妊娠から出産までの十月十日。家族が増える喜びはこの上ないものですよね。
しかし、そんな嬉しさの反面、金銭面での不安を抱えている家庭が多いのも事実。
場合によっては、金銭面の不安が先行してしまい「子どもを授かりたいけどまだ時期が早い」「二人目を授かりたいけど無理かな・・・」などと躊躇してしまっている家庭もあるかもしれませんね。
漠然と不安を抱えるのではなく、まずは妊娠から出産までにどれくらいの費用がかかるのかということと、どんな補助制度があるのかということを見てみましょう!
この記事では、妊娠から出産後までのお金の流れを時系列に沿って解説していきます。出産までに必要な費用をイメージしてみてくださいね!
目次
1.妊娠から出産までのスケジュール
1−1.妊娠がわかったら?
1−2.全14回!妊婦健診はこんな流れ
1−3.マタニティライフで必要なものあれこれ
1−4.出産までに必要なものあれこれ
2.妊婦健診受診券とは?
2−1.妊婦健診受診券、どこでもらえる?どう使う?
2−2.里帰り出産をする場合は?
3.もしも入院となってしまったら・・・?
3−1.妊娠中に入院になるケース
3−2.傷病手当とは?
4.ようやく突入!産休中に受けられる補助
4−1.産前産後休暇とは?
4−2.仕事を辞めるタイミングによってはもらえない!?
5.地域でこんなに違う!?出産時のお金
5−1.入院費用と出産一時金
5−2.もしも帝王切開になったら?
6.育児休暇中のお金
7.抜かりなくやっておきたい手続き2つ
7−1.児童手当は出産後速やかに申請!
7−2.陣痛タクシーも対象!?医療費控除とは?
8.まとめ
目次
1.妊娠から出産までのスケジュール
「妊娠がわかったらどうすれば良いの?」「出産までどんなスケジュールで過ごすことになるの?」など、初めての妊娠の場合はわからないことも多いですよね。
妊娠・出産に関する補助制度を紹介していく前に、まずは妊娠から出産までのスケジュールや多くの妊婦さんが揃えたものなどを見ていきましょう。
1−1.妊娠がわかったら?
妊娠がわかったら、まずは産婦人科を受診することになります。
心拍が確認でき予定日が確定すると、次は役所に行って妊娠届を提出します。ここで初めて母子手帳を受け取ることになるのです。
母子手帳の受け取りと同時に、「妊婦健診補助券」というものをもらうことになります。
妊婦健診補助券をもらうまでにかかる産婦人科の医療費は特に補助がないため全額自己負担となり1回の受診につき10,000円前後かかってきますが、妊婦健診補助券をもらい妊婦健診が始まると国から一部または、回によっては全額補助してもらえるようになります。
お住いの自治体によっては、子育て支援制度が充実していた場合、母子手帳と妊婦健診補助券以外にも、地域のお店の割引がきくカードを交付してもらえるなんてこともあるようです。
1−2.全14回!妊婦健診はこんな流れ
母子手帳と一緒に妊婦健診補助券を受け取ったら、いよいよ妊婦健康診査(妊婦健診)が始まります。自治体によって多少の差はありますが、妊婦健診は全14回の内容となっています。
妊娠8週頃〜24週頃までは4週間に1回、24週頃〜36週頃までは2週間に1回、36週頃〜39週頃までは1週間に1回のペースで健診を受けることになります。
最初のうちの4週に1回の時期には「次の健診まで間隔が長くて赤ちゃんの様子が気になる!」なんて声もよく聞きます。
2週間に1回の時期に突入すると、これまでより頻繁に胎児の様子を確認できるのが嬉しいことでしょう。
自治体によって異なってくることもあるためあくまでも一例ですが、次のような健診内容になっています。
回数 | 時期 | 検査内容 |
第1回 | 妊娠8週頃 | ①基本的な検査 ②血液検査(血液型検査、貧血検査、血糖検査、HBs抗原検査、HCV抗体検査、梅毒血清反応検査、風疹ウイルス抗体検査、HIV抗体検査、HTLV-1抗体検査) ③子宮頸ガン検査 ④超音波検査 |
第2回 | 妊娠12週頃 | ①基本的な検査 |
第3回 | 妊娠16週頃 | ①基本的な検査 |
第4回 | 妊娠20週頃 | ①基本的な検査 ②超音波検査 |
第5回 | 妊娠24週頃 | ①基本的な検査 |
第6回 | 妊娠26週頃 | ①基本的な検査 ②血液検査(貧血検査、血糖検査) |
第7回 | 妊娠28週頃 | ①基本的な検査 |
第8回 | 妊娠30週頃 | ①基本的な検査 ②クラミジア核酸同定検査 ③超音波検査 |
第9回 | 妊娠32週頃 | ①基本的な検査 |
第10回 | 妊娠34週頃 | ①基本的な検査 ②B群溶血性レンサ球菌検査 |
第11回 | 妊娠36週頃 | ①基本的な検査 |
第12回 | 妊娠37週頃 | ①基本的な検査 ②超音波検査 |
第13回 | 妊娠38週頃 | ①基本的な検査 |
第14回 | 妊娠39週頃 | ①基本的な検査 |
基本的な健康診査では、問診による健康状態の確認や体重測定、血圧測定、尿検査、保健指導などが行われます。
第1回目の妊婦健診では、検査項目が多くなっているので、最初だけ妊婦健診補助券プラス1万円程度の持ち出しがある場合が多いようですが、その他の回では妊婦健診補助券で補いきれなかったとしてもプラス数千円以内に収まることが多いです。
妊婦健診は全額自己負担の保険適用外ですが、妊婦健診補助券を使うことで大きな金額がかからずに済むことが多いようです。
ただし、どれだけ優遇されているかというのは自治体によって異なってくるので、ご自身の住んでいる自治体のホームページで確認してみてください。
これから引越しを考えているなどという場合には、妊婦健診補助が充実している自治体を選ぶというのも一つの手かもしれないですね。
1−3.マタニティライフで必要なものあれこれ
マタニティライフが始まると、何かと必要なものが増えてくるものです。
「妊娠期間はたったの約10ヶ月だし、贅沢しないであるもので何とか済ませよう」という方もいらっしゃいますが、後半になってくるとお腹もどんどん大きくなってくるためそうはいかないことも多いです。
多くの妊婦さんがマタニティライフが始まってから新たに購入したものには次のものがあります。
・マタニティ下着(またはこれまでよりサイズの大きい下着)
・マタニティ寝巻き
・マタニティ服(ワンピースやズボンなど)
・抱き枕
・腹帯や骨盤ベルト
下着類は、妊娠して数ヶ月経過後にこれまでより大きなサイズのものを購入する方が多いです。
会社勤めをしている方は通常のストッキングではだんだんときつくなってくるため、マタニティ専用のストッキングに切り替えたという話もよく聞きますね。
寝巻きは、普段履いていたものでは「ゴムがきつくて履けなくなった!」という声が多いです。中にはご主人の部屋着を着て過ごすというやり方も。
洋服については、妊娠前に着ていたゆったりとしたワンピースなどを着るケースもありますが、妊娠週が進むにつれてやはりお腹周りがきつくなってしまうため、ほとんどの方が新たにマタニティ用か大きなサイズの服を購入するようです。
初期の頃に買ったものを後期に入ってからも着続けるためには、やはりお腹にゴムが入っていないタイプを選ぶことが重要です。
抱き枕は、マタニティ用の通販などでもよく売られていますが、こちらも妊娠中期〜妊娠後期に入りお腹がどんどん大きくなってくるとその必要性を感じるようになってくるようです。寝るときに少しでも楽な体勢でなれるのであれば・・・と購入される方が多いです。ただ、マタニティ専用でなくても使っていない枕やタオルで代用しているという声もあります。
腹帯や骨盤ベルトについては、やはりこちらも妊娠中期〜妊娠後期頃に必須となってくるアイテムです。
大きなお腹になり、「動くのが大変!立っているのが辛い!疲れやすくなった!」などという症状は誰にでも出てくるものですが、これらの症状を緩和する効果があります。個人差はありますが、妊娠中期以降、腹帯やベルトを巻かないと外出するのが大変になってしまって手放せないというケースもあるようです。
正しい方法で巻きつけなければなかなか効果を感じにくいのですが、最近では簡単に巻くことができる商品も出てきています。一枚一枚が高価なので、1セットだけ購入して済ませているという方も多いです。
このように快適なマタニティライフを送るために必要になってくるアイテムがあります。妊娠中の限られた期間しか使わないものもあるので、出来るだけ出費を抑えたいところではありますが、少なくとも3〜5万円程度は見積もっておく必要がありそうです。
無理をして小さめの下着や洋服で済ませるのは体を締め付けることになってしまうため、サイズに合ったものを着用したいですね。
1−4.出産までに必要なものあれこれ
「出産までに必要なもの」と言えば、赤ちゃん用の肌着やおむつ、布団などを想像するのではないかと思いますが、実は妊婦さん本人のために必要なものもあるんです。
それは出産の入院の際に必要なものです。最近では、病院でほとんどのものを用意してくれるようになっていて自分で購入する手間が省けるということも多くなっているようですが、ご自身で全て揃えて持っていくというケースもあります。指定されるものは病院によって異なりますが、一例を紹介します。
・前開き寝巻き
・産褥ショーツ
・ガウン
・カーディガン(季節によって)
・乳パット
・スリッパ
・バスタオル
・ガーゼハンカチ(授乳用)
もちろん、ご自宅にあるものがあればそれを持っていくのも良いでしょう。ただ、初産の場合には揃っていないものが多い場合もあるので、入院グッズの準備にも10,000円程度見積もりをしておく必要がありそうです。
出産がだんだん近づいてきたら、少し気が早いと思ってもバッグに荷造りしてしまい家族と情報共有しておくのがおすすめです。
2.妊婦健診受診券とは?
妊婦健診受診券を使うと全14回の健診費用の一部または全額がカバーされるということは前章でお伝えしてきました。
ここでは、もう一歩踏み込んで妊婦健診受診券の仕組みなどを確認していきます。
里帰り出産をする場合には、少し手続きが複雑になることも・・・。仕組みをしっかり理解して不安を少しでも解消していきましょう!
2−1.妊婦健診受診券、どこでもらえる?どう使う?
妊婦健診受診券は、お住いの自治体の役所に妊娠届を出したタイミングで母子手帳と一緒に受け取ることができます。
妊娠届というのは、「妊娠がわかっただけ」では提出することができず、病院でしっかりと心拍確認が出来、医師から役所で母子手帳をもらうように指示を受けた後でなければ提出することができません。
心拍確認ができるタイミングは個人差があるので、妊娠を確認して初めての受診から2回、3回と病院へ行ってようやくという場合もあります。
11週以内に提出することが推奨されていますが、その頃までには確認できていることがほとんどです。
自治体によって妊婦健診受診券の見た目にこそ違いがありますが、一つの冊子になっている場合が多いです。
毎回産婦人科を受診する度に、母子手帳と一緒に持参しその冊子からビリビリと切り取って使うというのが一般的です。健康保険証、診察券を提出するタイミングで受付に提出します。
妊婦健診の検査項目や自治体によって毎回の補助金額は異なってきますが、毎回5,000円〜10,000円程度の補助金が出る場合が多いです。その補助分を超えた金額は自己負担として支払う形になります。
補助券を忘れてしまった場合には全額自己負担となってしまうので注意が必要です。
2−2.里帰り出産をする場合は?
「住み慣れた土地で出産したい」「産後のケアをしてくれる家族の近くで出産したい」などの理由で里帰り出産を選択される妊婦さんも多いのはないでしょうか?
妊婦健診補助券は、自治体ごとに発行しているため、自治体が変われば最初にもらった妊婦健診補助券を里帰り先で利用することはできません。
「じゃあ、全額自己負担になってしまうの?」と心配な方も多いかもしれませんね。
でも大丈夫です。里帰り先で支払った自己負担医療費は後日お住いの自治体の役所に領収書を提出すると補助の金額分のキャッシュバックを受けることが可能です。
一旦、立替払いをしなければならないというデメリットはありますが、里帰り出産をするからといって金銭的に不利になることはないのです。
あらかじめ里帰り出産をすると決めている場合には、妊婦健診補助券をもらったタイミングで細かな手続き方法などを役所職員に確認しておくのも良いかもしれませんね。
3.もしも入院となってしまったら・・・?
妊娠から出産まで、何事もなく無事に過ごすことができた方もいれば、妊娠初期からつわりなどの症状が重く入院となってしまうことも珍しくありません。
どんな症状で入院となる場合があるのかということや、入院となってしまったときのお金についても確認しておきましょう。
働いている妊婦さんは補助を受けられる場合もありますよ!
3−1.妊娠中に入院になるケース
妊娠中に入院になる理由は様々ですが、多く耳にすることがある入院の理由について見ていきます。
まず、妊娠初期に多いのはつわりが悪化して起こる「妊娠悪阻」です。つわりというのは多くの妊婦さんが多かれ少なかれ経験していますが、尿検査でケトン体が陽性であることや体重現象や脱水の症状が著しい場合などに入院となります。
また、中期以降になると「切迫流産」、「切迫早産」などで安静に過ごす必要が出てきたり、「妊婦高血圧症候群」で食事療法が必要になり入院となるケースもあります。
3−2.傷病手当とは?
産休前に入院となってしまった場合には、仕事をしている妊婦さんが気になるのはやはり「お金」のことではないでしょうか?
産休前の入院で仕事を何日も欠勤しなければならなくなったときに受けられる補助があります。それが「傷病手当」です。
対象となるのはご自身の勤務先の社会保険に加入している方。病気で欠勤したときに4日目からこの傷病手当の対象となってきます。3日間は受けられませんのでご注意くださいね。
受け取ることができる金額は普段働いているときの金額丸々・・・とはいきませんが日当の3分の2程度を受け取ることができます。
「有給も残っていない、無給になっちゃうの?!」というときにこういった手当があるのは安心につながりますよね。ちなみに、有給が残っていてそちらを利用することができる場合には傷病手当の対象外となります。
何事もなく出産を迎えられるのが一番ですが、このような補助があることは覚えておいて損はないでしょう。
また、妊娠中の入院は健康保険適用の治療であることが大半です。入院が長引き、医療費が高額になった場合には、「高額療養費制度」を利用することも可能です。
高額療養費制度とは、ひと月の医療費の上限額が所得によって定められており、その上限額を超えた部分は支払わなくて良い、またはあとから申請することで返還されるという制度です。
民間の医療保険に加入していれば、入院給付を受けられる可能性も高いです。
4.ようやく突入!産休中に受けられる補助
妊娠・出産をきっかけに仕事を辞めるというお母さんもいらっしゃいますが、出産後も仕事を続けていく場合には「産前産後休暇」を取得することができます。
「産休」を取れることは知っているけれど、いつからいつまでということを正確に把握している方は少ないかもしれませんね。ここでは、産休制度と産休でもらえるお金について見ていきます。
また、仕事を辞める場合でもタイミングによっては補助がもらえることも。知らずに逃してしまうより、制度概要を知った上でスケジュールを組むのも賢い選択です。確認してみましょう!
4−1.産前産後休暇とは?
産前産後休暇とは産前6週間、産後8週間の期間の取ることが可能な休暇です。
より正確に言うと、産前6週間については労働者が希望すれば取ることができる休暇、産後8週間は必ず休まなければならない休暇です。この違い、意外と知られていないようです。
人によっては出産予定日直前まで働くなんてケースもあるようですが、やはり身体が第一なのでできることなら6週間前から産休に入っておくというのが理想ですよね。
この期間「出産手当金」という補助を受けることができます。こちらも傷病手当と同様に1日当たり、日当の3分の2程度の金額をもらえる制度です。
やはり、対象になってくるのはご自身の勤務先の社会保険に加入している方。1年以上被保険者期間があることも条件になっています。ご主人の扶養に入りながらパートをしている場合などには対象にならないのでご注意ください。
4−2.仕事を辞めるタイミングによってはもらえない!?
実は、出産手当金は仕事を辞めてしまう場合にも受け取ることができるんです。しかし、条件があるので、タイミングによってはもらえると思っていた出産手当金がもらえなかったという結果になってしまった人もいるようです。
まず、一つ目の条件は勤務を継続する方と同様にご自身の勤務先の社会保険の加入期間が1年以上あること。
そして、二つ目が出産日もしくは出産予定日から6週間以内に退職をしていることです。
この6週間は産前休暇として定められている日数と同じですよね。つまり、産前休暇の期間内の退職でなければもらうことができないんです。
場合によっては、体調不良などの理由で産休に入るよりも前に退職してしまうなどというケースもあるかもしれませんよね。その場合は対象にはなりません。
5.地域でこんなに違う!?出産時のお金
出産費用、実は地域間でかなり大きく違いがあることはご存知ですか?想像はつくかもしれませんが、都心ほど高く、地方ほど低い価格となっている傾向があります。
その他にも、病院の規模などによっても違いはあります。
この章では、出産費用がどれくらいなのかということと、それに対する補助制度、また保険適用となる場合などについて整理してみたいと思います。
5−1.入院費用と出産一時金
出産費用をカバーするために国からの補助として受け取ることができる「出産一時金」。その金額は子ども一人につき42万円です。
その金額でカバーできるのか、それとも自己負担で持ち出しがあるのかというのは地域によっても違いがあるようです。
全国の出産費用平均額で最も高額となる3県と最も金額を抑えられる3県を紹介します。
まず、最も高額となるのはやはり東京都です。平均はなんと62万円程度。第2位が神奈川県で56万円。次いで栃木県の54万円となっています。関東地域に集中していますね。やはり都心に近いほど高額のようです。
そして、最も価格を抑えられるのは鳥取県で39万円。次いで、熊本県、沖縄県でどちらも41万円程度の平均出産費用になっています。(「出産費用の都道府県別平均値、中央値(公益社団法人国民健康保険中央会)」より参照)
首都圏となってくると、部屋の種類によって差額分を支払うことになる「差額ベッド代」の費用が高額になってくることも平均出産費用を押し上げる一つの要因になっているようです。
差額ベッド代とは、個室や2人部屋などを利用したときに発生する割増料金のことです。もちろん保険適用外なので、部屋選びをするときには人数の少ない部屋ほど高額になる可能性があるということを覚えておくと良いでしょう。
また、その他にも病院の規模(種類)によっても費用は変わってきます。公立病院よりも私立病院の方が高額、総合病院よりも個人病院の方が高額になると言われています。
また、普通分娩なのか無痛分娩なのかということによっても数万円の差が出てきますし、出産が休日や早朝などの時間外に該当した場合にも更なる加算がされます。
これら全てを踏まえて、最も高額な東京都で平均62万円、最も割安な鳥取県で39万円となっています。
あくまでも平均値なので、東京で出産する場合にも出産一時金でカバーしきれる場合もあるかもしれませんが、やはり都心にお住いの方は「出産一時金にプラスアルファーの自己負担の準備が必要」と考えておくのが良いかもしれません。
5−2.もしも帝王切開になったら?
逆子、前置胎盤、妊婦高血圧症候群など理由は様々ですが、帝王切開で出産になるケースも少なくありません。4人に1人が帝王切開になると言われています。
帝王切開は手術をしたり、通常よりも長い期間の入院が必要になったりと何かとお金がかかってくるイメージが強いかもしれません。しかし、蓋を開けてみると「思ったより費用が安く安心した!」なんて声も聞こえてきます。
その理由は、帝王切開が健康保険適用の出産方法だからなんです。先述の差額ベッド代や食費などはその対象ではありませんが、入院費や分娩費の一部が保険適用で3割負担となってきます。
また、高額療養費制度の対象にもなるため所得に応じたひと月の自己負担上限額を超えた場合は、国から超えた部分の医療費が補助されます。
このような理由で帝王切開となった場合でも普通分娩と比べて極端に高額になるケースはほとんどないでしょう。逆に健康保険、高額療養費制度、更にご自身で任意で加入していた民間医療保険が適用になった結果、黒字になったなんて声も聞こえてくるほどです。
分娩方法で最も高額になりやすいのは、普通分娩でも帝王切開でもなく無痛分娩を選択した場合と言われています。
6.育児休暇中のお金
産前産後休暇が終わり、続けて育児休暇を取得する場合にはどれくらいの補助を受けることができるのでしょうか?育児休暇取得を考えている人にとってはとても気になる話ですよね!
出産後に育児休暇を取る場合、多くの会社ではその期間の間は「無給」となります。しかし、条件を満たせば「育児休業給付金」という補助を受けることができます。
その条件は、第一に、勤務先の雇用保険に加入していて育児休業取得後も働き続けること、第二に、育児休業開始前2年間に1ヵ月に11日以上働いた日が通算12ヵ月以上あること、第三に、育児休業を取り、育児休業開始から1ヵ月ごとの区切りに休業日が20日以上あることです。
これらを満たせば、育児休業給付金を受け取ることができる対象となります。ただし、育児休業中に会社から育児休業開始前の給料の8割以上の給料が出ている場合は対象外です。
もらえる金額は下記の図のように、育休開始から180日間は育児休業開始前の給料の67%、それ以降は50%となります。
基本的には子どもの1歳の誕生日の前々日までですが、一定の要件を満たせば、2歳の誕生日の前々日まで延長が可能です。
手続きは役所ではなく、ハローワークで行います。過去に失業保険の手続き経験がある方はイメージが沸きやすいかもしれませんね。
育児休業給付金は、2ヵ月ごとの振込となりますが、第一回目の支給までには5ヵ月程度かかってくることもあるようです。育休に突入したからといってすぐに給付されるわけではないのでご注意ください。
7.抜かりなくやっておきたい手続き2つ
出産後しばらくの間は、自由に動くことができなかったり、色々な手続きや新しい環境作りに追われたりと思うように行動できないもの。
旦那さんが仕事で忙しいなどの場合には、手続き関係が少々後回しになってしまうことも考えられます。しかし、実は産後抜かりなくやっておきたい手続きがあります。
「期限を過ぎてしまって後悔!」となる前にしっかりと把握しておきましょう。
7−1.児童手当は出産後速やかに申請!
「児童手当」とは、3歳までの子どもは月額15,000円、それ以降は中学校を卒業するまで月額10,000円を国が補助してくれる制度です。
産まれた月の翌月分から受け取ることができるのですが、実は「出産翌日から15日以内の申請」が必要なんです!
手続きは役所で行うので、出生届の手続きと一緒に行ってしまえば抜かりなくできるかと思いますが、これを知らずに15日が経過してしまっていた場合は1ヶ月分の15,000円を逃してしまうことに・・・。
非常にもったいない話なので、15日以内に申請できるようご主人やご家族としっかり打ち合わせをしておくのも大切かもしれませんね。
ちなみに、児童手当は第3子以降であれば15,000円が支給される期間は小学校卒業まで延長となります。
また、残念ながら「所得制度」も設けられており、例えば夫婦と児童二人の家庭では、960万円以上の所得があると受け取ることができる金額が減額されてしまい月額5,000円になります。
7−2.陣痛タクシーも対象!?医療費控除とは?
児童手当の申請とは異なり、こちらはそれほど急ぎの話ではありません。
「医療費控除」をご存知ですか?「医療費控除」とは、その年の1月1日から12月31日までの間の医療費のトータルが10万円を超えていた場合に確定申告をすることによって10万円を超過した金額部分について所得控除を受けることができる制度です。
「医療費のトータル」と一言で言っても考え方が少し複雑なので何が対象で何が対象とならないかを説明していきます。
まず、医療費のトータルには出産一時金、高額療養費制度、民間医療保険などでカバーされた部分は入りません。
そして、意外かもしれませんが、保険外の自己負担の医療費は加算の対象となります。また、病院に行く際に利用した公共交通機関の交通費や陣痛タクシーなども対象です。タクシーを利用したときには必ずレシートを取っておくようにしたいですね。
確定申告の時期に5年分まで遡って申告できるので必ずしも翌年に手続きをする必要はないのですが、受け取れるものは早く受け取ってしまいたいものです。医療費のトータルが10万円を超えていた場合には、余裕があれば翌年の確定申告で済ませてしまいましょう!
8.まとめ
妊娠から出産までのスケジュールや利用することができる補助制度について見てきましたがいかがでしたか?妊娠・出産にかかる費用についてイメージできたでしょうか?
妊娠・出産に関わる制度には国が主体のものから健康保険組合が主体のものまで様々なものがありしっかり調べたつもりでもなかなか全体像を把握するのは難しいものです。
一度に全てを把握しきることは難しいので、時系列に沿って順々に整理してみるのも一つの方法です。
それと同時に、妊娠から出産までどれくらいの費用がかかり、どれくらいの補助が出るのかということも金銭的な不安を解消していくためには大切なことです。
妊娠中は、どんなに元気な方でも妊娠前に比べて体力が落ちてしまったり疲れやすくなってしまったり、時には漠然とした不安が押し寄せることも多かれ少なかれあるはずです。
そんなときにお金の不安まで考え出すとなおさら気持ちが不安定になってしまうかもしれませんよね。
そんなことを少しでも減らしていくためにはやはり、早いうちから出産にかかる費用と補助についてイメージしてみるということを試すことをお勧めします。
長いようで短い十月十日。ぜひ前向きな気持ちで過ごしてみてくださいね!