定年退職して年金暮らしになった場合、生活に必要な公的年金は高齢化・少子化を迎え減額措置がとられていて、今後増額は見込めない厳しい現状です。
ゆとりのある老後生活を送るためには、なるだけ早い時期から私的年金に加入したり、資産運用を行って、老後の生活資金を蓄えておくことが必要です。
今回は、老後に生活費はいくらかかるのか、ゆとりある生活を送るためにはいくらの資金が必要なのかなどについて解説いたしますので、最後まで読んで下さいね。
目次
老後65歳以上生活費はいくらかかるのか
老後にかかる費用を蓄えるには、家計の中で大きな金額が必要です。
松葉 直隆
老後の一か月の支出をシミュレーション
総務省の「家計調査年報」平成28年版によりますと、世帯主が60歳以上、無職世帯の1ヶ月の支出は次のようになっています。
・食費……………………68,193円
・住居費…………………14,346円
・水道光熱費………….20,427円
・家具・家事用品……..9,290円
・被服等……………………6,737円
・保健医療費……………14,646円
・交通・通信費………..26,505円
・教育・教養娯楽費…..25,712円
・こづかい…………………6,225円
・交際費…………………..25,243円
・その他支出……………22,280円
・合計……………………239,604円
上記はあくまでも平均額となります。
老後は子どもの教育費などはかかりませんが、基本生活費となる金額がこの金額よりも多くなるか、あるいは少ないかは、ご自身の現在の家計の支出からもある程度推測できるのではないでしょうか。
松葉 直隆
もらえるのはいくら?
それでは、退職して年金暮らしになった場合、いくらくらいもらえるのか解説します。
一つ目が、リタイア後の主な収入元となる公的年金です。
公的年金の受給平均額は以下のとおりです。
厚生年金・・・月額 約14.8万円
国民年金・・・月額 約 5.5万円いずれも、平成28年厚労省年金局の調べです。
公的年金の支給がなされるのは、男性であれば昭和36年4月2日以降、女性であれば昭和41年4月2日以降の生まれの人に場合は65歳からとなります。
このことから、60歳で退職したケースにおいては、公的年金の支出までに5年間の無収入期間があるということが分かります。
松葉 直隆
60歳から65歳までの5年間を働くか働かないかによって、老後資金としてのお金をどの程度準備すべきかというところに大きな影響があります。
なお、年金額というのは、厚生年金であれば現役時代の報酬額、国民年金であれば納付していた期間によって受給可能な金額は変わってきます。
年金事務所では個人記録を管理していますので、50歳以上の人は、年金の見込み額を算出してもらうことができます。
サイト名は、日本年金機構『ねんきんネット」の年金見込額試算』です。
二つ目は退職金です。
退職金の支給額は、老後の生活資金準備のためにはとても重要なことです。
現役時代のうちに退職金だけでは不足する部分を、計画的に準備する必要があります。
男性一般労働者の平均額
・従業員1,000人以上の企業
大学卒
(管理・事務・技術職) 2,525万円高校卒
(管理・事務・技術職) 2,286万円・従業員999~300人 の企業
大学卒
(管理・事務・技術職)2,074万円高校卒
(管理・事務・技術職) 1,978万円・従業員299~100人の企業
大学卒
(管理・事務・技術職)1,635万円高校卒
(管理・事務・技術職) 1,447万円・従業員99~30人の企業
大学卒
(管理・事務・技術職) 2,343万円
高校卒
(管理・事務・技術職) 1,713万円
※厚生労働省 「就労条件総合調査結果の概要」 平成25より抜粋
自分自身の支給額について、勤務先の退職金規定を確認するなどで、、早めに確認をしておくことをおススメします。
ゆとりある老後生活のために必要な生活費
ゆとりのある老後生活を送るために必要な生活費についていくら必要なのかについて、生活費は、夫婦二人で「30万円以上」というアンケート結果が出ています。
ゆとりある老後生活に必要な生活費
日本生命が、自社の生命保険契約者を対象にインターネットにて「ゆとりある老後生活に必要な生活費」についてアンケート調査を行った結果が以下のとおりとなります。
70%以上の人が「夫婦二人で30万円以上必要」と回答しています。
「夫婦二人が、ゆとりある老後生活に必要な生活費(月額)」という質問に対して、一番多い回答は「35万円以上」でした。実に44%の人が挙げています。
44%という数字は、昨年の同じアンケートよりも21%も増えています。
回答者が感じている経済状況が厳しくなり、ゆとりのある生活を送るためには、もっと多くのお金が必要になったと考えている人が増えているのでしょう。
次に多いのが「30~34万円」で、こちらも32%の人が挙げています。※回答者8,798名(男性:4,580名、女性:4,218名)
夫婦二人の老後における生活に、「30万円以上必要である」と考えている人がなんと7割以上を占めているという結果が出ているのです。
単身者でも「20~24万円」は必要
「単身者が、ゆとりある老後生活に必要な生活費」で、一番多い回答は「20~24万円」で38%でした。
「30~34万円」を挙げている人は、昨年よりも11%増えました。
単身者の場合も、回答者が体感している経済状況の変化が影響しているようです。
二番目に多いのは「30~34万円」で、21%の人が挙げています。
ゆとりのある生活なら「夫婦二人で30万円以上」は妥当な結果
今回のアンケート調査による結果で出てきた「夫婦二人世帯で月に30万円以上が必要」「単身者の場合も20~24万円が必要」という結果に対して、思っていたよりもお金がかかると思いませんか?
しかし、生命保険文化センターによる同様の調査結果でも、「夫婦二人の老後の最低日常生活費は22.0万円、ゆとりある老後生活費は平均34.9万円」という結果が出ています。
松葉 直隆
とりあえず、これぐらいはかかると覚悟して、早い段階から老後の生活費の準備を始めることが必要なのではないでしょうか
年金生活費の実態
ひとり暮らし高齢者の生活費の実態
実情を具体的に知知ることによって、お金をどれくらい用意すればよいのかについての解決策が浮かび上がってきます。
高齢者の生活費の実態
高齢単身無職世帯の平均的な社会保障給付は毎月11万1,375円、そのうち可処分所得は10万7,648円となっています。
一方の支出額は毎月14万3,959円であるため、不足額は3万6,311円です。
これは毎年約44万円、30年間で1,300万円を超える不足額になります。
一方、国民年金しかもらっていない、年金が全くもらえないという人は、不足額の幅が毎月5万円や10万円になることも予想されます。
そう考えると、2,000万円はないと厳しい老後が待っていると考えたほうがよいでしょう。
自分のもらえる年金額は、現役の間に支払う金額と制度(国民年金・厚生年金)である程度決まってきます。
夫婦2人暮らし生活費の実態
同じように、「家計調査年報」2016年度版から高齢者夫婦の2人暮らしにおける生活費の実態を見ていきます。
高齢夫婦無職世帯の社会保障給付は平均19万3,051円で、そのうち手取り所得は18万2,980円です。
一方の消費支出額は23万7,691円のため、毎月の不足額は5万4,711円となっています。
不足額を年換算すると、約66万円です。これを30年間続けるとすると、実に2,000万円近くが自分の資産から持ち出して生活をやりくりする金額となるわけです。
厚生年金に入っていないとすると、給付金の額が10万円以下であることも十分考えられます。
また、今後政府の財政悪化による給付額削減もありえない話ではありません。
こうした事情を考えると、仮に夫婦とも死ぬまで大きな介護・医療費負担がないという想定でも、3,000万円近くは用意しておいたほうがよいことになります。
この金額は、なかなか貯金できていない現役世代にとっては、ハードルの高い額ではないでしょうか。
年金生活者の実態は赤字
無職の高齢世帯は毎月赤字
総務省統計局が公開している「家計調査 平成29年(2017年)平均速報結果」によると、
60歳以上で無職の単身世帯の家計は毎月4万円以上
同じく無職の夫婦世帯では毎月5万円以上
の赤字というデータが公開されており、このことから、既にこの世代の主な収入源である年金をはじめとした「社会保障費」のみでは暮らして行けないということがより鮮明に明示されたかと思います。
単身世帯は毎月4万円の赤字
この調査における「高齢者」とは60歳以上の方を指しています。
まずは以下条件の方の例を見てみましょう。
- 一人暮らし
- 高齢者
- 単身
- 無職世帯
収入は「114,027円」です。
このうち9割以上は「社会保障給付」つまり「年金」です。
支出は、税金などの「非消費支出」が12,544円、生活費などの「消費支出」が142,198円で、合計は「154,742円」です。
支出の方が多いので、「40,715円」の赤字が出ています。
単身世帯の赤字幅は、ここ数年大きくなっています。出典 総務省統計局
夫婦世帯は毎月5万4千円の赤字
次に、以下条の方の例です。
- 高齢者
- 夫婦
- 無職世帯
収入は「209,198円」です。やはり、9割以上が「年金」です。
支出の合計は「263,717円」です。
赤字は「54,519円」で、単身世帯よりも1万円以上増えています。
夫婦の方が年金が多く、暮らしやすそうに見えるのですが、単身世帯よりも赤字が大きいことは覚えておいて良いでしょう。出典 総務省統計局
勤労者世帯は、月3万4千円の黒字
次に、勤労者世帯のうち、世帯主が60歳以上である場合の家計の例を見てみましょう。
実収入は「410,799円」です。年金だよりの無職世帯に比べて、かなり多いのが特徴です。
支出も増えており、合計が「376,119円」です。
しかし収入が多いので、「34,680円」の黒字が出ています
働き続けるか、赤字を支える貯金が必要
『家計を黒字で維持していくためには、60歳を過ぎても労働を継続させること』の必要性が伺えます。
会社員の場合ですと、幸い現在では65歳までは労働を継続可能な環境も整いつつあります。
可能な限り、長く働いていたいところですね。
会社員ではない場合などは、毎月赤字となってしまうであろう老後の生活に向けて、若いときから貯金などの資産が必要となります。
例えば、単身世帯で赤字を埋めるためには1年間で48万8000円、10年間で488万円という金額が必要となってきます。
夫婦の世帯ならば、1年間に65万4000円、10年間に実に654万円かかってくることになります。
もちろん、この数字はあくまで平均値になりますので、老後の家計の状態は人それぞれで異なりますが、目指すべき資産に向けての、1つの目安になるのではないでしょうか。
60歳以上で働くと年金は
「在職老齢年金」によって、60歳を超えて、老齢厚生年金を受給しながら、厚生年金保険のある事業所で働いていると、報酬(給与)に応じて年金が減額されます。
収入が多い場合には「支給停止」つまり老齢厚生年金が出ない場合もあります。
65歳未満は「28万円」が制限
在職老齢年金は、「毎月の報酬」と「年金の月額」の関係で、減額される金額が決まります。
減額される金額を計算する方法は、「65歳未満」と「65歳以上」では異なっています。
「65歳未満」を見ると、
まず「毎月の報酬」と「年金の月額」の合計が「28万円以下」ならば、年金は減額されません。
「28万円を超える」場合は、減額されます。
減額幅の計算は、条件によって4つの方法があり、単純ではありません。
65歳以上で働くと年金は
65歳以上は「47万円」が制限
「65歳以上」の場合の、在職老齢年金の計算式は簡単です。
(総報酬月額相当額+基本月額ー47万円)×1/2
つまり、「毎月の報酬」と「年金の月額」が47万円を超えなければ、減額が始まりません。
ここまで見てきたように、一口に「在職老齢年金」と言っても、「65歳未満」と「65歳以上」では、別の制度と言ってよいほど異なります。
「65歳以上」の場合は、制限がゆるく、一般的な「再雇用制度」を利用して働く場合には、ほとんどの人が気にしなくても良いでしょう。
関係があるのは、経営者や役員などの収入が多い人に限られます。
問題となるのは「65歳未満」の制度なのですが、これについても、別の角度から解決されようとしています。
それは、「年金の支給開始が60歳から65歳へと引き上げられつつある」ということです。
つまり、ある年齢から下の人にとっては、厚生年金の支給の開始が「65歳」からに引き上げられてしまうため、「65歳未満」の在職老齢年金は、ほぼ関係がなくなってしまうのです。
具体的には、男性が「1961年4月2日以降生まれ」、女性が「1966年4月2日生まれ」の場合は、年金の支給開始年齢が65歳以上になります。
つまり、在職老齢年金について考える必要があるのは、2018年の時点で、男性は57歳以上、女性は52歳以上が目安となります。
よほど収入が多くなければ、それよりも若い人は、「在職老齢年金」を気にする必要はありません。
制限がきつい「65歳未満」の制度については、年金の支給年齢が引き上げられることで、なしくずし的に廃止に向かっていると言えます。
老後生活費の内訳
老後の一人暮らしの生活費は?
家計調査報告では、60歳以上・無職で一人暮らし(高齢単身無職世帯)の平均収入および平均支出が記載されています。
「家計調査年報(家計収支編)平成28年(2016年)III 総世帯及び単身世帯の家計収支」によると、
60歳以上の高齢単身無職世帯の月間平均収入(可処分所得)は10万7,648円、月間平均支出は14万3,959円です。したがって、毎月の家計収支は赤字であり、その額は3万6,311円と計算されます。
支出のうち多くを占めるのが、食料費です。月間で3万6,200円に達しており、全体の約1/4となっています。次に多いのが交際費(1万9,172円)、その後は教養娯楽費(1万7,374円)、諸雑費(1万5,328円)、光熱・水道費(1万2,643円)と続いています。保健医療費は7,967円です。
毎月の収支が赤字であるということは、その分を貯金などで穴埋めしなければなりません。
その額は年間で43万5,732円、仮に30年間同じ生活を続けるとなると1,307万1,960円が必要になります。
病気や怪我による入院、介護その他の支出を考えると、さらに穴埋めする金額は膨らむことになるでしょう。
老後の一人暮らしに備えるには?
数千万円を貯めるためには、少しでも早く計画的な貯蓄を始めるべきです。
仮に、貯金ゼロの人が毎月5万円の貯金を始めるとしましょう。
貯金が1,000万円に達するのは17年目、2,000万円に達するのは34年目です。
40歳を過ぎてから貯金を始めるのでは、遅いと言えます。
できれば20代から、貯金の習慣を身につけておくのが望ましいでしょう。
夫婦二人暮らしの場合
2017年時点で高齢者世帯は赤字状態
老後のお金については、まずはご自身やご家族の現状を把握し、理解することが必要です。
これからご紹介して参ります統計調査を見ても分かるとおり、家計の収支を年金だけに頼って黒字にすることは困難と言えます。
厚生労働省が2017年1月に発表した「平成 29 年度の年金額改定についてお知らせします」という報道関係者向け資料によると、2017年度の67歳以下の夫婦2人分の厚生年金は、前年度比で227円減り、月額22万1,277円となっています。
その一方で、退職した後の高齢者世帯の支出額は、収入額を上回る傾向にあることもわかっています。
2016年度の高齢無職世帯(世帯主が60歳以上で無職)の月間赤字額は平均で6万517円に達しています。
特に60~64歳の世帯では11万1,739円、65~69歳の世帯では8万1,439円の赤字です。
総務省統計局「家計調査年報(家計収支編)平成28年(2016年)II 世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯)」
毎月の赤字が6万517円とすると、年間で72万6,204円も貯金が消えていくことになります。
もしも同じ生活を30年間続けたとすると、赤字額は累積で2,000万円を超えてしまうことになります。
ということは、世帯主が90歳まで生きるとすると、それまでに少なくとも2,000万円の貯えがなければ破産する計算となります。
しかもこれは、夫婦のうちどちらも病気や怪我、介護などによる支出がないという仮定で計算された額なのです。
実際には、諸事情で数百万円の支出を強いられる可能性の方が多いのではないでしょうか。
松葉 直隆
生活費で切りつめられる部分は
これから年金額が大きく増加する可能性は国の財政上から低いので、まずは老後の赤字幅を少なくすることを考えてみましょう。
家計調査では、高齢夫婦で、かつ無職の世帯の家計収支の平均値内訳を公表しています。
上述の家計調査年報の結果によると、消費している支出の中で最も割合を大きく占めているのが「食料費」です。
その割合は、実に全体の27.3%に達しており、金額にすると約6万4,827円になります。
そして、続いてカテゴリごとの金額が以下のとおりです。
- 交際費…約2万9,033円
- 教養・娯楽費…約2万6,303円
- 交通・通信費…約2万5,256円
これらを削れれば、支出額を切り詰めることにつながりますが、特にこの中で、食料費をもう少し削減できるという世帯は少なくないのではないでしょうか。
意外なのは、保健医療費はおよそ1万5,044円しかかかっていません。
これは、光熱費や水道費でかかってくるおよそ1万8,851円や、社会保険費としてかかるおよそ1万7,171円にも及ばない額です。
松葉 直隆
またまた、自分の経験を出して恐縮ですが、持病があり、新薬が発売されたので処方して貰ったところ、2週間で2万円程度支払うこととなりましたが、医療費が月に4万円は年金暮らしにとっては痛い出費です。
また、他の治療法があって、医者はすすめますが、その治療を受けるには、月に34万円の治療費が掛かります。
松葉 直隆
到底診療を受けれる経済状態ではありません。
このような場合は、保険医療費以外の切り詰めを目指すか、赤字幅がより拡大するといった想定を持って行動計画を練る必要性があります。
家計調査年報をはじめとする統計データも参考にし、次に現在の自分たちの家計簿を見直すしかありません。
一人暮らしの時にも説明しましたが、家計簿をつけていない場合は、早急に家計簿をつけるようにし、支出と収入を必ず可視化させましょう。
可視化することによって、ご自身やご家族が知らず知らずの内にどこにどの程度お金を使っているのか、またどの程度貯蓄ができているのかを把握できるようになるでしょう。
ゆとりある老後生活のために必要なこと
資産運用して資産形成を築く
老後の生活のためにどれくらい貯蓄する必要があるのか、自分たちの支出状況はどうなのかを把握したら、次にどの程度の金額をどのような方法で貯蓄するのかの行動計画を立てます。
仮定として、「現在40歳で金融資産300万円、60歳までに目標3千万円を貯蓄」とします。
すると、20年間で2,700万円以上の貯金が必要となります。
単純計算で毎年135万円、毎月11万円以上の貯金額です。
40歳で「月11万円以上の貯金」は、住宅ローンなどもなくて50万円以上の高額な給料をもらっている人以外の一般家庭では厳しい金額と思われます。
月におよそ10万円の貯金をするためには、40歳から老後に必要となる最低目安額の3,000万円を目指すためには、必ず行わなければならないことなのです。
でも、3,000万円を捻出するために、金融機関に預貯金するだけでは、達成が困難な世帯も少なくないと思います。
このことから、金融機関に預貯金をし続けるだけではなく、資産運用も積極的に行ってお金を増やす仕組み作りを目指すことが必要です。
若いうちから、長期的な視野で資産運用を継続するというわけです。
市況の悪化による元本割れのリスクもあることを念頭に置く必要はありますが、資産運用初心者でも続けやすいiDeCo(個人型確定拠出年金)や、NISAなどの制度が国によって作られています。
松葉 直隆
定年後も再雇用などで働く
定年後も働くなら、同じ会社で働きたいという希望を持っている方も多いのではないでしょう。
2013年4月1日からは、60歳定年後の希望者全員が65歳まで働けることになりました。
「定年後再雇用制度」は、平成18年4月1日から適用されることになったものですが、基本的に新たな雇用契約の締結であるため、一般に定年前とは労働条件が違っています。
それと、勤務時間数や勤務日数が減少した場合、社会保険や雇用保険に加入できないこともあります。
また、社会保険に加入できる場合は、老齢年金の支給額が収入額に応じて減額になる場合もあります。
定年後における再雇用は、待遇面で不利な点もありますが、逆にメリットとして慣れた職場や人間関係の中で安心して引き続き働くことができるという点があります。
確定拠出年金の利用を
老後の生活費を準備する手段として注目されるものに確定拠出年金があります。
今までの説明で老後の生活に困らないためには、若いうちから準備をすることが大切ということが分かってきたことと思います。
これは、金融機関で口座を開き、毎月一定の金額を積み立てて、年金を準備するという制度になります。
種類は、会社員を対象とした「企業型」と自営業者・主婦などを対象とした「個人型」の2種類があります。
加入者が60歳になった時から、年金または一時金として受け取ることができます。
確定拠出年金のポイントとして、積み立てた掛金が全額「所得控除」を受けられる対象になる、つまり”税制優遇”がされる対象となることです。
松葉 直隆
通常の証券口座で同じものを買うと税金がかかるのですが、運用によって儲けた利益に税金がかからないのもポイントになります。
税制優遇が受けられる非常におトクな制度ではあることに加えて、2017年から利用できる対象者が広がったことからも注目度を増しています。
もし、運用利回り3%で、毎月1万円の掛金を30年間払った場合、年金資産残高は約584万円となります。
確定拠出年金を夫婦で30歳から始め、それぞれ1万円ずつ払ったとしても、約1,000万円以上もの年金資産が作ることができます。
ただし、見落としがちな注意点として、確定拠出年金を実施している口座の管理料が必要となるケースが多いことや、利用できる金額に上限があることなど挙げられます。
松葉 直隆
ゆとりのある老後生活を送るための貯金額は?
一般的な老後資金は5,000万円
ゆとりある老後生活を送るための貯蓄額を紹介する前に、一般的な老後の生活を送った場合に一体いくらの老後資金が必要なのか紹介します。
今まで話した中で老後資金は3,000万円必要と言いましたが、これは最低限の金額で、生活するためのぎりぎりの金額です。
それでは、ゆとりのある老後生活を送るためにはいくら必要でしょうか。
ゆとりある老後の生活費は、34.9万円
では、一般的な老後資金の必要額が5,000万円であるということを基にして、ゆとりある老後の生活を送るには月に一体いくら必要なのでしょうか。
生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、老後に最低限の生活を送るための費用は平均で22万円ということです。
これにゆとり資金として上乗せが必要な金額は月におよそ12.8万円となり、合わせて約34.9万円の生活費を用意できれば”ゆとりある老後の生活”が送れるとしています。
毎月の支出が約34.9万円とした場合、老後資金はどの程度必要となるかを計算してみましょう。
60歳から85歳までゆとりある老後の生活を送った場合の必要額
支出:34.9万円×12ヶ月×25年間=10,470万円
収入:22万円×12ヶ月×20年=5,280万円(年金は65歳から支給のため、20年間で計算)
年金だけでは5,190万円の赤字となりますので、月173,000円上乗せした蓄えが必要となります。
安心した”ゆとりある老後の生活”が送れると言えるのは、老後資金が5,000万円必要と言われる理由を考慮すると7,000万円程度の老後資金が確保できることではないでしょうか。
老後資金の貯め方はどうすべきか
2017年5月に総務省が発表した1世帯の貯蓄平均額は1820万円(あくまで平均です)だったことからも、ゆとりある老後資金を確保することは非常に難しいように思えます。
実際に老後資金を貯金するためにどのような取り組みをしているのか日本FP協会の「老後とお金に関する調査」をみてみましょう。
預貯金(定期預金を含む)で準備をする
全体40.9%
50代39.0%
60代48.0%
70代以上49.0%
老後も働く
全体35.7%
50代39.0%
60代35.0%
70代以上12.5%
金融商品で増やす
全体16.7%
50代17.5%
60代18.0%
70代以上20.5%
5,000万円貯金するために、毎月どの程度の貯金が必要か
5,000万円÷(65歳-22歳)÷12ヶ月=96,899円
新卒の22歳から定年退職の65歳までひたすらに毎月10万円の貯金をしなければ5,000万円の貯金は作れない計算になります。
ここで多くの方は”退職金”に期待をしていると思います。
実際、大企業であれば退職金が2,000万円近く支給されるような会社もありますので貯金をまとめて増やすことが可能です。
ただ、退職金に期待するのは少々危険かもしれません。
老後資金について
夢や希望は健康だからこそ実現できる
夢や希望を体験・実現のためには、心身が不健康な状態では、どんなに潤沢にお金があっても困難なことです。
豊かで自由な老後の必須条件として、一つ目の要素は「心身の健康」です。
松葉 直隆
また、心の健康はストレスのない楽しい人間関係が培います。
現在問題になっているのが、リタイア後のうつ病です。
夫は社会的肩書きの喪失や人間関係の変化、持て余す自由な時間など、妻は一日中家にいる夫への対応や一人で過ごす時間の喪失などが、その大きな要因と考えられています。
お金は健康で生きがいのある人生を過ごすための土台
「お金」は、豊かな老後の土台となる最も重要な要素です。
土台がしっかりしていなければ、いくら健康でも生きがいがあっても人生を満喫することはできません。
超高速で進む少子高齢化の日本が抱える問題のひとつに、高齢者関連の社会保障費の膨脹があります。
公的保障を望むことは無理な状況になってきていますので、自分で資産を作る努力が必要です。
松葉 直隆
早くからの準備が大切
日本人の平均寿命は女性は87.26歳、男性が81.079歳(2017年度)と過去最高となっています。
松葉 直隆
多くの人は子育てや住宅ローンの返済などを終えていることでしょうが、ほとんどの人が収入については現役時に比べて少なくなると思います。
老後の収入といえばやはり公的年金が主になりますが、公的年金だけでは月々の家計は赤字になると言うことが、総務省家計調査年報(家計収支編)平成27年度のデータによって出ています。
さらに、公的年金が支給されるのは原則として65歳からですか、60歳でリタイアすると、60~64歳までは生活費のほとんどを預貯金でまかなわなければいけないということになります。
現在30歳の人ならば、60歳になるまでにまだ30年もの時間があります。
この30年間で必要額を確保できるよう、月々はもちろんですが、ボーナスでも貯金を心がけてください。
月々とボーナス合せて年間100万円を貯金することで、単純計算で3,000万円の最低限の老後資金が確保できます。
月に5万円、ボーナスで20万円を2回で年間100万円の貯金ができます。
会社の給料から天引きにしておけば、今月は給料が少ないからやめておこうとか躊躇することもなく定期的に貯蓄できます。
手元に入ってくる金額で人って生活するものなのです。
なければないなりの生活をしますから、ぜひ天引きをおススメします。
豊かな老後は「運用なし」では難しい?
上流の老後生活水準とは?
どのくらいの水準を上流の豊かな老後と呼ぶのでしょうか。
それは人により異なると思いますが、生命保険文化センターの生活保障に関する調査(平成28年度)によると、
「ゆとりある老後生活費」は月平均35万円という結果が出ています。
また、ゆとりある生活ための資金用途は、1位「旅行やレジャー」、2位「身内との付き合い」、3位「趣味や教養」の順になっています。
一方、収入を見てみると、世帯別の年金収入は月平均28万円※厚生労働省年金局データ
これは、1ヶ月に平均7万円を現役世代に作った貯蓄から取り崩していくことになります。
松葉 直隆
豊かな老後は運用しないと難しい?
誰もが、豊かな老後を送りたいと思っています。
しかし、収入が決まっている年金暮らしになると、その決まった収入だけで生活している中で支出を減らすことは厳しいことです。
- 収入を増やす
- 支出を減らす
- 運用をする
しかし、年金暮らしになって、収入を増やしたり、支出を減らすことは難しいことです。
運用することを考えなければならないのではないでしょうか。
預貯金では、低金利の時代満足のいく金額を確保することは難しいです。
運用することを考えた時にすぐに頭に浮かぶことはリスクではないでしょうか。
そして、それを実現する運用として「投信積立」や「確定拠出年金」などがあげられます。
ぜひ、若い段階から、これらの運用について検討して下さい。
豊かな老後の生活を送るためには出来るだけ早い時期から始めることが大切です。
お金の使い方も「習慣」
お金の使い方も習慣です。
お金があればあるだけ使う人もいれば、コツコツと貯蓄する人もいて習慣は人それぞれです。
まとめ
今回は、『安心してゆとりある老後生活資金って、いくら準備すればいい?』について紹介しました。いかがでしたでしょうか?
老いは必ずだれにも訪れる平等なものです。
そのときに若いときに計画的に蓄えをしておけば良かったと後悔してももう遅いのですから、この記事を見た今から計画を立てて実行してください。