火災保険や自動車保険(車両保険)の補償内容を確認すると、よく「免責金額:〇万円」という設定が目に付きます。
この免責金額とは、多発することが想定される、小損害の請求を免責するために設定する金額を指します。
免責金額は保険加入者の保険料負担の軽減や、保険会社の損害調査の手間を省くことが目的で設定されています。
確かに、火災保険や自動車保険(車両保険)で、数万円程度の保険金請求が多数にのぼれば、結局膨大な保険金額となります。
そうすると、保険会社は調査と保険金支払に追われ、その結果、集めた保険料が欠乏する危険性もあります。
そのため、損害額が一定の金額にならないと、保険金が下りないようにすることは、損害保険全体の安定にもつながるのです。
そこで今回は、免責金額の特徴と保険料への影響を、火災保険と自動車保険(車両保険)を取り上げて解説していきます。
この記事を読めば免責金額の基本的知識と、保険料を引き下げるコツについておわかりになることでしょう。
目次
1.免責金額について
火災保険や自動車保険(車両保険)を調べていると、よく「免責金額」という言葉が目につきます。
この免責金額とは何でしょう?下りる保険金に影響が出る設定なのでしょうか・・・?
第1章では、免責金額とは何か?その特徴について解説します。
1-1.免責金額とは
「免責金額」とは、設定した免責金額以下の損害額ならば保険金は支払われないことを指します。
この免責とは、保険加入者(被保険者)ではなく、保険会社が保険金の支払いを免れることを意味します。
免責金額は、ご自分が損害保険へ新規に加入したり、契約を更新したりした時に設定します。
例えば、ご自分が損害保険へ加入し10万円の免責金額を設定した場合、100万円分の損害が発生したならば、次のように保険金が下ります。
損害額100万円-免責金額10万円=実際の受取額90万円
基本的に10万円分が免責金額として差し引かれ、保険会社から保険金が支払われます。
1-2.免責金額は損害保険に多く設定されている
損害保険では、特に火災保険や自動車保険(車両保険)に免責金額が設定されています。
免責金額は確かに、保険会社が保険金の支払いを免れる措置と言えます。
しかし、この免責金額の設定は保険加入者(被保険者)にもメリットがあります。免責金額を高くすればするほど保険料は安くなります。
また、そもそも損害保険を利用しなければならないアクシデントは、そう頻繁にあるわけではないはずです。
そのため、一応補償は設定しておいた方が良いものの、想定される事故や自然災害等の被害が起こりにくいと感じたら、免責金額を高めに設定し、保険料の負担を軽減しておいた方がお得です。
1-3.小損額の支払いは面倒?
免責金額は、何も保険会社が「保険加入者から保険料は貰いたいけれど、保険金は支払いたくない。」という理由で、設定されているわけではありません。火災保険を例に挙げれば、次のような理由が考えられます。
日本ではいまだ木造家屋が多く、火災は油断してはならないものです。
それに加え台風や洪水等の自然災害のリスクが高く、火災保険の保険金が請求される機会も多いので、小損額まで補償対象となれば、その分、保険会社は調査と保険金支払に追われることとなります。
そうなると、全壊・全焼損という深刻な被害を受けた保険加入者にまで手が回らなくなり、保険金支払い手続きが滞る事態になるかもしれません。
また、各保険加入者からこれまで集めてきた保険料も枯渇し、保険会社の存続も危うくなります。
免責金額はこの弊害を抑えるため、小損額への保険金支払いを可能な限り避ける目的で、設けられている措置なのです。
2.火災保険の免責金額について・その1
免責金額は単に保険会社が、保険金支払いを嫌がる理由で設定したわけでないことはわかりました。
では、火災保険の免責金額の特徴について教えてください・・・。
第2章では、火災保険の独特な小損額免責の設定等を解説します。
2-1.火災保険とは
火災保険は、一戸建てやマンション・アパート、ビル等の建物そのもの、建物内にある家具や機材等の動産を補償する商品です。
この保険は、建物(不動産)だけに保険をかけた場合、火災で建物が燃えてしまったとき、受け取り可能な保険金は建物が受けた被害分のみになります。
この場合、建物の中にあった動産の被害の補償を受けることができなくなります。
動産も補償を受けるには、こちらも補償対象として火災保険を申込まなければなりません。
建物(不動産)の補償に関しても、家財(動産)の補償に関しても、免責金額が設定できます。
また、火災保険には独特な小損額免責の設定があります。次項ではこの小損額免責について解説します。
2-2.火災保険のフランチャイズ方式とは
火災保険では火災や爆発、落雷の他、台風や洪水等の自然災害も補償対象となっています。
従来の火災保険では、補償対象の一つである「風災・雪災・ひょう災」に関して、「フランチャイズ方式」という独特の小損額免責措置が設定されています。
火災保険契約を長期契約したならば、まだこのフランチャイズ方式が適用される可能性もあります。
〇フランチャイズ方式の基準は20万円
風災・雪災・ひょう災で、このフランチャイズ方式が適用されている場合、損害額は20万円以下であるなら保険金は1円たりとも下りません。
一方、損害額が20万円を超えていると判断されたなら、保険金全額が支払われます。
なぜ風災・雪災・ひょう災にフランチャイズ方式が適用されるかと言えば、これらの災害で建物が全壊するような事態は少なく、比較的軽微な被害の多いことがあげられます。
〇フランチャイズ方式による支払いの具体例
(例)風災で自宅の屋根の一部に被害が出たので保険会社へ連絡し、損害額を調査してもらった。
- 損害額が10万円であった場合→下りる保険金額0円
- 損害額が50万円であった場合→下りる保険金額50万円
フランチャイズ方式では、保険金から20万円分が差し引かれるわけではなく、損害額である50万円全額が保険会社より支払われることになります。
そのため、風災等の被害が出た場合は1箇所だけではなく、被害箇所を複数見つけ、保険金を一括請求することが大切です。
2-3.火災保険は免責方式が主流
最近、前述したフランチャイズ方式ではなく一般的になっているのが、「免責方式」です。エクセス方式やディダクティブル方式とも呼ばれています。
免責金額は、各保険会社によって差があり中には免責金額0円の設定まであります。
また免責方式は、保険加入希望者で免責金額を選択できることが特徴です。
こちらでは前述した風災被害を例に、免責方式の算出方法をあげてみましょう。
(例)風災で自宅の屋根の一部に被害が出たので保険会社へ連絡し、損害額を調査してもらった。なお、免責金額は10万円と設定している。
- 損害額が10万円であった場合→下りる保険金額0円
- 損害額が50万円であった場合→下りる保険金額40万円
フランチャイズ方式とは違い、免責金額を超えても設定した10万円は差し引かれます。そのため「損害額50万円-免責金額10万円=実際の受取額40万円」となります。
3.火災保険の免責金額について・その2
免責の方法といっても一つではないのですね。私の家では確か火災保険の長期契約を締結していたと思うので、今度確認してみたいです。
では、免責金額を上手に設定するコツについて教えてください・・・。
第3章では、免責金額と補償のバランスを考えた設定のコツについて解説します。
3-1.免責金額は保険会社で様々
免責金額の設定は各保険会社が設定しています。ただし、これは法律で義務付けられている決まり事ではないので、各社の判断で設定されています。
全体的な火災保険の免責金額の相場は1万円~10万円程度と言えます。当然、どこの保険会社でも免責金額の設定は保険加入希望者が自由に設定できます。
「一律〇〇万円が免責金額」と設定している保険商品の方が、相当少なくなっています。
こちらでは免責金額の一例を紹介します。下表を参考にしてください。
保険会社 | 免責金額 |
損保ジャパン日本興亜 | 0円、1万円、3万円、5万円、10万円 |
東京海上日動 | 0円、5,000円、3万円、5万円 |
三井住友海上 | 1万円、2万円、3万円、5万円、10万円 |
当然、免責金額0円が選べる保険会社がありますし、免責金額を100万円まで設定している保険会社も存在します(楽天損保)。
ならば、「免責金額0円で設定した方が、いざという時に満額下りるのでお得では?」、そう思う方々もいると思います。
次項では、免責金額を0円にした場合の利点と注意点について解説します。
3-2.中には免責金額0も設定できる
全ての保険会社というわけではありませんが、免責金額を0円で設定できる商品は販売されています。
実際の損害が発生したなら、1円でも多くの保険金を受け取りたい気持ちは皆さん同じことでしょう。
確かに、免責金額を0円にした方が、小損額でも補償対象になるのでお得とはいえます。
補償に設定されている全ての免責金額を0円にした方が、確実に保険金を受け取れるのは事実です。
しかし、その分保険料は割高になってしまい、保険料の負担が増してしまいます。
免責金額0円の設定が、年間の保険料に見合ったものであるなら問題はありません。ですが、家計に負担となり「無理があったかも。」と後悔しないよう、設定の際は慎重に判断していきましょう。
3-3.免責金額を上手に設定するコツ
まずは火災保険をかけるご自分の建物の生活環境についてよく確認し、免責金額を設定する必要があります。
〇住んでいる地域でどんな自然災害が起きやすいか
ご自宅が河川敷の近くに建っているならば、洪水をはじめとした水害の被害が想定されます。また、豪雪地帯であるなら雪災が心配でしょう。
このようにご自分の住んでいる地域で起きやすい災害を想定し、被害に遭うリスクの高い災害に関しては免責金額を0円とするか、免責金額を低く設定して、可能な限り損害額の全額が補償されるように設定しましょう。
〇引越ししたばかりならハザードマップで確認!
ただし、ご自分がその土地に引っ越したばかりで、地域の事情がよくわからない場合もあると思います。
その場合には、各地方自治体が公表している「ハザードマップ」を参考にしましょう。
この資料を参考にすれば、ご自分の建物が軟弱地盤に建っているのか、強固な岩盤の上に経っているのかもわかります。
また、洪水で浸水しそうな地域なのか一目で確認できます。ハザードマップは地方自治体のホームページでも掲載されているので、確認してみると良いでしょう。
ただし、注意点もあります。それは、ハザードマップは更新される場合があり、ご自分の住所地がいつの間にか洪水による浸水地域に指定されている等、情報が変更されているときもあります。
そのため、定期にハザードマップを確認し、被災リスクを再検証する必要があります。
〇まず起こらない被害なら免責金額を高めに設定
一方、ご自分の自宅が高台にあって洪水の心配はなく、南の地域なので大雪にもならないなら、これらの補償に関する設定金額を高めにして保険料を安くすることができます。
まず起きることが考えられない災害ならば、免責金額を最大にまで引き上げておく方が良いでしょう。
〇いっそのこと補償ごとを外せれば・・・・
ご自分にとって必要のない補償が設定されていても、火災保険の基本補償になっていると、まず外すことは困難です。その場合には、前述したように免責金額を最大まで引き上げておきましょう。
一方、火災保険の中には基本補償が火災・爆発・落雷だけで後は、自由に補償をカスタマイズできる商品もあります(日新火災海上保険「在自在」)。
免責金額を高くするより、補償自体を外した方が保険料は大幅に軽減されます。
ただし、この方法はご自分の住む地域で、被害が起きることはほとんどあり得ない災害である場合に、限定しておいた方が無難です。
4.火災保険の免責金額について・その3
免責金額は保険加入者自身の工夫で、補償と保険料のバランスが調整できそうですね。
では、免責金額を設定することで、どの位保険料が軽減されるのか?また地震保険にも免責金額があるのか教えてください・・・。
第4章では、事例をあげ免責金額を設定した場合、しなかった場合の保険料の試算および、地震保険について解説します。
4-1.免責金額0~10万円で保険料を試算してみる
こちらでは、事例を上げ免責金額0円、5万円、10万円で保険料を試算して比較します。
(例)
- 住宅のタイプ:木造一戸建て(省令準耐火等)
- 住居地:東京都
- 建物保険金額:2,000万円
- 家財保険金額:1,000万円
- 支払い方法:1年一括払い
(1)免責金額0円
①地震保険ありの場合→66,710円
②地震保険なしの場合→29,210円
(2)免責金額5万円
①地震保険ありの場合→63,110円
②地震保険なしの場合→25,610円
(3)免責金額10万円
①地震保険ありの場合→55,870円
②地震保険なしの場合→18,370円
(1)免責金額0円の場合は年間保険料66,710円(地震保険あり)となり、(3)免責金額10万円の場合は年間保険料55,870円(地震保険あり)なので、年間10,840円の差があります。
免責金額を高めに設定した方が、保険料は確実に安くなります。
4-2.保険料が安くなっても地震保険を外してはダメ!
免責金額の設定の違いを前述しましたが、皆さんの中では「地震保険を外した方がぐっと安くなる。」と注目した人もいたはずです。
たしかに、地震保険を最初から設定しなければ年間保険料は1/2以下に激減します。
〇地震はどこででも起こる
しかし、契約の際は地震保険もセットで加入することが賢明です。最近の日本では地震が頻発しており、地震発生から8年目を迎える「東日本大震災」は、いまだに被災地へ深い爪痕を残しています。
また、地震があまり起きないといわれていた熊本でも、地震が発生し大きな被害も出ています。
つまり、日本に住む以上、地震で被災するリスクはどこの地域でも起こり得るものとして捉える必要があります。
そのための備えとして、地震保険に加入する必要が極めて高いのです。
〇火災保険だけで地震は補償されない
また、火災保険だけに加入していても、地震、噴火、津波による建物への火災・倒壊・流出被害は一切補償されません。
つまり、火災が発生し建物や火災が全焼しても、地震が原因の被害と判断されれば、地震保険へ加入していないと1円も補償は下りないのです。
ただし、火災保険では、「地震火災費用保険金」という形で補償される商品もあります。それでも補償は火災保険金額の5%と、生活が再建できるだけの金額とは言い難い内容です。
4-3.地震保険に免責金額ってある?
地震保険は、皆さんも各保険会社の補償内容を比較してご存知と思いますが、補償内容・保険料は均一です。
なぜなら、「地震大国」である我が国において、その地震被害の深刻さが影響しているからです。
地震が一度起こると、震源地もとよりその周辺の広い範囲に大きな被害が及ぶおそれがあります。
地震被害で多数に上るであろう、保険加入者からの保険金請求に対し迅速な対応、公平な保険金支払いを徹底するため、保険会社のみならず政府も一緒になって救済へ当たることとなります。
そのため、各保険会社で地震保険を扱っていても、補償内容は均一となり、もちろん免責金額も各保険会社の判断で設定することはできません。
5.車両保険の免責金額について・その1
日本はいまだに木造が多く、自然災害も頻発するので、火災保険へ免責金額が設定されるのはやむを得ないことだと思います。
では、自動車保険(車両保険)の免責金額はどうなっているのでしょうか・・・?
こちらでは、自賠責保険や自動車保険に免責金額はあるのか等を解説します。
5-1.自賠責保険に免責金額はあるの?
正確には「自動車損害賠償責任保険」と呼ばれる、自動車を所有し公道を走行する場合に必ず加入しなければならない保険です。
自賠責保険は、自動車保険を扱う保険会社で販売されていますが、補償内容・保険料はすべて同一となります。
なぜなら、自賠責保険の補償は被害者救済を目的として設定されており、交通事故が起きた場合、安定的に被害者へ補償がなされるよう強制保険となっています。
〇補償内容・補償金額
なお、補償内容は次の通りです。
- 死亡による損害:被害者1名3,000万円
- 後遺障害:被害者1名75万円~3,000万円
- 重大な後遺障害:被害者1名4,000万円
- 傷害による損害:被害者1名120万円
最高で被害者1名につき4,000万円が支払われることになります。
〇事故被害者・遺族の救済が最優先
自賠責保険は、交通事故の被害者等の救済を最優先にしているので、いわゆる各保険会社の競争原理は置いておく必要があります。
そのため、保険料も補償内容も均一になるのです。当然、自賠責保険に保険会社独自で免責金額を設定することはできません。
5-2.自動車保険に免責金額はあるの?
前述した自賠責保険は確かに最高4,000万円が補償されることになります。しかし、交通事故の裁判で賠償金は高額化する傾向があります。
平成23年11月1日の横浜地裁判決では交通死亡事故に対して、5億を超える賠償金額が命じされています。
これでは、とても自賠責保険へ加入しているだけでは足りません。そのため任意保険として自動車保険が保険会社から販売されています。
自動車保険は対人賠償の他、自賠責保険では対象外だった対物賠償も補償されます。
保険会社で基本的に対人・対物賠償とも「無制限」で設定されています。この無制限とは、どんなに高額な賠償金が命じられても、その全額が補償されるという意味です。
対人賠償は、あくまで被害者の死亡や負傷への救済が最優先であるため免責金額の設定はありません。一方、対物賠償は免責金額の設定されている場合が多い補償です。
5-3.車両保険とは
車両保険とは自動車保険の1種ですが、被害者への対人・対物賠償をするための保険ではありません。
車両保険はあくまで契約車両自体の補償を約束する保険商品となります。
自動車保険とセットして保険契約する場合が多く、車両保険だけを当然外すことが可能です。
〇車両保険の補償内容
補償内容は主に次の通りとなります。
(1)単独事故
- 運転ミスによる電柱やガードレール等への衝突
- 他車や自転車との衝突や接触
- 車両の墜落・転覆
(2)自然災害等
- 台風や竜巻、洪水、高潮
- 火災や爆発
- 物の飛来や落下
(3)車両の盗難・いたずら等
- 車両の盗難
- 当て逃げ被害
- 労働争議等による破壊活動被害
運転ミス等の自業自得のようなトラブルから、自然災害等の不運な被害まで幅広く補償されます。
〇車両保険には免責金額が設定されている
車両保険は被害者救済が目的ではないため、基本的に免責金額が設定されています。
もちろん、免責金額は各保険会社が自由に設定しており、免責金額0円で設定できる場合もあります。
こちらも火災保険と同様に保険会社は、小損額への保険金支払いを可能な限り避けることになります。一方、保険加入希望者が免責金額を高く設定したらその分、保険料が軽減されることになります。
6.車両保険の免責金額について・その2
車両保険にもやはり免責金額が設定されていますね。でも、お気に入りの愛車が破損したり盗難されたりしたら、しっかり補償してもらいたいです。
車両保険は免責方法も火災保険と同様でしょうか?詳細を教えてください・・・。
第6章では、車両保険の免責金額と、事例をあげて免責金額を設定した場合、しなかった場合の保険料の試算等を解説します。
6-1.車両保険は免責方式のみ
自動車保険(車両保険)では、免責方式のみが採用されています。フランチャイズ方式は採用されていません。そもそも、運転中等において自動車の車体は、ある程度の小損害を被ることが普通といえます。
車庫入れに失敗して車体を壁にこすってしまった、ドアを開けるとき障害物にドアをぶつけた等、小損害を被る頻度は高くなる傾向があります。
このような少額の損害・費用を全ててん補することになると、損害の調査・保険金の支払いに要する費用もかかってしまいます。
そのため、保険料は割高になってしまい、結果的には保険加入者にとって不利益となります。これを回避するため小損害免責が設けられているのです。
6-2.免責金額0~10万円で保険料を試算してみる
こちらでは、事例を上げ免責金額0円、5万円、10万円、15万円、車両保険なしで保険料を試算して比較します。
(例)
- 運転者限定:本人のみ
- 契約車両:トヨタ・プリウス
- 使用目的:日常・レジャー
- 等級:6(S)等級
- 車両保険金額:20万円
- 保険期間:1年間
(1)自動車保険+免責金額0円
①保険料が月払の場合→10,580円
②保険料が年払の場合→120,810円
(2)自動車保険+免責金額5万円
①保険料が月払の場合→10,070円
②保険料が年払の場合→115,080円
(3)自動車保険+免責金額10万円
①保険料が月払の場合→9,690円
②保険料が年払の場合→110,640円
(4)自動車保険+免責金額10万円
①保険料が月払の場合→9,470円
②保険料が年払の場合→108,120円
(5)自動車保険
①保険料が月払の場合→6,520円
②保険料が年払の場合→74,520円
(1)免責金額0円の場合は年間保険料120,810円となり、(4)免責金額10万円の場合は年間保険料108,120円なので、年間12,690円の差があります。
免責金額を高めに設定した方が、車両保険の場合も保険料は確実に安くなります。
6-3.保険料が割安になるなら車両保険外す?
自動車保険へ加入を希望する方々なら、やはり目を引くのが車両保険を外した場合の自動車保険料の安さでしょう。年間3万円~5万円近くの保険料が軽減されます。
「車両保険を外しても、他人の被害には影響無いのだし、愛車は家のガレージでしっかり管理するから大丈夫。」と思うこともあるでしょう。車両保険を付けないで保険契約を締結してしまう人がいるかもしれません。しかし、十分注意すべき点があります。
〇火災保険で自動車は補償対象外
火災保険は建物のみならず、建物内の家財に補償を設定することができます。
この家財補償には残念ながら自動車やバイクは対象外となります。一方、自転車もしくは総排気量が125cc以下の原動機付自転車ならば補償対象となります。
そのため、ご自分の所有する建物や、その敷地内においておけば安心というわけではありません。
〇自動車の盗難は相変わらず8,000件超え
2004年には6万件を超える車両盗難があったものの、随分最近は盗難被害が減ったといわれています。
しかし、昨年は自動車盗難認知件数が8,600台を超え、いまだ数千台の自動車が窃盗団のような車泥棒に盗まれています(警察庁統計)。
ドライバーがキーを付けたまま自動車を離れて盗まれた件数は2,000台程度であり、残りの6,000台はキーを外していたにもかかわらず、盗難被害にあっています。
「キーを外せば大丈夫。」というドライバーの考えは過信であり、車泥棒には通用しません。そのため、車両保険へ加入してまさかのために備える必要があるのです。
7.まとめ
損害保険の免責金額は、その設定次第で補償内容とのバランスを保ち、保険料を軽減できます。
ただし、保険料を安くしたいばっかりに、ご自分が充実させなければならない補償まで削るのは問題です。
〇家族の意見も聞いてみる
損害保険の補償内容と保険料を考える際は、ご自分の判断だけではなく家族の意見も聞いておきましょう。
ご自分とは違う視点から補償の必要性を感じていることがあるかもしれません。
〇保険相談窓口での相談も
また、保険の専門家のアドバイスを聞いてみるのも良いかもしれませんね。
最近は無料の保険相談窓口が多く登場し、ご自分のお住いの地域では、駅の周辺・ショッピングモール等に店舗を構えていることもあります。
この保険相談窓口では損害保険の相談に対応できる場合があります。損害保険も相談内容に含まれるか、事前に電話連絡する等して確かめてから、訪問するのが良いかもしれません。
専門スタッフならではの知識と視点から、ご自分にふさわしい補償の設定や、保険料を軽減する方法が聞けることでしょう。
また、何度相談しても無料なので、相談料金を気にせず、気軽に利用することができます。