毎月コツコツ納めていた保険の支払保険料、いよいよ満期になりまとまった保険金が受け取れることに大喜びのあなた・・・・しかし、現実はそう甘くありません。
ご自分がコツコツ納めてきたにもかかわらず、場合によっては税金を支払う必要がでくるときもあるのです。
また、この下りる満期保険金は、保険契約者、被保険者、保険金受取人が誰かによって、かかる税金の種類、税金を納める条件も代わる場合があります。
更に、ご自分が自営業者・自由業者か、それとも給与所得者かで、税金の申告方法は変わります。
日本国民には「納税の義務」がある以上、課税される場合にはしっかりと税務署へ申告する必要があります。
満期保険金が下りる状態になった時、税金がどうなるか?申告はどうすれば良いのか?で慌てる前に、税金の計算方法や申告方法を確認しておきましょう。
こちらでは、下りる満期保険金の課税条件と計算方法、そして税金の申告方法について解説していきます。
目次
1.満期保険金について
- 1-1.満期保険金とは
- 1-2.養老保険とは
- 1-3.学資保険とは
- 1-4.満期保険金受取りまでの流れ
2.満期保険金にかかる税金・その1
- 2-1.一時所得とは
- 2-2.一時所得となる条件
- 2-3.一時所得の計算方法
3.満期保険金にかかる税金・その2
- 3-1.雑所得とは
- 3-2.雑所得となる条件
- 3-3.雑所得の計算方法
4.満期保険金にかかる税金・その3
- 4-1.源泉分離課税とは
- 4-2.源泉分離課税となる条件
- 4-3.源泉分離課税の計算方法
5.満期保険金にかかる税金・その4
- 5-1.贈与税とは
- 5-2.贈与税となる条件
- 5-3.贈与税の計算方法
6.満期保険金を申告する方法その1
- 6-1.確定申告とは
- 6-2.確定申告の必要書類
- 6-3.確定申告の注意点
7.満期保険金を申告する方法その2
- 7-1.年末調整とは
- 7-2.申告する場合の必要書類
- 7-2.申告する場合の注意点
8.まとめ
目次
1.満期保険金について
どうやら来年には私のもとへ待ちに待った満期保険金が下りるようだ。
まとまったお金になるようでうれしいが、ここで満期保険金の内容についておさらいしておきたい。
こちらでは、満期保険金の特徴と受取りまでの流れを解説します。
1-1.満期保険金とは
満期保険金とは、保険契約で設定した被保険者が満期時まで生存していた場合に受け取ることのできる保険金を言います。
この保険金が受け取れる保険商品は、養老保険・学資保険等の貯蓄性のある保険です。
この「満期」とは、保険契約によって設定された保険期間満了時のことを言います。
例えば、あなたが60歳満期の場合、60歳の契約応答日(保険期間中に迎える契約日に対応する日を指します。)の前日で保障が切れることになります。
また、満期に関するお金として「満期返戻金」というものもあります。
この満期返戻金は、保険会社から保険金が支払われる事態が発生しないまま、保険の解約や保険の満期を迎えた場合、保険契約者側に返されるお金のことを指します。
1-2.養老保険とは
生命保険のうち一定の保障期間を定め、保険契約で設定した満期時に、ご自分が設定した死亡保険金と同額の満期保険金が受け取れる商品を言います。
主に老後の資金確保のため活用される保険商品と言えます。
この養老保険は、保険会社が満期時に必ず保険金を支払う必要のあることから、保険契約者が支払う保険料の金額には保障に関する部分と、満期保険金支払いのための貯蓄(積立)部分が含まれます。
そのため、養老保険の支払保険料は終身保険・定期保険よりも高額になります。
1-3.学資保険とは
学資保険とは、子の将来の教育資金を賄うために保険契約を行う商品です。
この幼稚園(保育園)入園から大学・短大進学までの、学習費として活用できます。
学資保険は、子の出生前または新生児の段階で保険契約を締結することが多いです。ただし、保険会社によっては子が7歳くらいでも加入できる保険商品も販売されています。
契約時に「満期学資金」として一括受け取りを設定することもできれば、「学資年金」として例えば大学4年間に分割して受け取る設定をすることもできます。
1-4.満期保険金受取りまでの流れ
満期保険金を受け取る手順は概ね次の通りです。ただし、保険会社により請求方法が異なる場合もあるので、一度保険会社のカスタマーセンターへ確認してみましょう。
- 満期保険金請求書到着:ご自宅へ満期保険金支払い予定日の前々月(上旬ごろ)に請求書が送付されます。
- 必要者類へ記載・収集:満期保険金請求書の内容を確認し、必要事項を記載の上、添付書類(保険証券、運転免許証またはパスポート等の本人確認書類の写し)を準備します。
- 請求書・添付書類の提出:保険会社に郵送します。
- 満期保険金の受取:提出された書類に問題が無ければ、保障満了日の翌営業日または翌々営業日に、ご自分の指定口座へお金が振込まれます。
2.満期保険金にかかる税金・その1
満期保険金の受け取りは待ち遠しいが、やはり気になるのは税金がかかってしまうかどうかだ。
満期保険を受け取った場合、どんな税金がかかるのだろう?お金を受け取った後に手続きに慌てないよう、税金について把握しておきたい・・・・・。
こちらでは、一時所得の特徴、その条件・計算方法について解説します。
2-1.一時所得とは
一時所得とは、営利を目的とした継続的行為から生じる所得以外の所得で、労務や役務の対価としての性質や、資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時的な所得にかかる税金を言います。
一時所得には次のようなものがあります。
- 懸賞や商店街等の福引きの賞金品
- 競馬や競輪で得た払戻金
- 生命保険の満期保険金等の一時金や損害保険の満期返戻金等
- 法人から贈与された金品(業務や継続的に取得するものを除く)
- 遺失物を拾得した人や埋蔵物を発見した人が受ける報労金等
満期保険金は前記した「3.」に該当します。
保険契約者が保険料を支払い、その後、学資保険ならば満期学資金を保険契約者(保護者)自身が受け取る場合、養老保険ならば契約したご自分が受け取る場合に満期保険金(返戻金)へ課税される所得税の一種です。
ただし、満期保険金を受け取れば必ず課税されると言うわけでは無く、一時所得として課税される場合には条件があります。次項でこの条件を説明します。
2-2.一時所得となる条件
一時所得は、実際に受け取ったお金と払込んできた保険料の差額が50万円を超えたときにしか課税されません。
つまり、返戻率が150%を超える高利率の場合でないと一時所得として課税されないことになります。
例えば、学資保険または養老保険の返戻率(支払保険料と戻るお金の割合)が160%で、支払った保険料の総額が100万円であった場合、受け取る保険金の総額160万円の内、差額50万円を超える10万円分の金額が、一時所得として課税対象になります。
実際のところ返戻率が150%を超える保険商品はほんどありません。現在では各生命保険会社の返戻率の低さから、一時所得として課税対象になることはまずありません。
2-3.一時所得の計算方法
こちらでは一時所得の計算式と事例をあげて説明します。
○一時所得の計算式
一時所得の計算式は次の通りです。
(受け取った満期保険金総額[所得金額]-支払った保険料総額[必要経費]-50万円[特別控除])×1/2=税金
○一時所得の事例
事例をあげて計算すると次のようになります。
【事例1】税金額がマイナスのケース
- 支払保険料(月払い):18,000円(18年間支払)
- 保険金受取総額:400万円
①まず支払保険料総額を算出します。
18,000円(月払い保険料)×12ヶ月×18年=388万8,000円(支払保険料総額)
②次に一時所得の計算式へあてはめます。
(400万円-388万8,000円-50万円)×1/2=-19万4,000円
計算すると税金額がマイナスになるため一時所得は課税されません。
【事例2】税金額がプラスのケース
- 支払保険料(月払い):14,000円(18年間支払)
- 保険金受取総額:400万円
①まず支払保険料総額を算出します。
14,000円(月払い保険料)×12ヶ月×18年=302万4,000円(支払保険料総額)
②次に一時所得の計算式へあてはめます。
(400万円-302万4,000円-50万円)×1/2=23万8,000円
計算すると税金額がプラスになるため一時所得は課税されます。
3.満期保険金にかかる税金・その2
一括で満期保険金を受け取る場合の一時所得では、そんなに課税される心配がないことはわかった。
しかし、学資保険は学資年金という形でもらう場合もあるはず、このような場合にはどんな税金がかかるのだろう?
こちらでは、雑所得の特徴、その条件・計算方法について解説します。
3-1.雑所得とは
満期保険金は一括で受け取るばかりではなく、分割して受け取る方法もあります。
所得税ではありますが、項目の分類は一時所得ではなく「雑所得」に該当します。
雑所得には、満期保険金を分割で受け取る場合の他、公的年金等、非営業用貸金の利子、著述家や作家以外の方々が受ける原稿料や印税、講演料や放送謝金等が当てはまります。
雑所得は一時所得と同様に、加入契約者が保険料を支払い、契約したご自分が受け取る場合に課税される所得税の一種です。
ただし、保険金を分割して受け取る方法にした場合、一時所得と同じ計算式になるのかと言えばそうではありません。
この雑所得は一時所得の課税額と比較して、課税対象となる可能性が高くなります。この雑所得については次項で説明します。
3-2.雑所得となる条件
満期保険金を分割した1回分の金額よりもマイナスになれば課税されませんが、一時所得のように特別控除(50万円)が設定されていない分、課税される可能性は高くなります。
そのため、学資保険の場合は契約した保護者であるご自分が分割で受け取る形にするよりは、まず満期学資金を一括でご自分が受け取り、ご自分から分割して少しずつ子に学資金を渡す方法が節税になります。
ただし、この場合でも1年間に110万円を超えてしまうと、今度は贈与税がかかってしまうので、渡す金額には十分注意しましょう。
3-3.雑所得の計算方法
こちらでは雑所得の計算式と事例をあげて説明します。
○雑所得の計算式
雑所得の計算式は次の通りです。
1回分の保険金-(1回分の保険金×支払保険料総額÷保険金総額)=税金
○雑所得の事例
事例をあげて計算すると次のようになります。
【事例1】税金額がマイナスのケース
- 支払保険料(月払い):20,000円(18年間支払)
- 保険金受取総額:400万円
- 満期保険金を5分割:80万円
①まず支払保険料総額を算出します。
20,000円(月払い保険料)×12ヶ月×18年=432万円(支払保険料総額)
②次に雑所得の計算式へあてはめます。
80万円-(80万円×432万円÷400万円)=-6万4,000円
計算すると税金額がマイナスになるため雑所得は課税されません。
【事例2】税金額がプラスのケース
- 支払保険料(月払い):15,000円(18年間支払)
- 保険金受取総額:400万円
- 満期保険金を5分割:80万円
①まず支払保険料総額を算出します。
15,000円(月払い保険料)×12ヶ月×18年=324万円(支払保険料総額)
②次に雑所得の計算式へあてはめます。
80万円-(80万円×324万円÷400万円)=15万2,000円
計算すると税金額がプラスになるため雑所得は課税されます。
4.満期保険金にかかる税金・その3
養老保険では、聞いたところによると「源泉分離課税」のかかる場合があると聞いた。
この源泉分離課税についての詳細を知りたい・・・・。
こちらでは、源泉分離課税の特徴、その条件・計算方法について解説します。
4-1.源泉分離課税とは
源泉分離課税は、他の所得と全く分離して、所得を支払う人がその所得の支払う際に、一定の税率で所得税を源泉徴収するだけで所得税の納税が完結するという課税制度です。
源泉分離課税の対象となるのは、主に次の所得となります。
- 総合課税または申告分離課税の対象となるものを除いた利子所得に該当する利子等
- 私募(有価証券の取得勧誘のうち、募集に該当しないものを指します。)の特定目的信託のうちで、社債的受益権の収益の分配に係る配当
- 私募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る配当
- 懸賞金付預貯金(預金をすると抽選で懸賞金がもらえる商品のことです。)等の懸賞金等
- 定期積金の給付補てん金や、貴金属などの売戻し条件付売買の利益等の金融類似商品の補てん金等
- 一定の割引債の償還差益(債券の買付価格よりも償還金額の方が高かった場合の差額収益を言います。)
4-2.源泉分離課税となる条件
養老保険の中で保険期間が5年満期の「一時払養老保険」は、前述した源泉分離課税の対象となる「5.」の金融類似商品に該当します。
なお、一時払とは保険契約締結時全ての保険期間に対する支払保険料を、一時に全額払い込むことをいいます。
5年満期の一時払養老保険では、源泉分離課税が適用されるので、お金が支払われる時点で所得税分が指し引かれ、確定申告は不要となります。
また、保険期間が5年を超える養老保険でも、保険契約から5年以内に解約したならば、やはり金融類似商品と同じ取り扱いになります。
4-3.源泉分離課税の計算方法
こちらでは源泉分離課税の計算式と事例をあげて説明します。
○源泉分離課税の計算式
源泉分離課税の計算式は次の通りです。
(受け取った満期保険金総額[所得金額]-一時払い保険料総額[必要経費])×20.315%=税金
なお、20.315%の内訳は(所得税:15.315%、住民税:5%)となります。
○源泉分離課税の事例
事例をあげて計算すると次のようになります。
【事例】
- 支払保険料(一時払い):360万円
- 保険金受取総額:400万円
①まず源泉分離課税の計算式へあてはめます。
(400万円-360万円)×20.315%=8万1260円
②次に満期保険金総額から差し引きます。
400万円-8万1260円=391万8,740円
計算すると391万8,740円を満期保険金として受け取ることになります。
5.満期保険金にかかる税金・その4
これまでみてきたのは、自分で保険契約し保険料を支払い、保険金を自分で受け取ったケースだが、受取人を私以外の家族にしていたらどうなるのだろう?
この場合に納める税金についても詳しく知りたい・・・。
こちらでは、贈与税の特徴、その条件・計算方法について解説します。
5-1.贈与税とは
例えば学資保険の場合には、毎月保険料を支払っていた保護者(契約者)が、子の大学進学時に満期学資金を受け取れるよう受取人を子に設定した場合、子はまとまったお金を一括で受け取ることができます。
子はまとまったお金を受け取ることができて大喜びするでしょうが、やはりこの場合も課税の対象になることがあります。
つまり、親から子へ満期学資金を贈与したことになり、「贈与税」が発生します。贈与税は一括でまとまったお金を受け取る場合、非常に不利な税金といえます。
贈与税とは、個人から財産を贈与されたときに対象となる税金です。
保険料を負担していない子が学資保険の学資金を受け取った場合の他、債務の免除などにより利益を受けた場合等は、贈与を受けたとみなされます。
なお、贈与税の対象になるのは受け取る保険金の他、贈与された1年間の利益分全てです。
5-2.贈与税となる条件
贈与税には基礎控除として110万円があり、贈与額からこの110万円を差し引いた上で、残額を下表に当てはめて計算します。
受取人が20歳未満か20歳以上かで贈与税の税率・控除額が異なります。
○受取人が20歳未満の場合(一般贈与)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
200万円超~300万円 | 15% | 10万円 |
300万円超~400万円 | 20% | 25万円 |
400万円超~600万円 | 30% | 65万円 |
600万円超~1,000万円 | 40% | 125万円 |
1,000万超~1,500万円 | 45% | 175万円 |
1,500万円超~3,000万円 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
○受取人が20歳以上の場合(特別贈与)
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
200万円超~400万円 | 15% | 10万円 |
400万円超~600万円 | 20% | 30万円 |
600万円超~1,000万円 | 30% | 90万円 |
1,000万超~1,500万円 | 40% | 190万円 |
1,500万円超~3,000万円 | 45% | 265万円 |
3,000万円超~4,500万円 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
5-3.贈与税の計算方法
こちらでは贈与税の計算式と事例をあげて説明します。
○贈与税の計算式
贈与税の計算式は次の通りです。
(受け取った満期保険金総額[所得金額]-110万円[基礎控除])×税率-控除額=税金
なお、税率や控除額は前述した表を参考にすることになります。
○贈与税の事例
事例をあげて計算すると次のようになります。
【事例】
- 贈与税(1年間):贈与分は満期保険金のみ
- 受取人:22歳
- 保険金受取総額:400万円
受取人は20歳以上なので前記した表の通り「特別贈与」になります。
(400万円-110万円)×15%-10万円=33万5,000円
計算すると33万5,000円が課税対象となります。
そのため、税金がかからないようにするには、保険金の受取指定をご自分以外の受取人とする場合、保険金+その他の贈与額が1年間で110万円を超えずに分割して受け取れるよう、事前に調整しておくことが大切です。
6.満期保険金を申告する方法その1
満期保険金を申告する方法は、やはり確定申告しか方法はないのだろうか?
私は給与所得者だが、確定申告する場合を想定し申告方法を是非知りたい・・。
こちらでは、確定申告の方法、必要書類、注意点を説明します。
6-1.確定申告とは
確定申告とは、主に個人事業主を対象として1月1日~12月31日までの会計結果を、翌年の2月16日~3月15日に税務署へ申告することを言います。
この確定申告を毎年行うことが必要な人(例えば自営業者・自由業者)は、満期保険金の金額の大小にかかわらず、確定申告時にご自分が受け取った満期保険金を申告しなければなりません。
とはいっても、毎年確定申告をしている方々ならば、記載内容で特段不明な点もなく、例年通り収益や経費を記載し、それに満期保険金を加えれば問題は無いと思います。
確定申告の提出の際は、保険会社から満期保険金に関しての「満期金の受取通知書」や「満期金の支払明細書」の添付が必要となります。
6-2.確定申告の必要書類
確定申告の際に必要な書類は次の通りです。
[1]確定申告書個人事業主の場合は「確定申告書B」となります。税務署窓口や税務署のホームページで取得できます。
[2]満期金の受取通知書・満期金の支払明細書保険会社から取得します。
[3]源泉徴収票給与所得者の方・前年に給与所得者だった方は必ず添付します。
[4]本人確認書類①マイナンバーカード(個人番号カード)を持っている場合:マイナンバーカード(個人番号カード)の表面・裏面のコピーを添付
②マイナンバーカード(個人番号カード)を持っていない場合
- 個人番号通知のコピー、住民票(マイナンバー記載有り)、住民票記載事項証明書(マイナンバー記載有り)のいずれか
- 運転免許証、パスポート、在留カード等のいずれか
「1」+「2」が必要です。
[5]印鑑6-3.確定申告の注意点
個人事業主は、受け取った満期保険金がたとえ課税対象とならない場合であっても正直に申告する必要があります。
また、保険料を支払った人と保険金を受け取った人が違うならば、1年間で110万円を超える満期保険金やその他の贈与分を受け取った場合、やはり贈与税の申告が必要です。
そもそも、法律によって生命保険会社は、100万円を超える保険金を支払った場合、税務署へ支払調書を提出することになっています。
つまり、生命保険会社からご自分へのお金の流れは税務署から把握されています。記載忘れがあれば、税務署から指摘を受けることもあるので気をつけましょう。
7.満期保険金を申告する方法その2
私は給与所得者だが、年末調整では申告できないのだろうか?確定申告を行ったことが無いので手続きに不安を感じる。
こちらでは、年末調整について、必要書類、注意点を説明します。
7-1.年末調整とは
年末調整とは、会社の正社員やパート等の給与所得者の所得税額について、年末に1年間の所得や給与所得者本人の生活事情と照らし合わせて再計算を行い、過不足額を調整する方法です。
このときに、ご自分に該当する生命保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、社会保険料控除、配偶者控除・扶養控除、住宅ローン控除に、それぞれの申請書および控除証明書を添付して、勤め先の事業所へ提出します。
7-2.申告する場合の必要書類
ご自分が生命保険会社から満期保険金を受け取ったとしても、これまで述べてきた課税の条件に該当しなければ、申告する必要はありません。
しかし、課税対象となっている場合には確定申告は必要となります。その際に必要な書類となるのは次の通りです。
[1]確定申告書給与所得者の場合は基本的に「確定申告書A」となります。税務署窓口や税務署のホームページで取得できます。
確定申告書Aは、所得が「給与所得」「一時所得」「雑所得」「配当所得」のみで、予定納税額(※)がない人が利用できます。
なお、給与所得者が医療費控除・住宅ローン控除を受ける場合も、確定申告書Aを利用します。
(※)予定納税:その年の5月15日現在において確定している前年分の所得金額・税額等を基に計算した予定納税基準額が15万円以上である時、その年の所得税・復興特別所得税の一部をあらかじめ納付するという制度です。
[2]満期金の受取通知書・満期金の支払明細書保険会社から取得します。
[3]源泉徴収票 [4]本人確認書類①マイナンバーカード(個人番号カード)を持っている場合:マイナンバーカード(個人番号カード)の表面・裏面のコピーを添付
②マイナンバーカード(個人番号カード)を持っていない場合
- 個人番号通知のコピー、住民票(マイナンバー記載有り)、住民票記載事項証明書(マイナンバー記載有り)のいずれか
- 運転免許証、パスポート、在留カード等のいずれか
「1」+「2」が必要です。
[5]印鑑7-2.申告する場合の注意点
満期保険金で課税対象にならないから一安心・・・とはいえません。次に該当する方々はやはり確定申告が必要です。
[1]給与所得者で満期保険金の所得と、給与所得以外の所得との合計が20万円を超えている場合通常なら確定申告が不要な給与所得者の場合でも、
- 満期保険金による一時所得が20万円を超える
- ご自分の給与以外の所得と満期保険金の一時所得との合計が20万円を超える
いずれかの場合は確定申告をしなければなりません。
[2]年間収入が2,000万円超の給与所得者の場合年間収入が2,000万円超の給与所得者は、そもそも個人事業主と同じく確定申告をしなければなりません。
このように高額となる給与所得者の方々の場合は、たとえ受け取った満期保険金が課税対象にならなくても、確定申告をする必要があります。
8.まとめ
ここまで、満期保険金の課税条件と計算方法、そして税金の申告方法について解説しきましたが、いかがでしたでしょうか。
今回は、
- 満期保険金は条件によって一時所得・雑所得・源泉分離課税・贈与税が課税される場合がある
- 個人事業主は満期保険金が課税対象にならなくても確定申告をしなければならない
- 給与所得者は満期保険金が課税対象になる場合に確定申告をしなければならない
- ただし、給与所得者は年間収入が2,000万円超の人や、満期保険金による一時所得が20万円を超える人、ご自分の給与以外の所得と満期保険金の一時所得との合計が20万円を超える人は、確定申告が必要
という内容でした。
満期保険金は、ご自分でコツコツ保険料を納付してきた成果と言えますが、受け取る金額・いろいろな条件によっては、確定申告を行わなければなりません。
非常に面倒な事ではありますが、税負担の公平・公正の見地からは必要な申告となります。
どうしても、納税や面倒な申告を行いたくない場合は、保険契約を締結する前に、しっかりと各税金に控除が設けられているか、どの位までお金を受けとると申告しなければならないかを、十分に把握した上で加入を検討することが大切です。