現在、日本の景気は好調と言われていますが、庶民には実感がわかない好景気といえます。我が国では貧困層が相変わらず多く、その子供たちが勉強したくても十分な学習環境が整っているとはいえません。
家庭の経済状況が原因で、大学進学を断念しなければならない問題が数多くある中、全ての人が平等に学習機会を得られるのは素晴らしいことです。
昨今、我が国の国会でも高等教育無償化について議論され、教育格差を何とか埋める努力が行われました。
そして、2020年からいよいよ「高等教育無償化制度」が開始されます。この制度で進学の機会が得られる環境は整うものの、本制度の支援対象となるにはいろいろな要件があります。
支援対象者および大学等双方が、それぞれの要件に該当する必要があります。当然、本制度を利用したくても、それが認められないケースは出てきます。
そこで今回は高等教育無償化制度の内容や要件、その注意点を解説します。この記事を読めば高等教育無償化制度の基本的知識と、本制度を利用できない場合の対策について知ることができるはずです。
目次
1.高等教育無償化について
私たち夫婦にはまだ子供はいませんが、私も家内も家庭の事情で大学進学を諦めた過去があります。
今の日本は好景気とか言っていますが、我々には全然恩恵が得られていません。失望です。
政府は大学等の「高等教育無償化」を行うようですが、どんな制度内容なのでしょうか・・・・?
こちらでは、高等教育無償化とは何か?その財源等について解説します。
1-1.高等教育無償化とは
高等教育無償化は、大学・短大・専門学校等どの高等教育について、低所得世帯の子供の授業料、学生生活費を国等で支援する制度となっています。
低所得世帯の子供が経済的な事情で大学等への進学を諦めることのないよう支援して、学習機会の格差を無くすことが目的で2020年4月より実施されます。
高等教育無償化の概要は次の通りです。
(1)高等教育の無償化の目的
主に次の2点となります。
- 家庭の経済的な理由で、高等教育の受けられない若者を減らし、社会で活躍できる優秀な人材を増やす
- 教育費の負担を理由に子供を作らない世帯の減少を図る
(2)無償化の対象となる学校種
国立・公立・私立を問わず次のような学校種となります。
- 大学
- 短期大学
- 高等専門学校
- 専門学校
授業料免除の上限額はそれぞれ異なります。
1-2.高等教育無償化の財源
高等教育無償化とはいっても、この制度を維持できる確たる財源はあるのでしょうか?
この制度の財源が、2019年10月に予定されている消費税率引き上げの増収分で賄うといわれています。
現在の消費税率8%から10%へ増税し、その増収分より1.7兆円が本制度の維持に充てられます。
つまり、政府・国民全体で、経済的な事情により大学等への進学が難しい子供たちへ、就学の機会を与えるという形となります。
1-3.他にも無償化されるものがある
高等教育無償化は、2017年9月に立ち上げられた「人生100年時代構想会議」の基本的な柱の一つ、「人づくり革命」を実施するための制度の一つです。
もちろん、無償化は高等教育だけにとどまりません。「幼児教育無償化」も、高等教育無償化に先立ち2019年10月から開始されます。
幼児教育無償化の内容は主に次の通りです。
- 認可保育所・幼稚園に通う3~5歳児、住民税非課税世帯の0~2歳児の保育料を原則無料
- 認可外保育所・ベビーシッター等を利用する場合も、各自治体が必要と認定した世帯へ、毎月37,000円を上限に補助
しかし、各地方自治体では、待機児童解消を図る対策や、保育士不足問題の根本的な解決が達成されていません。
この状況下で新制度を開始するため、今後、地域によって制度の導入等で混乱が生じる可能性もあります。
2.支援対象者の要件について
高等教育無償化は子供たちの将来のために、役立つ制度になれば良いですね。
しかし、制度の支援対象者はどう選ばれるのでしょうか?気になります・・・。
こちらでは、支援対象者の要件と、本制度が打ち切られるケースを解説します。
2-1.支援対象者はこう選ぶ
高等教育無償化制度を適正に行うため、支援対象者は年収の少ない世帯の子供が対象となります。
そして、何より支援対象となる学生(高校生)の入学前のやる気と、入学後も変わらぬ学習意欲があるかどうかです。
なお、支援対象者はまず前提の要件として、日本国籍を有する人、法定特別永住者、永住者または永住の意思の認められる定住者であることが必要です。
いかに進学の意欲があっても、国籍を変更するか、日本へ住み続ける意思がなければ、この制度は利用できません。
2-2.進学前は世帯収入と本人のやる気!
進学前に支援対象者をどう選ぶかについては、本人の成績・やる気、親の所得水準等で判断されます。
(1)学業・人物に係る要件
進学前なら学生の明確な進路意識、強い学びの意欲を判断することになります。この意欲等の判断は、高等学校在学時の成績のみで判断されません。
所属高校等は、レポートの提出・面談等から学生本人の学習意欲や進学目的等を確認することになります。
(2)親の所得水準
政府は「住民税非課税世帯及びそれに準ずる世帯」を要件としています。
住民税非課税世帯は、「一律年収〇〇〇万円以下」とは法律等で明確に設定されていません。この住民税非課税世帯になる事例としては次のようなケースがあげられます。
- 3人世帯:会社員・専業主婦(または主夫)・子1人→年収205万円以下
- 4人世帯:会社員・専業主婦(または主夫)・子2人→年収255万円以下
なお、保有する資産(金融資産等)も一定の水準を超えていないことが必要で、こちらは申告を行うことになります。
2-3.進学後は要件が厳しい?
大学等への進学後は、その学習状況について厳しい要件が課されています。ケースによっては直ちに支援を打ち切られる上、支援した金額分を徴収される事態も考えられます。
(1)直ちに支援を打ち切られるケース
次のケースに該当したら直ちに支援が打ち切られます。また、進学後の態様が著しく不良で、懲戒による退学処分など相応の理由があるとき、支援した金額を徴収されるおそれがあります。
- 退学・停学の処分を受けた
- 修業年限で卒業できないことが確定
- 修得単位数が標準の5割以下
- 出席率が5割以下等、学習意欲が著しく低いと大学等が判断
(2)大学等が警告後、改善が認められない場合に支援を打ち切られるケース
大学等が何度も警告を行ったものの、対象学生の改善が認められない場合に支援を打ち切ります。
- 修得単位数が標準の6割以下
- GPA(平均成績)等が下位1/4
- 出席率が8割以下など学習意欲の低さを大学等が判断
(3)その他
他の要件としては、高等学校等を卒業後2年の間に、大学等へ入学を認められ進学した者で、過去に高等教育の無償化のための支援措置を受けなかった学生であることが必要です。
なお、在学中の学生も本制度の対象になりますが、直近の住民税課税標準額・学業等の状況を考慮し、支援対象者の要件を満たせば支援措置が受けられます。
また、世帯の収入等は、学生が在学中ずっと一定であるとは限りません。予期できない事態で家計が急変し、急変後の所得が課税標準額へ反映される前に、緊急的な支援の必要が出てくることもあります。
そこで、急変後の所得見込み段階で、支援対象の要件を満たすと判断されれば、速やかに支援が開始されることとなります。
3.大学等の要件について
支援対象となる学生さんは、大学等の進学前よりも入学してからが大変になりますね。
でも、税金を使って進学するわけなので、高等教育無償化制度を利用した場合には、しっかり勉強してもらうことは当然です。
では、この制度の対象となる大学等にも要件はあるのでしょうか・・・?
第3章では、本制度の対象となる大学等の要件について解説します。
3-1.大学にとっては厳しい要件?
高等教育無償化制度の活用の場である、大学をはじめとした高等教育施設は、支援を受けた学生が安定的に勉学へ励むことのできる場でなければいけません。
そのため本制度の対象となる大学等の高等教育施設は、学問追究・実践的教育のバランスが取れている必要もあります。
ただし、昨今の少子化で進学する若者の数も減り、収容定員の8割を下回る大学は例年約100校も存在します。
少なくとも、このような学生の確保に苦慮する高等教育施設は、本制度の利用が非常に困難であると言えます。
3-2.大学等の要件とは
大学等には次のような一定の要件が求められます。
- 実務経験のある教員による授業科目が標準単位数(4年制大学なら124単位)の1割以上配置されている
- 法人の「理事」に産業界等の外部人材を複数任命
- 授業計画の作成、GPA等の成績評価の客観的指標の設定、卒業認定に関する方針の策定を行い、厳格かつ適正な成績管理を実施・公表
- 法令に則り貸借対照表・損益計算書その他の財務諸表等の情報、定員充足状況や進学・就職の状況など教育活動の情報を開示
ただし、標準単位数等の要件については、学問分野の特性等で満たすことができない学部は存在することでしょう。
この場合に大学等は、やむを得ない理由および実践的教育の充実に向けた取り組みを説明、公表することが必要となります。
3-3.経営難の大学はつらいよ
残念ながら高等教育施設によっては、教育の質が確保できず、学生の大幅な定員割れとなり、経営に問題がある所も存在します。
その負担軽減のため本制度が利用されないよう、文部科学省「学校法人運営調査における経営指導の充実について」の「経営指導強化指標」を踏まえ、次のいずれにもあたるならば、本制度の対象外とされます。
- 法人の貸借対照表「運用資産-外部負債」:直近の決算でマイナス
- 法人の事業活動収支計算書の「経常収支差額」:直近3カ年の決算で連続マイナス
- 在籍する学生数:直近3カ年において連続で、各校の収容定員の8割を割る
4.高等教育無償化の内容について
高等教育無償化制度を利用する大学等の要件も、ナカナカ厳しいですね。
では、この無償化制度の内容について知りたいです・・・。
第4章では無償化制度の内容と、世帯年収別でどんな恩恵があるかを解説します。
4-1.授業料等減免制度の創設
授業料等減免制度とは、上限額を定めその範囲内で授業料が減免される措置です。下表を参考にしてください。
減免制度 | 大学 | 短期大学 | 高等専門学校 | 専門学校 |
国公立入学金 | 約28万円 | 約17万円 | 約8万円 | 約7万円 |
国公立授業料 | 約54万円 | 約39万円 | 約23万円 | 約17万円 |
私立入学金 | 約26万円 | 約25万円 | 約13万円 | 約16万円 |
私立授業料 | 約70万円 | 約62万円 | 約70万円 | 約59万円 |
表を見ると、国公立の入学金・授業料は省令で規定されている学校種ごとの標準額まで減免されます。つまり、国公立大学は授業料と入学金がほぼ全額免除されることになります。
一方、私立大学は約75%前後の授業料・入学金が免除されることになります。
4-2.給付型奨学金の支給の拡充
給付型奨学金の支給の拡充とは、奨学金の支給を修学費、課外活動費、通学費、食費(自宅外生に限定)、住居・光熱費(自宅外生に限定)、保健衛生費、通信費等その他日常費、授業料以外の学校納付金(私立学校生に限定)、大学等の受験料等まで対象を拡大する措置です。
そうはいっても、娯楽や嗜好費に奨学金が支給されないことは当然と言えます。
なお、自宅生は自宅から通学する学生、自宅外生は自宅を離れ寮やアパートで生活する学生のことです。
奨学金の支給 | 自宅生 | 自宅外生 |
国公立大学・短期大学・専門学校 | 約35万円 | 約80万円 |
私立大学・短期大学・専門学校 | 約46万円 | 約91万円 |
一方、高等専門学校生の場合は学生生活費の実態を考慮し、大学生の概ね5割~7割の奨学金の支給額となります。
4-3.世帯年収別でどんな恩恵が?
高等教育無償化制度は世帯年収が低いほど、その恩恵は大きくなります。
なお、減免額は世帯収入・高等教育施設によってそれぞれ異なってきます。下表を参考にしてください。
〇世帯年収別の入学金減免額
減免額 | 大学 | 短期大学 | 高等専門学校 | 専門学校 |
年収270万円未満 |
国公立:28万円 私立:26万円 |
国公立:17万円 私立:25万円 |
国公立:8万円 私立:13万円 |
国公立:7万円 私立:16万円 |
年収300万円未満 |
国公立:19万円 私立:17万円 |
国公立:11万円 私立:17万円 |
国公立:5万円 私立:9万円 |
国公立:5万円 私立:11万円 |
年収380万円未満 |
国公立:9万円 私立:9万円 |
国公立:6万円 私立:8万円 |
国公立:3万円 私立:4万円 |
国公立:2万円 私立:5万円 |
〇世帯年収別の授業料減免額
減免額 | 大学 | 短期大学 | 高等専門学校 | 専門学校 |
年収270万円未満 |
国公立:54万円 私立:70万円 |
国公立:39万円 私立:62万円 |
国公立:23万円 私立:70万円 |
国公立:17万円 私立:59万円 |
年収300万円未満 |
国公立:36万円 私立:47万円 |
国公立:26万円 私立:41万円 |
国公立:15万円 私立:41万円 |
国公立:11万円 私立:39万円 |
年収380万円未満 |
国公立:18万円 私立:23万円 |
国公立:13万円 私立:21万円 |
国公立:8万円 私立:23万円 |
国公立:6万円 私立:20万円 |
〇世帯年収別の給付型奨学金額
減免額 | 自宅生 | 自宅外生 |
年収270万円未満 |
国公立:35万円 私立:46万円 |
国公立:80万円 私立:91万円 |
年収300万円未満 |
国公立:23万円 私立:31万円 |
国公立:53万円 私立:61万円 |
年収380万円未満 |
国公立:12万円 私立:15万円 |
国公立:27万円 私立:30万円 |
5.高等教育無償化の注意点
私たち夫婦の世帯収入は正直潤沢といえません。でも、この制度を活用できるなら、生まれてくる我が子を大学まで進学させることができるかもしれませんね。
では、高等教育無償化制度に注意点はあるのでしょうか・・・・?
こちらでは、本制度のデメリット、この制度を利用できない場合の対策について解説します。
5-1.住民税非課税世帯等が恩恵を受けられるだけ?
これまで述べてきた通り、高等教育無償化制度の対象になるのは低所得世帯の方々が中心となります。
そのため本支援制度は、どんな世帯でも受けられる措置ではありません。この支援制度が満額適用される世帯は、住民税非課税世帯(およそ世帯年収270万円未満)の学生だけとなります。
一方、住民税非課税世帯に準ずる世帯と判断される、世帯年収300万円未満の学生は満額適用分の2/3、世帯年収300万~380万円未満の学生は満額適用分の1/3程度が適用されるにとどまります。
この世帯年収の基準は家族構成で大きく変化します。本制度利用の際はご自分の世帯員数を踏まえ、どれくらい金額の減免措置となるかを事前に確認する必要があります。
5-2.中間所得層は置いてけぼりか?
高等教育無償化制度の要件等から判断して、少なくとも世帯年収が概ね400万円以上となる方々は、この制度を利用することが非常に難しい状況です。
ただし、高等教育施設の学習費は低所得世帯層に限らず、中所得世帯層であっても重い負担となります。
〇大学の学習費はやはり高額
大学の学習費は主に次のような金額となります。
学習費には次のような費用が該当します。
- 授業料
- 修学費・課外活動費・通学費
- その他の学校納付金 等
大学 | 授業料等(1年間) | 4年間 |
国立 | 647,700円 | 2,590,800円 |
公立 | 666,300円 | 2,665,200円 |
私立 | 1,361,600円 | 5,446,400円 |
表の学習費に加え、初年度の入学金や、在学または卒業後の留学費用、子供が自宅外(アパートで一人暮らしする費用等)を想定する場合ならば、更に多くの費用が必要となります。
〇中所得世帯層への支援措置は検討中
政府も中所得世帯層への支援措置の必要性は認識しており、「骨太方針」の中でその支援策を今後検討すると明記しています。
そうはいっても、いつ中所得世帯層への支援措置が制度化されるか明らかではありません。
政府や行政の支援策頼みで子の進学を検討するのは、あまり賢明と言えません。
5-3.各世帯で教育資金は積み立てるべき!
中所得世帯層は前述した状況もあるため、配偶者の妊娠または出産前後には、教育資金の積み立てを行って将来に備えることが大切です。
その備えの一つとして第6章では学資保険を、第7章では低解約返戻金型保険を取り上げます。
いずれも、コツコツ長期にわたって保険料を積み立て、一定の期間が満了または解約した場合にお金が給付されます。
また、学資保険・低解約返戻金型保険は返戻率が高い(払い込んだ保険料よりも受け取るお金が多い)ことが特徴です。
双方とも、大学をはじめとした高等教育施設への進学に備えた保険として有効です。
6.学資保険について
確かに、世帯年収は子供が大きくなった後も一定とは限りません。政府の支援制度ばかりをあてにせず、自分の世帯で子供の進学費用は貯えていきたいものです。
では、学資保険という保険商品の特徴とその注意点を知りたいです・・・。
第6章では、学資保険とは何か?そのメリット・デメリットを解説します。
6-1.学資保険とは
学資保険とは、子供の将来の教育資金(特に大学進学)を賄う目的で積み立てる保険商品です。
子供の学習費等は、ケースによって1,000万円近くともなる可能性があり、できるだけ早い時期(可能ならば妊娠等が判明した時)に加入することが大切です。
学資保険で下りる保険金(学資金)は、子が一定の年齢になったら受け取れます。
基本的に保険加入者が受け取り時期を設定するわけですが、まとまった学資金が受け取れるだけではなく、入園や入学の度に「入学祝金」が受け取れるような設定も可能です。この入学祝金でランドセル代や入学金を賄うことが可能です。
また、学資金を一括だけではなく分割して学資年金として受け取る方法や、主契約に医療保障特約等を設定して子供の病気やケガにも備えられる等、柔軟な契約設定ができます。
6-2.貯蓄率は高い!
学資保険の最大のメリットはその返戻率の高さです。学資金として返ってくるお金はおよそ103%~110%となり、保険加入者へその分が利得となります。
一方、外貨建てで学資金を運用するならば、130%を超える返戻率も期待できます。ただし、外貨建ての場合は為替変動のリスクがあり、円安・円高の状況によっては元本割れ(つまり、払い込んだ保険料よりも受け取るお金が少ない)に陥るリスクがあります。
一方、子供がまだ小さいと病気やケガをしやすいので、医療保障も同時に備えたい場合もあるでしょう。
そんな時は、医療保障等を特約として設定可能な学資保険があります。ただし、医療保障を付加する分、毎月支払う保険料は高くなり、返戻率も若干下がってしまう傾向があります。
学資保険は教育資金の確保に特化した商品なので、やはり学資金の返戻率重視で保険契約を行うか、それとも、万が一のため子の医療保障も付帯するかは、ご夫婦で良く考えて判断することが大切です。
6-3.学資保険には注意点もある
学資保険へ加入する際に注意すべき点は、主に次の2つです。
(1)子供の加入年齢制限がある
学資保険を取り扱う保険会社では、概ね6歳未満(小学校入学前)が加入条件となっています。
保険会社の中には10歳程度でも加入可能な場合もあります。ただし、早めに学資保険へ加入すればするほど返戻率も高くなります。
出産前(妊娠6ヶ月)から加入可能な学資保険もあるので、保険加入はできるだけ早い方が有利となります。
(2)子供が進学しないことも
子供の教育資金に備えた学資保険ではありますが、子供が大学進学等を望むかどうかは最終的には子供自身の判断となります。
子供が進学に興味もなく、高校卒業と同時に就職し自立する場合も想定されます。
この場合でも学資金は下りますが、教育資金として活用する意味はなくなります。
また、学資金は子供が一定の年齢になれば必ず受け取ることとなるので、そのまま保険会社へ据え置いたままにすることもできません。
7.低解約返戻金型保険について
子供の進学は、最終的には子供自身が判断するべきことですね。ただし、教育資金は将来のため積み立てておくべきだと思います。
教育資金として積み立てておきながら、いざという時にも役立つ保険商品はないでしょうか・・・?
こちらでは、解約返戻金型保険の特徴と、そのメリット・デメリットを解説します。
7-1.低解約返戻金型保険とは
低解約返戻金型保険とは、保険料を支払っている期間中に解約すれば、返戻金が低くなってしまうものの、毎月の支払う保険料が割安となる生命保険(死亡保険)を指します。
ただし、払込保険期間中に保険加入者(被保険者)が亡くなれば、保険金受取人(遺族)へ、契約の際に設定していた通り死亡保険金が下ります。
そして、保険料払込期間が満了した後、返戻率が急激に上昇し、その際に解約すればお金がたくさん戻ることになります。
販売されている保険商品の内容や保障プランにもよりますが、払込満了後105~130%程度の解約返戻率が期待できます。
この解約返戻率とは、解約したとき支払った保険料に対し、受け取ることができるお金の割合を言います。
例えば1,000万円を保険料として支払ったとすると、返戻率130%の場合は1,300万円が受け取れることになります。つまり300万円分が保険加入者の利益になります。
低解約返戻金型保険は、一定期間または払込前に解約すれば大きく損をするものの、そのデメリットに注意して運用すれば、貯蓄性に優れた保険商品と評価できます。
7-2.実は非常に柔軟な保険
低解約返戻金型保険は、保険契約時に払込期間を調整すれば、この進学時期に合わせて、返戻率の急激な上昇を見込むことができます。
つまり、子供が進学を望む場合、学資保険でいう満期金として解約返戻金を得ることができるのです。
〇親が万が一の時も頼りになる
当然、保険加入者はご両親のいずれかとなるでしょうが、被保険者は学資保険のように子供ではなく、やはりご両親のいずれかとなります。
この場合、万が一被保険者である親が亡くなった場合でも、死亡保険金が遺族に下りるので(受取人は配偶者である場合が多いです。)、その保険金を利用し教育資金へ充てることも可能です。
〇子供が就職してもOK!
そして、学資保険へ加入した際に懸念される、子供が進学したせず就職したケースにも対応できます。
子供が就職を選んだ場合には、無理に保険を解約する必要はありません。そのまま保険金を据え置き、ご自分たちにまとまったお金が必要な時、中途、解約して使用しても構いません。
一方、ご夫婦の老後資金として活用することや、子供が結婚した時の結構式等の費用へ活用することもできます。
このように低解約返戻金型保険は、各ケースに応じた柔軟な備えとして有効な保険商品と言えます。
7-3.低解約返戻金型保険の注意点とは?
低解約返戻金型保険は、やはり保険料の払込期間中で解約すると保険加入者にとって、非常に不利なことがデメリットといえます。
保険契約して短期間で解約する場合は、解約返戻金は非常にわずかな金額しか得られません。
また、一定の期間が経ち保険料の払込期間中に解約する場合も、通常の生命保険(終身保険)で戻る返戻金額の、7割程度に抑えらてしまいます。
払込期間中に、まとまったお金が必要になった場合は、払い込んできた保険料と同額分は戻ることがないので注意しましょう。
また、本来の契約の目的が子供の教育資金として積み立てるためならば、その目的を忘却させるような利用は控えた方が賢明です。
8.まとめ
高等教育無償化制度はまだ開始されていない措置です。この制度を実施するにあたり、いろいろな問題や混乱が生じる事態も想定されます。
また、財源の状況によっては今後、制度の縮減も考えられます。決して、制度発足当初からの減免額がそのまま継続されるという保証はありません。
そのため、日ごろから各世帯で子供の教育資金を積み立て、子供の教育に支障の出ないような備えが求められます。
教育資金の積み立てのための保険を利用するならば、当然ご家族に不明な点や疑問点はあることでしょう。
その場合には、無料の保険相談サービスで質問をしたり、相談に乗ってもらったりすることができます。
保険相談サービスは、駅前やシッピングモール等に店舗を構えている業者もあれば、訪問で相談を受ける業者もいます。
何度相談しても無料で対応してくれるので、気軽に利用することができます。
このようなサービスも活用しつつ、ご家庭でよく教育資金のことを話し合い、学資保険等の備えを検討してみましょう。