厚生労働省の発表によると、2016年にがんで死亡した人は372,986人(男性219,785人、女性153,201人)。
日本における死因は、1981年以降がんがトップの状態が続いています。
医療は進歩しましたが、それでもがんで命を落とす人が大勢いるのです。
一方で、治療が奏功し、がんと共に生きる人もいます。
がん治療が進歩したのはありがたいことですが、がんにかかるとこれまで通りの生活が送れなくなったり、治療費がかかるのも事実。
「がんとは何か」からがんと診断され場合の備えまで、ゼロからわかりやすく説明します!
目次
1.がんとはどんな病気?がんに備えるには、まずは正しい知識から!
1.1最新統計から、がんを知ろう
1.2同じ腫瘍でも、がんと良性腫瘍はどう違うの?
1.3がんって、こうやってできるんだ!
2.がんの種類・分類で、がんのこれからを知る
2.2発生部位によるがんの種類
2.3病期のステージによるがんの分類
2.3形状によるがんの分類
3.がんって、どうやって診断されるの?~がん診断までの流れ~
3.1血液検査
3.2画像検査
3.3内視鏡検査
3.4病理検査・病理診断
4.やっぱりがんだった!!場合の治療方法は、何があるの?
4.1早期がんなら、基本は手術
4.2目に見えないがんをたたく!薬物療法
4.3局所に効く!放射線療法
4.4治療は常に、緩和ケアを並行して
5.一番心配なのはやっぱりコレ!がん治療に必要なお金
5.1がんの治療費って、いくらかかるの?
5.2保険適応のない先進医療を受けるには、いくら必要?
5.3もしものがん治療には、がん保険で備える!!
6.まとめ
目次
1.がんとはどんな病気?がんに備えるには、まずは正しい知識から!
1.1最新統計から、がんを知ろう
厚生労働省の発表によると、2016年にがんで死亡した人は372,986人(男性219,785人、女性153,201人)。
日本における死因は、1981年以降がんがトップの状態が続いています。
これはがんによって亡くなった人の統計なので、現在闘病中の人や早期のがんで完治した人を含めると、罹患数は更に多くなります。
2013年のデータによると、新に診断されたがんは862,452例(男性498,720例、女性363,732例)にも及びます。
がんによる死亡は、男性は肺がん、女性は大腸がんがトップとなっています。
女性特有の乳がんは、罹患率では女性のトップなのに死因としては5位。
これは乳がんの治療効果が高まっている、もしくは乳がん検診によって早期発見と早期治療の体制が進んでいることを意味します。
1.2同じ腫瘍でも、がんと良性腫瘍はどう違うの?
がんとは腫瘍(できもの)の中の一つ。
腫瘍には悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍があります。
どちらも腫瘍であることは同じですが、その違いはどこにあるのでしょうか?
がん(悪性腫瘍)とは、どんなもの?
- がん細胞は勝手にどんどん増殖して他の部位に広がり、止まることがない。
- がん細胞は周囲に染み出るように広がる(浸潤)と体のあちこちに飛ぶ(転移)ことを繰り返し、新しいがん細胞を作り出す。
- がん組織は、他の正常な組織を栄養する分を奪ってしまい(悪液質)、体を衰弱させる。
簡単に言ってしまうと、良性腫瘍は命に関わらないできもので、がん(悪性腫瘍)は放ってほくと死に至るできものと覚えていただければよいでしょう。
ただし、がんの中には前立線がんのように非常ゆっくりと進行し、高齢者の場合は寿命の方が先に来ることもありますので、がんのせいで命を落とすとは限りません。
逆に代表的な良性腫瘍である子宮筋腫は、重篤になると血管やリンパを圧迫して血流障害を起こしたり、出血がひどい場合は重度の貧血を呈することもあります。
また、脳腫瘍の場合は腫瘍そのものは良性でも、限られた頭蓋内のスペースで発生することから、腫瘍に押された脳実質や血管による障害をきたす場合もあります。
1.3がんって、こうやってできるんだ!
がんって、結局何なの?
がんはどこからやってきて、腫瘍となるの?
そう思った人もいるのではないでしょうか。
まず、がんの特徴としては
- 誰でも発症する可能性がある
- 予防はできるが、完全に防ぐことはできない
- 血液等を介して他人にうつる病気ではない
これらがあげられます。
では、がんの発生機序について話しすることにしましょう。
がんというのは、しこりを自覚したり健康診断で指摘されるまでの間に遺伝子レベルで発生して年単位の時間をかけた結果、がんとなるのです。
まず、がんは体の中のどこかの細胞の遺伝子にキズがつき、正常とは異なる細胞が作られるところから始まります。
そして、その異常な細胞が増殖し、がん化して腫瘍としての塊を作ります。
その塊から浸潤したり、血流を介して他の部位へ転移することによって広がっていきます。
いつ遺伝子にキズがつくのか、どこにつくのか、それはわかりません。
現代の日本人は、一生のうち2人に1人はなんらかのがんにかかると言われています。
タバコや食生活が関与していることは分かっていますが、完全に防ぐことはできません。
厳重な健康管理をされている天皇陛下でさえがんを患ってしまうことが、がんは健康的な生活を送るだけでは防げないことを意味していますね。
また、C型肝炎などウイルス感染が引き金となってがんを発症するものもありますが、がんになるまでにはそれ以外にもささままざまな要因が重なりなっているため、がんそのものがうつる(感染する)わけではありません。
2.がんの種類・分類で、がんのこれからを知る
がんはがんでも、種類や病気の進行具合、がんの形などによって治療法は異なります。
がんを正しく評価して分類することで、そのがんに適した治療を受けることが可能になります。
この章では、がんの分類についてお伝えしましょう。
2.2発生部位による癌の種類
がんを発生した部位(原発)で分類すると、3つに分けられます。
これは「胃」や「肺」といった体の部位ではなくて、細胞レベルでの部位を意味します。
造血器から発生したがん
血液をつくる臓器には骨髄やリンパ節があり、これを造血器といいます。
例)白血病、悪性リンパ腫、骨髄腫 etc.
上皮細胞から発生するがん(上皮性腫瘍)
非上皮性細胞から発生する肉腫
2.3病期のステージによるがんの分類
がんには「病期」といって進行度合いを示すステージがあり、この病期による分類が治療方法を決定する基本となります。
ステージを決める要素は
- がんの深さ(深達度)、大きさ
- リンパ節への転移の有無
- 別の臓器への転移の有無
この3つによって、に分類します。
T=深達度、N=リンパ節転移、M=遠隔転移で表したものを頭文字をとってTNM分類と言います。
このTNM分類によって、病期(ステージ)を0~Ⅳ期、全部で8 つの段階に分けています。
Ⅳ期に近づくほどがんが進行していることを意味します。
下の表は胃がんのTNM分類ですが、T・N・Mの3つは互いに関連し合っており、Tが一番小さくてもNがあればステージは進みます。
M(遠隔転移)があれば、それだけで深達度に関係なくステージⅣとなります。
(日本臨床外科学会)
がんの種類によっては、このTNM分類だけではなく、さらに採血による腫瘍マーカーや遺伝子の特性などによっても治療方法を考慮します。
ステージを把握することは今後の治療の見通しにつながります。
この分類を細かく覚える必要はありませんがT=深達度・N=リンパ節転移・M=遠隔転移は覚えておくと、医師の説明がわかりやすくなるでしょう。
2.3形状によるがんの分類
がんは多くの人のイメージにある通り、腫瘍という塊を作って増殖していくことが多いのですが、全てのがんに共通する特徴ではありません。
白血病はまさに血液のがんとして知られていますが、造血器である骨髄やリンパ節に発生するがんを「血液がん」といいます。
そして、血液がん以外の塊を作るがんを「固形がん」といいます。
また、固形がんに進行してしまう前段階の、上皮内にとどまっているごく初期のがんを、「上皮内がん」もしくは「上皮内新生物」といい、固形がんとは区別されています。
3.がんって、どうやって診断されるの?~癌診断までの流れ~
3.1血液検査
がんが発生すると、血液中に健康な人にはない特定の物質が存在するようになります。
これを「腫瘍マーカー」といい、がんの検査の中では体の負担が少なく簡単に調べることができます。
腫瘍マーカーは各臓器によって異なります。
(国立がん研究センター)
腫瘍マーカーは採血で済むのでとても簡単なのですが、それだけでがんと診断することはできません。
しかし、前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAはかなり感度が高いため、健康診断の採血項目にも含まれるようになりました。
臨床現場では、進行したがんや治療効果を判定するために定期的に採取することによって活用されています。
例えば化学療法や放射線療法が行われている場合、その治療がどれくらい効果があるかを腫瘍マーカーを用いて判定します。
(ただし、この効果判定も必ずCTなどの画像検査と併用します。)
3.2画像検査
画像検査は、がん診断に欠かせない検査です。
- X線(レントゲン)
- CT
- MRI
- PET
- エコー
これらが、がん診断に行われる画像検査です。
レントゲンは、一般的に健康診断でも行われる胸の単純撮影の他、バリウムを使って胃(胃透視)や大腸(注腸)を撮影する造影検査もあります。
CTは放射線を、MRIは磁気を利用した画像検査です。
この2つは親戚関係のようなもので、どちらが優れているということではなく、がんのできている臓器によって用途を使い分けます。
CTとMRIも薬を使わずにそのまま撮影する単純撮影と、臓器を染める薬(造影剤)を静脈に注射することにより、より詳細にがんの形や大きさ・浸潤の深さなどを判断する造影撮影があります。
⇓ CTの装置・画像
PETはまだがんの初期検査としては一般的にはなってはいませんが、CTやMRIと違い、がんの大きさや広がりを調べるのではなく、がん細胞の活動状態(栄養の取り込み具合)を把握するものです。
PETはCTやMRIと組み合わせて行うことで、よりがんの詳細な情報を得ることができます。
3.3内視鏡検査
昔は胃がん検査というと、バリウムが一般的でした。
しかし、バリウムは胃や大腸の輪郭を映し出す検査であり、早期のがんの発見には適さないと指摘されるようになりました。
そこで、近年は健康診断の胃バリウム検査は胃カメラへと変わりつつあります。
胃カメラは、内視鏡で粘膜をダイレクトに観察することが可能な上、ピンポイントで気になる部分を画像に納めたり、ポリープなどを鉗子といってカメラの先に付けたはさみで切除することが可能なため、がん診断には非常に有用な検査です。
大きいものは一度に取り切ることができないので、組織の一部を採取して病理検査にまわしますが、ごく初期の小さなものならその場で取り切ることもできます。
つまり、内視鏡検査では検査と病理診断、更に治療までが可能になるのです。
胃カメラ同様に大腸カメラも、肛門から内視鏡を挿入することで大腸の中を直接観察することが可能です。
内視鏡検査は胃カメラ・大腸カメラといった消化管の検査が主ですが、気管支を検査することもあります。
口から気管支にカメラを挿入し、胃カメラ同様に組織の一部を採取したり、洗浄した液体にがんの細胞を含むかどうか検査することで、がんの診断を行うことができます。
3.4病理検査・病理診断
病理検査はがんと思われる腫瘍の組織を採取してきて、顕微鏡で細胞の性質を調べる検査です。
がんの診断には不可欠で、この病理検査をもってがんと確定診断します。
病理検査に出す組織(検体)は、内視鏡や手術の際に採取してきます。
内視鏡などで術前に組織を採取することのできない部位の場合は、手術によって摘出したものを病理検査することで、「がんでした」と後から確定診断がつくことになります。
乳がんの手術では手術中に特定部位のリンパ節の組織を採ってきて、その結果によって手術の範囲をリンパ節にまで広げる(リンパ郭清)か判断する、術中迅速病理診断を採用しています。
4.やっぱりがんだった!!場合の治療方法は、何があるの?
がんの三大治療は手術(外科治療)・薬物療法(抗がん剤)・放射線治療。
ここでは、基本となる3つの治療と、最近力を入れる医療機関が増えている緩和ケアについてお伝えします。
4.1早期がんなら、基本は手術
既にお伝えした通り、がんとは腫瘍=できものです。
そして、腫瘍が大きくなって周りに浸潤したり、血流にのって転移することで体中に広がっていきます。
ですから、まずは元を絶つこと=切除することが一番の治療です。
ただし、切除といってもやみくもに行うわけにはいきません。
様々な検査の結果やステージ分類から切除の範囲や、外科的手術の適応を判断します。
ころりとした塊の腫瘍は、その周辺の正常な細胞の部分をあわせて取り除くことで、取り切ることが可能です。
しかし、少しずつ染み出していくタイプや造血器のがん、既に転移している場合にはその元となる原発のがんを切除するかどうかは主治医や放射線腫瘍医・病理医などがそれぞれの専門領域から意見を出し合い、決定します。
中には、完治させるためではなくこれ以上がんの増殖を抑えるため、もしくは現在出ている症状を緩和させるために姑息的(こそくてき)に手術を行うこともあります。
とはいえ、やはりがんの治療の一番は外科的手術で取り切れることが一番理想です。
4.2目に見えないがんをたたく!薬物療法
手術のときには、がん周囲の正常な細胞でくるみ、大きく切除します。
そして、採取した組織の断端を病理医が顕微鏡で確認します。
ここで、しっかり正常細胞まで含めて切除できているか、それともまだがん細胞が組織の端に残っているのかを確認します。
病理検査でもめでたく「取り切れた」としても、がん治療は終わりません。
がんは遺伝子レベルで発生するものなので、まだ目に見えないがんの種ともいえる傷ついた遺伝子が存在している可能性があります。
これを「たたく」のが抗がん剤です。
抗がん剤には内服と点滴がありますが、内服も点滴も現在はほとんど入院することなく、自宅で行うのが一般的です。
(NIPRO)
このような携帯式のポンプを利用すれば、自宅にいながら抗がん剤治療を行うことができます。
ポンプは軽いプラスチック製でできており、中の風船のような袋に体重や腎機能などから計算した量の抗がん剤を注入します。
すると、その風船が少しずつしぼむ過程で、1時間に数mlずつ抗がん剤を投与することができます。
薬の入ったポンプを袋に入れて身に付けることで、基本的には日常生活も仕事も可能です。
ただしこの治療を行う前には、入院して血管につないだ「ポート」とよばれる部品を皮下に埋め込む手術を受ける必要があります。
抗がん剤治療は手術を補完する目的で行うだけではなく、既に転移していて手術が適応にならない場合や、あえて手術の前に行ってがん小さくさせるために行うこともあります。
各臓器やがんの種類やステージなどによって、抗がん剤の使用方法は異なります。
昔よりも吐き気などの副作用に対する対策も整ってきましたが、脱毛や嘔気・手のしびれ、そして最大の副作用である白血球の減少(免疫力の低下)はあります。
内視鏡で超早期に発見して取り切れた場合を除けば、抗がん剤治療はがん治療の軸と言えるでしょう。
4.3局所に効く!放射線療法
がんの三大治療の最後は、放射線療法です。
これは、人工的に高エネルギーX線を発生させ、それを体の外からがんに照射することでがん細胞のDNAにダメージを与える治療法です。
放射線療法は単独で行われることもありますが、多くは手術や抗がん剤と併用します。
がんが限局している場合に有効な治療法ですが、手術のように体を開いたり臓器を取り除いたりせずに行うことが可能です。
他の2つの治療法と同様に、がん細胞の根絶を目指すために行う場合と、骨転移などによる痛みなどの症状の緩和を目指すために行う場合があります。
目的やがんの発生部位・ステージなどにもよりますが、放射線の照射回数は医師・放射線科腫瘍医が話し合って決定します。
照射中は平日の日中に毎日通う必要があること、また白血球減少・だるさ・照射部位の皮膚障害など放射線による副作用のあることがネックです。
4.4治療は常に、緩和ケアを並行して
近年がん治療の一つとして力を入れるようになった分野で、「緩和ケア」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
緩和ケアは、がんによる心身の苦痛を取り除く治療です。
緩和ケア=終末期(ターミナル)というイメージを持っている人もいるかと思いますが、それは過去の話。
現在は、緩和ケアは程度は進行度によって変わりますが、がんの治療初期から行うべきものとされています。
必ずしもホスピスなどの専門的な医療施設で行うものではなく、自宅で生活しながら、がんそのものに対する治療と並行して行うべきものと言われるようになりました。
がんの治療は、痛みや抗がん剤・放射線による吐き気など、様々な苦痛を伴います。
また、遺された家族のことなど、精神的な苦痛や不安も抱えて治療を受けている患者さんも大勢います。
その心身の苦痛に対して、がん治療の初期から介入しましょうというのが緩和ケア。
緩和ケアには専門の資格試験を受ける認定看護師も存在します。
いくら医療が進歩していても、現実に日本人の死因のトップは何らかのがんであることは、冒頭でお伝えした通りです。
治るがんもあれば、治らないがんもありますが、これからの時代はもっと緩和ケアの部門は力を入れていくことが考えられます。
5.一番心配なのはやっぱりコレ!がん治療に必要なお金
5.1がんの治療費って、いくらかかるの?
冒頭のがん統計でもお伝えしましたが、女性の罹患率第一位は乳がんですが、死亡原因の第一位は乳がんではなく大腸がんです。
これは、大腸がんがなかなか早期発見しにくいこと(確定診断には便潜血だけではなく、大腸カメラが必要)もありますが、考え方を変えれば早期発見されれば現代医療によって生存率が高くなることを意味しています。
ごく初期の大腸がんは内視鏡検査のときに切除することが可能で、病理検査の結果を聞くときには「あなたはがんでしたよ、ただしもう取り切ってあります」という具合に、既に治療が完治していることもあります。
しかし、中には手術+抗がん剤+放射線とがん治療の三大療法を全て行い、それでもがんを根治することができず、一生抱えて生きていく人もいます。
そうなると困るのが、治療費です。
(オリックス生命)
胃がんや大腸がんなどの抗がん剤は、既にご紹介したような特殊なポンプによって自宅での治療も可能です。
しかし、白血病などの抗がん剤は正常細胞を「たたく」レベルが桁違いで、その分厳重な管理が必要となり、副作用である白血球の減少なども起こりやすくなるため、長期間の入院が必要となることもあります。
私達日本人は国民皆保険制度により、何かしらの医療保険に加入しています。
ですから、医療機関での窓口負担は現役世代なら3割負担ですみますが、それでも高価な薬を使ったり専門的な治療となると医療費の総額が上がるため、負担する額も増えます。
そこで、1か月に同一医療機関における治療費については一定額以上負担した場合に払いすぎた分が戻ってくる高額療養費制度もあります。
しかし何か月も上限額を払い続けることは、やはり家計への負担は甚大です。
高額療養費制度による上限額は所得によって決まります。
また、入院中の食費や部屋代などは対象となりませんので、全ての医療費の3割負担で済むわけではないということも覚えておきましょう。
5.2保険適応のない先進医療を受けるには、いくら必要?
日本では原則3割負担ですむ医療ですが、中には保険適応外の治療もあります。
そのうち、厚生労働大臣が承認した先進性の高い医療を先進医療と言います。
治療効果や安全性などが認められてはいるものの治療費が高額で、保険適応にはならないものです。
しかし、既存の保険適応の治療方法ではこれ以上の治療成績が見込めない場合や、より根治に近づくことができると思われる場合は、細かい条件のもとでこれらの先進医療の対象となることがあります。
(チューリッヒ生命)
中でも、がんの先進医療として知られているのは、陽子線ではないでしょうか。
陽子線は通常の放射線治療とは異なり、体の中にとどまる性質を利用した治療法で、後ろに突き抜けない分より少ない副作用で効果的にがんを狙い撃ちすることが可能です。
その代わり費用は(部位や照射回数によっても異なりますが)300万円近くかかるとされています。
5.3もしものがん治療には、がん保険で備える!!
陽子線のような先進医療は、全てのがん患者に適応があるものではありません。
保険診療の治療だけですむ人の方がほとんどです。
しかし、万が一にも自分が保険診療の薬だけでは根治が難しく、陽子線治療なら更なる治療効果が得られると医師から言われたら、どうしますか?
300万円というお金を、すぐに用意できますか?
現実には、先進医療を実施している医療機関はまだ限られており、地方では県に1か所あるかどうかという地域もあります。
そのような場合には、仮にお金が用意できたとしても移動やフォローの面から、受けられないこともあります。
しかし、数少ない治療の対象者で、偶然通える範囲に陽子線治療を行っている医療機関があるにも関わらず、お金が用意できないからあきらめる・・・それは悲しいことですよね。
また、先進医療に限らず保険適応の抗がん剤治療でさえ数か月の余命を延ばすためだけにお金をかけるなら、遺された家族のために残しておきたいという人もいます。
しかし、受けられるチャンスがあってネックとなっているのが金銭的なことだけなら、なんとかできないものだろうかと思いませんか?
そんなときに頼りになるのが、生命保険のがん保険。
医療保険の特約としてつけることもあります。
がん保険は生命保険各社によって保障内容が異なりますが、医療保険との違いとして下のような特徴があります。
- がんと診断されたときの一時金としてがん診断給付金が支払われる
- がん治療のために入院した場合には通常の医療保険の入院よりも高いがん入院給付金が支払われる
- 入院や手術を繰り返しても給付可能
- 退院時にはがん退院一時金がある
- 先進医療に対して最大2000万円の保障がつく
- 通院にも通院給付金がある
中には、がん治療にかかる費用を治療費+生活費とし、治療費とは別に生活費として給付を受けられる商品もあります。
医療を支える制度は、公的医療保険や高額療養費制度がありますが、それだけではがん治療には足りないケースもあります。
場合によっては、仕事をセーブして収入が減った状態で治療を続けざるをえない人もいます。
預貯金で対応できればよいのですが、それだけで不足する医療費にはがん保険の活用も検討しておくとよいですね。
日本人の2人に1人ががんにかかる、というデータがあるのですから。
6.まとめ
がん治療において一番重要なことは、早期発見と早期治療です。
そのためには、定期的な健康診断や人間ドックが必須。
そして、もし異常が指摘されたのならすぐに精密検査を受け、治療を受けましょう。
多くの人が、精密検査の結果「がんです。これから治療を開始しましょう。」と言われてしまうと、頭が真っ白になります。
しかし、がんに対する予備知識が少しでもあると、受け入れ状況は変わります。
また、万が一に備えて預貯金を確保したりがん保険に加入してあると、経済面での不安は和らぎます。
まずは預貯金と公的社会保険制度の活用、それでも治療費が不足しそうだと思ったらがん保険。
「万が一」はいつやってくるかわかりません。
この記事を読んでがんに対する知識を得たら、今すぐ、行動にうつしましょう。