生命保険料控除を使えば税負担が軽くなる?制度を知って賢く使おう!

生命保険や医療保険、個人年金保険などに加入していると受けることができる生命保険料控除

あなたは「生命保険料控除を完全に使いこなしている!」という自信はありますか?

会社員の方であれば、生命保険会社から届いたハガキを年末調整のときに提出すれば総務担当者が細かな手続きをやってくれるという理由で「よく理解はしていないけれど、とりあえず生命保険料控除は受けている!」という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

もちろん、それはそれで楽で良いのですが、もしかすると制度内容を知らないでいるために損をしている可能性もゼロではありません。

今契約している保険にちょっとした変更を加えることで、世帯の所得控除額が大幅にアップすることだってあるんですよ!

既に保険に加入している方も、これから保険に加入する予定の方も知っておいて損はない生命保険料控除。

この記事では、生命保険料控除の制度内容や計算方法、生命保険料控除を活用したお得な運用方法、生命保険料控除にまつわる素朴な疑問など、生命保険料控除について一気に詳しくなれる情報を解説していきます。

順を追って見ていけば難しいことなんてありませんので、ぜひ一緒に生命保険料控除について詳しくなっちゃいましょう!

目次

1.生命保険料控除って何?

1−1.生命保険料控除とは?

1−2.対象となる保険

1−3.控除を受けるための手続き

1−4.誰が所得控除を受けられる?

2.旧制度・新制度って何のこと?

2−1.旧制度とは?

2−2.新制度とは?

2−3.新制度・旧制度どちらも入っている場合はどうなるの?

3.控除額の計算方法

3−1.旧制度の控除額

3−2.新制度の控除額

3−3.新旧契約どちらもある場合の控除額

4.還付される税額はどれくらい?シミュレーションしてみよう!

5.生命保険料控除の落とし穴!個人年金控除は条件あり!

5−1.今、「貯蓄より個人年金」のワケ

5−2.個人年金控除を受けるための条件

5−3.個人年金控除にまつわる疑問

6.生命保険料控除に関する素朴な疑問

6−1.年の途中で支払者変更をした場合は誰が所得控除を受けられますか?

6−2.内縁者の保険料を支払っています。所得控除を受けられますか?

6−3.保険料を一括で支払った場合も毎年所得控除を受けられますか?

6−4.共済も対象になりますか?

7.まとめ

1.生命保険料控除って何?

「生命保険控除」とは何か、具体的に説明できる方は非常に少ないです。

サラリーマンの方であれば、毎年12月になると年末調整の用紙が配られて何やら複雑な記入をしなければならないという記憶はあるのではないでしょうか?

自営業の方であれば、確定申告の時期に生命保険料控除は関係してきますね。

今は生命保険料控除の記入を助けてくれる様々な計算ツールがネット上にもあるので、しっかりと理解できていなくてもなんとなく書類が完成して所得税が還付されることになるという場合も多いかもしれませんが、生命保険料の仕組みやメリットを知ることでより有効な節税方法が見つかるなんてことも。

この章では、生命保険料控除の基本的なことを確認していきます!

1−1.生命保険料控除とは?

生命保険料控除とはその年に支払った保険料に応じて、一定の金額が保険料支払者の所得から控除される制度です。

所得が見かけ上、小さくなることによって、所得税と住民税の負担が少なくなります。

所得税は、毎年年度末に税額が確定するため、生命保険料控除を利用することで多く納めた分の税金が還付されることになります。

住民税は、翌年の6月に税金を納めることとなりますが、生命保険料控除分減額された税金を納めることになるため「還付」はありませんが、控除前に比べ税負担が軽くなります。

1−2.対象となる保険

対象となる保険は、終身保険、定期保険、学資保険、医療保険、がん保険、個人年金保険があります。

これらは全て民間の保険です。もちろん、民間の保険には一切加入しなくても国の公的な制度として遺族年金や、障害年金、傷病手当、老齢年金などわたしたちの身の回りに「もしも」のことが起こった場合に助けてくれる制度もありますが、それらにプラスして自分自身で「もしも」に備えるのが民間保険の役割。

「しっかりと万が一のときに備えている人には、所得控除をすることでその備えを応援しますよ!」ということで生命保険料控除の制度があるんです。

ちなみに、保険期間5年未満の保険については対象とならないのでご注意ください。また、現行の制度では傷害保険なども対象にはなりません。

1−3.控除を受けるための手続き

保険契約をすると毎年10月頃に「生命保険料控除証明書」という書類が保険会社から自動的に送られてきます。

この書類には、年間の保険料支払額が記載されていますが、まだ支払っていない11月分、12月分の保険料に関しても支払う見込みがあるものとして合計額に含められています。

ペリッと開くタイプのハガキで通知されることがほとんどです。控除を受ける手続きのためには原本が必要になりますので、受け取ったら大切に保管しましょう。

会社員の方は、会社の年末調整でこちらの書類を添付し、書類に控除額を記入するなどをします。

自営業の方であれば確定申告の際に、生命保険料控除証明書の記載どおりに生命保険料控除について入力し控除を受けることになります。

会社勤めの方で、年末調整のときに生命保険料控除をし忘れたという場合には確定申告をすることで還付を受けることも可能です。

1−4.誰が所得控除を受けられる?

所得控除を受けることができるのは、本人または親族の保険料の支払をしている人です。

保険契約には一般的に「契約者」「被保険者」「受取人」という3者が登場します。基本的には契約者が保険料支払者となっていますが、例外的に妻が契約した保険を夫が支払っているという場合もありますよね。

そんな場合も、実際に保険料を負担している夫が生命保険料控除を受けられることになります。

親が子ども名義で保険料を支払っている場合にも、支払者である親の所得控除となります。

子どもが就職して自分の年末調整で活用したいと思っても、支払者が親のままである限り所得控除は受けられませんのでご注意ください。

2.旧制度・新制度って何のこと?

生命保険料控除の仕組みは平成24年1月1日を境に改正されました。

平成23年12月31日までに加入した保険と、24年以降に加入した保険では控除額の上限額や枠に一部違いがあるので、その違いを見ていきます。

旧制度、新制度の保険どちらにも加入しているという場合には、頭がこんがらがってしまうという方も多くいらっしゃいます。整理しながら見ていきましょう!

2−1.旧制度とは?

旧制度の生命保険料控除では、「一般生命保険料控除枠」「個人年金料控除枠」の2つの枠が設けられていました。

保険料控除名称 保険の種類
一般生命保険料控除 終身保険、定期保険、学資保険、医療保険、がん保険
個人年金保険料控除 個人年金保険(個人年金保険料税制的確特約がついたもの)

旧制度は前述のとおり、平成23年12月31日までに加入した保険が対象となります。

一般生命保険料控除 所得税   5万円
住民税    3.5万円
個人年金保険料控除 所得税   5万円
住民税    3.5万円
全体の控除限度額 所得税  10万円
住民税   7万円

かけた金額まるまるが所得控除の対象となるわけではなく、旧制度、新制度ともに所得控除の上限額が決まっています。生命保険料控除最大額は所得税が10万円、住民税が7万円です。

2−2.新制度とは?

新制度では、旧制度の「一般生命保険料控除枠」「個人年金料控除枠」に加え「介護医療保険料控除枠」が新たに追加されました。

保険料控除名称 保険の種類
一般生命保険料控除 終身保険、定期保険、学資保険
介護医療保険料控除 医療保険、がん保険、その他医療保障のある保険
個人年金保険料控除 個人年金保険(個人年金保険料税制的確特約がついたもの)

新制度の対象保険は平成24年1月以降に加入した保険です。

生命保険料控除最大額は所得税が12万円、住民税が7万円です。旧制度と比べて所得税の控除額がアップしています。

一般生命保険料控除 所得税   4万円
住民税   2.8万円
介護医療保険料控除 所得税   4万円
住民税   2.8万円
個人年金保険料控除 所得税   4万円
住民税    2.8万円
全体の控除限度額 所得税  12万円
住民税   7万円

2−3.新制度・旧制度どちらも入っている場合はどうなるの?

「長く入っている保険」、「最近入ったばかりの保険」などと新旧どちらの保険契約もお持ちの方もいらっしゃることでしょう。

見分ける方法は特段難しいことはありません。10月に届く生命保険料控除証明書に新旧が記載されています。また、どの控除枠に該当するかということもこちらに書いてあるので心配はありません。

これらを踏まえて、新制度・旧制度どちらも入っている場合はどうなるのかということを確認していきたいと思います。

結論を先に言うと、

□新生命保険料だけの適用を受ける

□旧生命保険料だけの適用を受ける

□新旧両方の適用を受ける

の3つの選択肢の中からお得な方法を選択することが可能です。

でも、そうは言ってもそのお得な方法をご自身で見分けるというのが難しいことですよね。次の章で、新制度・旧制度・併用の控除額の計算方法を見ていきます。

3.控除額の計算方法

この章では、生命保険料控除の控除額の計算方法を見ていきたいと思います。

旧制度、新制度双方の計算方法を確認したあとに、新制度・旧制度どちらの保険にも加入している場合の最も有利な控除額を求める方法についても見ていきます。

3−1.旧制度の控除額

生命保険料控除証明書の中には、年間の保険料支払総額が載っているので、その数字を次の表に当てはめて計算していくことになります。

【表A】旧制度の所得税控除額計算方法

その年の払込保険料 控除額
25,000円以下 払込保険料の全額
25,000円超50,000円以下 払込保険料×1/2+12,500円
50,000円超100,000円以下 払込保険料×1/4+25,000円
100,000円超 一律50,000円

旧制度では、一般生命保険料控除及び個人年金保険料控除それぞれ5万円ずつが所得税の所得控除上限額になっています。

3−2.新制度の控除額

新制度では、年間の保険料総額を次の表に当てはめて計算していくことになります。

【表B】新制度の所得税控除額計算方法

その年の払込保険料 控除額
20,000円以下 払込保険料の全額
20,000円超40,000円以下 払込保険料×1/2+10,000円
40,000円超80,000円以下 払込保険料×1/4+20,000円
80,000円超 一律40,000円

一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金控除の3つの枠それぞれの上限額が4万円となっています。

3−3.新旧契約どちらもある場合の控除額

新旧契約どちらもある場合には、前章で説明した通り、旧制度のみを適用するケース、新制度のみを適用するケース、新旧制度併用するケースの3つのパターンから最も控除額が大きくなるものを選択して生命保険料控除をする必要があります。

3パターン全てを次の表のとおり計算することで、それぞれの控除額を算出することが可能です。

適用する生命保険料控除 控除額
新契約のみ Aの表に基づき算定した控除額
旧契約のみ Bの表に基づき算定した控除額
新契約と旧契約どちらも Aの表とBの表に基づき算定した控除額の合計額(最高4万円)

それでは、どのパターンが最もお得になるかということを次の例で考えてみましょう!

新生命保険料が年間4万円、旧生命保険料が年間10万円の例を見ていきます。

控除額は、旧制度、新制度、併用それぞれのケースで以下のようになります。

①旧制度の控除額:5万円(100,000円×1/4+25,000円)

②新制度の控除額:3万円(40,000円×1/2+10,000円)

③併用の場合の控除額:4万円(①+②=80,000円→上限額40,000円)

よってこの場合には、最も控除額が大きくなる旧制度の保険契約で生命保険料控除をするのが最もお得ですよね。

併用する場合には、新旧契約どちらも生命保険料控除証明書を年末調整や確定申告時に提出する必要がありますが、旧制度のみ適用ということであれば、新制度の保険契約の生命保険料控除証明書は必要ありません。

ちなみに、これまで見てきたのは、所得税還付で適用される所得控除額でしたが、住民税でも所得控除を受けられることも忘れてはいけません!

住民税の控除額の計算式についても載せておきますね。

【表C】旧制度の住民税控除額計算方法

その年の払込保険料 控除額
15,000円以下 払込保険料の全額
15,000円超40,000円以下 払込保険料×1/2+7,500円
40,000円超70,000円以下 払込保険料×1/4+17,500円
70,000円超 一律35,000円

【表D】新制度の住民税控除額計算方法

その年の払込保険料 控除額
12,000円以下 払込保険料の全額
12,000円超32,000円以下 払込保険料×1/2+6,000円
32,000円超56,000円以下 払込保険料×1/4+14,000円
56,000円超 一律28,000円

新旧契約併用の場合

新契約のみ Cの表に基づき算定した控除額
旧契約のみ Dの表に基づき算定した控除額
新契約と旧契約どちらも Cの表とDの表に基づき算定した控除額の合計額(最高2.8万円)

4.還付される税額はどれくらい?シミュレーションしてみよう!

控除額の求め方はお分かりいただけましたか?ここからは、実際にどれくらいの金額が還付されるのかということをシミュレーションしてみたいと思います。

まず、基本的な話ですが、所得税は「累進課税」と言って所得が高くなればなるほど税率が高くなる仕組みになっていることはご存知でしょうか?

課税所得と税率の関係は次のようになっています。

課税所得 税率
195万円未満 5%
195万円以上 330万円未満 10%
330万円以上 695万円未満 20%
695万円以上 900万円未満 23%
900万円以上 1,800万円未満 33%
1,800万円以上 4,000万円未満 40%
4,000万円以上 45%

要するに、同じ控除額だったとしても、所得税について言えば所得によって還付される金額に差があるということになります。

一方で、住民税は一律10%なので、所得による差はありません。

冒頭で、生命保険料控除を知れば世帯での節税につながるかもしれないという話をしましたが、まさにこの所得税の税率が人によって異なる仕組みがそのカラクリなんです。

世帯で収入のある人が数名いる場合には、収入が最も多い(税率が一番高い)人を保険料支払者としてしまえば、一番大きな金額の還付を受けられるということになりますよね。

では、課税所得400万円の方が次の保険に加入していたと仮定します。

□生命保険(新制度):月々保険料8,000円(年間96,000円)

□医療保険(新制度):月々保険料3,800円(年間45,600円)

□個人年金保険(新制度):月々保険料10,000円(年間120,000円)

一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除全ての枠で上限まで使っているので、所得税の控除額は12万円、住民税の控除額は7万円となります。

課税所得400万円の方の所得税率は20%なので、還付額は「120,000円×20%」で24,000円となります。

住民税は一律10%なので、「70,000円×10%」で7,000円になりますね。

トータルで31,000円の節税になるということなんです。

所得が増えれば増えるほど、節税額も増えるということをより実感していただくために、以下の表をご覧ください。新制度で所得税の最大控除額12万円となった場合の年収ごとの還付額です。

課税所得 税率 所得税還付金 住民税減額 節税額
195万円未満 5% 6,000円 7,000円 13,000円
195万円以上 330万円未満 10% 12,000円 7,000円 19,000円
330万円以上 695万円未満 20% 24,000円 7,000円 31,000円
695万円以上 900万円未満 23% 27,600円 7,000円 34,600円
900万円以上 1,800万円未満 33% 39,600円 7,000円 46,600円
1,800万円以上 4,000万円未満 40% 48,000円 7,000円 55,000円
4,000万円以上 45% 54,000円 7,000円 61,000円

保険契約をする際に、仕事をしているご主人はなかなか時間が取れず、代わりに専業主婦の奥様名義で契約をして引き落としも奥様の口座から・・・というケースもあり得るかとは思いますが、生命保険料控除を考慮すると得策ではありません。

また、お互いに収入がある夫婦だった場合でも、仮に片方が控除額上限まで利用しているのであれば、新たに加入する保険については控除額が余っている人が支払者となる契約にするなどの工夫もできますよ!

5.生命保険料控除の落とし穴!個人年金控除は条件あり!

世はマイナス金利の時代。「元本割れの可能性の低い、安全でお得な運用法」というのはもはや皆無に等しくなってしまいました。

過去には、個人年金は金利の面で非常に人気な運用方法だった時代もありましたが、今となっては何年間もコツコツ将来に備えて積み立てても積み立てた金額と大した変わらない(増えない)運用方法になりつつありますね。

しかし、見方を変えるとひょっとすると個人年金保険が魅力的に見えてくるかもしれません!

その理由と、個人年金保険に加入する場合の注意点について解説していきます。

5−1.今、「貯蓄より個人年金」のワケ

生命保険料控除の枠の一つに「個人年金控除」というものがあることは先述したとおりです。

みなさん、こちらの控除枠は使っていますか?もしまだ使っていないのであれば、お得に将来の生活費やお小遣いを貯められる可能性があります。

そもそも個人年金とは何なのかというところから説明したいと思います。

現行の制度では、65歳からもらえる公的年金ですが、少子高齢社会の日本では、わたしたち現役世代が定年を迎え年金をもらえる年齢に達したときに果たして十分な金額の年金を受け取ることができるのかということが疑わしくなってきていますよね。

「わたしたちが年金をもらう頃にはほとんどもらえなくなっているだろうから・・・」「年金受取開始年齢が引き上げられて、このままでは貧しい老後を迎えることになってしまうのではないか」などと危機感を持つ若者も多く出てきていますよね。

60歳や65歳で退職を迎えるなんて夢のまた夢で、生涯働き続けなければならない時代が来るかもしれないですし、公的年金で生活ができないのであれば自分自身で老後資金をコツコツ準備してきた人だけが勝ち組となってしまう可能性も大なのです。

この「自分自身でコツコツとお金を貯める」という方法の一つが個人年金です。公的年金は、現役世代の人たちが支払う保険料で今の年金受取世代に支給する年金額を支える「賦課方式」を採用しているので、いくら今国民年金保険料をしっかり支払っても自分たちのためではありません。

一方で、個人年金は「積立てた金額がまるまる自分の固有財産になる」という部分がポイントです。

若いうちから毎月1万円ずつなど金額を決めて数十年間積立てをしていくことで将来の公的年金にプラスして生活費や老後の楽しみに使う資金の準備ができるのです。

しかし、日本の金利の低迷によって積み立てた金額以上に増やすことが困難な時代に突入しています。せっかく長い期間をかけて積み立てるのであれば誰もが「増える効果」に期待したくなりますよね。「どうせ増えないならタンス預金や銀行の積立定期預金と同じじゃない!」と個人年金保険の魅力度が低下しているのが現状です。

でもちょっと待っていただきたいのです!

個人年金控除枠を使っていないのであれば、金利は付かないけれど所得控除によって還付される税金があるのを忘れていませんか?

毎月1万円ずつ、年間12万円積み立てたと仮定します。所得税率が23%となる課税所得800万円の方の場合には、なんと年間約1万円の還付金を受け取ることができるんです。

毎月1万円ずつ積立て1万円増やすというのは、利回り18%と同意です。

利息は付かないけれど、還付金を「利息」と考えて個人年金保険に加入する方法です。生命保険料控除のメリットを最大限に活かした賢い方法なのではないでしょうか?

5−2.個人年金控除を受けるための条件

個人年金控除を受けるためには、ただ保険会社で「個人年金保険」と分類されている保険を契約すれば良いだけ!というわけではないんです。

個人年金保険は個人年金保険でも、次の5つの条件を全てクリアして始めて個人年金控除を受けられることになります。

□個人年金保険料税制適格特約を付けていること

□年金受取人が契約者または配偶者のどちらかであること

□年金受取人は被保険者と同一人物であること

□保険料払込期間が10年以上であること

□年金の種類が確定年金や有期年金の場合、年金受取開始が60歳以上で、かつ年金受取期間が10年以上であること

順番に見ていきましょう。「個人年金保険料税制適格特約」とは、個人年金保険であれば特約を付加する・付加しないを選択することが可能です。

上記の条件全てを満たしていなければ、付加することはできないので、個人年金保険料税制適格特約を付加したということと条件を全て満たしたということは基本的には同義となりますが、その他の条件全て満たしていても個人年金保険料税制適格特約を付けていない場合には個人年金控除枠の対象とはなりませんのでご注意ください。

次に、2と3の条件をまとめて、「年金受取人=被保険者が本人または配偶者であること」です。以下の契約パターンが該当してきます。

契約者 被保険者 受取人 保険料負担者
本人 本人 本人 本人
本人 配偶者 配偶者 本人
配偶者 配偶者 配偶者 本人

医療保険や、生命保険と違い、子のためにかける保険は個人年金控除の対象となりません!

そして、保険料払込期間が10年以上であること。

個人年金保険では、短い積立期間で保険契約が成立するものは珍しいのでそれほど心配はないと思いますが10年間以上コツコツと積み立てる必要があるんですね。

そして最後に、年金受取開始年齢が60歳以上で、受取期間が10年以上ということです。

これは、例えば積立てた金額を一括受取するように設定している場合には個人年金控除の対象外になってしまうということです。

以上が個人年金控除枠を使うための契約条件です。保険契約時に「個人年金控除を使いたい!」とはっきり伝えておけば、適用外となってしまうという事態は避けられるとは思いますが、個人年金控除の対象保険だと思っていたのにも関わらず年末近くになって保険会社から届く生命保険料控除の案内を見てみたら違った・・・というケースも稀にあるので念入りに確認してみることも大切かもしれません。

5−3.個人年金控除にまつわる疑問

個人年金控除の条件を見てきました。「それなら、個人年金控除の枠を満たさない個人年金保険はどうなっちゃうの?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。この疑問を始め、個人年金控除にまつわる疑問について見ていきたいと思います。

個人年金保険料税制適格特約が付いていない個人年金保険の生命保険料控除の扱いはどうなるの?

一般生命保険料控除枠の対象となってきます。

仮に、既にご加入の生命保険などでこちらの枠を使いきってしまっている場合には、個人年金控除枠を新たに使えば追加で還付を受けることができるので「もったいないパターン」となってしまうことも。

一般生命保険料控除枠をそもそも使っていないという場合には、個人年金保険料税制適格特約を付加している・していないに関わらず還付額は同額なので、それほど気にする必要はないでしょう。

・個人年金を2つ契約している場合、一般生命保険控除枠と個人年金控除枠どちらも使ってダブルで還付を受けることもできるの?

可能です。

一つに個人年金保険料税制適格特約を付加し、もう一方は付加しないということでどちらの枠も使うことができます。

・契約の途中で個人年金保険料税制適格特約を外した場合や、将来的に予定変更となって一括受取をする場合には、これまで個人年金控除で受けた還付金は戻さないといけなくなるの?

還付金を戻す必要はありません。

個人年金保険料税制適格特約を外したあとからは、もちろん個人年金保険控除の対象からは外れますが、一般生命保険控除対象の保険として継続していくことができます。

6.生命保険料控除に関する素朴な疑問

ここまで生命保険料控除について読んできて、これまでよりも生命保険料控除について詳しくなっていただけたのではないかと思います。

最後に、生命保険料控除についてよく寄せられる質問をまとめてみました。

これであなたも生命保険料控除マスター!?今年の年末調整の時期には、書類の記入で困っている同僚にも生命保険料控除の仕組みを教えてあげられるかもしれないですね!

6−1.年の途中で支払者変更をした場合は誰が所得控除を受けられますか?

例えば契約者・被保険者が妻の保険の保険料を夫が負担する場合、保険料の控除証明書は妻名義で保険会社から送られてきます。

夫の会社で年末調整をしたい場合には、こちらの控除証明書と実際の支払いを夫がしていることを証明できる書類の添付が必要になる場合があります。

夫名義の口座から保険料の支払いがされていることなどが証明できれば、夫が所得控除を受けることが可能です。

6−2.内縁者の保険料を支払っています。所得控除を受けられますか?

配偶者を被保険者とする保険料を支払っている場合には、契約者が所得控除を受けることができますが、内縁者を被保険者とする保険料の場合には生命保険料控除の対象にはなりません。

また、最近では生命保険の死亡保険金受取人を内縁の妻とできるケースが徐々に増えてきていますが、この場合の保険契約についても、いくら契約者・被保険者がご本人であっても生命保険料控除の対象にはなってきませんのでご注意ください。

6−3.保険料を一括で支払った場合も毎年所得控除を受けられますか?

「保険を一括で支払う」という場合、実はその保険のタイプによって「一時払い」「全期前納」という2つの異なる払込方法が存在します。

どちらも全ての保険料をまとめて支払うという点では同じに見えるのですが、その支払った保険料を保険会社がどのような形で扱うのか異なってきます。

「一時払い」は契約者が支払うと全額が即保険会社のものとなるイメージ。

「全期前納」は、契約者はとりあえず全額支払いますが、実際には、未経過年分の保険料を保険会社に預ける形を取り、そこから毎年保険料に充当していってもらうというイメージです。

一時払いをすると、生命保険料控除を受けられるのは支払いをした最初の年のみとなります。

一方で、全期前納の場合は保険料支払期間が続く間は毎年生命保険料控除を受けることができます。

6−4.共済も対象になりますか?

「こくみん共済」「県民共済」「コープ共済」などの各種共済も生命保険料控除の対象となります。

民間保険と同様に年末が近づくと年末調整や確定申告で利用する「共済掛金証明書」がご自宅に届くようになっています。

7.まとめ

生命保険料控除について見てきましたが、いかがでしたか?

生命保険料控除は、しっかりと「もしも」のときに備えているわたしたちを税金面で応援してくれる制度ということがわかりましたね。

新制度、旧制度が混在しており一見複雑に見えますが、控除額計算の流れがわかってしまえばもう「怖いものなし!」ではないでしょうか?

この記事を読んだ上で、あなたの家庭で契約している全ての保険についてもう一度チェックしてみることをおすすめします。

「新旧制度の保険契約がある場合、最もお得な方法で控除できているか」「保険料支払者はベストか」「個人年金保険料控除の枠に空きがあるか」などの視点でもう一度見てみることで、案外もっとお得なやり方があることに気づくかもしれません。

これから保険に加入する場合も同様のことが言えます。「なんとなく」で契約者を決めてしまうのではなく、生命保険料控除が最大限に活用できる方法で契約できれば良いですね!

毎年の還付額にはそれほどインパクトはなかったとしても、生命保険は何年、何十年と継続して掛けていくものです。小さな積み重ねが大きな金額になることだってありますので、ぜひ生命保険料控除を上手に活用してみてくださいね!

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