大学卒業後、損保ジャパン日本興亜代理店の保険会社にて5年以上勤務し、年間100組以上のコンサルティングを行う。
その後、2016年6月より保険ブリッジの記事監修を務める。
三井生命が日本生命に買収されたという、生命保険業界にとっては大きな出来事がありました。
現在損保業界は大手3社に集約されていますが、生命保険業界の再編はこれから始まるのではないか、との指摘もあります。
万一のときに保険が使えなくなるのを避けるには、生命保険会社の状況を知る必要があります。
三井生命を一例として、生命保険会社の経営環境の変化に伴う契約者への影響や、を紹介しています。
- 三井生命の買収と買収後の影響
- 生命保険会社の見極め方
- 生命保険会社の再編方法
三井生命の買収について
生命保険業界の中堅の三井生命が、「業界のガリバー」日本生命に買収され子会社化されました。
ニュースを見て自分が契約している保険会社が買収されたらどうなるのか、心配になった人も多かったことでしょう。
今回は三井生命を題材に生命保険会社の再編と保険契約への影響を見ていきます。
まずは、三井生命の概要と日本生命の買収がどのように進んでいったのか見ていくことにしましょう。
三井生命の概要
三井生命は日本生命グループに属する生命保険会社です。
三井生命の前身となる会社は大正時代に設立され、のちに三井の名を冠すようになりました。
戦後になり株式会社から相互会社へと会社の形態を変え、また、財閥解体の影響によりしばらく三井とは別の名称を名乗っていました。
業界中位の規模に甘んじていましたが、業界再編をにらみ2004年に財閥系生保で初となる株式会社に転換し、2016年に日本生命保険の完全子会社となっています。
買収に至るまでの他の会社との関係
これまでに三井生命は三井グループはもちろん、住友グループとも深い関係がありました。
三井生命は伝統ある会社なので社歴も長いのですが、最近の三井生命のあゆみをかいつまんで見てみます。
三井生命はバブル崩壊後からの日本経済の不況にともない、保険料収入の減少と運用損がかさみ業績が低迷していました。
21世紀に入り金融業界では三井グループと住友系グループの経営統合が銀行や損害保険各社で進み、生命保険でも住友生命と三井生命が同様に統合されるのではとささやかれていました。
2004年に三井生命が業界でもいち早く株式会社化を決定したのは、こういった業界再編を視野に入れていたと考えられています。
そして、2008年のリーマンショック後に三井住友グループから援助を受けていますが、住友生命はライバル社である三井生命に増資だけでなく人材まで提供して三井生命の再建に尽力しており、住友グループとは並々ならぬ関係があったのです。
なぜ日本生命なのか?親密なはずの住友生命と経営統合しなかった理由
では、なぜ三井生命は銀行や損害保険会社のように住友系の住友生命と経営統合しなかったのでしょうか。
- 三井生命は伝統ある保険会社でプライドが高く、グループ会社によるテコ入れが功を奏さなかった
- 住友生命の財務基盤も、やっと逆ザヤが解消できた状態で買収するには体力不足だった
生保業界の大きなメルクマールとなっていた業界のガリバー、日本生命の業績が第一生命に抜かれるという事件が起こったのはその頃です。
日本の高齢化と少子化で生命保険業界の市場も縮小するなか、大きな危機感を持った日本生命が目をつけたのが三井生命です。
第一生命が日本生命を追い抜いた要因は銀行窓販での保険販売で、日本生命は銀行窓販の販路開拓が急務でした。
三井生命は業績が低迷しており、契約者に支払うお金が運用でまかなえない逆ザヤに陥っている状態でしたが、三井生命はグループ会社の銀行との縁が深く、窓販で自社グループの保険を取り扱いしてもらえると見込んで買収したとも言われています。
三井生命の買収とその後の影響は?
三井生命が日本生命に買収される前から生保業界関係者をはじめ金融業界全体で、日本の金融業界は各業態で財閥系をはじめ3社に集約されるのではないかといわれていました。
住友生命は大手5社の一角として存在しており、今後再編の潮流に乗る可能性があります。
今回買収に関係した生命保険会社でなく、ほかの保険会社と契約している人や生命保険の契約を検討している人も、今回の記事を読んで今後の業界再編があった場合に、契約している保険がどのような影響があるのか参考にしてみてほしいと思います。
買収による契約者への影響(個別の保険契約)
結論からいうと、今回の三井生命の買収にともなう保険契約への影響はありませんでした。
三井生命は、団体保険に強く解約などで契約数が減少しにくい特徴を持っています。
また、三井生命は逆ザヤといって、集めた保険料を運用しても契約者に約束した予定利率を下回る成績しか上げられません。
その損失を自ら負担しなくてはならないという、厳しい状況に陥っていますが、買収後は日本生命と共同運用することで逆ザヤの解消に向かっているようです。
今回の買収は業界のガリバーといわれる日本生命が、手薄な銀行窓販の販売力の強化とともに三井生命を事実上救済するという意味合いもありました。
そのため、日本生命はもちろん、三井生命の保険契約には影響が出なかったということです。
今回、三井生命が買収されるかなり前に明治生命と安田生命が合併していますが、各社ともそれぞれの保険の契約が存続し、保障内容も契約当時のまま続いているとのことです。
ただし、三井生命と日本生命は互いの得意分野の保険商品の相互供給を検討しています。
合併後に新たに保険に加入したいと思っても、同種の保険はどちらかの会社の保険に統一されたり、更新型の保険の場合、合併後は今までと同じ条件や同じ保障内容で保険の更新ができなくなる恐れもあります。
今回は対象ではありませんが、生命保険会社が買収や合併にあった場合、契約している保険が破棄されることはなくても、買収対象の保険会社が破たん状態のときは貯蓄型の保険商品が減額されることが過去の事例としてありました。
生保業界では逆ザヤはすでに過去のものとしての扱われていますが、三井生命はいまだに逆ザヤ問題で苦しんでいます。
個人年金などの貯蓄型の保険に入っている方は契約している生命保険会社の経営状況に気を配る必要があります。
今契約中の生命保険会社が危なくないかの見極め方
保険会社が合併や買収などにより組織改編されると加入している保険に影響が出ることがありますので、契約している生命保険会社が危険な状況下にないかを知っておく必要があります。
生命保険会社の状況を知るにはいくつかの指標や決算を見たり、日本の経済状況について知る必要があります。
ここでは生命保険会社の指標の見方や、現在の生保と経済状況がわかるトレンドについて説明してみます。
ソルベンシー・マージン比率と格付け
生命保険会社の経営を推し量るには生命保険会社が公表している、ソルベンシー・マージン比率と第三者機関による格付けがあります。
ソルベンシー・マージンとは、支払余力のことで監督官庁が定めている指標です。
生命保険会社は契約者への保険金支払いリスクに備え責任準備金を積み立てており、通常、予測できるリスクには対応できるようにしています。
ただし、大災害で保険金請求が多くなったり、金融市場の暴落など保険の運用が難しくなる事態が一時的に起こると、契約者への支払いに追われ保険会社の運営が厳しくなる可能性があります。
通常予想できるリスクを大きく超えた危機に対応できるような支払余力があるかどうかを判断する指標として、ソルベンシーマージン比率が設けられており、現在の大手の生命保険会社のソルベンシーマージン比率は1000%前後であることが多いようです。
続いて、生命保険会社の格付けは専門の民間機関が独自の基準で評価を行っていることが知られています。
格付けのランクはAAAからcまで幅が広いですが、今回合併対象になった三井生命や朝日生命を除き、日本の生命保険各社は投資適格のランクのなかでも上位のAランクに格付けされています。
Aランクのなかでも最上位のAAAに属する日本の生保は皆無ですが、大手各社はおおむねAランクの中位に属しており一定の評価が得られています。
生命保険会社の基礎利益
生命保険会社の経営状況の一端を知ることができるのが、各社が公表している基礎利益になります。
基礎利益とは、生命保険会社が保険業務で得られた利益のことで、決算のときにあわせて発表されています。
通常の会社の事業利益から金利負担分を差し引いたのが経常利益とされますが、その経常利益から証券の売買損益(キャピタル損益)や臨時損益を除いたのが基礎利益とされています。
保険事業の純粋な業務による損益は保険料収入と保険料支払い業務が主なものですが、保険会社は契約者から預かった膨大な保険料の運用業務も大事な事業の柱のひとつです。
つい5~6年前くらいまで保険料支払いと運用利益の差損(逆ザヤ)が問題となっていましたが、基礎利益はこの逆ザヤを含んだ金額となっているため、これがある程度確保されていれば逆ザヤによる影響が低いと考えられています。
保険の契約者にとっては、いざというときの保険金の支払いがされるかどうかが最大の関心事でしょう。
自分が加入している生命保険会社の決算発表の基礎利益に注目してみてください。
逆ザヤの大波再来?
長らく超低金利時代が続いていましたが、最近はマイナス金利時代に突入し、生命保険各社の運用成績にも大きく影響が出てきています。
2017年5月下旬に主要生保各社が発表した2018年の基礎利益の予想は、一部を除き軒並み減益となるようです。
生命保険会社は予定利率をもとに保険契約を結ぶが、契約後の経済情勢により低利での運用を余儀なくされた場合、予定利率との差損が生じることになります。
バブル時代や予定利率の高い保険を販売し、バブル崩壊とともにこの逆ザヤにより破たんした生保がいくつも見られ、リーマンショック後も同様に生保業界は逆ザヤで苦しむことになり2014年頃に逆ザヤが解消されたといわれています。
しかし、近年のゼロ金利を超えるマイナス金利導入とでまたもや逆ザヤに苦しむ生保が出てきているようです。
また、少子高齢化の影響による加入者の減少で生命保険の保険料収入も減少しています。
保険会社が発表する様々な指標のほか、日本の経済状況にも目を配りつつ自衛をしたいものです。
三井生命のこれから
さて、三井生命は日本生命に買収されるかたちとなりましたが、今後、契約者や加入を検討している人に様々な影響が予想されます。
日本生命による買収後もこれまで通り変わらないことが大半なのですが、買収による相乗効果による変化や既存のものでなく新しくできたものも出てきています。
三井生命のこれからについて紹介してみます。
買収後も変わらないもの(既存商品や利率)
今回の合併は破たんによるものでなく、買収によるものなので契約者に影響はあまり生じていません。
三井生命は法人に強いということがあり、既存の保険商品の解約などは起こらないことが予想され、破たんでの合併ではないことから既存商品やその予定利率などの契約内容は維持されています。
むしろ、合併により三井生命の財務基盤が良くなり、既存契約者にとっては一安心といったところでしょうか。
なお、破たんした生命保険会社が経営統合されるケースでは、一般的な医療保険などは保障内容が削減されることはないようです。
貯蓄型の保険(例えば個人年金保険)に関しては予定利率の大幅な削減が確実に適用されるので注意が必要です。
買収後に変わること(財務改善、商品の相互供給)
三井生命は日本生命傘下となり、日本で最大規模の生命保険グループとなりました。
三井生命は日本生命に統合されるのではなく、別会社として拠点や人員はそのまま維持されるため、契約者にとっては利便性やスケールメリットによる利点は特にありません。
業界のガリバーの日本生命が財務的な後ろ盾になり、また、日本生命の運用ノウハウなどが三井生命にも好影響を及ぼし財務状況は改善されることが見込めます。
また、日本生命と三井生命は合併後、多様化するニーズに対応するために両社間で商品を相互供給し、保険のラインアップを拡充することを決定しました。
2017年初めには日本生命が開発した経営者向けの保険を三井生命で販売するようになり、2017年10月には三井生命の外貨建ての養老保険を日本生命でも販売することになっています。
合併により契約者の保険商品の選択の幅が広がるのは喜ばしいことといえます。
買収後に新しくなったもの(新種の保険販売)
三井生命は既存の保険の維持・管理を行う会社でなく、継続する事業体として新商品の開発も続けています。
合併後には主力の保険商品を刷新し、消費者ニーズに合致した必要な保証が選べる保険『大樹セレクト』の販売を開始しており売れ行きは好評のようです。
既存の定期型の保険の契約者にとっては、保険が満期をむかえ今後保険を切り替えなくてはいけなくなったとき、同じ保険ではなく新しい保険に加入することになります。
また、現在保障内容が自分にあっていないと感じている方は、自分が必要な保証が選べる新商品に乗り換えしてみてはいかがでしょうか。
生命保険会社の再編の方法とは
金融業界のなかでも生命保険業界はまだまだ再編が行われると考えられており、今後、契約している生命保険会社が再編の対象となる可能性があります。
生命保険会社の再編にはどのような方法があって、契約中の保険の取り扱いは再編後どのようになるのか、あらかじめ知識として持っておきましょう。
包括移転
生命保険会社が破たんもしくは法令改正により保険業務を継続できない場合において、救済会社や保険事業を引き継ぎする会社へ保険契約の全てを移転することを「保険契約の包括移転」といいます。
保険契約を別会社に移転することで契約が継続されますが、破たんによる包括移転の場合、かなりの悪条件を強いられるでしょう。
責任準備金(生保会社が保険料支払いのために積立している資金)が削減されるため、保険金や個人年金額が引き下げとなることを覚悟しなくてはなりません。
ただ、医療保険など緊急(重篤)性が高いものは保険という商品の性質を鑑み、海外の事例を含めても引き下げは回避するのが慣例のようです。
合併
破たん寸前の生命保険会社を救済合併とするケースもありますが、今回の三井生命のように規模の拡大や販売チャネルの獲得などの相乗効果を狙って合併するケースもあります。
過去に合併して経営統合された生命保険会社がいくつかありますが、通常は経営の効率化や経営基盤の安定のために、類似の保険商品を一本化したり、拠点の統合や廃止、人員整理を行うことが多いです。
4社が合併となった例では、既存の契約は引き継がれるものの、実質2社分の保険商品がいっきに廃止されたことがあります。
生命保険会社が合併されて契約中の保険商品が販売終了となったとしても保険契約の継続はできますし、特段の不利益は生じません。
まれに保障範囲の拡大など条件が良くなることもあるようです。
定期・更新型の医療保険等は更新時に同じ保険がない場合、類似の他社商品にて更新を勧められることになるでしょう。
子会社化
日本で既存の生命保険会社が子会社化される事例は最近に限ると非常に珍しく、今回の三井生命の買収は大きなニュースとなりました。
子会社化ということは自社のグループ企業として迎えるということになります。
生命保険会社は旧来からある相互会社という組織形態のままにしている会社と、最近株式会社に転換する保険会社の2種類があります。
相互会社は子会社化には適さず、株式会社形式の生命保険会社は子会社化しやすいといわれています。
生保業界や市場の予測に反し、三井生命は日本生命のグループ会社となりましたが、三井生命は株式会社化するにあたって他社との再編をめざしていたとの評価がもっぱらです。
子会社化により拠点や人員の整理がされるのではないか、と一部から予想されていましたが、三井生命は資本以外は独立性を高く保っています。
少子高齢化で保険契約者の減少が著しい日本では、子会社化による再編が起こった場合は三井生命のようにならず、経営の効率化のために人員削減や拠点の統合、保険商品の絞り込みが実施されるでしょう。
生命保険会社が再編とならず破たんしたら?
今回、三井生命が買収というかたちで独立した会社でなく日本生命の傘下になりました。
三井生命がこのように至った理由のひとつは保険料の運用がうまくいかず、生保業界が逆ザヤの悪夢から回復するなかで逆ザヤにずっと苦しんでいたためといいます。
幸い三井生命は破たんに至らず日本生命に買収されることで経営基盤を立て直しましたが、過去には契約していた生命保険会社が破たんしてしまったという人もいます。
生命保険会社の破たんは主に、保険料と運用による収入と契約者への支払いの収支バランスが大きく崩れたために起こります。
日本の生命保険会社の破たんは、ハイリスクな商品を販売しすぎたがために至ったというものが一番多いです。
保険会社が倒産の兆しが仮にわかったとしても、保険契約はおいそれと乗り換えするのは難しいものです。
万一、契約している生命保険会社が破たんしたらどうなるのか、いざというときのためにチェックしておきませんか。
保険契約の継続
生命保険会社が破たんした場合、保険契約は破棄されることなく、国内の全生命保険会社が加入する「生命保険契約者保護機構(保護機構)」によって引き続き契約が継続されます。
保護機構は破たんした生命保険会社の契約を引き継ぎする「救済保険会社(もしくは承継保険会社)」に対して、生命保険制度の維持のため必要に応じ資金援助を行います。
破たんした保険会社のスポンサーとなるような救済保険会社が現れた場合は、救済保険会社に保険契約を移転したり、破たん会社を合併や株式取得により経営統合することによって保険契約が継続されることになります。
もしも救済保険会社が出てこなかった場合、保護機構が設立する承継保険会社に保険契約が引き継がれるか、保護機構自身が破たん会社の生命保険を引き受けすることになります。
このように保護機構が生命保険の契約を続行させるために、いろいろな措置が取られることになります。
しかし、保護機構が契約者保護に乗り出すにあたって契約者に不利な措置がとられることがあります。
責任準備金の削減
生命保険会社は契約者への保険金や給付金の支払いに備えて責任準備金を積立しているのですが、この責任準備金が最大90%まで削減されます。(支払いが90%保証されるわけではありません)
この準備金が削減されると契約者への支払い原資が少なくなるので、契約時に約束していた保険金が削減されることになります。
医療保険に代表されるような万一の保障に重きを置く定期保険(掛け捨ての保険)の場合、契約者のほとんどは保障対象になることはないため責任準備金は比較的少なくて済むのが特徴です。
そのため、責任準備金が削減されることになっても影響がほとんどないといわれています。
反面、貯蓄型の満期保険金のある商品では満期を迎えた全ての保険契約者に一定の金額を支払う義務があるため、責任準備金の金額も満期に近づくにつれ膨大になっていきます。
責任準備金は本来の積立金から最大10%削減されるということは、貯蓄目的の場合、予定利率を大きく割り込むことになり、個人年金保険など貯蓄型の商品を長期契約中に保険会社が破たんすると、元本を割り込むこともあります。
また、お宝保険といって予定利率が非常に有利な保険を契約している人は、責任準備金の最大削減幅(10%)に加え、基準利率(現在は3%)との差の1/2の利率が責任準備金からさらに引かれることになります。
予定利率の引き下げ
貯蓄型商品を契約していて生命保険会社の破たんが起こったとき、予定利率の引き下げが行われることがほとんどだという点にも注意してください。
予定利率の高い貯蓄性の高い保険である終身保険や個人年金保険などの場合は、死亡保険金や満期保険金が先ほどの責任準備金の削減に加え、予定利率の削減が適用されるのでダブルで影響を受けてしまいます。
その結果、こういった保険は大幅な元本割れが起こることが非常に高く、満期まで契約を継続して保険料を払い続けても元本が回復しないこともあります。
早期解除控除
貯蓄型の生命保険を契約しているなら、破たんとともにすぐに契約を解約するのが最良の選択に思えますが、破たん後の早期解約には早期解約控除制度が適用されてしまいます。
早期解除控除制度とは、破たん後の契約解約の大量請求による大幅な資産流出を抑え、破たん会社の更生を計画通りにすすめたり、契約移転された救済保険会社が保険契約の継続がきちんと行えるよう設けられたものです。
そのため、破たんしたからとすぐに解約手続きをすると、契約の中途解約時に支払われるべき解約返戻金が契約当時に定めた解約控除と比べさらに減額控除されてしまいます。
かなり不利な条件になりますが、損が目に見えているのにそのまま保険料の支払いを続けるのも納得いかない、という人はこういった措置が適用されることを覚悟の上で解約手続きをする必要があります。
過去の事例を見ると、破たんから2年以内の早期解約控除が15%となり、破たんから9年程度経過しないと早期解約控除が適用されてしまう状況になっています。
ただ、これは救済保険会社が現れた生命保険会社の場合であり、保護機構に契約が承継された場合はさらに厳しい状況になることが予想されます。
まとめ
今回は三井生命を例として、契約中の生命保険会社が再編や破たんになった場合の影響について説明してきました。
今後の生命保険業界は、再編や逆ザヤなどの大きなうねりが再び起こることも予想されます。
契約している生命保険会社がその渦中に巻き込まれないことに越したことはないのですが、今回の記事を参考に再編の兆しや突然の破たんに出合っても慌てずに心づもりをしておきましょう。
生命保険に限らず、加入したらそこで終わりではなく、万が一の時の保険ですので、年に1回ぐらいはちゃんと契約を見直したり、保険について勉強するのも良いかもしれませんね。
今回の記事でそういう所も解っていただければと思いますので、今一度、確認してみてください。