倒産防止共済は頼りになるの?倒産防止共済の特徴と注意点を詳細解説!

倒産防止共済とは、あなたの会社の取引先が倒産したことによって、連鎖的にあなたの会社が倒産または経営難に陥らないようにする共済制度です。

ある日突然、取引先が倒産して売掛金が回収不能になってしまうこともあります。頼りにしていた売掛金が回収できず、その結果、買掛金を支払えなくなってしまう緊急事態が発生するかもしれません。

そんな不測の事態に備えて、倒産防止共済に加入していれば、売掛金等の回収が困難になった場合、共済金の貸付が受けられることになります。

この共済は公的な団体が運営しており、あなたの会社が前述した事態に陥ったときに非常に役に立つ共済です。

倒産防止共済は、中小企業を対象にしており、加入要件は製造業・卸売業・サービス業・小売業等の各業種によって、資本金・従業員数の範囲が決められています。

そこで今回は、倒産防止共済の加入資格や申込み手続きの方法、共済の特徴や注意点について説明します。

この記事を読めば、倒産防止共済の基本的な知識を得ることができ、事前の備えとして加入するかどうかを検討する際、良い参考資料の一つになるでしょう。

目次

1.倒産防止共済について

  • 1-1.倒産防止共済とは
  • 1-2.怖い「連鎖倒産」
  • 1-3.倒産防止共済を扱う機構について

2.倒産防止共済に加入したい!

  • 2-1.加入資格
  • 2-2.申込手続きについて
  • 2-3.手続きに必要な書類

3.倒産防止共済の特徴その1

  • 3-1.貸付とは
  • 3-2.取引先が倒産した場合
  • 3-3.急な資金が必要になった場合

4.倒産防止共済の特徴その2

  • 4-1.掛金とは
  • 4-2.掛金の損金算入
  • 4-3.解約した場合に掛金はどうなる?

5.倒産防止共済の注意点その1

  • 5-1.倒産防止共済と法人保険
  • 5-2.共済に足りない点
  • 5-3.共済と法人保険に双方に加入する

6.倒産防止共済の注意点その2

  • 6-1.その他の注意点
  • 6-2.解約のタイミングを考える
  • 6-3.取引先の倒産で共済金を借りる前に

7.まとめ

1.倒産防止共済について

我が社は起業してから数年経つが、徐々に経営も安定し大口の取引先もあらわれた。

しかし、我が社がいくら健全経営を行っていても、取引先が倒産したら多大な影響が出てしまう。

まさかの事態に対応する備えを考えたい・・・・。

そんな時に頼りになる共済が「倒産防止共済」です。こちらでは、倒産防止共済とは何か?それを扱う公的な機構について説明します。

1-1.倒産防止共済とは

倒産防止共済とは中小企業を対象とした共済で、中小企業倒産防止共済または経営セーフティー共済とも呼ばれています。

この共済は、何らかの理由で取引先が倒産し、売掛金や債権の回収が難しくなった時に貸付を受けられる制度です。また、一定の節税効果も期待でき、経営者にとって非常に頼もしい共済制度と言えます。

中小企業であるなら基本的に加入できる共済ですが、加入資格が製造業や建設業、サービス業、小売業等、業種によって資格条件が異なります。

1-2.怖い「連鎖倒産」

連鎖倒産とは、取引先の倒産で不良債権が発生した中小企業等が、その影響で倒産してしまうことです。

親会社に子会社が連鎖する場合もあれば、大手企業(大口の取引先)の倒産で下請けとなっている会社が倒産する場合もあります。

大手企業(大口の取引先)が破綻することによって、その企業と傾注取引(要するにその企業だけと集中的な取引)をしている中小企業は倒産するケースが多いと言われています。

一般的には販売先に傾注していることが多いですが、仕入先の傾注でも代わりになる企業がみつからない場合は、支給が滞ってしまい倒産するケースがあります。

そのために、中小企業は事前に倒産を防止する何らかの備えを準備することが大切です。

1-3.倒産防止共済を扱う機構について

倒産防止共済を扱う法人は民間ではなく公的な法人です。この共済は、「独立行政法人中小企業基盤整備機構(略称:中小機構)」が運営しています。

平成16年7月に、中小企業総合事業団(信用保険部門を除く)、地域振興整備公団(地方都市開発整備等業務を除く)、産業基盤整備基金(省エネ・支援法関係業務を除く)の3つの特殊法人を統合し設立されました。比較的新しい独立行政法人といえます。

事業内容は、中小企業およびベンチャー企業等の事業者へのアドバイス・研修、中小企業者向けの高度化融資、中小企業倒産防止共済や小規模企業共済の運営等、中小企業等の事業活動の活性化を図るための基盤整備を行います。

中小機構のデータは下表のとおりです。

正式名称 独立行政法人中小企業基盤整備機構
資本金 1兆1,057億1,799万7,205円(平成27年10月16日現在)
人数 役員13人、常勤職員782人(平成26年7月1日現在)
設立年月日 平成16年7月1日
所管 経済産業省
拠点 地域本部(北海道、東北、関東、北陸、中部、近畿、中国、四国、九州)および沖縄事務所

2.倒産防止共済に加入したい!

倒産防止共済は、信頼できる公的な法人が運営しており、まさかの事態の備えとして有効な制度だ。

この共済に加入する資格や申込手続きはどうするのだろう?

こちらでは、倒産防止共済に加入できる資格、申込手続きに必要な書類等を説明します。

2-1.加入資格

倒産防止共済には、中小企業または個人事業者等が、継続して1年以上事業を行っていて、下表の条件に該当する場合に、加入することができます。

○会社または個人事業者

業種 製造業、建設業、運輸業等 卸売業 サービス業 小売業 ゴム製品製造業(※) ソフトウェア、情報処理業 旅館業
資本金の額または出資の総額 3億円以下 1億円以下 5,000万円以下 5,000万円以下 3億円以下 3億円以下 5,000万円以下
常時使用する従業員数 300人以下 100人以下 100人以下 50人以下 900人以下 300人以下 200人以下

(※)ゴム製品製造業は、自動車または航空機用タイヤ、チューブ製造業、工業用ベルト製造業を除きます。

○組合

組合も対象になりますが、一定の組合は加入対象にならない場合もあります。

①対象となる組合

  • 企業組合、協業組合
  • 共同生産・共同販売等の共同事業を行っている事業協同組合、事業協同小組合、商工組合

②対象とならない組合等

  • 森林組合、農業協同組合
  • 医療法人、農事組合法人、NPO法人、外国法人等

○注意点

ご自分の会社等が上記の条件に合致していても、次のケースに該当する場合は加入できません。

  • 会社等の住所または主たる事業の変更があまりにも多く、継続的な取引状況の把握が難しい
  • 会社等の事業に関係する経理内容が不明
  • 既に倒産防止共済から借入れを受けた、共済金または一時貸付金の返済を怠っている
  • 中小機構から返還請求を受けた共済金、一時貸付金、早期償還手当金、解約手当金の返還していない
  • 所得税または法人税を滞納している
  • 12ヶ月分以上、掛金を納付せず、または偽りその他不正な行為等をして、中小機構により共済契約を解除され、その解除された日から1年を経過していない
  • 偽りその他不正の行為をして共済金や一時貸付金を借入れたり、早期償還手当金や解約手当金の支給を受けたり、または受けようとした日から1年を経過していない
  • 既に共済の契約者となっている

2-2.申込手続きについて

申込手続きは中小機構と業務委託契約を締結している団体や金融機関で行うことができます。次の加入窓口が該当します。

○委託団体

  • 商工会:経済産業省中小企業庁が管轄する町村を区域とした団体です。
  • 商工会議所:経済産業省経済産業政策局が管轄する市・特別区を区域とした団体です。
  • 中小企業団体中央会:中小企業組織化の支援、連携の促進を目的として設立された組織です。
  • 中小企業の組合

○金融機関の本店や支店

  • 都市銀行や地方銀行
  • 信託銀行
  • 第二地方銀行
  • 信用金庫
  • 信用組合
  • 商工組合中央金庫

2-3.手続きに必要な書類

中小企業・組合であるか、または個人事業主であるかによって、必要書類が異なります。また、共済の会員となっていない団体、融資取引がない金融機関で申込手続をする場合は、公的書類の提示が必要になります。

○契約申込書等

中小機構の様式書類を取得し、必要事項を記載しましょう。契約申込書・資料請求はこちらを利用してください。

  • 契約申込書:必要事項を記入する際はこちらを参考にしてください。
  • 掛金預金口座振替申出書:団体として加入手続きを行う場合、事前に金融機関に提出し、確認印を押印してもらいましょう。
  • 重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書

○会社・組合の場合

  • 商業登記簿謄本または登記事項証明書:法務局で取得した日から3ヶ月以内の原本が必要です。コピーは認められません。
  • 法人税の確定申告書等:所轄税務署の受付印がある申告書と直近の決算書等の添付書類を準備します。
  • 納税証明書(その1):法人税を納付したことを証明するために必要です。なお、確定申告書に記載された中間・確定の税額を納付したことを証明する領収書でも構いません。

○個人事業主の場合

  • 所得税の確定申告書等:所轄税務署の受付印がある申告書と、直近の決算書・収支内訳書等の添付書類を準備します。
  • 納税証明書(その1):法人税を納付したことを証明するために必要です。なお、確定申告書に記載された中間・確定の税額を納付したことを証明する領収書でも構いません。
  • (白色申告書の場合) 確定申告書を作成するときに使用した帳簿等

上記の書類を窓口へ提出すると、およそ2ヶ月後に中小機構より『共済契約締結証書』と『加入者必携』が送付されます。届いた書類は大切に保管しておきましょう。

3.倒産防止共済の特徴その1

信じたくはないが、大口の取引先が倒産することを念頭に倒産防止共済に加入するべきだとわかった。

取引先が倒産し、売掛金債権等の回収が困難になった場合に借りられる共済金について知りたい。

また、我が社で急な資金が必要になった場合もお金は借りられるのだろうか?

こちらでは、取引先の倒産や急な資金が必要になった場合の貸付ついて説明します。

3-1.貸付とは

中小機構が倒産防止共済に加入している企業・組合・個人事業主に資金を融通する(つまり、お金を貸す)ことです。

当然、対象の企業・組合・個人事業主からすればお金を借りることですが、このお金の借り方は、ケースに応じて2通りあります。

まず、取引先が倒産して売掛金債権等の回収が困難になった場合には、「共済金」の借り入れが受けられます。

また、取引先が倒産し深刻な事態になったとはいえませんが、ご自分の会社等で急に資金が必要になった場合は、「一時貸付金」の借り入れが受けられます。

共済金を借り入れるときも、一時貸付金を借り入れるときもそれぞれ条件があります。

所定の条件に適合した場合に借り入れができますので、各条件をしっかり確認して手続きを行いましょう。

3-2.取引先が倒産した場合

取引先が倒産して売掛金債権等の回収が困難になった場合には、倒産防止共済から共済金の借り入れができます。ただし、中小機構が定義する「倒産」に該当している必要があります。また、取引先の倒産日から6か月を経過すると、共済金の借入手続きを行うことはできなくなります。

○取引先の倒産の定義

  • 法的整理

取引先が、破産手続開始、再生手続開始、更生手続開始、特別清算開始の申立てをしたことが該当します。倒産日は申し立てがされた日になります。

  • 取引停止処分

取引先が、手形交換所に参加する金融機関により取引の停止処分を受けたことが該当します。倒産日は取引停止処分の日となります。

  • 私的整理

債務整理の委託を受けた法律の専門家(弁護士または認定司法書士)から、共済契約者(ご自分の会社等)に対し支払いを停止する旨を通知されたことが該当します。倒産日は通知された日となります。

  • 災害による不渡り

甚大な災害の発生により、取引先の手形や小切手等が“災害による不渡り”となることです。倒産日は当該手形等の手形交換日または呈示日となります。

  • 特定非常災害による支払不能

特定非常災害(※)が原因で取引先の代表者が死亡等の場合、弁護士等により、ご自分の会社等に対し支払いを停止する旨を通知されたことが該当します。倒産日は通知された日となります。

(※)特定非常災害・・・政府によって「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づき指定された大規模な災害のことです。

なお、取引先が夜中こっそり逃げるように引越しを行う、いわゆる「夜逃げ」は倒産の定義に該当しないので注意が必要です。

○被害額について

倒産防止共済における被害額には、回収が困難になった売掛金債権・前渡金返還請求権が該当します。取引先への貸付金や融通手形、不動産賃貸料等は該当しません。

また、倒産した取引先に買掛金等の債務がある場合、その分は被害額から差し引かれます。

なお、取引期間が1年以上でご自分の会社等の売上高20%以上を占める取引先が倒産した場合、回収が難しくなった売掛金債権等の額に、一定の金額が加算されます。

○借入条件

条件等は次のようになります。なお、借入に関して担保・保証人は不要です。

  • 借入の限度額

被害額または掛金総額の10倍に相当する額のいずれか少ない額が、共済金の借入額となります。借入額は原則50万円~8,000万円までです。5万円単位の額となります。

  • 返済期間

返済期間は借入を行った金額に応じて変わります。下表を参考にしてください

借入額 返済期間(6ヶ月据置期間含)
~5,000万円未満 5年
5,000万円~6,500万円未満 6年
6,500万円~8,000万円 7年
  • 返済方法

返済は6ヶ月の据置期間経過後、それぞれの返済期間で均等分割して毎月行っていくことになります。

(1)返済期間5年→54ヶ月均等分割

(2)返済期間6年→66ヶ月均等分割

(3)返済期間7年→78ヶ月均等分割

なお、返済期日までに返済しなければ、年14.6%の違約金が課せられてしまいます。

  • 利率

借入は無利子となります。ただし、借り入れ後、借入額の1/10に相当する金額が支払った掛金から控除されることになります。

○共済金の借入れ手続き

請求書等の提出書類は、中小機構のホームページから請求する方法、請求票をダウンロードしFAXで請求する方法、コールセンターへ連絡して請求する方法があります。

[請求書等]
  • 共済金貸付請求書:必要事項を記入する際はこちらを参考にしてください。
  • 倒産した取引先事業者との取引実績表:必要事項を記入する際はこちらを参考にしてください。
  • 償還金預金口座振替払に関する申出書:この申出書の提出の際は、事前に、借入金を受け取る口座のある金融機関から確認印を押印してもらいましょう。必要事項を記入する際はこちらを参考にしてください。
  • 共済契約締結証書:共済へ加入契約した際に取得した証書を提示します。
  • (過去2か月以内に支払った掛金を借入希望額に含める場合)掛金納付額証明願:必要事項を記入する際はこちらを参考にしてください。
  • (過去2か月以内に返済した金額を除かなければ、借入金の合計額が8,000万円を超える場合)償還金納付額証明願:必要事項を記入する際はこちらを参考にしてください。
[加入契約者共通]
  • 売掛金元帳の写し:売上帳に類する書類の写しでも提出可能
  • (被害額に含まれる場合)未決済手形、小切手原本:提示した後、返却されます。
  • 取引関係が証明できる帳票類の写し:受取手形期日帳、売買契約書、工事請負契約書、確定申告書一式等が該当します。
  • (取引先が法的整理をした場合)取引先の法的倒産の事実が証明できる書類の写し
  • (取引先が私的整理をした場合)弁護士等からの支払停止通知の写し
[会社・組合の場合]
  • 商業登記簿謄本または履歴事項全部証明書:法務局で取得した日から3ヶ月以内の原本が必要です。コピーは認められません。
[個人事業主の場合]
  • 住民票の写し:市区町村で取得した日から3ヶ月以内の書類が必要です。住民票の写しのコピーを提出しても認められません。

上記の必要書類を、共済金の受取り・返済を行う口座のある金融機関へ提出します。中小機構の審査には2週間程度かかります。審査が完了すると、中小機構から『共済金貸付決定通知書』『共済金貸付契約証書』『送金通知書』が送付されます。

送付資料を確認したら、共済金貸付契約証書・送金通知書に必要事項を記載し、印鑑登録証明書を添付して指定の金融機関に提出します。その際、共済契約締結証書も忘れずに持参し、提示しましょう。

3-3.急な資金が必要になった場合

取引先が倒産していなくても、ご自分の会社等で臨時に事業資金を必要とする場合は一時貸付金が借りられます。

一時貸付金の借入額は30万円以上(5万円単位)、借入金の使途は事業資金に限定されます。

金額は解約手当金の95%を上限として借りることができます。なお、解約手当金については後述します。

○借入条件

条件等は次のようになります。なお、借入に関して共済金の場合と同様に担保・保証人は不要です。

  • 借入の限度額

機構解約の場合に支払われる解約手当金の95%の範囲内で借り入れが可能です。既に借り入れをしている共済金・一時貸付金がある場合は控除されることになります。

掛金納付月数 借入限度額
~11ヶ月 0円
12ヶ月~23ヶ月 掛金総額 × 75% × 95%
24ヶ月~29ヶ月 掛金総額 × 80% × 95%
30ヶ月~35ヶ月 掛金総額 × 85% × 95%
36ヶ月~39ヶ月 掛金総額 × 90% × 95%
40ヶ月以上 掛金総額 × 95% × 95%
掛金総額が800万円 800万円 × 100% × 95%(760万円)

なお、共済に加入している方の掛金総額が平成23年9月末時点で320万円の場合、掛金総額が引き続き320万円、かつ掛金月額を8万5,000円以上に増額していない場合なら、借入限度額が300万円になります。

  • 返済期間・返済方法

返済期間は1年となります。また期限一括償還で返済することになります。返済期日までに一時貸付金の返済がなければ、共済金の滞納の場合と同様に年14.6%の違約金が課せられます。

さらに、返済期日から5か月を経過しても返済がないときは、中小機構が既に納付された掛金を取り崩し、返済・違約金の納付に充てることになります。

  • 利率

平成23年4月1日以降に中小機構が受け付けた一時貸付金の請求について「年0.9%」が利率なっています。ただし、利率は金融情勢に応じて変動することがあります。利息は一時貸付金の借入れの際に、一括前払いすることになります。

 

○一時貸付金の借入れ手続き

共済金の借入れ手続きとは異なった書類が必要です。手続き過程も異なります。請求書等の提出書類は、中小機構のホームページから請求する方法、請求票をダウンロードしFAXで請求する方法、コールセンターへ連絡して請求する方法があります。

[請求書等]
  • 一時貸付金貸付請求書および金銭消費貸借契約証書:必要事項を記入する際はこちらを参考にしてください。
  • 印鑑登録証明書:市区町村より取得した日から3ヶ月以内の書類が必要です。
  • 収入印紙:借入金額に応じた収入印紙を金銭消費貸借契約証書の所定欄へ貼付します。借入に必要な収入印紙の額は下表を参考にしてください。
貸付金額 収入印紙の額
50,000円~10万円 200円
15万円~50万円 400円
55万円~100万円 1,000円
105万円~500万円 2,000円
505万円~1,000万円 1万円
1,005万円~5,000万円 2万円
5,005万円~8,000万円 6万円

書類に必要事項を記載したら、一時貸付金貸付請求書を、一時貸付金の受取りを希望する金融機関の窓口へ提示し、確認印を押印してもらいましょう。

その後、中小機構へ提出書類を送付します。送付先は次の通りです。

〒105-8453 東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル

中小機構 倒産防止共済貸付課 一時貸付係

審査完了後、一時貸付金が指定口座に振り込まれます。その後、中小機構から『金銭消費貸借契約証書(借主控)』が送付されます。

4.倒産防止共済の特徴その2

倒産防止共済は、制約もあるがまさかの事態に備えるためには必要な共済だ。

では、倒産防止共済の掛金について詳しく知りたい・・・。

こちらでは、本共済の掛け金と、その節税効果、解約手当金について説明します。

4-1.掛金とは

掛金は、毎月5,000円~20万円まで(5,000円単位)で契約時、自由に設定が可能です。掛金は総額800万円に達するまで積み立てることが可能です。

納付方法は預金口座からの振替による掛金の払込みとなります。振替日は、毎月27日(27日が休日の場合は翌営業日)となります。

また、掛金は前納が可能です。前納すると、1ヶ月につき掛金月額の5/1,000(平成29年10月まで)の前納減額金が発生します。なお、平成29年11月以降は0.9/1,000となります。

4-2.掛金の損金算入

倒産防止共済には税制上の優遇措置があり、掛金は全額の損金算入が可能です。つまり、個人事業主であるなら掛金を全て経費として扱うことが可能と言うことです。

前述した前納をすると、向こう1年分を全額損金にできますので、決算対策にも有効です。

ただし、損金に算入できるのは年240万円で合計800万円に限られています。

連鎖倒産のリスクに備えることができると共に、その掛金を損金に算入して税負担を軽減できるというのは、この共済の大きな強みと言えます。

4-3.解約した場合に掛金はどうなる?

倒産防止共済に加入した会社・組合等が契約を解約した場合は、「解約手当金」としてお金が受け取れます。ただし、解約の意思表示をしなくとも解約したとみなされるケースや、中小機構から解約させられてしまうケースもあり、注意が必要です。

(1)任意解約:契約した会社・組合等が任意でいつでも解約できる方法です。

(2)みなし解約:法人(会社等)ならば解散・分割、個人事業主の場合なら死亡等の原因により、その時点で解約されたものとみなされます。

(3)機構解約:掛金を12ヶ月分以上の掛金の滞納したり、共済金の貸付等に不正行為があったりした場合、中小機構によって契約を解約されます。

前述した解約の種類によって、手当金の支給率が変わります。下表を参考にしてください。

掛金納付月数 任意解約 みなし解約 機構解約
~11ヶ月 0% 0% 0%
12ヶ月~23ヶ月 80% 85% 75%
24ヶ月~29ヶ月 85% 90% 80%
30ヶ月~35ヶ月 90% 95% 85%
36ヶ月~39ヶ月  95% 100% 90%
40ヶ月以上 100% 100% 95%

5.倒産防止共済の注意点その1

連鎖倒産のリスクを軽減し、節税にもなる倒産防止共済は魅力的な備えだ。

しかし、この共済で注意しなければならない点にはどんなものがあるのだろう?

こちらでは、共済へ加入する際に把握しておくべき事柄を説明します。

5-1.倒産防止共済と法人保険

倒産防止共済は、ご自分の会社等が連鎖倒産を避けるための備えですが、経営者・役員・従業員がまさかの事態(死亡または高度障害状態)となった場合に、その備えとして加入できる保険があります。

それが民間の「法人保険」です。この法人保険には様々な種類があり、非常に保険期間が長い保険(長期平準定期保険)や、ある時期に達すると下りる保険金が増加していく保険(逓増定期保険)等があります。

これら法人保険には、倒産防止共済にはない保障内容や特徴があります。次項で詳細を説明します。

5-2.共済に足りない点

倒産防止共済は、会社等の連鎖倒産のリスクを軽減し、節税のために役に立ちますが、人の生命・傷病に関しての保障は共済内容となっていません。

そのため、死亡・高度障害状態や、がん・傷病に関しての備えとして、法人保険の加入は人的な保障を厚くする意味で有効な方法と言えます。

また、保障に加え法人保険の解約返戻金は経営者・役員・従業員の退職金としても活用が可能です。

5-3.共済と法人保険に双方に加入する

ご自分の会社の経営状態をしっかり確認することが前提と言えますが、連鎖倒産を未然に防止する備えとして倒産防止共済の加入を、経営者・役員・従業員のまさかの事態の保障や福利厚生(退職金等)を充実させるために法人保険への加入を検討するべきでしょう。

ご自分の会社の貯蓄だけでは、連鎖倒産のリスク軽減や、経営者・役員・従業員の保障、退職金の全てを賄うことはナカナカ困難といえます。

ただし、法人保険の場合は各保険会社とも、例えば、解約返戻金のピークが早いが保険料は高額であるとか、決算時に払い込んだ保険料は全額損金算入できるが解約返戻金は全額雑収入として計上され、多額の法人税がかかるリスクがある等、取り扱う保険の特徴はそれぞれ異なります。

その特徴がご自分の経営する会社に合った保険か、払い込む保険料は大きな負担とならないかを慎重に考慮することが必要です。

6.倒産防止共済の注意点その2

倒産防止共済では対象とならない部分を、法人保険で補完する必要があることはわかった。

では、他に倒産防止共済を活用する場合、注意しなければいけない点はあるのだろうか?

こちらでは、その他の注意点を取り上げます。

6-1.その他の注意点

倒産防止共済に加入してしまえば、まさかの事態が起きても冷静な対応が可能です。

しかし、ご自分の会社等で倒産を避けるためにやれる方法をとった上で共済金等を借り入れるわけではなく、いきなり解約したり、借り入れを行ったりした場合、逆にデメリットになってしまうことになります。

次項では、解約のタイミングや、共済金を借りる前に考慮しておくべき内容について説明します。

6-2.解約のタイミングを考える

倒産防止共済は、コツコツ積み立ててきた掛金総額が満額800万円に達すれば、いつ解約しても全額がご自分の会社等へ戻ってきます。

しかし、その解約手当金は全て雑収入として益金に算入されます。そのため、この解約手当金分を相殺できるような損金が計上されないと、解約手当金に多額の税金がかかってしまいます。

解約するタイミングは、例えば、ご自分の会社等が大きな赤字になりそうな場合や、従業員の退職金等のまとまった支出がある時に行うことが大切です。

ご自分の会社等の経営状態もしくは社内でのイベントがある場合を慎重に考慮し、解約を行うべきでしょう。

6-3.取引先の倒産で共済金を借りる前に

倒産防止共済は、無利子・無担保で共済金が借りられますが、その後、掛金総額より借入額の1/10に相当する金額が控除されることになります。

借り入れる金額によっては、大幅に掛金が目減りしてしまうことにつながります。

取引先が倒産した場合でも、ご自分の会社等が連鎖倒産を避けられる状況であると判断したなら、安易に共済金に頼らない方法をとることが得策といえます。

あくまで共済金の借り入れは、掛金が大幅に目減りしても、自社の倒産を避けなければならない深刻な事態となった場合に行うべきでしょう。

7.まとめ

倒産防止共済は、ご自分の会社等が連鎖倒産を回避するための頼もしい備えですが、特徴・注意点をしっかりと把握し、その活用を行いましょう。

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