火災保険は、ご自分の建物や建物内の財物の被害を補償する保険商品です。加入していれば火災や爆発、自然災害等の被害へ頼もしい備えとなります。
しかし、ご自分の建物から失火し、隣家を延焼させた場合はどうなるのでしょうか?
その失火でご自分に法律上の責任が生じた場合には、火災保険自体で補償されることはありません。火災保険の主契約はあくまでご自分の建物と、建物内の財物が補償範囲となるからです。
そんなとき、非常に頼りとなる補償があります。それが火災保険の「個人賠償責任特約」です。
この特約は、火災と関係なくても、日常生活でおきる不注意で他人やその財物に被害を加えた場合も補償対象となります。
しかし、この個人賠償責任特約でも補償対象外となるケースや、十分にその役割が発揮できないケースが存在します。
そこで今回は、火災保険の個人賠償責任特約の特徴とその活用法について解説します。この記事を読めば、個人賠償責任特約の基本的知識と、特約を利用する際の注意点がよくおわかりになることでしょう。
目次
1.火災保険について
私は子ができ、家族が増えたのを機会に新居を購入します。ついでに火災保険への加入を検討しています。
火災保険について加入は初めての経験なので、火災保険の特徴等を知りたいです・・・・。
第1章では、火災保険とは何か?その必要性等を解説します。
1-1.火災保険はこんな保険
火災保険は、ご自分や家族の建物・建物内の財物を、火災や自然災害等の被害から補償する保険商品です。
火災保険は住宅ローンで購入した建物や、マンション購入、アパート等の賃貸の場合に、加入することが義務付けられる場合があります。
各世帯で火災保険の加入率は80%を超え、火災等の被害からご自分や家族の財産を補償しようという防災意識の高さが窺えます。
ただし、建物と建物内の財物にそれぞれ火災保険をかけないと、その両方が補償されないので注意が必要です。
また、建物の敷地内にある自転車は原付バイク等の被害は補償されますが、自動車や総排気量が125ccを超えるバイクは補償対象外となります。
所有する自動車には車両保険を、125ccを超えるバイクにはバイク保険の車両補償へ加入することが賢明です。
次項では、火災保険の必要性について解説します。
1-2.火災保険は泣き寝入り防止?
日本では住宅建物から失火し隣家に延焼した場合、失火責任法という法律で失火者に「重大なる過失」がある時を除き、その責任は問われないことが明記されています。
失火責任法自体は、明治32年から存在する古い法律ですが、いまだにその規定が有効となっています。
これは日本では歴史的に木造建築が多く、いったん失火すると延焼被害が起きやすいことがその理由と言えます。
つまり、ご自分の建物で失火して隣家に被害が及んでも、重大な過失がない限り隣家の被害を賠償する必要は無いわけです。
逆に言えば、ご自分の建物や家財が隣家からもらい火を受けた時、損害賠償請求が難しいことを意味します。
失火者に重大なる過失が認められなければ、被害を受けたご自分は泣き寝入りとなってしまいます。
そんなことが無いように、生活再建を果たすべく火災保険の加入が必要不可欠なのです。
1-3.延焼が「重大なる過失」に該当したら?
では、この重大なる過失とはいったいどんな意味なのでしょう?重大というからには通常の注意を払うという意味ではなさそうです。
〇とんでもない不注意は救いようがない?
意味を簡単に説明すれば、普通の人なら危険だと思ってやらない行動を、失火者の“とんでもない不注意”で行ってしまった、ということです。
こんなとんでもない不注意で被害を発生させたなら、もはやその失火者は法律上の責任をとる必要があります。
ただし、実際に重大なる過失と認められて、賠償責任が命じられた例はそう多くありません。
〇ただし、重大なる過失と認められたら
一方、ご自分が重大な過失を行ったと、裁判所から判断された場合はどうなるでしょう?
少なくともご自分の火災保険で、延焼被害を受けた他人の建物や、建物内の財物を弁償することはできません。
火災保険の補償対象はあくまで、保険契約の際に補償範囲としたご自分の所有する建物、家財に限られます。
この場合に下りる頼もしい補償が、「個人賠償責任保険」と呼ばれる保険です。
第2章では火災保険の個人賠償責任について解説します。
2.火災保険の個人賠償責任特約について
火災保険には、火災や自然災害等の補償だけではなく、自分や家族の日常生活で起きた相手方への被害に対し、賠償する保険があることを聞きました。
その個人賠償が補償される保険について知りたいです・・・。
こちらでは、個人賠償責任特約とは何か?その補償範囲等を解説します。
2-1.個人賠償責任特約とは
日常生活において、ご自分や家族が不注意で他人や他人の財物に被害を及ぼし、法律上の賠償責任を負うことがあるかもしれません。
その被害へ補償の下りる保険があります。それが「個人賠償責任保険」です。
火災保険のみならず自動車保険や傷害保険等、およそ損害保険に該当する商品へ設定することが可能な、メジャーな保険と言えます。
個人賠償責任保険をオプションとして設定する場合には、「個人賠償責任特約」と呼ばれていることが多いです。
個人賠償責任特約は補償金額の上限が「無制限」で設定できる商品もあります。この無制限とは、いくら巨額の損害賠償金を請求されても、その分お金が問題なく下りるということです。
また、個人賠償責任特約は各保険会社で、年間保険料が1,000円~2,000円程度で設定され、負担も少ないことが特徴です。
個人賠償責任特約を火災保険等へ付帯していれば、今後まさかの事態が起きたとき非常に役立つこととなります。
2-2.補償対象になるのは誰?
個人賠償責任特約の補償対象になるのは、火災保険の場合なら保険を締結した保険加入者本人に限られません。
次のような方々が補償対象に含まれます。
- 保険加入者本人
- 保険加入者本人の配偶者
- 保険加入者本人または配偶者と同居している親族
- 保険加入者本人または配偶者と別居の未婚の子
なお、「別居の未婚の子」とは、例えば地方から都心の大学へ通うため、親元を離れ単身でアパート暮らしをしている学生が該当します。
こちらの学生がその後に結婚したならば、保険加入者等と同居しない限りその補償からは外れることになります。
2-3.火災に限定されない補償範囲
個人賠償責任特約は、火災保険で付帯できるオプションといっても、その利用範囲は失火等に限定されていません。
次のような内容のトラブルも補償範囲です。
- 集合住宅で選択中に洗濯機のホースが外れ、下階の人の居室で水漏れを起こした
- 一戸建ての庭で飼い犬を飼っていて、自宅を訪問した営業マンに突然噛みついた
- お店で買い物中、自分の不注意でお店の品物を壊した
- 自転車で走行中、人をはねた→第4章で解説します。
- 認知症を患った世帯員が線路に立ち入り、電車と衝突し車体を破損させた→第5章で解説します。
日常のチョットした不注意によって、相手方に被害を及ぼした場合も補償対象となります。
当然、個人賠償責任特約が適用される際の「不注意」は重大なる過失も該当します。
3.個人賠償責任特約の活用法・その1
失火で他人の家を延焼させた場合に、重大な過失なら個人賠償責任特約が適用されるわけですか。
実際に火災へ適用されたケースと、相手方が火災保険へ入っていた場合の対応について知りたいです・・・。
こちらでは、個人賠償責任特約が火災に適用された事例等を解説します。
3-1.火災に適用されたケース
重大な過失として裁判所から認定されたケースは主に次のようものがあげられます。
- 天ぷらを揚げているにもかかわらず台所を離れ、それが原因で台所に燃え広がり、隣家まで炎上する家事となった
- 電気コンロを消し忘れ、そのまま眠ってしまい自宅や隣家が延焼してしまった
- 寝ながらタバコを吸って、タバコの消し忘れから火事が発生、隣家にも燃え広がった
いずれも、まず通常の人が危なくて行わないような、とんでもない不注意ばかりです。
火災による延焼で他人の建物や家財にも被害が出る以上、非常に多額の損害賠償が裁判所から命じられることは、容易に想定されますよね。
そのために、個人賠償責任保険へ加入する義務はないにしても、事前の備えとして火災保険へ付加しておくことが賢明です。
3-2.相手方が火災保険へ入っていたら?
ご自分が失火者で個人賠償責任特約に入っていた場合でも、延焼被害をうけた隣家の家主へ、いきなりこの特約を使い弁償することはできません。
まずはご自分に重大な過失があるかどうかを、判断されなければいけません。単なる過失と判断されたら、もはや個人賠償責任特約は利用できません。
その場合、被害を受けた相手方が火災保険に加入してれば、生活の再建は可能です。
ただし、その火災保険で契約していた保険金が不足していたり、そもそも火災保険へ入っていなかったりした場合は、相手方は文字通り「泣き寝入り」する事態となります。
この単なる過失と判断されても、ご自分が火災保険の特約を使い、相手方に弁償できる補償があります。
次項では、「類焼損害補償」、「失火見舞費用保険金」について解説します。
3-3.類焼損害補償とは
たとえ自分が賠償責任を免れても、延焼で他人へ被害を及ぼしたという事実は変わりません。
誰でもご自分の失火が原因で他人の生活を台無しにした以上、良心の呵責を感じない人はいないでしょう。
そのために、重大な過失でなくとも他人の被害を賠償できる保険があります。それが「類焼損害補償」です。
こちらも各保険会社の火災保険に、共通して設けられている特約と言えます。類焼損害補償特約は、概ね1億円が補償限度額として設定されています。
ただし、延焼させた建物の家主が火災保険に加入していたならば、まずその加入している火災保険による補償が優先されます。
そして、建物の再築費用が加入していた火災保険金だけでは足りない場合、失火者の入っている類焼損害補償を利用することが可能です。
3-4.失火見舞費用保険金とは
失火見舞費用保険金とは、火災や破裂・爆発が原因で、隣家や第三者の所有物に損害が発生したとき、相手方へのお見舞費用を補償する保険金です。
こちらは火災保険へ自動的にセットされている場合があります。火災保険へ加入する際に確認してみましょう。
各保険会社では、だいたい1回の事故で1被災世帯あたり20万円分を補償されることになります。
ただし、建物の設定保険金額と、家財保険金額を合算した金額の20%程度が補償の限度となります。
この失火見舞費用保険金を利用し、延焼で損害を与えた家主へ謝罪に伺ったついでに、まずこのお金で誠意を示すことが肝要でしょう。
4.個人賠償責任特約の活用法・その2
個人賠償責任保険は失火責任法の関係で、やはり重大な過失でないと適用できないのですか。念のため類焼損害補償にも加入し、備えを万全にしたいです。
さて、個人賠償責任特約の補償範囲に、自転車による事故も入っているようですね。
私の住む地域では、自転車保険の加入が義務化されました。こちらへ個人賠償責任特約が活用できないでしょうか・・・・?
第4章では、個人賠償責任特約が自転車事故の補償に活用できることを解説します。
4-1.自転車保険義務化へも活用できる
最近では、各地方自治体が自転車保険を義務化する条例を制定しています。では、自転車保険に未加入のままなら罰則はあるのでしょうか?
〇あくまで努力義務
自転車保険の義務化を明記する条例は、大概このような内容となっていることでしょう。
「(住民は)自転車保険へ加入することに努めなければならない。」という文言です。これは「努力義務」と呼ばれ、仮に未加入でも罰則を伴わないこととなります。
義務化を宣言した地方自治体の目的は、保険の強制ではなく条例という形で広く地域住民の方々へ周知し、その普及を図ることにあります。
〇条例制定の背景
このような自転車保険を義務化を明記する条例が、続々と制定された背景には、自転車事故の多発と事故被害者への十分な救済があげられます。
近年の自転車事故に関する裁判では、たとえ未成年者が事故加害者になったとしても、1億円近い賠償命令が下されています。
当然、そのお金は事故を起こした未成年者が払うというわけではなく、その監護者である親が支払っていくことになります。
確かに被害者の救済は第一ですが、その責任を負った加害者側の家族にも重大な金銭的負担が圧し掛かることとなります。
〇個人賠償責任特約で代用可能
各地方自治体ではこの事態を重要視し、事故被害者の救済が確実かつ速やかに行われ、加害者の金銭的負担を軽減するべく、自転車保険の普及を目指しています。
そのため、火災保険をはじめとした損害保険へ加入の際、個人賠償責任特約も付帯しているのなら、それで足りると地方自治体も判断しています。
なお、理想的な個人賠償責任特約の補償金額は、裁判で1億円近い賠償命令が下っている以上、設定金額「1億円」以上の補償内容が望まれます。
4-2.自転車保険と個人賠償責任特約の比較
個別の自転車保険でも個人賠償保険が設定されています。こちらでは、個人賠償責任特約の補償内容と比較してみましょう。下表を参考にしてください。
項目 | 自転車保険(個人賠償責任補償) | 個人賠償責任特約 |
補償金額 | 約5,000万円~無制限 | 約1億円~無制限 |
年間保険料 | 1,000~10,000円 | 1,000円~2,000円 |
その他 | 自転車保険では自転車事故に関する賠償のみならず、保険加入者の傷害を補償 | ‐ |
個人賠償保険に関しては、自転車保険も個人賠償責任特約も、保険加入者のみならず家族も補償範囲に含まれます。
4-3.こんな場合はやはり自転車保険の方が良い?
個人賠償責任保険は高額な補償金額を設定でき、保険料も安く家族にも補償が適用されます。
しかし、事故被害者の救済にしか使用できないことが難点と言えます。特にお子さんが自転車を運転し始めた際は、ケガにも注意しなければいけませんよね。
〇傷害治療補償も必要
自転車保険ならば、自転車に関する事故で負傷した場合、入院費用や通院費用が補償されます。
公的医療保険を適用するだけではなく、自転車保険からも保険金が下りるならば、手厚い補償が期待できることでしょう。
自転車を運転するご自分や家族のケガの治療補償も念頭に入れるなら、自転車保険へ加入した方が無難です。
なお、自転車保険へ加入する際は、個人賠償責任補償を外せる場合があります。加入の際は「保険のしおり」等で確認してみましょう。
〇現在加入している個人賠償責任補償が頼りない
自転車事故の裁判で、1億円の賠償命令が下っていることは既に述べました。では、ご自分の既に加入している損害保険へ付帯した個人賠償責任補償の金額を見てみましょう。
補償金額が1,000万円や2,000万円では、やはり現状では心もとない金額ですよね。この場合には、自転車保険に加入し、個人賠償責任補償を厚くしましょう。
賠償金額が巨額になっても、これらの個人賠償責任補償金額を合算して賠償に充てることができます。
5.個人賠償責任特約の活用法・その3
認知症患者が線路に侵入して、電車にはねられたという痛ましい事故の報道がありますよね。
電車事故の場合は、認知症患者の家族に高額な損害賠償が請求されることもあるようです。自分の祖父も認知症の疑いが出てきたので心配です。
このような事故にも個人賠償責任特約は利用できるのでしょうか・・・?
第5章では、個人賠償責任特約が痛ましい電車事故へも活用できる条件と、各損害保険会社の対応等について解説します。
5-1.痛ましい電車事故へも活用できる
電車事故が起きれば電車にひかれた人も、電車の乗客、鉄道会社へも多大な影響が及びます。
電車の破損はもちろんのこと、ダイヤの乱れ、乗客の遅延被害等、その損害は重大です。
このような接触事故は、電車にひかれた側が死亡するケースが極めて高く、遺族はその悲しみと、鉄道会社からの高額な賠償請求に、頭を悩まされることとなります。
個人賠償責任特約が適用される条件としては、線路内に立ち入り、衝突して車両の破損や、電車の急ブレーキ等で乗客が負傷をした場合、遅延損害も含めて補償対象となります。
次項では、今後想定される認知症患者の深刻な問題について、有名な判例と共に解説します。
5-2.認知症患者の深刻な問題
認知症患者数は現在でも増加し続けており、2025年には65歳以上の方々の1/5が罹患すると想定されています。
その分、認知症を患い徘徊等で事故に巻き込まれる事態が、より一層懸念されます。
〇最高裁まで争われた賠償責任
認知症患者が線路へ立ち入り電車と衝突し、鉄道会社が損害賠償を請求した事案に、「JR東海共和駅・認知症患者列車事故事件」があります。
2016年3月1日の最高裁判決では、鉄道会社側の請求は退けられたものの、次のように判示されています。
認知症患者の家族が監督義務に該当し、賠償責任が発生するか争われた点では、本裁判では家族の監督義務者としての地位を否定しています。
一方で、裁判所は次のような判断も下しています。
認知症患者の法定の監督義務者と同視できる人かどうかは、①認知症患者が第三者へ加害行為に及ぶことを防止する監督を行い、②その監督を引き受けたと認められたならば、その人に賠償責任が発生すると判断しています。
〇個人賠償責任特約は必要
つまり、鉄道会社等から損害賠償を請求されたとしても、認知症患者の家族だからと言って、賠償命令から免れるわけではないことを意味します。
このような列車事故を、ご自分の家族が起こした場合を想定するならば、個人賠償責任補償を受けられる備えはしていおいた方が無難です。
年間保険料が2,000円程度で、億単位の損害賠償に対応できるならば、加入しないわけにはいきませんよね。
5-3.損害保険会社の対応
前述しましたが、個人賠償責任特約は相手方に実際の被害が及ばない限り適用されません。
この条件を考慮すれば、認知症患者が線路内に立ち入り電車が遅延したものの、電車や乗客に損害が無いならば、この特約は利用できないことになります。
つまり、遅延損害に関する賠償請求では、この特約をやはり利用できません。
しかし、各損害保険会社では、認知症問題の深刻さを重要視し、従来の特約では補償されなかった、「財物損壊を伴わない補償」を設定し始めています。
財物損壊がなくても、電車の運行不能等による賠償責任を補償する新特約や、条件の改定が行われています。
火災保険にもその動きが広がっています。気になる方々は、最近の賠償責任補償の内容を、保険会社のカスタマーセンター等で確認してみましょう。
6.火災保険の個人賠償責任特約の注意点
個人賠償責任補償にも、新たな補償内容の変更・拡大が起きていると言うことですか。
でも、個人賠償責任補償には補償対象外のケースや注意点があるはずですよね?
この注意点についても詳細を知りたいです・・・。
第6章では、個人賠償責任特約の補償範囲外の事例や、その注意点を解説します。
6-1.やはり補償範囲外の事例はある
こちらでは個人賠償責任特約の対象外のケースを取り上げます。
- 業務中に起こった事故
- 借りていた物品を破損させた場合
- 一緒に住む家族を負傷させたり、家族の物を破壊した場合
- 故意(わざと)他人を負傷をさせたり、物を壊した場合
- ケンカで他人を負傷、物を壊した場合
- プライバシーの侵害等、形の無い権利
- 心神喪失により他人を負傷をさせたり、物を壊した場合
- 自動車、航空機、船舶等で事故を起こした場合
- 海外で起こした事故
- 戦争、クーデターやテロ、地震や噴火などの自然災害による損害
故意(わざと)やケンカ等、自業自得のようなケースもありますが、心神喪失の状態にあった等、そもそも法律上の責任が発生しないケースもあります。
また、賠償責任補償は他人への賠償責任ですので、ご自分の家族の負傷や家族の所有物の損壊も対象外です。
ただし、海外で起こした事故等は保険商品によって、補償される場合もあります。
6-2.個人賠償責任保険の重複契約はあまり意味がない
火災保険へ個人賠償責任特約を追加する場合は、他の損害保険で既に加入していないか、まずチェックすることが必要です。
〇損害保険の補償はあくまで実損害
前述した通り、個人賠償責任特約は火災保険の他、自動車保険や傷害保険、自転車保険等でもオプションとして設定できます。
ただし、この特約も損害保険の1種でなので、損害が発生した場合はその実損害のみが補償されるにとどまります。
例えば、個人賠償のため1億円の賠償責任が発生したら、やはり1億円が補償されるだけです。
〇余った分は自分の利得に、という考えは甘い
この事例の場合、2つの保険会社にそれぞれ1億円の補償を設定していても、どちらか一方に保険金の全額を請求したら、もう一方の保険会社に請求しても1円も下りることはありません。
もし、既に保険金を得ていること黙って請求したら、詐欺行為と保険会社から疑われてしまうことでしょう。
つまり、個人賠償責任特約を複数設定しても、その分だけお金が余計に支払われるわけではありません。
そのため、個人賠償責任特約の重複契約は、「4-3.こんな場合はやはり自転車保険の方が良い?」で解説した通り、現在加入している個人賠償の補償金額が少額な場合の時に検討しましょう。
高額な補償金額を設定した個人賠償責任特約ならば重複契約は不要です。ご自分の支払う保険料が余計にかかるだけで、補償で儲けることができるということにはなりません。
6-3.示談交渉サービスは意外に大事!
個人賠償責任特約には、示談交渉サービスが基本的に自動付帯されています。当然、このサービスは無料です。
示談交渉サービスは、ご自分の代わりに保険会社の交渉プロが相手方と交渉してくれるサービスです。
火災保険の場合ならご自分が失火者となったときや、日常のトラブルで加害者となってしまった場合に利用できます。
〇「何でも自分で。」は禁物
ご自分が加害者となった場合、当初は誠意をもって被害者に謝罪して、今後の相談をしようと思うはずです。
では、ご自分が火災で延焼を起こし、被害者となった人に謝罪へ向かった場合を想定してみましょう。
被害者のもとへに行って、誠実の謝ろうとしても、相手はあなたの顔を見た途端、激高し罵声を浴びせるかもしれません。
それもそのはず、あなたは何ら落ち度のない被害者の建物や財物を損傷させたのですから。
家主の他にその世帯員の方々から責められるのは、当然のことと言えます。
しかし、そんなあなたも徐々に感情が高ぶり、怒って訪問先を飛び出してくるかもしれません。
これでは、いつまでたっても問題は解決しないことになります。
〇プロに頼むのが最適
だからといって、謝罪へ行くなというわけではありません。ただし、その後の示談交渉はプロに任せた方が、ご自分の対応よりも数段早く解決へ進むはずです。
スムーズな被害者への救済は、被害者はもちろん、加害者となってしまったご自分も望んでいることでしょう。
7.まとめ
火災保険に加入し個人賠償責任特約も付けて後は安心、というわけにはいきませんよね。
特に個人賠償責任特約を利用する場面があるということは、他人を不注意であったにせよ傷つけたり、財産を壊したりした事実があるということです。
お金で解決はできるかもしれませんが、被害者の心の傷は一生消えないかもしれませんし、恨まれるかもしれません。
加害者であるご自分にも罪悪感が残ることでしょう。
〇火災に関してはしっかりとした防火対策を
たとえ失火してもご自分の建物や財物の被害だけで、延焼を起こさないような工夫が求められます。
建物を耐火構造で設計・建築することはもちろんのこと、消火器の使い方やその設置場所も確認して、いざという時すぐに消火活動ができる態勢を整えておきましょう。
火災の初期段階で効果的な消火が行われれば、ご自分の建物の焼損も最小限に抑えられることでしょう。
〇日常のトラブルは心がけから予防
日常のトラブルで加害者とならないために、軽率な行動や「自分は大丈夫。」との思い込みは禁物です。
火を使う作業ならその場から離れない、飼い犬が他人をかまないようチェーンにしっかりつなぐ、自転車を運転するならば歩行者に配慮する、そんな当たり前の心がけで、深刻な事態は回避することができます。
個人賠償責任補償を備えれば、心に余裕は生まれるでしょうが、油断は当然禁物です。