進行していくにつれて生存率が極端に下がります。
癌の進行度を表す「ステージ」でⅢからⅣに至ってしまうと生存できる確率の方が低くなってしまうのです。
初期症状のない病気であるために、癌検診などを受けていないまま癌が進行し、病院で診断された段階ですでにステージⅢになってしまったという話をよく耳にします。
自分自身または大切な人を守るためにも、定期的な癌検診を受診することを強くおすすめします。
2.癌の正体
日本人の死因の多くが癌であるということが多くの人に知られていたとしても、実際に癌がどのように発生するのかを知っている人は意外と少ないように感じます。
癌の正体は、細胞が細胞分裂を繰り返す事で体内の組織にできる「しこり」です。
これが悪性であると判断されればそれが癌として扱われるのですが、癌は細胞分裂で出来上がっているわけですから、細胞分裂を体内で繰り返し、組織に移動していきます。
これを癌の転移といいます。
癌が体内のあらゆる場所へ転移していくことで、人間を死に至らしめるため、定期的な癌検診が必要になってくるのです。
細胞分裂って何?
我々の身体は細胞で出来上がっているのですが、例えばケガをして皮膚が裂けてもしばらくすると皮膚が再生し元の状態に戻ります。
これは細胞分裂によるもので、人の再生能力はこの細胞分裂のおかげで成り立っています。
細胞は必要な時に分裂して、必要が無くなると分裂を止め、アポトーシスします。
アポトーシスとは
アポトーシスとは細胞死とも言い、細胞自体にあらかじめ備わっている自殺プログラムのようなものです。
細胞分裂を繰り返していった古い細胞や、遺伝子情報に変化が起こった細胞などを自ら自殺させることで、体組織を常に新しい状態に保つ事ができます。
この自殺現象の事をアポトーシスと呼んでいます。
細胞分裂によって癌ができる
細胞は細胞分裂を繰り返す事で何らかの外的要因(発がん性物質など)によって細胞のDNAが傷つけられ本来の遺伝情報とは異なった細胞がまれに出来上がってしまいます。
この異なった遺伝情報を持った癌がいわゆる癌細胞であると言われています。
通常この癌細胞は身体の免疫力などによって駆除されていくのですが、免疫力の低下などによって生き残る癌細胞もいます。
生き残った癌細胞は体組織などに入り込み、分裂を繰り返していきます。
癌細胞が集まることで「しこり」が出来上がり、それが癌になると考えられているのです。
癌とは、これ等が原因である恐ろしい病気です。
3.癌の種類と死亡率
癌というのは、身体の一部分にできるというものではなく、身体全体が癌に侵される可能性のある非常に怖い病気です。
脳や神経、目などに出来上がるだけではなく、口や喉、更に胸部や肝臓や骨、皮膚などにも表れることで有名な病気であり、癌の進行具合によっては「末期がん」として扱われ、癌の切除などができなくなってしまいます。
癌とは恐ろしい病気であることは理解していただいたと思いますが、癌にはどのような種類があるのでしょうか。
一つずつ解説見ていきましょう。
胃がん
胃がんは技術の進歩によって早期の癌であれば高確率で完治が可能になってきています。
胃がんの5年実測生存率(治療を行ってから5年後に生きている確率)は癌全体の平均並みであるとされています。
ただし、ステージⅣになると急激に生存率が落ちるという特徴のある癌です。
陰茎がん
陰茎(いんけい)がんはその名の通り陰茎に発生する癌とされていますが、もともとの発生率がかなり低く、死亡率も人口10万人あたりの死亡率は0.1%などと言われています。
肝臓がん
肝臓がんは、肝臓の細胞からできてしまった癌である原発性肝臓がんと、他の臓器から転移してきてできた転移性肝臓がんに分かれています。
肝臓がんは再発の可能性が高く、せっかく手術で切除できたとしても、その80%前後が3~5年以内に再発している癌です。
5年実測生存率も非常に低く、ステージⅠであっても50%ほどです。
膵臓がん
膵臓(すいぞう)がんは死亡率が非常に高い癌の一種です。
膵臓にできた癌は手術により切除できたとしても、再発の確率が非常に高い癌になっています。
他の部位に転移しやすいため、ステージⅠの段階でも5年実測生存率が半分近くしかなく、ステージⅣに至ると生存率は1桁になってしまう恐ろしい癌です。
甲状腺がん
甲状腺がんの多くは進行速度が遅く、手術によって全て切除できなかったとしても、進行速度が遅いため生存率が上がります。
ただ確率は低いものの、癌が未分化癌(現在治療が難しいとされる癌)であった場合には、高確率で死亡するのが現状です。
子宮がん
子宮がんは胃がん同様に比較的治りやすい癌に位置しています。
子宮がんには主に2種類存在しており、子宮頸がんと子宮体がんがあります。
今現在のところ子宮頸がんは死亡率が下がっているのに対し、子宮体がんは死亡率が上がっているという傾向にあるようです。
乳がん
女性に多い癌であるとされ、日本の女性は他の国の女性よりも高確率で発症すると言われている癌です。
胃がんや大腸がんと比べると死亡率は低いのですが、女性の癌による死亡率は1位であると言われている時期もありました。
女性の癌の死亡率は20%前後であるとされています。
食道がん
食道がんは他の消化器系の癌の中でも比較的予後が悪い癌であるとされている癌です。
食道がんは他の臓器に広がりやすい癌であるとされており、ステージⅠの段階でも生存率が60%前後と低くなっています。
ステージⅢの段階でも生存率が低くステージⅣになってしまうと5年実測生存率も1桁である恐ろしい癌です。
前立腺がん
前立腺がんは適切な治療を行う事によって生存率が比較的高い傾向にある癌です。
仮に癌が完全に外科手術によって取り除けなかったとしても、ホルモン療法などによって寿命を全うできる確率が高くなっています。
その他の癌と比べて生存率が比較的高くなっており、ステージⅣでも半分以上が生存できる確率を持っている癌です。
大腸がん
大腸がんは高齢になるにつれて発生率が高く、男性の方が多く大腸がんになる確率が高い癌になっています。
早期発見であれば、ほぼ100%に近い治療率を誇る癌です。
その他の癌の平均よりも高い生存率になっていますが、癌が進行しステージⅣになると一気に生存率が下がる傾向にあります。
肺がん
肺がんは癌の中で最も死亡率が高いとされている癌であり、死亡率も年々増えている傾向にあるようです。
治療方法や、癌の発症場所などによって生存率が異なる癌になっています。
膀胱がん
膀胱がんはその他の癌とは異なり、初期症状が現れやすい癌になっているため早期発見しやすい癌であるとされています。
そのため、癌が進行してから発見されるという事はほとんどなく、早期治療が可能であるために生存率も比較的高い傾向にある癌です。
ただし、ステージⅢ以降では生存率がⅠ・Ⅱとは異なり急激に生存率が下がる傾向にあります。
精巣がん
精巣がんは比較的治りやすい癌であるとされています。
ステージⅠの状態であればほぼ100%治療が可能とまで言われており、癌が進行しても生存率が高い癌です。
しかし、再発率は決して低いものではないため注意が必要です。
皮膚がん
日本国内では皮膚がんの患者が増えている傾向にありますが、進行度がゆるやかで早期発見もしやすい癌であるとされており、死亡率は低くなっています。
ただし、皮膚がんの中でも悪性が強いとされている「悪性黒色腫」というものになってしまうと進行度が速く皮膚がんの中でも死亡率の高い癌であるため、注意が必要です。
まとめ
癌の原因はDNAを破壊された細胞が増殖することで生じる「しこり」であると言われています。
細胞分裂を繰り返していくことによって様々な部位に移動することを転移(てんい)と言いますが、身体全体で生じる可能性があるために、定期的な癌検診を行う必要があります。
中には初期症状がわかりにくい部分も存在し、癌が進行していくにつれて、どんどん生存率が下がってしまいます。
また、部位によっても手術が難しかったり、転移しやすかったりと様々なため、自分がどのような癌になっているかの知識を得て正しい治療を行うためにも、早期発見が最重要です。
面倒くさがらずに定期的な癌検診を受診することを強くお勧めします。