医療費控除・生命保険控除の違いと下りた保険金の取扱いを解説!

記事監修者紹介
松葉 直隆
大学卒業後、損保ジャパン日本興亜代理店の保険会社にて5年以上勤務し、年間100組以上のコンサルティングを行う。

その後、2016年6月より保険ブリッジの記事監修を務める。

あなたは『医療費控除』と『生命保険料控除』をご存知ですか?

これらは、申告すれば税金の優遇措置が受けられる制度。

「税金をできるだけ軽減したい!」方はぜひ利用すべき制度なのですが、では、いつどこで申告すればいいのでしょうか?

そこで今回は、医療費控除と生命保険料控除の基礎知識に加え、申告方法や受け取った保険金(給付金)の取り扱いなどについて解説していきます。

この記事でわかること
  1. 医療費控除の基礎知識
  2. 生命保険料控除の基礎知識
  3. それぞれの計算・申告方法
  4. 受け取った保険金の取り扱いについて

この記事を読めば、医療費控除・生命保険料控除を間違った内容で申告してしまった場合の対応方法まで分かります。

ぜひ最後まで目を通してみて下さいね。

ざっくり言うと…
  • 医療費控除とは、1年間支払った対象の医療費を確定申告すると、所得税・住民税の負担が軽減される所得控除の1つ。
  • 生命保険料控除は、1年間支払った対象の保険料を年末調整の際に申告すると、所得税・住民税の負担が軽減される。

医療費控除って?対象となるものを紹介!

医療費控除を利用すると、税制上の優遇措置が受けられる

と聞いたことはありますか?

私は生命保険に加入していますが、この保険料控除も該当するのでしょうか?

まず、医療費控除の特徴について見ていきたいと思います。

医療費控除とは

医療費控除とは、

1年間にご自分や家族の支払った医療費を申告すると、所得税・住民税の負担が軽減される所得控除の1つ

です。

医療費控除を行うときには、ご自分の分だけを申告するだけではなく、ご家族にかかった医療費を合算して申告することも可能です。

合算で申告する場合は、ご自分や生計を一にする6親等内の親族および3親等内の姻族の中で、最も所得税率の高い人がまとめて医療費控除の申告をすると、より高い節税効果となります。

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医療費控除の対象となるもの

下表のような医療費が控除対象になります。

ただし一般常識的にみて、あまりに高額な値段となる医療費は対象とならないので注意しましょう。

控除範囲は広いが、民間保険は対象外

出産に関連する費用や、交通費も医療費控除に該当するので、公的医療保険が適用されない費用も対象になります。

また、保険適用外の自由診療(※)も治療目的ならば対象に含まれる場合があり、控除範囲が広いのは医療費控除の特徴と言えます。

ただし、生命保険会社が扱う生命保険や医療保険・がん保険などの保険料は適用対象外となります。

こちらの保険料を税負担の控除に利用する場合には、「生命保険料控除」という形で申告することが必要です。

自由診療について

保険適用外の医療行為を指し、医療費は全額自己負担となります。

 

まだ国内では未承認の最先端の治療法・治療薬から、美容診療のように身近なものまで幅広く該当します。

生命保険料控除とは?対象外となる保険料もチェック!

どうやら生命保険は、医療費控除で申告するわけではないようですね。

では、生命保険の控除申告の方法は、一体どのようにやるのでしょうか。

生命保険料控除とは

生命保険料控除とは所得控除の一つであり、この控除が適用されると所得税・住民税の負担が軽減されます。

1年間に支払った保険料が対象です。

生命保険料控除の対象者は、生命保険の他、

保険料控除対象者
  1. 医療保険
  2. 学資保険
  3. 介護保険
  4. がん保険
  5. 個人年金保険

などに加入した方々が該当します。

なおこの生命保険料控除は、平成23年12月31日以前に加入した保険契約ならば「旧契約」制度、平成24年1月1日以降に加入した保険契約ならば「新契約」制度に分かれます。

注意点
控除内容はそれぞれ異なりますので申告に注意が必要です。

生命保険料控除の対象となるもの

生命保険料控除の区分は旧契約は2種類、新契約では3種類に分かれます。

一般生命保険料控除

一般生命保険料控除は、

加入契約者(被保険者)の生存または死亡により下りる保険金・その他給付金にかかわる保険料

が対象です。

この控除枠の対象者には、生命保険や学資保険、個人年金保険料控除枠に該当しない個人年金保険等の加入者が該当します。

また「旧契約」の保険契約ならば、医療保障・介護保障まで対象となります。

介護医療保険料控除

介護医療保険料控除は、平成24年1月1日より適用されることになった、新しい生命保険料控除枠です。

こちらの控除枠の対象者には、介護保険や医療保険の加入者となります。

なお、前述した通り平成23年12月31日以前の介護保障・医療保障に関係する保険契約(旧契約)は、「一般生命保険料控除」に該当することになります。

個人年金保険料控除

個人年金保険料控除は、一定の条件に該当した個人年金保険加入者を対象に、加入者の支払った保険料に応じ所得控除が行われます。

一定の条件とは、「個人年金保険料税制適格特約」が付加されているものをいいます。

この特約を付加するには、次の要件全てに該当しなければなりません。

「個人年金保険料税制適格特約」条件
  • 年金を受け取る人が契約者本人かその配偶者
  • 年金を受け取る人がこの個人年金保険の被保険者
  • 年金保険料を払う期間が10年以上
  • 年金受取開始時が60歳以降でかつ年金受取期間が10年以上:確定年金の場合のみ

この要件の3つ(確定年金は4つ)全てに該当しないと、個人年金保険料税制適格特約を付加することができません。

こちらに該当しない場合、一般生命保険料控除の対象となります。

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生命保険料控除の対象外となるもの

生命保険料控除対象
  1. 生命保険
  2. 医療保険
  3. 学資保険
  4. 介護保険
  5. がん保険
  6. 個人年金保険

上記を契約しても、必ずしも生命保険料控除の対象となるわけではありません。

次の場合なら、生命保険料控除の対象外となります。

国外で締結した保険契約

外国生命保険会社または外国損害保険会社等と、国外において締結した保険契約は生命保険料控除になりません。

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ただし、国内で外資系等の保険会社と締結した保険契約ならば、問題なく生命保険料控除の対象となります。

保険期間が5年未満の場合の貯蓄共済や貯蓄保険

貯蓄共済とは、

中小企業庁により商工会の正規事業として認可された共済のこと。

商工会の会員(個人事業主)やその家族、従業員が保険の対象者になります。

万一の場合、生命保険等と同様に手厚い保障が受けられます。

貯蓄共済や貯蓄保険は基本的に生命保険料控除の対象ですが、保険期間が5年未満の場合は対象外となります。

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医療費控除と生命保険料控除の計算方法

医療費控除と生命保険料控除も、かかった費用を節税に活かすことができるのは有難いですね。

次からは、医療費控除と生命保険料控除の計算方法等について解説します。

どちらも所得税・住民税が軽減される

医療費控除と生命保険料控除は「控除」という名称からもわかる通り、

課税対象から一定の金額を差し引くこと

を意味します。

差し引きの対象となる税金は、所得税住民税です。

通常ならば所得税は税務署への申告または年末調整となりますが、住民税は市町村(主に税務課が担当)へ申告することになります。

所得税および復興特別所得税の確定申告を行う人や、会社員のように年末調整を行う人は、市町村にわざわざ住民税の申告手続きする必要はありません。

医療費控除は基本的に誰でも、確定申告をする必要があります

また、生命保険料控除は確定申告または年末調整で行うことになります。

自分の職業によって申告方法が異なる場合もあるのです。

医療費控除の計算方法

医療費控除は、最高200万円を限度として還付金が受け取れます。

ただし、次のような条件があります。

医療費控除の条件
  • 患者の病状等と比較して、一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額
  • 10万円(総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等の5%の金額)を超えた金額

医療費控除の計算式は、次の通りです。

ご自分や家族が支払った医療費の合計額-補填される金額-10万円(総所得金額200万円未満は総所得金額の5%)

補填される金額がある場合、必ず支払った医療費の合計額から差し引かなければなりません。

保障される金額
  • 生命保険会社から下りる保険金(給付金)
  • 健康保険の保険者から自己負担限度額を超えた分のお金が戻される高額療養費
  • 出産育児一時金

などが該当します。

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生命保険料控除の計算方法

生命保険料控除は新契約と旧契約で、それぞれ控除額や計算方法が異なります。

こちらでは所得税の他、住民税も解説します。

新契約(平成24年1月1日以降)

所得税

一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除それぞれ4万円まで控除(合計12万円が上限額)

1年間の支払保険料 控除額
~20,000円 全額控除
20,001円~40,000円 支払保険料×1/2+10,000円
40,001円~80,000円 支払保険料×1/4+20,000円
80,001円~ 一律40,000円
住民税

一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除それぞれ2.8万円まで控除(合計7万円が上限額)

1年間の支払保険料 控除額
~12,000円 全額控除
12,001円~32,000円 支払保険料×1/2+6,000円
32,001円~56,000円 支払保険料×1/4+14,000円
56,001円~ 一律28,000円

旧契約(平成23年12月31日以前)

所得税

一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除それぞれ5万円まで控除(控除申告内容が旧契約制度のみ:合計10万円が上限額)

1年間の支払保険料 控除額
~25,000円 全額控除
25,001円~50,000円 支払保険料×1/2+12,500円
50,001円~100,000円 支払保険料×1/4+25,000円
100,001円~ 一律50,000円
住民税

一般の生命保険料控除、個人年金保険料控除それぞれ3万5,000円まで控除(合計7万円が上限額)

1年間の支払保険料 控除額
~15,000円 全額控除
15,001円~40,000円 支払保険料×1/2+7,500円
40,001円~70,000円 支払保険料×1/4+17,500円
70,001円~ 一律35,000円

医療費控除と生命保険料控除の申告方法

医療費控除と生命保険料控除も計算方法は判明しましたが、申告方法はどうするのでしょうか?

こちらでは、給与所得者か個人事業主かで異なる申告方法について解説します。

医療費控除は基本的に確定申告

医療費控除はどなたでも、確定申告で申告手続きを行うことになります。

給与所得者でも年末調整で済ますことはできません。

確定申告は個人の場合なら、その年1月1日~12月31日を課税期間として、その期間内の収入・支出、医療費等から所得を計算した申告書を、ご自分の納税地を管轄する税務署へ提出します。

申告する期間は、毎年2月16日~3月15日での1ヶ月間となります。

もし期日が土曜日・日曜日である場合には順次繰り下げ、月曜日までとなります。

提出書類は次の通りです。

確定申告の提出書類
  1. 確定申告書
    →国税庁のホームページや各税務署窓口で取得しましょう。
  2. 医療費控除の明細書
    →1年間にかかった医療費の明細をまとめる書類です。こちらも国税庁のホームページや各税務署で取得します。平成31年(2019年)までは領収証を明細書代わりに提示しても構いません。
  3. 源泉徴収票
    →給与所得者の場合のみです。
  4. 本人確認書類
    →基本的にマイナンバー(個人番号カード)の両面の写しを添付台紙に貼り付けたものを準備します。ただし、マイナンバー(個人番号カード)が無い場合なら(a)番号確認書類の写し(通知カード、住民票の写し、住民票記載事項証明書のいずれか)+(b)身元確認書類(運転免許証、パスポート、在留カード等のいずれか)の写しを準備します。
  5. 印鑑

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生命保険料控除は年末調整で申告OK

生命保険料控除の場合は、個人事業主ならば確定申告で行うことになります。

一方、給与所得者ならば毎年12月に事業所で行う「年末調整」で申告しても構いません。

年末調整とは、

給与所得者の所得税額を、年末に1年間の所得や給与所得者本人の生活事情と照らし合わせて再計算し、その過不足額を調整する方法。

申告に必要な書類は次の通りです。

年末調整の必要書類
  1. 給与所得者の保険料控除等申請書兼配偶者特別控除申告書
    →ご自分の勤務する事業所から取得します。
  2. 生命保険料控除証明書
    →10月ごろに保険会社から送付されます。

この2点をご自分の勤務する事業所へ提出します。

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給与所得者が確定申告しなければならないケース

給与所得者の方々の場合も、医療費控除は必ず確定申告で行いますが、生命保険料控除の際は、何らかの理由で年末調整で申告できないことも想定されます。

その場合には、確定申告生命保険料控除を申告しても構いません。

では、確定申告期間の2月16日~3月15日までに行わないと、申告ができなくなるかといえばそうではありません。

確定申告でも間に合わないならば、いつでも申告可能な「還付申告」でも提出可能です。

還付申告は、医療費控除や生命保険料控除でも申告ができ、確定申告期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間にわたり税務署の窓口で申告を受け付けてもらえます

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受け取った保険金(給付金)の取り扱いについて

医療費控除は誰でも確定申告、生命保険料控除は確定申告または年末調整で申告することが分かりましたね。

では、保険金(給付金)を請求し、実際にお金を受け取った場合はどうなるのでしょう?

医療費控除では、支払った医療費を補填するようなお金を受け取ると、差し引きの対象になるようですが…。

こちらでは、医療費控除での保険金(給付金)の取り扱いについて解説します。

医療費控除では差し引きの対象

生命保険契約等で支給される入院給付金をはじめとした医療費を補填する保険金(給付金)が、医療費控除では差し引きの対象となります。

生命保険や医療保険・がん保険等では、主に次のような保険金(給付金)が差し引きの対象になります。

入院給付金

入院すれば1日(日額)でいくらという計算により給付金が受け取れます。

概ね生命保険会社では1日5,000円~15,000円程度で設定されています。

手術(治療)給付金

手術やがん保険等の場合なら手術の他、放射線治療や抗がん剤治療が該当します。

概ね生命保険会社では入院給付金(日額)の何倍という形で設定されています。

通院給付金

通院で治療する場合に対象になる給付金です。

概ね生命保険会社では、1日3,000円程度で設定されています。

先進医療給付金

先進医療を受けた場合に該当します。

先進医療の場合は、その費用が数百万円に上るものもあり補填される金額もそれだけ多くなります。

実際の医療費を上回る保険金を取得した場合

前記したように生命保険や医療保険・がん保険等は、高額になる医療費を金銭的にサポートしてくれる頼りになる商品です。

高額になる医療費を実費で受け取ることができる先進医療給付金のみならず、

契約時に設定した保険金(給付金)の内容によっては、実際に支払った費用より多くのお金を受け取ることができる場合もあります。

一見すると、「受け取った総医療費よりも保険金(給付金)額の方が多いケースもあるのではないか?」と、心配される方々もいらっしゃると思います。

しかし医療費控除において、差し引かれる保険金(給付金)は補填された医療費分にその範囲が限定されます。

つまり、保険金(給付金)請求原因となった医療費とは、別の医療費から差し引かれることがないことを意味します。

次項では事例を挙げて医療費からの差引額を計算してみます。

医療費控除での保険金(給付金)の取り扱いと計算例

医療費控除における保険金(給付金)の取り扱いとしては、1年間に申告する医療費が1つの病気またはケガのみで、保険金(給付金)により医療費が全額補填される場合、医療費控除を受けることができなくなります。

ただし、支払った医療費が2つ以上の場合ならば、まず保険金(給付金)の請求原因となった医療費と、請求した保険金(給付金)とは関係ない医療費を分けて計算していくことになります。

(例)
医療費控除対象者
    • 50歳男性(会社員)
    • 年収700万円
1年間の医療費
  • A病院:胃潰瘍により20日入院治療(医療費58万円)→70万円分の給付金が支給
  • B医院:医療費控除が適用される自由診療の白内障手術(医療費49万円)→給付金なし

①まず、A病院の入院治療(医療費)で下りた70万円分の給付金を計算します。

A病院の医療費58万円-給付金70万円=-12万円

-12万円なので0円となります。

②この場合は、B病院の医療費49万円分だけ残りますが、年収700万円の人なので10万円を更に差し引きます。

(A病院の医療費0円+B病院の医療費49万円)-10万円=39万円

39万円が医療費控除の対象になる金額です。

ただし、39万円がまるまる還付金として受け取れるわけではなく、課税される所得金額によって大きく異なることになります。

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確定申告の際の注意点

ではもし確定申告の際に、うっかり保険金等の差し引きを忘れた場合や、確定申告の時点で保険金の金額が確定していない場合はどうすれば良いのでしょうか?

ここからは、医療費控除の申告にかかわる色々なケースの対処について解説します。

医療費控除の申告にかかわる注意すべきケース

申告の際は、還付申告の場合のように医療費控除だけというように、申告の対象を絞って作成するわけではありません。

確定申告の場合なら、以下のことも注意しなければなりません。

確定申告で注意するべきこと
  1. 前年の報酬
  2. 経費
  3. 社会保険料
  4. 生命保険料控除

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そのため、うっかりミスの他に保険金請求の際、保険会社側の手続きが12月31日までに間に合わない等の事態も考えられます。

次のような対処に困るケースが想定されます。

うっかり保険金等の差し引きを忘れた場合

受け取った保険金を差し引いていなかった場合等は、医療費控除の算出に大きな影響が出ます。

ミスに気づいたら後述する訂正申告または修正申告を行って、正しい申告をやり直しましょう

確定申告をしたいものの保険金額が確定していない

例えば長期入院等によって保険金請求が遅れ、年内に生命保険会社へ請求できたものの、その年の間に入院給付金等の金額が確定しなかった場合があげられます。

生命保険会社側は、慎重に保険金支払いの有無を判断するので、それなりに時間がかかることもあるのです。

そのため、確定申告の締め切り日までに、医療費控除の申告が間に合わないケースもあります。

この場合には、保険金額が確定する翌年度以降の確定申告とはせず、実際に医療費を支払った年度で保険金を受け取るものと仮定します。

一応、保険金の見込み額で確定申告を行った後、保険金額が確定したら速やかに修正申告または更正の請求を行いましょう。

保険金の受け取りが年をまたいで翌年になってしまった

年の暮れに保険金(給付金)を請求をした場合、保険金額は当年中に確定しても、実際の保険金(給付金)の受け取りは翌年になるケースがあります。

医療費控除の申告の場合、実際に支払った医療費は支払日を基準として当年度中に含まれます

また、受け取る保険金(給付金)が年をまたいで翌年となったとしても、翌年度ではなく、あくまで当年度の扱いになります。

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なぜなら、取得した保険金(給付金)は支払った医療費を賄うお金と考えられるので、医療費を支払った年に対応するとして良い、という国税庁の見解があります。

そのため、保険金(給付金)受け取りが年をまたいで翌年となっても、医療費控除の場合には支払った年に差し引かれるお金として認識する必要があります。

訂正申告の方法

確定申告期限内に誤りを訂正したい場合には、確定申告の期限3月16日までに申告をしましょう。

申告手続き自体は前に行った確定申告と同じです。

ただし、間違った箇所を訂正するだけで良いかというと、そうではありません

医療保険に入っていない人は危険?その理由と必要性を解説します!

訂正した申告書の上部に赤色のペンで「訂正申告」と記載します。

そうすれば、税務署の窓口の担当職員にも訂正したことがすぐにわかります。

訂正した申告書の提出の際には、次の書類を用意します。

訂正申告書の提出に必要な書類
  • 訂正した申告書
  • 前に提出した申告書の控え
  • 申告に必要な添付書類
    →「医療費控除は誰でも基本的に確定申告」で記載されている必要書類を参考にしてください。

もちろん、この段階ならば訂正したことで何らかのペナルティを受けることはありません。

更正・修正申告の方法

確定申告の期限を過ぎてから誤りに気づいたり、当年度の保険金額が確定したりすれば更正請求また修正申告を行うことになります。

更正請求の場合

税金が軽減される場合、つまり還付金が受け取れる場合は「更正の請求」を行います。

この請求は「更正の請求書」で行います。

この更正の請求を行う場合は、法定申告期限から5年以内に税務署の窓口へ提出してください。

なお、後述する修正申告とは違い自らが誤りに気づかない限り、税務署から還付できる旨の連絡はほとんどありません

また、更正の請求をしなくてもペナルティが課せられるケースはほとんどありません。

ただし、還付金を受けられる機会を逸することになりますので、還付を受けたいならば忘れずに申告しましょう。

修正申告の場合

税金を少なく申告していた場合が該当します。

こちらの場合は「修正申告書」(申告書B第一表および第五表修正申告書・別表)を提出します。

誤りに気づいたら速やかに申告することが必要です。

なぜなら放置すればそれだけ、延滞税がかかってしまうからです。

平成30年中の延滞税の割合は、次のようになります。

①納期限の翌日~2月を経過する日まで→年2.6%

なお、納期限の翌日~2月を経過する日までの延滞税の割合は、年「7.3%」または「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合を適用することになります。

②納期限の翌日~2月を経過した日以降→年8.9%

なお、納期限の翌日~2月を経過する日以降の延滞税の割合は、年「14.6%」または「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合を適用することになります。

さらに、税務署の調査を受けた後で修正申告または更正を受けると、新たに納めることになった税額に加え過少申告加算税がかかる場合もあります。

つまり、新たに納めることになった税額の10%(場合により15%)の過少申告加算税、または35%(場合により40%)の重加算税がかかります。

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まとめ

医療費控除も生命保険料控除も申告するからには、正確な記載を心がけなければなりません

確定申告で、特に過少申告になった場合は速やかな修正が必要となります。

「申告さえすれば、自分以外の納税者も大量に申告するわけだから、税務署の職員には絶対にバレない。」と、思っても税務署の審査は正確です。

いずれバレてしまいます。

前述したように、税務署の調査を受けた後で修正申告または更正を受けるとペナルティは更に重くなってしまいます。

このように、税制上の優遇措置を受けるつもりで申告したにもかかわらず、想定外の重い税金を支払う羽目になることもありますので、納税者には正確かつ正直な記載が求められます。

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