事業用資産をご自身の会社でリースしたら、減価償却が可能なことをご存知でしょうか?
分割払いで物品等を購入するのと似ているリースの利用ですが、減価償却の期間やその方法は大きく異なります。
さらにリースで借りた資産は、どんなものであっても減価償却できるかといえば、そうではありません。
減価償却できるリース資産と言えるためには、いろいろな条件があり、それに合致する必要があります。
また、場合によっては通常の減価償却の算定方法で計算しなければならないこともあれば、リースの場合に限定した算定方法で計算しなければならないこともあります。
そこで今回は、リース資産を減価償却する場合の条件と、減価償却の算定方法を解説します。
この記事を読めば、リース資産の減価償却を行う際の基本的知識が得られることでしょう。
1.リースについて
会社を起業したばかりで経営も不安定ですが、会社の設備はしっかりと充実させたい。
そこで、事業にて使用するノートパソコン等はリース契約で揃える予定だとしましょう。
そこで、まずはリースについての基本的な部分のおさらいからしていきたいと思います。
リースとはそもそも何か?特徴と種類等について解説します。
1-1.リースとは
「リース」は「レンタル」と同じく“借りる”という意味です。一見、「呼び名が違うくらいで内容は全く同じ?」と思われるかもしれません。
しかし、つぎのような違いがあります。
〇リースとレンタル
リース契約とは基本的に借りる側の企業等が選択した機械設備(オフィス機器ならコピー機や複合機等)を、貸す側であるリース会社が購入し、借りたい企業に対してその物件を比較的長期に賃貸する取引を指します。
このリース契約をもとに取り入れた資産を「リース資産」と言います。
一方、レンタル契約とは、貸す側であるレンタル会社が、既に所持している物品(つまり、ほとんどが中古品に該当します。)を、借りる側が必要とする期間まで賃貸する取引を指します。
〇リースとレンタルの比較
リースとレンタルの違いをさらに説明すると、概ね下表のようになります。
項目 | リース | レンタル |
機種選定 | 基本的に借り手が希望する機種を選ぶ | 借り手は貸しての在庫から選ぶ |
契約期間 | 3年~10年程度 | 短期間(最短1日~) |
所有権 | リース会社 | レンタル会社 |
減価償却 | リース会社 | レンタル会社 |
損金処理 | 基本的にリース料全額 | レンタル料全額 |
中途解約 | 原則として不可 | 違約金の発生する場合もあるが原則として可能 |
月額料金 | レンタル料より割安、期間満了後の再リースは更に割安 | リース料より高く、賃貸期間が短くなれば更に割高 |
期間満了後 |
次のいずれか ・リース会社へ返却 ・再リース契約をして延長 ・借り手が取得できることも |
次のいずれか ・レンタル会社へ返却 ・延長レンタル
|
1-2.リースの種類について
リースの種類は大きく分けると2種類があります。
〇ファイナンスリース
リース契約を締結し、そのリース期間の途中で当該契約を解除することができない種類です。
借り手には、当該契約に基づいて使用するリース物件から経済的な利益を享受することができます。
一方、このリース物件の使用に伴って生じたコストは、実質的に借り手が負担することになります。
〇オペレーティング・リース
ファイナンス・リース以外のリースと言われていますが、一般的に、通常の賃貸借取引と同じような会計処理を行うリースのことです。
ファイナンスリースと比べてオペレーティング・リースは短い期間で契約をすることが可能です。さらに、借り手の都合に合ったリース期間を柔軟に設定することが可能。
借り手側は、リース会社がリース物件代として支払った全額を負担する必要はありません。
そのため、ファイナンスリースと比べ借り手は金銭的な負担が少なくてすみます。
例えば重機のような非常に高額な設備なら、オペレーティングリースを利用するのが賢いでしょう。
1-3.リース取引は売買になる?
政府は平成19年に税制改正を行い、平成20年4月1日から締結するリース取引は、「売買取引」として扱われるようになりました。
この改正後は、リース資産で減価償却が認められる場合の条件等をいろいろ考慮しながら、「所有権移転ファイナンス・リース取引」なのか、「所有権移転外ファイナンス・リース取引」なのか、それともオペレーティング・リースとして、通常の賃貸借取引と同じような会計処理を行うのかを決めることになります。
こちらに関しては、第4章以降で詳細を解説します。
2.リースのメリットと注意点
リースにも種類があって、特徴もそれぞれ違うことがわかりました。
では、リースのメリット・デメリットについて詳細を知りたいです。
こちらでは、リースの利点と注意点等について解説します。
2-1.リースのメリットとは
自社の業務に必要な機器等をリース契約で揃えた際、どのような点がメリットとして挙げられるのでしょうか?
主に次の3点があげられます。
〇少額のリース料で必要な機械設備を導入可能
一般的に機械設備を導入するならば、多額の初期費用が必要となってしまいます。
この初期費用とは、新しく機械・設備等を導入する際、それらが稼働するまでの間、必要となる費用のことです。
新しく導入する機械・設備(本体)の商品価格のほか、設計費用、技術開発費用、運搬費用、工事代金、設置費用等も初期費用に該当します。
そのため、初期費用は機械設備にもよりますが、非常に高額となる傾向があり、まだまだ経営の安定していない事業所には負担の重い買い物となります。
一方、機械設備をリース契約で導入すれば、毎月のリース料が少額で済みます。
ご自身の事業所から一度に多額の現金が出ていかないことから、自社の福利厚生費や運転資金に資金をまわすことが可能となります。
〇機械設備を替えやすい
自社で機械設備を購入すると、初期費用が重い負担になるほか、ある程度代金の返金が支払いが終わるまで、新しい機種に乗り換えにくくなると思います。
一方、機械設備をリース契約で導入すれば、耐用年数に合わせたリース期間を設定することで、新しい機械設備に簡単に入れ替えができますね。
〇リース料は全額経費にできる
自社で機械設備を購入した場合は、減価償却分のみが損金となります。
よって、購入代金を支払っているのですが全額経費にはできないこととなります。
損金は自社の収益から差し引けるので、法人税等の節税対策に有効となるのですが、全額経費にできないと大きな節税効果を得られないこともあります。
ですがリース契約で設備を揃えたとしたら、毎月のリース料が全額経費になるんです。
また、月額料金が固定されているため。ランニングコストを把握しやすいことも利点です。
なお、このランニングコストにはリース料をはじめ、機械の稼動が始まってから使い続けるために必要な光熱費、各種消耗品代、メンテナンス費用も含まれます。
2-2.リースのデメリットとは
リース契約をする場合、やはり良い面ばかりあるわけではありません。契約前に注意しておかなければいけない点もあります。
主に次の3点があげられます。
〇中途解約は原則不可
ファイナンス・リースの場合、税法上、リース期間中に中途解約は認められません。
それでも解約を希望するならば、残っている債務を一括で支払い強制的に契約満了する必要があります。
ただし、多くの会社ではそこまでして中途解約するメリットもないため、このような強制的な手段はあまり行われません。
〇機械設備の所有権は無い
設備機械の所有権はリース会社にあると説明したとおり、リース期間終了後にリースしている設備機械を引き続き使用したい場合、再リース料が発生することになります。
〇リース料が割高になることも
自社経営が安定していないうちは、リース契約で機械設備を導入することは負担軽減につながります。
ただしリース料には、リース会社の
- 税金
- 保険料
- 手数料
- 金利
などが含まれています。
よって、支払い総額が割高になり、長期間契約を継続すれば結局、重い負担となることも考えられます。
そのため、契約前に十分自社の経営状態を考慮して、自社に合った機械設備を導入する必要があります。
2-3.リースの管理は要注意
リース資産に関しては、社内ルールを明確に定めリース契約書およびリース資産を適切に管理しましょう。
〇リース資産の情報を保存し、社内で共有する
リース資産は使うだけ使って放置するなどもってのほかで、適切な会計処理を行っていかなければなりません。
そのため次のような工夫を行いましょう。
(1)リース契約書の管理の明確化
こちらが紛失すれば、どんな機械設備をリースしたのか、リース料やリース期間等、様々な情報を失うことになります。
この管理に関して社内規則で明記し、例えば「法務部が全ての契約書を一括管理・保存する」、「リース契約を行った部署が責任をもって管理する」と定め、どの部署に契約書を保管するのかを定めることが賢明です。
(2)管理台帳を作成する
リース資産に関する管理台帳を作成することも大切です。この台帳に①資産名称、②利用部署、③リース契約番号、③リース物件番号、④再リース番号などを詳しく記載すると、リース資産の情報が非常にわかりやすくなります。
加えて、「リース契約満了日」と「リース契約の更新回答日」を記載すれば、リース契約の満了が近づいても、余裕を持って再リースの検討ができることでしょう。
(3)リース資産(本体)にも一工夫
一工夫とはいっても、リースした機械設備に大改造を加えるわけではありません。
リース資産の名称や利用部署等の情報を明記した管理ラベルを、リースした機械設備へ貼付しておけば、その機械設備の基本的な情報を把握できます。
〇適切な管理をしないと、とんでもないことに
前述したリース資産への管理を怠ってしまうと、次のようなトラブルが発生してしまうリスクがあります。
(1)契約確認ミスで損失が
管理台帳を作成等を怠ると、リース期限がいつかわからなくなり、契約終了予定の機材等の把握も難しくなるリスクがあります。
その結果、使用していない機械設備へリース費用を支払い続けていたというような、自社にとって思わぬ損失が発生するおそれもあります。
期限管理の他にも、各部署へ再契約の可否確認も滞ることになるので、情報の保管はきちんと行いましょう。
(2)リース資産を売ってしまった!
自社でリース資産を多用することになると、自社が本来所有していた資産とリース資産の区別は難しくなることもあります。
その場合には、前述した管理ラベルをリースした機械設備へ貼付しておけばわかりやすいのですが、その措置を行っていないと、自社の所有資産と認識し誤った経理処理・仕訳を行うリスクがあります。
また、リースした機械設備を第三者に転売したり、不要物として廃棄したりすれば、自社での経理処理の訂正どころか、リース会社とのトラブルへ発展することにつながります。
3.減価償却とは?
リース資産は、その活用を大いに期待できますが、それと同じくしっかりとした管理も必要ですね。
また、リース資産の仕訳・会計処理も正確に行う必要があるでしょう。
まずは会計処理を行う際の「減価償却」について、おさらいしたいです・・・・。
こちらでは、減価償却とは何か?その算定方法等について解説します。
3-1.減価償却とは
減価償却は、各事業所で長期間にわたり使用される、固定資産(機械、社用車、パソコン等)の取得に要した支出を、その資産が使用できる期間まで費用を配分する方法です。
何故、減価償却という手続きを行うかというと、次のような理由があげられます。
例えば、ある会社が7億円の高層ビルを建設したとしましょう。
初年度にいきなり7億円を建設費用として計上した場合、その会社は7億円の赤字となります。
しかし、フロアを借りたい事業者がどんどん現れ、2年目以降になったら莫大な賃料収入を得ることが期待できるでしょう。
ビルを建設した会社は去年の巨額の赤字から、一挙に大幅な黒字となってしまいます。
このようなケースだと、高層ビルを建設した会社の正確な収益・費用を把握することはとても困難です。
そこで、ビルの建設費用に関して、毎年少しずつ配分して費用に計上する方法が考案されたのです。
3-2.直接法と間接法
では、減価償却の処理について、帳簿上どのように行うのでしょうか?処理方法としては「直接法」と「間接法」の2種類があります。
減価償却を行う場合は、直接法・間接法の両方のやり方が認められています。
〇直接法の場合
この方法は、ご自分の事業所の固定資産から減価償却費をそのまま差し引きます。次の事例をあげて仕訳してみます。
(例)
- 事務所用建物:鉄骨鉄筋コンクリート造
- 耐用年数:50年
- 建築費用:4,500万円
- 減価償却費:90万円
借方 | 貸方 |
減価償却費 900,000 | 建物 900,000 |
〇間接法の場合
この方法は、「減価償却累計額」という勘定科目を使い仕訳をします。前述した例で仕訳すれば次のようになります。
借方 | 貸方 |
減価償却費 900,000 | 減価償却累計額 900,000 |
3-3.定額法と定率法
減価償却の計算方法で主に使用されているものとして「定額法」と「定率法」があげられます。
〇定額法の場合
定額法は、毎年同じ金額を費用としてコツコツ計上するやり方です。なお、建物はこの定額法のみでしか計上できません。
定額法による減価償却費の計算方法は次の通りです。
取得原価×定額法の償却率×使用月数/12ヶ月=減価償却費
〇定率法の場合
定率法は、当初の減価償却費に関して多く計上されますが、年々、費用として計上する金額が徐々に減少していく方法です。
建物以外の機械設備、パソコン等をはじめとした減価償却資産は、定額法または定率法のいずれかを選んで計算できます。
定率法による減価償却費の計算方法は次の通りです。
(取得原価-減価償却累計額)×定率法の償却率×使用月数/12ヶ月=減価償却費
4.リース資産の減価償却その1
減価償却資産の帳簿上の処理および計算方法はわかりました。
でも、リース資産はすべて減価償却する必要があるのでしょうか?
・・・実は、リース資産を減価償却するにはいろいろな条件が存在します。
こちらでは、リース資産で減価償却が認められる場合を説明します。
4-1.リース資産で減価償却が認められる場合とは
自社で使用しているリース資産を減価償却するかどうかの判断基準は、次のように各段階へ分けて決定されていくことになります。
[1]解約不能およびフルペイアウトの判定
(要件①)リース契約が基本的に解約でないものであること、(要件②)リース料総額が次の場合に該当するかどうかで、まず判定されます。
- 現在価値基準(90%基準):リース料総額の現在価値≧見積現金購入価額×90%
- 経済的耐用年数基準(75%基準):解約不能リース期間≧経済的耐用年数×75%
次のいずれかの基準に該当すれば、(要件②)に該当することとなります。
- (要件①)+(要件②)に該当→[2]所有権移転の判定へ
- 非該当→オペレーティング・リースに該当し、通常の賃貸借取引と同じような会計処理を行う
[2]所有権移転の判定
- 譲渡条件付リース
- 行使が確実に想定される割安購入選択権付リース
- 特別仕様物件リース
上記のリースいずれかに該当する場合には、所有権移転ファイナンス・リースに該当し売買処理を行います。
一方、上記のリースいずれにも非該当→所有権移転外ファイナンス・リースに[3]少額契約等の判定へ
[3]少額契約等の判定
- 重要性が高いといえない減価償却資産を対象としたリース契約
- リース期間が1年以内
- 事業内容からみて重要性の乏しいリース契約で、1件当たりのリース料総額300万円以下
上記のいずれかに該当する場合、賃貸借処理を行い減価償却はしません。
一方、上記のいずれにも非該当→所有権外移転ファイナンス・リースに該当し[4]中小企業会計指針の適用判定へ
[4]中小企業会計指針の適用判定
- 金融商品取引法適用会社およびその子会社・関連会社
- 会計監査人設置会社およびその子会社(資本金5億円以上の場合等)
上記のいずれかに該当する場合、売買処理に準じた処理を行います。
一方、上記のいずれにも非該当→賃貸借処理を行います。
4-2.解約不能とフルペイアウト
解約不能およびフルペイアウトの判定は、リースの契約がファイナンスリース取引にあたるかどうか判断します。
ファイナンスリース取引に該当するこの2要件を、もう少し詳しく説明すると次のようになります。
〇解約不能
「ノンキャンセラブル」とも呼びます。①解約のできない内容で契約したか、②解約が絶対不可能とはいえなくても、リース契約を解約する際、相当の違約金を支払わなければならない等で、事実上、解約不能と認められるリース取引が該当します。
〇フルペイアウト
フルペイアウトとは、契約したリース物件をご自分の事業所で所有した場合、得られると期待される経済的利益を享受することができ、当該リース物件の取得価額相当額、その維持管理等の費用、陳腐化による損耗のリスク等のほぼすべてのコストの負担を言います。
〇具体的判定基準
前述したように、「現在価値基準」または「経済的耐用年数基準」では次に該当した場合が、ファイナンス・リースに該当します。
現在価値基準→リース料総額の現在価値≧見積現金購入価額×90%
経済的耐用年数基準→解約不能リース期間≧経済的耐用年数×75%
4-3.所有権移転の判定の基準とは
所有権移転の判定は次のリース契約の際、次のいずれかの条件が付与されていれば、所有権移転ファイナンス・リース(後述します。)に該当します。
〇譲渡条件付リース
リース契約に所有権移転条項が明記されている内容の場合です。所有権移転条項とは、例えばリース会社から借りている機械設備が、最終的に借り手であるご自分の事業所の所有になるという内容です。
〇行使が確実に想定される割安購入選択権付リース
例えば、自分の事業所でリースしている機械設備が重要な物であり、リース期間は一般的なファイナンス・リースとして支払っていくものの、満了時には割安な売買代金を支払い、事業所の所有とすることです。
〇特別仕様物件リース
リース物件が、借り手であるご自分の事業所の用途等にあわせて製作され、返却された後、第三者へ再リースしたり売却したりすることが困難な場合の契約が該当します。
4-4.少額契約等の判定と中小企業会計指針の適用判定
この2つの判定に関しては、次のような基準で減価償却するのかどうかが判断されます。
〇少額契約等の判定
少額契約等の判定に関しては、いわゆる「小口のリース」に減価償却を認める必要がないことがあげられます。
リース期間が1年以内であったり、リース料総額が300万円以下の低い金額であったりしたならば、勘定科目「賃借料」として処理すれば足りるからです。
〇中小企業会計指針の適用判定
この適用判定には前述したように「金融商品取引法適用会社」と「会計監査人設置会社」に該当する法人が対象となります。
この2つの会社いずれかに該当すれば売買処理に準じた処理を行います。
- 金融商品取引法適用会社:金融商品取引業、金融商品仲介業、証券金融会社等、金融商品取引法が適用される会社を指します。
- 会計監査人設置会社:株式会社における機関の一つとして、会社の計算書類等の会計監査をすることが主な職務・権限となっている「会計監査人」を置いている会社を指します。
5.リース資産の減価償却その2
ファイナンス・リース取引となる場合は、リース資産を売買契約として処理することが必要なようですね。
ケースによって所有権移転ファイナンス・リース取引、所有権移転外ファイナンス・リース取引に分かれていますが、前者の取引について詳細を知りたいです・・・。
こちらでは、所有権移転ファイナンス・リース取引における減価償却費の算定等を解説します。
5-1.所有権移転ファイナンス・リース取引ってなに?
所有権移転ファイナンス・リース取引というのは、ファイナンス・リース取引のうち、リース契約上、第4章で取り上げた条件に照らし、リース物件の所有権が借り手に移転すると認められる取引を指します。
この取引にかかるリース資産の減価償却費用は、ご自分の事業所の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法で算定します。
算定の場合の耐用年数は、「経済的使用可能予測期間」となります。
5-2.仕訳・会計処理はこうする
所有権移転ファイナンス・リース取引の借り手(ご自分の事業所)の仕訳・会計処理は以下の手順で行います。
[1]リース取引の開始
通常の売買取引法に沿って、会計処理を行っていきます。
借方 | 貸方 |
リース資産 〇〇〇〇(円) | リース債務 〇〇〇〇(円) |
⇓
[2]リース料支払時
借り手がリース料を支払った際、取引開始時に計上したリース債務を減額して処理していきます。
支払ったリース料については、その債務の元本相当額の返済部分に加え利息分も含むことになります。
借方 | 貸方 |
リース債務 〇〇〇〇(円) 支払利息 〇〇〇〇(円) |
普通預金 〇〇〇〇(円) |
⇓
[3]決算時
リース取引開始時に資産計上しているので、決算時は減価償却費の計上が必要です。
借方 | 貸方 |
減価償却費 〇〇〇〇(円) | 減価償却累計額 〇〇〇〇(円) |
5-3.減価償却費の算定
こちらでは、事例を上げて減価償却費を算定します。
(例)
- リース契約:所有権移転ファイナンス・リース取引
- リース契約時資産計上額:7万円
- リース期間:5年
- リース物件経済的耐用年数:6年
- 減価償却方法:定額法(残存価額10%)
- リース取引開始日:2018年4月1日
事例の事業所で2019年3月31日に計上する減価償却費は次の通りになります。
70,000円(リース資産取得原価)×0.9/6年(経済的耐用年数)=10,500円
リース資産の減価償却費は10,500円となります。
6.リース資産の減価償却その3
ファイナンス・リース取引で、もう一方の所有権移転外ファイナンス・リース取引はどのように減価償却費の算定するのでしょうか?
所有権移転外の場合についても詳細を知りたいです・・・。
こちらでは、所有権移転外ファイナンス・リース取引における減価償却費の算定等を解説します。
6-1.所有権移転外ファイナンス・リース取引とは
所有権移転外ファイナンス・リース取引というのは、
リース物件の所有権が借り手に移転すると認められる取引以外の取引のこと。
この取引にかかるリース資産の減価償却費用は、原則として、リース期間を耐用年数とし残存価額をゼロとして算定することになります。
一方、契約内容に「残価保証」に関する契約がある場合、当該残価保証額を残存価額として割り出すことになります。
なお残価保証とは、所有権移転外ファイナンス・リース取引で、リース期間が終了する時、当該リース物件の処分費が契約で決めた保証価額に満たないとき、借り手に対して課せられる、その不足額補填義務を言います。
6-2.リース期間定額法とは
所有権移転外ファイナンス・リース取引で、減価償却費の算定する場合は、「リース期間定額法」で計算することになります。
リース期間定額法とは、リース資産の取得価額を、リース資産のリース期間の月数で除して計算した金額に、当該事業年度におけるリース期間月数を乗じて計算した金額を、各事業年度の償却限度額として処理する方法を言います。
計算式は次の通りです。
リース資産取得価額/全リース期間月数×当期リース期間月数
なおリース資産の取得価額に、残価保証額ほどの金額が含まれている場合、その取得価額から当該残価保証額を差し引く必要があります。
6-3.減価償却費の算定
こちらでは、事例を上げて減価償却費を算定します。
(例)
- リース契約:所有権移転外ファイナンス・リース取引
- リース資産取得価額:90,000円
- 取得は前期期首で、リース期間:5年
- 残価保証に関する取り決め:無し
当期のリース期間定額法による減価償却費を割り出してみると、次の通りになります。
①全リース期間月数:12月×5年=60月
②当期リース月数:12月
→90,000円(リース資産取得価額)/60月×12月=18,000円
リース資産の減価償却費は18,000円となります。
7.まとめ
ファイナンス・リース取引であっても、所有権移転外ファイナンス・リース取引と所有権移転ファイナンス・リース取引では、それぞれ減価償却費の計算方法が違います。
いずれかの取引に分かれる条件等を確認しながら、正確な計算を行いましょう。