源泉徴収とは、特定の所得に対し、その発生時に支払者が国に代わり所得税を天引きする方法です。
一見、源泉徴収は会社に勤務する従業員を対象とすると考えがちですが、パートやアルバイト、自営業者・自由業者も対象になります。
つまり、給与所得に限らず色々な報酬が源泉徴収されます。源泉徴収は支払者(事業主)の義務ですが、条件によってはその義務が免除されたり、特例が用意されたりしていることもあります。
ただし、支払者側が源泉徴収義務を怠ると、思わぬペナルティが課せられるので注意が必要です。
何かとわかり難い源泉徴収ですが、今回はその仕組みと計算方法、そして申告方法について解説していきます。
この記事を読めば、源泉徴収の基本的な知識を得ることができ、ご自分の給与や報酬からどのくらい源泉徴収額が差し引かれるか、良くおわかりになることでしょう。
1.源泉徴収について
私は現在、会社で正社員として働いています。そもそも源泉徴収とは何故差し引かれるものなのか、イマイチよくわかりません。
源泉徴収とは、そもそも何なのか詳細を知りたいです・・・・。
こちらでは、源泉徴収とは何か?この制度には正社員だけが該当するのか等を解説します。
1-1.源泉徴収とは
源泉徴収とは、勤務している従業員のために、事業主が給与を支払う際、所得税分を差し引き国へ納付するという仕組みのことです。この源泉徴収は全従業員に対して行わなければなりません。
事業主は毎月1回(10日まで)に納付書を添えて税務署へ送付します。ただし、従業員が9名までの事業所は、税務署に申請をすれば年2回の納付だけで良い場合があります。
源泉徴収は、税収の確保を目的とした制度であり、日本国憲法第30条に規定されている「納税の義務」に立脚した制度と言えます。
税金は、国民全体が快適で豊かな生活をするために欠かせないものであり、「お金が差し引かれるのでもったいない。」からと言って、拒否することはできません。
1-2.源泉徴収は会社の正社員ばかりでない
源泉徴収の対象となるのは、事業所の正社員の方々ばかりではありません。事業主が給与の支払いをする場合、給料から所得税を源泉徴収する必要があります。
これは正社員でもパート・アルバイトでも同じです。パート・アルバイトの方々の場合、本人に対し副業で働いているかどうかをしっかり確認する必要があります。なぜなら、源泉徴収する所得税の金額が変わってきてしまうからです。
パート・アルバイトの方々が本業で働いている場合、それとも副業で働いている場合の所得税の源泉徴収税額は、国税庁の「源泉徴収税額表」を参考に計算しましょう。なお、平成30年分の「源泉徴収税額表」はこちらとなります。
一方、自営業者・自由業者の方々に対しても一定の条件へ該当すれば、源泉徴収を行わなければならないことがあります。
こちらは給与所得の源泉徴収と違った方法で計算することになります。支払う側が源泉徴収義務を怠った場合は、税務署からペナルティを受けてしまうことがあるので注意する必要があります。
1-3.源泉徴収票と支払調書
源泉徴収を行った際には、お金を支払った側が受け取った側に渡す書類があります。それが、「源泉徴収票」と「支払調書」です。
〇源泉徴収票
源泉徴収票は、給与・退職手当・公的年金等の支払をする人が、その支払額・源泉徴収した所得税額を証明する書面です。
源泉徴収票には次の3つがあります。
- 給与所得の源泉徴収票:1月1日~12月31日までに支払われた給与等の支払金額と、所得税等の源泉徴収税額が記載されます。この源泉徴収票は、正社員の他、パート・アルバイトへも渡す必要があります。
- 退職所得の源泉徴収票:退職の際の手当等の支払金額と所得税の源泉徴収税額が記載されています。従業員の退職した日から1ヶ月以内に交付する必要があります。
- 公的年金等の源泉徴収票:1月1日~12月31日までに支払われた公的年金等の支払金額と、所得税の源泉徴収税額が記載されます。支払った翌年の1月31日までに交付する必要があります。
〇支払調書
支払調書とは前述した源泉徴収票と同じく法定調書の一つです。報酬を支払う側から自営業者・自由業者の方々へ渡す書類です。
一般的に支払調書という場合、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を指していることが多いです。
この「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」は、自営業者・自由業者の方々が確定申告をする際に必要となります。
2.源泉徴収と従業員その1
源泉徴収は、我々会社員だけが差し引かれるものではないことはわかりました。
では、源泉徴収にはメリット・デメリットはあるのでしょうか?源泉徴収の計算方法も知りたいです・・・・。
こちらでは、源泉徴収の利点や注意点、そして計算方法を解説します。
2-1.源泉徴収のメリット・デメリット
源泉徴収は、従業員にとって毎月の税金の納付を気にする必要もなく便利な仕組みですが、注意点があります。
〇源泉徴収のメリット
従業員側と、納税徴収者(国)側からみれば次のような利点があります。
[1]従業員の場合
- 毎月の所得税の納付を勤務先が行ってくれるので、納付期間に煩わされず仕事に集中できます。
- 従業員自らが国に納付するわけではなく、毎月給与から天引きされるので、納税義務者として負担感は少ないことがあげられます。
従業員から見れば、とにかく手間がかからないので安心して業務に従事できます。
[2]納税徴収者(国)の場合
- 所得税の徴収を確実に行うことが可能です。
- 正確な課税標準(※)等の把握ができます。
(※)課税標準:課税対象となる行為や物等を金額・価額、数量等であらわした基準で、税率の適用による税額を算出する数値のことです。
〇源泉徴収のデメリット
事業所にとっては、従業員の源泉徴収の算出・納付に余計な時間がかかることもデメリットといえます。
一方、従業員にとっても、勤務中の出費のどこまでが必要経費なのか判断しにくい点があります。
2-2.給与所得の源泉徴収の計算方法してみる
こちらでは実際に事例をあげて給与所得の源泉徴収を計算してみます。なお、いずれのケースも平成30年分の「源泉徴収税額表」を参考に算出します。
〇ケース1
(例)
- 会社員:28歳男性
- 勤務先:1事業所のみ
- 月額給与:32万円
- 社会保険料:42,138円
- 扶養人数:2人(妻・子)
①まず月額給与32万円から社会保険料42,138円を引きます。
32万円(月額給与)-42,138円(社会保険料)=27万7,862円
②差し引いた金額27万7,862円を源泉徴収税額表と照らし合わせます。そうすると、金額は27万7,862円の場合、扶養家族が2人いるので源泉徴収税額4,370円(甲欄)となります。
〇ケース2
(例)
- 会社員:25歳男性
- 勤務形態:アルバイトかつ副業
- 社会保険料等控除後給与:8万8,500円
- 扶養人数:1人(妻)
①社会保険料等控除後の給与が8万8,500円で、扶養人数が1人なので本来ならば源泉徴収税額表(甲欄)をみれば、源泉徴収税は0円です。
②しかし、こちらのケースではアルバイトはあくまで副業として行われています。そのため、「乙欄」も参照します。
③社会保険料等控除後の給与が8万8,500円の場合、源泉徴収税額3,200円(乙欄)となります。
副業をしているとその分、源泉徴収税額は多くなってしまいます。
2-3.退職所得の源泉徴収税額について
退職所得の源泉徴収税額の計算方法は次の通りです。
〇退職所得の源泉徴収税額
各課税退職所得金額によって、所得税率・ 控除額が異なります。
課税退職所得金額 | 計算式 |
~195万円以下 | (課税退職所得金額×5%)×102.1% |
195万円超~330万円以下 | (課税退職所得金額×10%-97,500円)×102.1% |
330万円超~695万円以下 | (課税退職所得金額×20%-427,500円)×102.1% |
695万円超~900万円以下 | (課税退職所得金額×23%-636,000円)×102.1% |
900万円超~1,800万円以下 | (課税退職所得金額×33%-1,536,000円)×102.1% |
1,800万円超~4,000万円以下 | (課税退職所得金額×40%-2,796,000円)×102.1% |
4,000万円超~ | (課税退職所得金額×45%-4,796,000円)×102.1% |
〇事例をあげて計算
(例)
- 会社員:60歳男性
- 課税退職所得金額:1,000万円
①課税退職所得金額が1,000万円なので、「(課税退職所得金額×33%-1,536,000円)×102.1%」の計算式を使います。
②(1,000万円×33%-1,536,000円)×102.1%=1,801,044円となり、源泉徴収税額は約180万円となります。
3.源泉徴収と従業員その2
源泉徴収によって毎月給与から天引きされているのですが、何故その上、年末調整まで必要なのでしょうか?
年末調整と源泉徴収の関係について知りたいです・・・。
こちらでは、年末調整の必要性と、年末調整の手順等について解説します。
3-1.年末調整の必要性とは
毎月源泉徴収する所得税は、割と多めに天引きされている傾向があります。
また、従業員のライフステージの変化(例えば結婚や生命保険料の納付等)でも、各控除によって税金は安くなりますが、源泉徴収ではその控除について反映できません。
そのため、事業所では12月に年末調整を行い、その年の各従業員が負担すべき所得税を正確に計算します。
その際、源泉徴収された所得税との差額が多いときは還付(お金を従業員へ返還する)、税額が足らなければ徴収(お金を従業員から取り立てる)して調整することになります。
3-2.年末調整の手順
年末調整の手順は次の通りです。
[1]全従業員の給与と徴収税額の集計 |
⇓
[2]給与所得控除後の給与等の金額の計算 |
⇓
[3]3つの確認作業を行い課税給与所得金額を計算 |
所得控除を計算することになります。3つの確認作業とは次の通りです。
(1)扶養控除等(異動)の申告書の受理・内容確認
次の控除が該当します。
- 配偶者控除:所得税法上の控除対象配偶者がいる場合、所得控除を受けることができます。(例)一般の控除対象配偶者→38万円控除
- 扶養控除:控除対象扶養親族がいる場合、所得控除を受けることができます。(例)一般の控除対象扶養親族→38万円控除
- 障害者控除:納税者本人または控除対象配偶者もしくは扶養親族が、所得税法上の障害者に該当する場合、一定の金額の所得控除を受けることができます。
- 寡婦(寡夫)控除:母子(父子)家庭で、納税者本人が寡婦(寡夫)である場合、所得控除を受けることができます。(例)寡婦(寡夫)控除→27万円控除
- 勤労学生控除:納税者本人が勤労学生である場合、27万円が所得控除されます。
- 基礎控除:無条件に適用される控除です。控除金額は38万円です。
(2)配偶者特別控除の申告書の受理・内容確認
配偶者特別控除とは、従業員の配偶者が38万円を超える所得があって、配偶者控除が受けられない場合、その配偶者の所得に応じ、一定金額の所得控除が受けられる制度です。
(3)保険料控除申告書の受理・内容確認
次の控除が該当します。
- 生命保険料控除:生命保険料、医療・介護保険料、個人年金保険料を支払った場合、一定の金額の所得控除が受けられます。
- 地震保険料控除:特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料または掛金を支払った場合、一定の金額の所得控除が受けられます。
- 社会保険料控除:納税者本人が、ご自分またはご自分と生計を一にする配偶者、その他の親族の社会保険料を支払った場合、その支払った金額分の所得控除を受けることができます。
- 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済法へ規定された共済契約に基づく掛金等を支払った場合、その掛金全額の所得控除が受けられます。
⇓
[4]特定増改築等を従業員が行った場合、住宅借入金等特別控除申告書の受理と内容の確認後に年調年税額を計算 |
税額控除を計算します。
⇓
[5]過不足額の精算 |
⇓
[6]過納額の還付or不足額の徴収納付 |
3-3.年末調整の必要書類
従業員であるご自分が事業所へ提出する書類は次の書類になります。ご自分に該当する控除があれば、それを証明する添付書類も必要です。
〇事業所から取得する書類
ご自分が勤務する事業所から取得し必要事項を記載します。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書:扶養しているご家族に関して申告し、家族の状況によりご自分の税金を減らすための申告書です。
- 給与所得者の保険料控除申告書 兼 配偶者特別控除申告書:年末調整で控除される保険(生命保険料控除 ・地震保険料控除 ・社会保険料控除 ・小規模企業共済等掛金控除)の内容を記載します。
〇添付書類
所得控除を利用するためには、次のような書類を収集します。
- 生命保険料控除証明書
- 損害保険料控除証明書
- 個人型確定拠出年金の掛金証明書類
- 国民年金・国民健康保険等の社会保険料の証明書類
- 配偶者特別控除のための配偶者収入証明(源泉徴収票等)
- 住宅ローン控除の必要書類(住宅借入金等特別控除証明書、申告書、借入金の年末残高等証明書)
4.源泉徴収と事業所
源泉徴収と年末調整に関して、従業員側で行うべきことはわかりましたが、事業所はどんな手続きを行うのでしょう。
事業所側の手続きについて知りたいです・・・・。
こちらでは、事業所側の行う手続きや、源泉徴収義務が免除されるケース等を解説します。
4-1.開設届出書とは?
日本国内において会社・個人が、新たに給与の支払を開始し、源泉徴収義務者になる場合は、給与を支払う事業所の所在地を所轄する税務署に、次の書類を提出します。
〇必要書類
個人事業の開業・廃業等届出書:届出書用紙に必要事項を記載し、事業の開始等の事実があった日から1ヶ月以内に提出します。手数料は不要です。
〇提出後
各従業員の給与を前述した「給与所得の源泉徴収税額表」によって計算し、源泉徴収した所得税・復興特別所得税を、給与を支払った月の翌月10日までに、納付書を添付して国に納付します。
源泉徴収税額の納付届出書用紙に必要事項を記載して、最寄りの税務署へ提出します。
納付書の記載は、住所、氏名や税務署から通知された整理番号等の記入漏れがないように気を付けましょう。
4-2.源泉徴収義務の免除される場合もある
源泉徴収義務者は、会社や個人だけでに限らず、給与等の支払をする学校や官公庁、人格のない社団・財団等も源泉徴収義務者になります。
しかし、個人のうちで次の2つのいずれかに当てはまれば、源泉徴収は不要となります。
- 常時2人以下の家事使用人だけに給与・退職金を支払っている人
- 給与・退職金の支払でなく、弁護士や司法書士、行政書士報酬等の報酬・料金だけを支払っている人(例えば、依頼者が相続財産の調査等をするため、行政書士へ報酬を支払った場合は、源泉徴収が不要です。)
4-3.納期の特例とは?
給与を支払っている従業員が常時9人以下の場合、源泉徴収した所得税・復興特別所得税の納期が毎月ではなく、7月と翌年の1月の年2回だけで行える特例もあります。
この特例を利用する場合、給与・退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収した、所得税・復興特別所得税に限定されます。
〇必要書類
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書:届出書用紙に必要事項を記載します。最寄りの税務署(源泉所得税担当)へ申請書を提出します。
提出時期は特に定められていませんが、原則として提出日の翌月に支払う給与等から適用されます。手数料は不要です。
〇納付は年2回
納付は7月と翌年1月ですが、それぞれ納付日は異なります。
1月~6月分の支払った所得から源泉徴収をした所得税・復興特別所得税→7月10日
7月~12月分の支払った所得から源泉徴収をした所得税・復興特別所得税→翌年1月20日
納付の締め切りが、7月と翌年1月で納期日に10日ほど違いがあります。納付の際は期日に気を付けましょう。
5.源泉徴収と個人事業主その1
実は私、独立も検討しています。自分が個人事業主になった時のことを考えて、自営業者・自由業者の方々の源泉徴収についても興味があります。
個人事業主の源泉徴収について詳細を知りたいです・・・・。
こちらでは、自営業者・自由業者が報酬を受けた場合の計算方法、ご自分が支払う側だった場合の注意点等を解説します。
5-1.源泉徴収にあたるものは色々ある
報酬・料金等の支払を受ける人が個人か法人かによって、源泉徴収する範囲が異なります。
〇支払を受ける者が個人の場合の源泉徴収の対象となる範囲
[1]原稿料・講演料等
謝金、取材費、調査費、車代等の名目で支払をする場合があっても、これらの実態が原稿料・講演料と同じならば、源泉徴収する必要があります。
旅費・宿泊費等の支払も原則的に、報酬・料金等へ含まれます。ただし、通常の場合に必要な範囲の金額で、報酬を支払う人が直接ホテル代・旅行会社に旅費を支払った場合、報酬・料金等に含めなくても問題ありません。
懸賞の応募作品のような入選者に対する賞金、新聞・雑誌の投稿欄への投稿謝金は、原則として原稿料に含まれます。
ただし、1人に対して支払う賞金・謝金の金額が、1回5万円以下なら源泉徴収は不要です。
なお、原稿料に試験問題の出題料・答案の採点料等は該当しません。
[2]弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の有資格者等に支払う報酬・料金
謝金、調査費、日当、旅費等の名目で支払われる場合も源泉徴収の対象となる報酬・料金の範囲内です。
しかし、次の場合には源泉徴収の対象となる報酬・料金へ含める必要はありません。
- これら有資格者へ支払う金銭等でも、支払者が国等へ登記、申請をするため本来納付すべき登録免許税、手数料等に充たる費用として支払われたことが明白な時
- 通常必要な範囲内での交通費、宿泊費等を支払者が直接に交通機関・ホテル等に支払った時
[3]プロスポーツ選手およびモデルや外交員等に支払う報酬・料金
外交員等とは、外交員、集金人、電力量計の検針人の人たちを指します。
[4]芸能人・芸能プロダクションを営む個人への報酬・料金
[5]ホステス等に支払う報酬・料金
バーやキャバレーの経営者が、そこで働くホステスなどに報酬・料金を支払うこと、ホテル、旅館その他、飲食をする場所に派遣し、接待等の役務の提供を行わせる事業を営む者が、そのコンパニオン等に報酬・料金を支払う場合が該当します。
また、源泉徴収の対象となる報酬・料金には、報奨金や衣装代・深夜帰宅するためのタクシー代等も含まれます。
[6]専属契約等で支払う契約金
個人と専属契約等を締結し、契約金を支払う場合、所得税・復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。例えば、プロスポーツ選手・ホステス等の契約金を支払うケースが該当します。
給与所得者であっても、雇用契約を締結し契約金を支払うならば、「契約金」として源泉徴収をする必要があります。
[7]広告宣伝のために支払う賞金等
個人に対し、広告宣伝を目的とした賞金等を支払う場合、所得税・復興特別所得税を源泉徴収する必要があります。
例えば次のようなものが該当します。
- 事業を営む個人・法人が製品や事業内容を広告宣伝するための懸賞クイズ、大売出しの抽選賞金・賞品
- 素人クイズ番組・素人のど自慢の賞金・賞品
こちらの場合の源泉徴収の方法は、賞金額から50万円を差し引いた残額に10.21%の税率を乗じて算出することになります。
支払う賞金額が50万円以下の場合なら源泉徴収の必要はありません。
〇支払を受ける者が法人の場合、源泉徴収の対象となる範囲
馬主となっている法人へ支払う競馬の賞金が該当します。
5-2.源泉徴収額の計算をしてみる
源泉徴収額は金額がいくらかによっても計算方法は異なります。
〇100万円以下の場合
支払金額×10.21%=源泉徴収税額
報酬が20万円であった事例では次のように算出します。
20万円×10.21%=20,420円
〇100万円を超える場合
(支払金額-100万円)×20.42%+102,100円=源泉徴収税額
報酬が300万円であった事例では次のように算出します。
(300万円-100万円)×20.42%+102,100円=510,500円
〇消費税の扱い
消費税を区分表示するか、しないかでも計算に違いが出てきます。
①請求書に「報酬額216,000円」と記載されている場合
報酬額216,000円にそのまま10.21%を掛けて計算します。
216,000×10.21%=22,053.6円
1円未満切り捨てで22,053円となります。
②請求書に「報酬額200,000円、消費税等16,000円」と記載記載されている場合
報酬額200,000円のみに10.21%を掛けて計算します。
200,000×10.21%=20,420円
5-3.ご自分が支払う側なら要注意
ご自分が支払う側であるなら源泉徴収は義務となります。それを怠ると不納付加算税、延滞税の支払いが発生してしまいます。
また、源泉徴収漏れが発覚し、既にその部分に相当する金額を得意先に支払済みとなってしまった場合は、継続的な取引をしているならば相手方に同意を得て、次回の取引で相殺する方法が利用できます。
返金をしてもらうことも可能ではありますが、過去の取引を修正すると共に、支払調書を修正しなければいけません。
返金の修正が同年の取引である場合は問題ないものの、源泉徴収をしなかった年、源泉徴収漏れを発見した年がそれぞれ違う場合、修正が必要です。
6.源泉徴収と個人事業主その2
源泉徴収に関わる報酬・料金等にも、いろいろな種類があることはわかりました。
では、確定申告際の必要書類や注意点について知りたいです・・・。
こちらでは、確定申告の必要書類と、支払調書の必要性について解説します。
6-1.確定申告は源泉徴収額を忘れずに
自営業者・自由業者の方々は確定申告の際、源泉徴収により差し引かれている金額の申告を必ず記載しましょう。
原稿料等は「雑所得」として、その金額を記載することになります。
確定申告Bの第一表には、「収入金額等」欄の「雑 – その他 ク」および「所得金額」欄の「雑 ⑦」に金額を記載します。
また、「税金の計算」欄には、「所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額㊹」にあらかじめ源泉徴収された金額の合計額を記載します。以降にわたり源泉徴収に関係のある欄へ記載していきます。
一方、確定申告Bの第二表には、「所得の内訳(所得税及び復興特別所得税の源泉徴収税額)」欄・「雑所得(公的年金等以外)、総合課税の配当所得・譲渡所得、一時所得に関する事項」欄へ、各情報を記載していきます。
6-2.確定申告の必要書類
確定申告の際の必要書類は次の通りです。
[1]確定申告書
最寄りの税務署で取得します。必要事項を記載し、ご自分の納税地を管轄する税務署へ提出することになります。
[2]支払調書
受け取った支払調書または源泉徴収票を、添付書類台紙へ貼り付けます。
[3]本人確認書類
①マイナンバー(個人番号カード)の両面の写し:こちらも添付書類台紙へ貼り付けます。
②マイナンバー(個人番号カード)が無い場合
- 番号確認書類の写し(通知カード、住民票の写し、住民票記載事項証明書等)
- 身元確認書類の写し(運転免許証、パスポート、在留カード等)
上記2点を添付書類台紙へ貼り付けます。
[4]印鑑
6-3.支払調書を必ず入手する
報酬を受け取ったご自分が確定申告の際、源泉徴収されているということを証明するため、支払調書を入手する必要があります。
支払調書は報酬等の支払いを行う側が、自営業者・自由業者の方々に対して発行する義務があります。
ただし、2月になっても支払調書が届かない場合は、確定申告期間(原則として2月16日~3月15日の1ヶ月間)に入ってしまうので、得意先に対して支払調書の発行を請求する必要があります。
支払いを行う側が単に忙しくて、発行する機会がなかったという場合はあるものの、発行をスッカリ忘れている場合もあるので、申告期間が近づいたら忘れずに得意先へ請求しましょう。
7.まとめ
源泉徴収は事業所に勤務する従業員にとって、手間もなく徴収されるので非常に便利です。
しかし、源泉徴収は給与を支払う事業所にとって、ナカナカ面倒な手続きではあります。しかし、納税の義務を負っている以上は、正確かつスムーズに対応していく必要があります。
また、自営業者や自由業者の場合、記載内容も増えるので手間はかかりますが、還付金を受け取れることがあるので忘れずに記載しましょう。